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2017.07.11

NEDOが始めた「次世代人工知能技術ベンチャー支援」を利用してAIの社会実装スピードを上げろ!

最終更新日:

こんにちは、AINOWの亀田です。
今回は「NEDO」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)にて取り組みが行われている次世代人工知能技術ベンチャーへの投資事業について取材したレポートをお届けする。
応募ハードルも少し高そうではあるが、過去の経験からフォーマットの改善などが行われており、応募ハードルも下がっているそうだ。それでは、具体的に見ていく。

今回、お話をお伺いしたのはこちらのお二人

国立研究開発法人 新エネルギー産業技術総合開発機構
ロボット・AI部 AI社会実装推進室長代理
金山 恒二(かなやま こうじ)
昨年設置されたAI社会実装推進室のミッションとして、AI技術の研究開発に加え、社会実装を促進する人材育成、ベンチャー支援等の様々な支援策創出に取組中。

国立研究開発法人 新エネルギー産業技術総合開発機構
ロボット・AI部 AI社会実装推進室
葛馬 弘史(かつらうま ひろし)
人工知能技術戦略会議 ベンチャー支援・金融連携タスクフォース事務局(平成28年度)
今回の公募プログラムの企画運営を担当

NEDOとはどんな研究機関なのか?

NEDOは、公的な研究開発のマネジメント機関として、経済産業行政の一翼を担い、主に「エネルギー・環境問題の解決」および「産業技術力の強化」の二つのミッションに取り組む国立研究開発法人。

■ エネルギー・地球環境問題の解決
新エネルギーおよび省エネルギー技術の開発と実証試験等を積極的に展開し、新エネルギーの利用拡大とさらなる省エネルギーを推進。

■ 産業技術力の強化
将来の産業において核となる技術シーズの発掘、産業競争力の基盤となるような技術開発を、産官学で連携して新技術の市場化を図る。

「人工知能技術戦略会議」ではタスクフォースを務める

昨年4月、人工知能(AI)技術の研究開発、社会実装を進める「人工知能技術戦略会議」が創設された。総務省・文部科学省・経済産業省の3省が事務局を務め、NEDOを含む3省所管の5つの国立研究開発法人も同会議に参画。NEDOは同会議で決議された内容を基にロードマップ作成、イベントなどのタスク遂行を担ってきた。今回の「次世代人工知能技術分野に係る公募」、「NEDO AIベンチャー実技選抜ワークショップ」などがこれにあたり、ベンチャー企業との連携と推進をしているそうだ。


「人工知能の研究開発目標と産業化のロードマップ」より

「人工知能技術戦略会議」とは?

平成28年4月12日に開催された第5回「未来投資に向けた官民対話」における安倍総理の指示を受け、産学官の叡智を集め、縦割りを排した「人工知能技術戦略会議」が創設された。同会議が司令塔となり、総務省・文部科学省・経済産業省が所管する5つの国立研究開発法人を束ね、人工知能(AI)技術の研究開発を進めるとともに、AIを利用する側の産業の関係府省と連携し、AI技術の社会実装を進めている。

スピード感を重視した次世代人工知能技術分野への公募プログラム

人工知能技術戦略会議のベンチャー支援タスクフォースにおける有識者との様々なディスカッションや複数のベンチャー企業へのインタビューを通じて、より効果的なベンチャー支援制度となるよう全体のプログラムを見直したそうだ。公募内容の詳細について、本プログラムの担当である金山氏に詳しい内容をお伺いした。

AIの活躍が期待される3分野に注目

今回の募集対象案としては、人工知能戦略技術会議で協議されたロードマップにおいて重点を置いている下記の3分野。

1. 生産性
2. 健康・医療・介護
3. 空間移動

社会課題として解決の必要性、経済波及効果への貢献、AI技術による貢献の期待による3観点から重点分野は決定されたとの事、提案できるサービスが限定されるイメージを持つが、下記の図からも分かる通り、生産性と一言で言っても多岐にわたっているため課題解決に向けたAIサービスであれば当てはまるので、応募をしてほしいそうだ。


生産性分野の業界イメージ

応募方法や選考方法をユーザーフレンドリーな観点から見直し

NEDOはこれまでにもさまざまな研究開発プロジェクトを実施してきたが、ベンチャー企業などからもっとスピード感のある手続きにして欲しいと要望があり、今回は進め方を工夫したそうだ。民間でのアクセラレータープログラムが数多く登場したことも背景にはあり、国主導のプログラムでは珍しいとのこと。
例えば、従来は応募時点で、費用明細も含めた詳細な研究開発計画などを提出する必要があったそうだが、今回は実技審査を設定したことから書面での説明を簡潔にし、2ページ程度の提案書をメールで送るだけで応募が完了する。しかも公募期限までに何度でも再提出OKだそうだ。
担当された葛馬氏は、当初新しい手法に不安もあったそうだが、数多くの優良なAIベンチャーから応募し易くなったとの声が寄せられており、フォームを改善して良かったとのこと。

AIの実用性が判断される実技審査

気になる選定基準や審査方法についても伺ってきたので参考にしてほしい。
今回の選考は、書類選考を通過するとプレゼンテーションと実技審査という2点で進んでいくそうだ。特に実技審査においては、多様な分野から集まってくるベンチャー企業の実力を確認する場となるので、ベンチャー企業は独自の工夫が必要だ。
確かに、ベンチャー企業の多様性を評価して選定するNEDOのプログラムだからこそ、社会意義が大きく社会変革にスピードをもたらすベンチャー企業が採択されるのだろう。

本プログラムに採択されると最優秀企業には最高50百万円、優秀企業には最高30百万円の研究開発契約をNEDOと締結することができる。(平成29年度及び30年度の2年間の総額、30年度予算は政府方針の変更等により変更の場合もありとのこと)
NEDOプロジェクトへの参画を機にAIベンチャーが注目されれば、さらにメーカーや金融機関との事業連携が生まれることも期待できる。

国主導だからこそ起こせるイノベーション

最後に、今後の方針と目標を伺った。
大企業とAIベンチャーを繋ぐオープンイノベーションを国主導で実現してみたいと話す金山氏。
民間同士のオープンイノベーションは数多く実施されているが、介護現場やインフラなどの分野では民間企業の投資が行われにくく、また、規制等の課題解決が必要な場合もある。ここに国の力が入り社会ニーズの高い分野にAI技術を実装することで、イノベーションの社会的な効果も大きくなり、社会を変革するAIベンチャーが生まれる可能性が高くなる気がする。今後の活動にはAINOWでも注力して取材をしていきたい。

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