【著者対談】人工知能(AI)開発のヒントが学べる!『エクサスケールの少女』がとても興味深い!

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人工知能研究者の間で話題になっているSF小説『エクサスケールの少女』をご存知でしょうか。
これまで政治経済小説を手がけてきた文系の作家・さかき漣さんが綿密な取材と100冊以上の参考文献を元に描く同書は、壮大なSF作品としての面白さに加えて、現実的に、人工知能が未来の生活をどのように変えるのかを的確に示唆してくれます。

こんにちは。AINOW編集部のかめきちです。
今回は『エクサスケールの少女』著者のさかき漣さんとの対談をお送りいたします。

まずは、本の紹介を。

エクサ少女エクサスケールの少女
さかき漣/徳間書店
1600円(税別)
人工知能が人間を超える“シンギュラリティ“(技術的特異点)、その前段階としてこの10年以内に起こる「エクサスケールの衝撃」は、スパコンで医療・宇宙工学などに革命を起こし、人間生活を大きく変える。深い孤独を抱えるスパコン研究者・青磁の前に現れた万葉集を愛する謎の美女・千歳。二人は古からの運命に導かれ、京都から東京、そして神話の里・出雲へ。シンギュラリティを迎えたとき、人類の向かう先はユートピアか?それとも……。

映像化もイメージ?「巫女さんみたいに、世界に入って書いた」

さかき先生1

かめきち
人工知能がテーマですが、小難しい解説本みたいにならずにストーリーに入り込めました。その中で知るべき・考えるべき重要なテーマが適切に物語に落ちていて…実際に人工知能の開発に携っているAINOW読者のみなさんに読んでいただきたい!と感じました。
さかきさん
とても嬉しいです!ありがとうございます!
かめきち
僕は背景描写が細くて、読み進めるうちにアニメを観ているような感覚になりました。
さかきさん
わたしが小説を書くときは、物語をまず自分自身のなかで映像として観て、それを文章に写しとるという作業をおこないます。
書き始めてしばらくすると空想の世界に入り込み過ぎて、私、人間じゃなくなっちゃうんですよ!
変な話で申し訳ないんですけれど、なんだか巫女さんみたいになります。起きているときも、食事をしているときも、小説の世界に没頭してほとんど喋らなくなってしまいます。
かめきち
まさに作家さんですね…!しかし、どうしたらあそこまで鮮明に描けるのですか。
さかきさん
専門家に取材をしたり、様々な場所に行ったりなどして、イメージを鮮明にしています。作品に登場する研究者の中には実在する先生も数名いらっしゃいますし、作中の研究会の場面も実際にお邪魔して拝見した情景をもとに描いています。もちろん、ストーリーの舞台となった場所にも日本各地に脚を運びました。
逆に言えば、私はそうしないと書けないんですね…。非常にコストパフォーマンスの悪い作家です(笑)
さかきさん

ちなみに、ヒロインが車を運転するシーンがあるのですが、あの場面は私が免許を持っていないため、あまり細かく描けていないのが悔しいですね…!

「価値システム」と「善悪二元論」の否定

さかき先生4

かめきち
AIを題材に、人間についても深く描かれていました。
さかきさん
人工知能に感情を持たせるかどうかという議論が盛り上がっていますよね。
そこで玉川大学の大森先生などが研究されている「価値システム」をキーワードのひとつにしました。
「価値システム」とは・・・
人間に価値観があるのと同様に、人工知能においても、善悪の判断をするような感情を理解するシステムのこと。周囲の環境から与えられるデータの種類によって、人工知能の個性が変わっていくとする考え方。
さかきさん
私は研究者ではないので、人工知能が感情を持つことが正しいか正しくないかについては、意見を言える立場にないと思っています。ただクリエイターとしての私個人としては、価値システムを搭載したAGIがシンギュラリティを牽引するのを見てみたい、と夢想していますが、その良い面と危険な面の両方を作品では描くようにしました。
かめきち
人間のドロドロとした部分も描かれていますよね。物語が苦悩から始まったのも印象的でした。
さかきさん
人間と同じようなAGIができるまでは、彼らはおそらくただ情動に似せた「アルゴリズム」、言ってみれば「機械」に過ぎないんだと思います。アルゴリズムだと、やっぱり0と1の部分が大きいんじゃないでしょうか。
さかきさん
情動のアルゴリズムを人間に近づけていくということは、0と1の間にある、例えば0.1や0.9の違い、また例えば0.49なのか0.50なのか0.51なのか…という部分を探り突き詰めていくことだと解釈しています。作品ではその過程を、人間の悪い部分・良い部分、ドロドロした部分・美しい部分を対比し続けることで描こうとしました。ここに私自身のテーマのひとつである「善と悪をはっきり分けることは好ましくない」という善悪二元論の否定も込めました。

