「AIが仕事を奪う」には飽きたよ…「AI時代の僕たちの幸せな働き方」を好評書籍の著者と語り合った。

総務省「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」(平成28年)では、人工知能(AI)のコストが安くなれば、人間の仕事を奪う危険性が高くなると指摘している。同様の論調が国内外で見受けられ「確かにそうかもな」と思う方が多いだろう。

不安で仕方がない。そんな世論にあって「2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方」という一風変わった書籍が発売から2週間で重版出来(増刷)と好評だ。

2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方
藤野 貴教 /著

売り優先で不安をあおってもしょうがない

著者の藤野さんは出版にあたって考えたそうだ。


出版のセオリー的に言えば、「大AI時代到来、あなたは大丈夫?」のような書籍にしたほうが売れるんでしょうね(笑)でもね、不安をあおってもしょうがない。僕は本を売りまくることよりも、AI使いながら僕たちの生活を幸せに進化させるかを考えたいし、話したい。そのために、今AIはどこまできてるか、仕事をどう変えていかなければいけないかの、今の本を書きました。

…あ、でもおかげ様で書籍はたくさん買っていただいてますよ!(藤野氏)

聞けば藤野さんはテクノロジーのド素人だという。

アクセンチュア、人事コンサルティング会社を経て、東証マザーズ上場のIT企業において、人事採用・組織活性・新規事業開発・営業MGRを経験。2007年、株式会社働きごこち研究所を設立。「ニュートラルメソッド」を基に、「働くって楽しい!」と感じられる働きごこちのよい組織づくりの支援を実践中。「今までにないクリエイティブなやり方」を提案する採用コンサルタントとしても活躍。グロービス経営大学院MBA(成績優秀修了者)。
2015年より「テクノロジーの進化と人間の働き方の進化」をメイン研究領域としている。テクノロジーの最前線を「主婦でもわかる」ようなかみ砕いたことば、たとえで話すことを得意としている。

ITコンサルのアクセンチュアにいたこともあるのに、ポジション用トーク?


いやいや(笑)アクセンチュアに入社したはいいけど、プログラミングが嫌いであっという間に辞めてしまいまして。そのくらいテクノロジーのド素人だと思っていただいていいです。

でもそんな人が書いたというのが大事。世の中の多くの人は非エンジニアなわけですよ。でも関係なくAIはやってくる。AIについて知るのは必要なリテラシーだし、働き方を、自分の仕事を、国を変える大きな波になるはずです。でも日本のAIへの対応は早いとは言えない。

とくに非エンジニアが大勢を占めている、意思決定する経営者、管理者の理解を広めて、幸せな働き方を実現するためにもテクノロジーのド素人が伝えることが大事なんです。(藤野氏)

人工知能界の研究者たちの書籍が並ぶ中、異色の経歴だと言えるだろう。藤野さんの著書の特徴である「2020年」という時間の切り方についても聞いてみよう。


人工知能が人間の能力を超えることをシンギュラリティと呼んで、2045年問題なんて呼ぶこともありますよね。大変だ。居酒屋トークとしては楽しいと思うんですけど。

でもそんな先のことは分からないじゃないですか(笑)僕たちに大事なのは3年くらいの未来を見据えて身近なところから変わっていくこと。なので「2020年」にしました。(藤野氏)

もう一つ気になるのは「僕たちの幸せな働き方」。なぜ「幸せ」「働き方」なのか。


今の働き方の話って「働く場所、時間の話」がメインじゃないですか。仕事の中身の話「今ある仕事をどう終わらせるかの話」ってあまりされてないですよね。それなのに「生産性を上げろ」と言われる。今の働き方改革って「お前は無能だ」と言われているようで気持ちがよくなる社員がいないのがポイントですよね。

AI時代の働き方改革は「それは本来やりたかった仕事だったんだろうか?」「どう働くのがハッピーか」という話と一緒に進めるべきです。

例えば、AIは手書き文字の認識が99.6%まで来ています。だけれども仕事でやっていることは変わっていない。地方の役所の窓口では手書き書類を人に書かせてチェックを人がやっている。多くの地方の役所の方がやりたいことは「困っている人の相談に乗りたい」だったりするのに。

AI時代は幸せな働き方を基に「その仕事は自分がやるべきか、マシンにやらせるか」の問いをしていく時代になるはずです。だから「2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方」にしました。(藤野氏)

元来、株式会社働きごこち研究所なる組織づくり支援を専門とする藤野さんだからこその視点と言えそうだ。

セミナーなどを通じ「働くって楽しい!」と感じられる働きごこちのよい組織づくりの支援を実践中。

ちょっと変わったこの1冊、出版にはどんな人から反響があるのだろうか。

 

例えばコールセンターでお仕事する地方在住のお母さんからは「AIはすごい不安になったけど、みずほのコールセンターの事例で人とAIの切り分けがわかった。AIが回答例を教えてくれることによって、自分は目の前の人と会話することに注力すればいいんだ。」と感想をいただきました。

企業経営者の方からは「わかりやすく、自分の今後の考え方に役立った。社員にも読んでもらいたい。」とも言っていただいています。AIの進出に恐怖がある人にとっては「幸せな働き方」を意識する一冊になっているようでうれしいですね。

意外なところからも反響があったようで、書籍の帯文を西野亮廣さんが担当したほか、岡田准一さんのラジオ番組にも藤野さんは登場している。

藤野氏のHPより

藤野氏のHPより

とは言えなかなか「自分の幸せな働き方はこれだ」なんて言える人は少ないだろう。「僕ができるのは人工知能時代の働き方のアドバイス」という藤野さんにAI時代の仕事の選び方を聞いてみた。


「バイブス」ってあるでしょ。身体的感覚、バイブスが合うからやるという話が増えてるんですよね。メディアが発達して情報は共通だし認識が簡単にもてる時代になったから、バイブスが合うというのがとても大事になっているんだと推測しています。

マクロの話はわからないけど、仕事はなくならないですよ。むしろ生産性はAIが受け持って行って、創造性を人に求める仕事が増える。だから「こいつといるとアイデアが出やすい」とか「この職場なんかいい感じ」というのが大事になるんです。

楽しいという感覚を元に仕事を再構築するやり方がいいんじゃないかなぁ。(藤野氏)

藤野さんは数年前から「都会で離れて田舎で身体感覚を豊かにする」ことが大事と、愛知県西尾市ハズフォルニア(旧幡豆郡)に移住して暮らしている。

バズフォルニアでお子さんと稲刈りなども行う藤野さん

藤野さんは最後にこう付け加えた。

AIが怖い怖いって言いますけど、AIは人のことなんか分かってませんからね。「〇〇っぽくね?」と推測してくるだけなので。だからまず「りんな」でもいいし身近なAIと付き合いながら、自分の生活がどう変わるかを考えるきっかけになるといいなと思ってます。(藤野氏)

今後もテクノロジーの最前線を、「専門用語をできるだけ排してわかりやすく」伝えていくそうだ。

編集後記

おしん記者
聞き手の私の元上司の藤野さん。「ほんとはこの人テクノロジー嫌いだったよな」と思いつつ話を聞いていたら「人への興味や新しいものへの好奇心がそれを上回っちゃったのね」と勝手に納得しました。一緒に働いていた時代から「バイブスが合うな」と勝手に感じていますが、同じAI周辺にいるのが不思議な再会となりました。

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