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2017.10.06

自社特有のデータから不動産の在り方を変える…イタンジ株式会社さんを取材

最終更新日:


こんにちは、AINOW編集部のみかみです。

以前、不動産×AIのまとめ記事を書きました。
不動産テック(ReTech)という言葉は最近よく聞きますね。
しかし不動産テックが流行したのも2015年~2016年あたりで、多くの会社が類似サービスを出しています。さらに不動産業界は財閥系の大手不動産会社の力が強く、ベンチャー企業はどのようにして生き延びていくのでしょうか。

今回は「テクノロジーで不動産の在り方を変える」をミッションとしているイタンジ株式会社取締役CTOの横澤佑輔さんにインタビューしました。

みかみ
不動産テックベンチャーを設立しようとした経緯を教えてください。
横澤さん
日本の不動産業界はその構造上、世界的に見ても不透明で情報の非対称性が高いと評価されています。エンドユーザーと不動産業界で働いている人たちが知っている情報に差ができてしまっているのです。この情報の非対称性をテクノロジーの力によって解消し、誰もが素早く正確な情報を入手できる社会を築きたいという想いから2012年に創業しました。

不動産価格の設定やおとり物件まで…確かにユーザーの視点から考えると不動産業界には見えない情報が多く存在しているでしょう。

みかみ
では、、前回の記事で試用したAIチャット「nomad(ノマド)」についてお伺いします。どのように精度を上げているか教えてください。
横澤さん
AIチャットの導入当初、質問の分類精度は10%程度しかありませんでした…。
そのため人工知能では返答が不十分で、以前は10名以上のスタッフで対応していました。その中からよくある質問は類型化してデータの精度を高め、システム改修をした結果、質問の分類精度が9ヵ月間で約80%まで上がりました。正答率が60%を超えたため、対応するスタッフも数名ほどになり、対応コストを大きく削減することができました。
人工知能で応答できなかった質問は人間のスタッフが対応し、その内容をシステムに反映させていくことで、段階的に精度を上げることができました。
チャットはLINEなどで慣れているためユーザビリティーもよく、返答が早いため顧客満足度は上がっています。そのため、多くの不動産仲介会社様にも「nomad cloud(ノマドクラウド)」を導入していただいています。

自社で行うオンライン完結型の賃貸不動産サービスが「nomad(ノマド)」、その技術を多くの不動産仲介会社様に利用いただけるよう開発した顧客管理システムが「nomad cloud(ノマドクラウド)」です。

みかみ
既に多くの不動産仲介会社でも導入されているんですね。
横澤さん
現在、約200店舗で導入されています。nomad をモデルケースとして開発した技術を不動産仲介会社様にシステムとして提供しているのがnomad cloudです。
不動産テックがまだ浸透する前は、不動産=人が接客するというイメージの方が強いため、人工知能が自動接客してくれるという感覚に抵抗感がある方もいました。
先ほど出てきたnomadで実際の現場で運用することができたのが強みになりました。こちらで顧客満足度やエンゲージメント率が高くなり、対応コストを大幅に削減できたという実績をつくることができたので安心して導入いただけるようになりました。
みかみ
to Bが主力事業なんですね!現在数多くある不動産テック企業ですが、競合も多い中、イタンジさんはどのように差別化を図っているのでしょうか?
横澤さん
賃貸不動産を借りるためには、物件を検索するところから始まり、空室確認、内見、申し込み、審査というステップが必要です。従来、このやり取りはエンドユーザーから問い合わせを受けた後、不動産仲介会社と不動産管理会社の間で、電話やFAX、メールを中心に行われ、申し込みや審査に関しては手書きの紙書類を使用していたため、時間や手間がかなりかかるものでした。
それら1つ1つのステップを自動化するシステムについては類似したサービスも出てき始めているのですが、物件の検索から始まり内見、申込、審査受付まで一連の賃貸不動産取引のコミュニケーションの一元化を実現した企業はまだないかと思います。
みかみ
日本国内の不動産テックをより活発になるために、今後どのような試みが必要になってくるのでしょうか?
横澤さん
テクノロジー化というのは、1社だけで行っても浸透しません。例えば、ある管理会社がシステムを導入して業務効率化を図っても、その会社へ申し込みをする仲介会社がFAXを使用すると業務は効率化されません。
大手企業様でも1つの事業所だけでテクノロジー化を試すより、全社同時に変革させた方が大きな導入メリットを得ることができています。
日本は米国と違い、物件データがオープンではないですが、人口減少にともなう空き家問題のように不動産に関する社会的問題も増加しています。
また、少子高齢化によって働き手が減ることからも、業務効率の向上は必須の課題です。そのため不動産業界も、情報がシームレスになりすべての人が素早く正確な情報を入手できる世の中に近づけていけると思っています。
みかみ
技術的な側面から今後の取り組みを教えてください。
横澤さん
イタンジで展開しているサービスを通じて、今までは記録すらされてなかったデータが溜まりつつあります。今後はこういったデータを活用して今までは分析されてこなかった分野に挑戦し、新たなサービスに繋げていきたいと思います。例えばぶっかくんのデータを活用して空室期間の予測を行ったり、nomad cloudのデータを活用してライフステージに合わせた物件のレコメンドを行ったり、という事を考えています。
そういった未来を見据え、直近ではボトムとなるサービスの開発に力を入れつつもデータ基盤やデータ分析や機械学習と言った分野の研究や技術投資にも力を入れています。

今回取材を受けてくださった横澤さんは、当初不動産には興味がなかったが、エンジニアリングの対象として「不動産」が面白いと感じるようになったとのことです。
金融業界のようなところは全部数式に当てはめるような言わば勉強してきた人が勝つ世界ですが、不動産は「この家はユーザーの好みか」というような定性的なデータも必要となります。
整備されていない大量のデータをいかにうまくモデリングするか考えることが楽しいと最後におっしゃっていました。

現在、社内のエンジニアは10数人。数値データだけでは物足りない!定性データも分析して不動産業界を変えていきたいという方は注目です。

みかみ
数多くある不動産テックの企業や大手不動産会社がある中で、数年後を見据えたイタンジさんが持っているデータの強みがビジネス成功を続ける要因になると思いました。
ユーザーのライフステージが分かるようなデータまであるように、大前提として肝心なデータがあり、そこから人工知能を用いてサービスにしているところが面白かったです!
数多くある不動産テック企業はどのように生き残るか、また大手不動産会社は数年後どのような手段に出るか注目ですね!

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