脅威論よりは技術革新を。クリエイターだから見えること。

さかき先生2

かめきち
僕はビジネスの中で新しい技術を使って社会に届けていますが、さかき先生は、技術革新を取り巻く環境に対してどのようにお考えですか
さかきさん
日本はもっと技術開発に力や資金を投じるべきだと思っています。作品の中で地震やテロを描いているのも、そのメッセージのつもりです。
さかきさん
例えば、日本は地震大国でありながら、大地震に対して十分な対策ができているとは言い難いです。シンギュラリティと絡めると、この対策も進むはずです。災害やテロによって国が壊滅したら、私たちはどこを頼ればいいのでしょうか。もちろん海外からの支援は来るでしょうが、それが届くまでには時間がかかりますよね。
だから、シンギュラリティに対して脅威論を唱えるのみでなく、脅威への対策を講じつつ、どんどん投資して研究開発を進めた方がいいと思っています。危機管理ができていない日本の現状を、私たちは自覚した方がいいと思います。
かめきち
読んでいて、そのメッセージがすごく伝わりました!
小説として描くことで、イメージが自分ごとになって伝わりますよね。
さかきさん
ときおり研究者の方から「素晴らしい専門書・学術論文なら、一般の人も届くはず!」という思いを感じることがあります。しかし残念ながら日本人のほとんどは専門書も論文も読まないですよね。一生目にしない人も多い。けれど、研究開発には資金が必要なはずです。だから、研究への投資の重要性を伝える手段として、エンタメは良い道具だと思っています。
さかきさん
論文や専門書は理性を駆使して読みます。けれど、そういう読書って、一般の人からしたら楽しくないだろうし、苦痛ですらあるかもしれない。
それがエンターテインメントになると、物語を楽しんでいるうちに知識がすっと入ってくることがある。ロマンチシズムやエンタメ性の中に技術と知識、その恩恵を描いていく方が、社会には広まり受け入れられやすいと信じています。
かめきち
現在、AIの研究会やシンポジウムにも登壇されていますよね。みなさん、さかき先生のお考えに強く関心を持ってらっしゃいます。
さかきさん
おそれおおいです!何度も言いますが、とにかく私は研究者ではありませんので。
でも、クリエイターだから見えるものがあると思っています。
当然といえば当然なのですが、研究者の方はご自身の専門分野を追求されていくので、なかなか、複数のアプローチがクロスすることがないですよね。岡目八目ではないですが、私のように一歩引いたところにいると、見えてくるものもあるかなと。
さかきさん
例えば、すごく素人考えですが、工学と生物学のアプローチがクロスして、クローンの箱の中に人間のアルゴリズムを突っ込むところを見たい!と思ったりしますよね(笑)
かめきち
それ、とっても見たい!
それにしても執筆後も勉強量がすごいですよね…。何がさかき先生をそんなに突き動かすのでしょうか。
さかきさん
興味、知りたいという本能ですね。

編集後記

人工知能というと工学的な分野がピックアップされがちですが、人間との共存をめざす人工知能だからこそ、「賢さ」や「性能」以外の生物本来の感情表現を考慮する必要があると考えさせられました。

作中でもキーワードとなる「価値システム」。どんな人工知能になるかは私たち、人間の行動によって変わってきます。今後、人工知能を作るための社会インフラが必要になりますが、データを人工知能に与える際、性能も高く、社会・人間にとっても優しい人工知能になるようなインフラ作りが重要であると感じます。

エクサ少女エクサスケールの少女
さかき漣/徳間書店
1600円(税別)
人工知能が人間を超える“シンギュラリティ“(技術的特異点)、その前段階としてこの10年以内に起こる「エクサスケールの衝撃」は、スパコンで医療・宇宙工学などに革命を起こし、人間生活を大きく変える。深い孤独を抱えるスパコン研究者・青磁の前に現れた万葉集を愛する謎の美女・千歳。二人は古からの運命に導かれ、京都から東京、そして神話の里・出雲へ。シンギュラリティを迎えたとき、人類の向かう先はユートピアか?それとも……。

なんと5名様に読者プレゼント!

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