ロボットから“スキルを引き算”した空気を読む会話エンジン『PECO』 AIスピーカーやチャットボットの課題が見えた。

AIがちょっとしたブームになっている。

AIスピーカーがメディアでも大きく取り上げられているからだろうか。LINE Clova WAVE(以下WAVE)やGoogle HomeなどのAIスピーカーが2017年10月より本格的に日本国内で販売を開始したのも理由として大きいだろう。

チャットボットも、ドラマやアニメとのタイアップが多数企画されており、多くの人がLINEやMessengerで使ったことがあるだろう。

そして、AIスピーカーやチャットボットを使ったことがある人は感じたことがあるのではないか。

まだ「会話らしさ」“ない”と。

人工知能を搭載したデバイスと人間との関係のあるべき姿が空気を読む会話エンジン“PECO”を開発した1→10Robotics(ワントゥーテンロボティクス)を取材して見えてきた。

取材したのは・・・
1→10Robotics代表取締役社長の長井健一さんと青柳佑弥さん。

社長がどんな人なのか1→10Roboticsのサイトのチャットボットモッチに聞いてみると….

だそうだ。

現状のAIに対する課題。人間らしさとはなんだろう。

特定の応答はできるけど。。。

チャットボットやAIスピーカーは特定の応答をすることはできる。

「こんにちは」→「こんにちは!今日もいい天気ですね。」
「明日の天気は?」→「雨の予報です。傘を忘れないようにしてくださいね。」

ある程度の会話はストーリーの設定がされており、ユーザは違和感を感じることは少ないかもしれない。

なにが人間らしくないのか

まだ、人工知能は人間と同じレベルで会話をすることはできない。

そこにはいくつかの理由があるだろうが、大きな理由としてチャットボットやAIスピーカーは基本的に受け身であることがあげられるのではないか。

これは人間優位の考え方に基づくものだ。チャットボットやAIスピーカーはあくまでも“特定のタスク”をこなすことに注力している。AIスピーカーはテレビの電源をつけたり天気を教えてくれたりする。チャットボットはFAQシステムに使用されるなど、情報の引き出しとしての利活用が進んでいる。しかし、そこに人間に対する能動的な働きかけはない。人間に“求められる”ように動くのだ。

人間優位だからこそ、人間がチャットボットやAIスピーカーに寄り添う場面は少ないように思う。

HAIという研究分野がある。Human Agent Interactionの略で、人間とロボットが意思疎通するにはどうしたらいいかという研究だ。人間がロボットを頼るだけでなく、ロボットも同じように人間を頼り、双方向的に関係性を構築していくことが大切だ。

HAIについて取材した記事がある。こちらもぜひご覧いただきたい。

制約があるからこそ、実現できる人間と「ミニドラ」の会話をHumanAgent Interaction (HAI)から学ぶ

会話エンジン“PECO”はロボットのスキルを引き算したら作れた!?

マルチモーダルインターフェースが“空気を読む”

今の会話エンジンは扱える情報が限られている。チャットボットではテキストが中心、AIスピーカーでは音声が中心なため、扱える情報が排他的であると言える。

1→10Roboticsの長井社長は次世代の会話エンジンの発展には複数の感覚を横断して連携する知能“マルチモーダルインターフェース”が必要だという。

長井さん
一つ一つの感覚器官としてのデバイスは発展してきましたが、今後はその掛け合わせが大事になってくると思います。

1→10Roboticsの会話エンジン“PECO”はこのマルチモーダルインターフェースを実現するために視覚・聴覚・触覚・感情値などの情報や、ユーザ属性や記憶、環境情報などを結合して、文脈として把握するという意味で“空気を読む”会話を実現するという。

「ロボットからスキルを引いた」とは!?

この会話エンジンが実現できたのは1→10Roboticsがこれまで取り組んできたロボット研究がその基礎になっているからだ。ロボットには目があり視覚情報を扱う。音を聞くこともでき、従来のチャットボットやAIスピーカーよりも扱う情報の種類が幅広い。

長井さん
ロボットやコネクテッドカー、バーチャルアシスタントなどを開発してきました。それをもとに独自に設計と開発をし直したものが“PECO”です。
青柳さん
会話エンジンは、基本的にチャットエンジンですよね。

チャットベースで、そこにスピーカーなど必要な機能を盛り込んでいきます。

しかし、“PECO”は、もともとロボットを作っていた時のエンジンなので、そこから機能を引き算をするという考え方になります。そこが全然違っていて、個別のケースに合わせて引いていくというイメージです。

昨今のチャットボットやAIスピーカーは扱っている情報が限られている。AIスピーカーであれば、指示は声でしかできない。チャットボットでは文字だけだ。

もし、AIスピーカーが横断的に視覚情報を扱えるようになったら、「はい」と言う代わりにうなずくだけでいいかもしれない。

実際チャットボットが視覚を持つとどうなるのか。

チャットボットと視覚が合わさった事例として、会話エンジンPECOを搭載したお菓子メーカーとのタイアップ企画を紹介する。

LINE公式アカウント「万事屋銀ちゃんAI相談室byスニッカーズ®」は、対象のスニッカーズ®製品を購入して、そのパッケージの写真をLINEで送ると銀魂のキャラクターに悩み相談ができるというキャンペーン。

驚くべきは画像認識が使えるという点だけでなくその精度。ラーメンの画像を送ると「食べ物の画像を見るとお腹がなってくるんだよな」と的確な返答が。

銀魂×スニッカーズのコラボ企画LINEアカウント「万事屋銀ちゃんAI相談室byスニッカーズ」

このすごさを裏付けるのは、そのユーザ数の多さだ。初日には1万人以上がこのボットに話しかけたという。それだけでも大変驚きなのだが、なんと平均して1人あたり約50回も会話の受け答えをしているという。

より人間に馴染みやすい会話エンジンになっているのがわかるだろう。

感覚を横断することでさまざまな可能性が。

前述のように、ロボットにあったさまざまな機能を有効に使うことで、“空気を読む”会話エンジンを1→10Roboticsは作り上げた。

しかし、“PECO”の活用範囲はチャットボットでの会話体験だけではない

例えば、サイネージへの導入が例としてあげられる。

“PECO”のように人間とのインタラクションを重視することは、今後、街の中での人工知能の利活用を進めるために必ず必要になってくる。

サイネージが、ユーザの性別や年齢などに応じて適切に会話ができたらどうだろう。マイクやカメラの情報も活用したり、スマホなどの情報を横断的に使用することができれば、ユーザ体験はより高まるだろう。

他にもロボットや車(コネクテッドカー)にも応用可能と長井社長は言う。コネクテッドカーではユーザ情報や位置情報をもとに、適切なレコメンドをしてくれたり、ユーザの不注意を検知してアラートを投げるなどの機能も実現できるだろう。

以上の点を踏まえると“PECO”は可能性の幅がとても広い。もともとロボットのエンジンなので横の展開がしやすいのだ。

チャットボットで蓄積した会話ログをサイネージに活かし、その情報をもとにロボットを開発するなどの可能性もある。

青柳さん
冷蔵庫とかに導入したら面白そうですね。何が余ってるかを教えてくれたり、賞味期限が切れそうなものを教えてくれたり、寄せ集めで何が作れる提案してくれたり。家電との連係は面白そうです。

プッシュ型でも話しかけることができる“PECO”

また、“PECO”はプル型だけでなく、プッシュ型でも会話をすることができるという。
つまり、人間が話しかけなくても、能動的に話しかけてきてくれるのだ。

1→10Roboticsのコーポレートサイト上で体験できるPECO。モッチというキャラクター。ユーザの反応がないときはプッシュ型で話しかけてくれる。

まずはWebサイトで体験してみよう。

この会話エンジンを1→10Roboticsのサイト上で試すことができる。モッチというかわいいキャラクターが出迎えてくれる。

親しみやすい姿の持ち主。

複数回サイトを訪れるとそれを把握して話しかけてくれる。どのページから遷移してきたのかも正確にキャッチして会話に盛り込んでいる。

試しに「働きたい」と話しかけてみると

リクルートページに案内してくれる。

おわりに

取材に快く応じてくださった長井さんと青柳さんの2人に感謝。AIやロボットについて熱く語っていただいた。

“マルチモーダルインターフェース”
今後、チャットボットやAIスピーカーを始めとした会話エンジンが私たちの生活に溶け込む上で重要なキーワードになりそうだ。ただタスクに絞るのではなく、どのようにしたら人間社会に溶け込んでいけるのか。社会全体で考えるべきことかもしれない。1→10Roboticsが実現した空気を読む会話エンジン。今後に注目だ。

おざけん
ディレクター。可能性を秘めたAIが正しく社会に実装されるようにメディアとしてサポートします。技術だけでなく、どのようなユーザ体験を生み出せばAIが生活に溶け込んでいけるのか。シンギュラリティにむけ、産業や国を超えた活発な議論を促進していきます。趣味はカメラ撮影。

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