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2018.02.19

サーバーレスでスマホだけで物体認識 AIQが目指す「興味の可視化」

最終更新日:

2018.02.13 取材・編集:おざけん@ozaken_AI

東京 秋葉原にあるアイキュー株式会社(以下AIQ)。

画像解析プラットフォーム「Object Scouter」やプロファイルエンジン「Live Real」という目玉となる2つのエンジンを開発している会社です。

これにより、あらゆるモノの認識やSNSアカウントの見える化が可能にしています。
昨年の2017年7月の創業だそうで、設立から約半年でこのラインナップを揃え、爆速でプロダクト開発を進める生まれたてのベンチャーです。

なんと2018年2月にはテレビ番組にも登場されるそう。今後注目されること間違いなしの、AIQの裏側に迫っていきます。

サーバーレスで複数のオブジェクトの認識も可能にする「Object Scouter」

なんといってもAIQの目玉はその画像解析技術です。数々の大手企業で開発責任者の経験を積んだ社長を筆頭に開発をゴリゴリ進めているそうです。

画像認識といえば、今さまざまな会社が取り組むホットな領域。その分、差別化が難しい領域です。

AIQの画像認識の特徴は、1つの画像から自動的に複数のオブジェクトを抽出することが可能な点。

2種類のAIが異なる学習・認識を行うことで可能になったそうです。(下記画像参照)

この技術のおかげで、画像内の複数の物体(商品)を特定することができます。

実際にスマホでObject Scouterを試してみました。

まずはコアラのマーチを認識してみます。

しっかりとコアラのマーチが認識されています。では、じゃがりこを追加してみましょう。

しっかりと認識していますね。では3つではいかがでしょうか?カップヌードルを追加してみましょう。

スラリと認識することができました。

驚いたのはサーバーレス、つまりスマホ単体でかつ、瞬時にこの判別ができることです。

サーバーに画像を送ってから結果をスマホに返すとタイムラグが発生し、ストレスになってしまうことが多いそうです。そこでユーザー体験の向上のために、スマホだけで認識が可能な技術を搭載しました。

スマホ単体でここまでの技術が実装できれば、活用の幅が広そうです。

担当者の方に開発で苦労した点について質問してみました。

ーー開発で苦労したことはありますか?

「まずは、そもそもサーバーでやっていることの全てをスマホだけで動作できるようにコンパクトにしなければいけません。そのため認識に必要な全ての要素(学習モデルも含めた)の最適化が大変でした。

サーバーで認識させるのとは異なるアプローチになる部分もありますので。またカメラスルーでリアルタイムに認識をさせていますので、どれだけのFPS(フレームレートの単位、1秒間当たりの連続表示回数)を実現するか?にも苦労しました。現状では25FPSを実現しています。」

確かに、1つ1つの物体ごとに写真を撮るのはめんどくさいですよね。一気にまとめて写真を撮ることができれば、効率を大きく伸ばすことができます。

SNSアカウントの可視化を行うエンジン「Live Real」

もう1つのAIQの目玉技術があります。それが「SNSの可視化」です。

従来だとSNSアカウントの情報を集めるには、人の目でそのアカウントを確認し、プロフィール文などを解読してその人のプロフィールを判定する必要がありました。しかし、人の目に頼ってはスピードや量の限界が生じます。

AIQのLive RealはあらゆるSNSのデータベースにアクセスして投稿される画像や動画、テキストなどの情報をエンジンで判断してプロファイリングを行うエンジンです。これにより、高いスピードで一度に多量のSNSユーザを解析することができます。

「テキスト解析」つまり、自然言語処理にもAIQは力を入れています。
担当者の方は「AIによるソーシャル・マーケティングに変革を起こせる技術だ」と張り切っていました。

このエンジンを活用した「AI LINK」というインスタグラム運用支援ツールも運営しているそうです。AILINKについても簡単にご紹介します。

画像認識と言語処理を活用してエンゲージメントの高いフォロワーを増やす「AILINK」

インスタグラムの盛り上がりはみなさんもご存知のとおりです。

インスタグラムによって私たち、特に若年層の消費行動が変容しています。そして、その盛り上がりとともにビジネスでもインスタグラムを活用しようとする人が出てきます。

しかし、依然とインスタグラムをうまく活用できている会社は多くはありません。一方的な宣伝に終止してしまい、見てもらえないアカウントや、上質で高頻度の情報発信やフォロワー管理に人的リソースをさけない会社も多いです。よってインスタグラムのフォロワーが全然増えない、もしくはフォロワー数は増えるがエンゲージメント率が向上せず、アカウント運営が十分にできていないパターンも多いです。

AILINKはAIによるアカウント分析、良質なフォロワー獲得を可能にするといいます。すでにAILINKを導入した企業の実績として驚異のエンゲージメント率35%超えを実現しています。

AIQが有するLive Real(画像解析エンジンと自然言語処理エンジン)を使うことで、インスタグラム上にと投稿された画像や、プロフィールなどを自動的に分析します。そして、膨大な数のインスタグラムアカウントから性別や年代、職業や地域、趣味趣向などのプロファイリングデータを作成します。

これによって狙った層のアカウントに対し正確なアプローチが可能になりました。

親和性の高いアカウントにリーチすることができ、投稿に対して高い確率で反応してくれるといいます。

また、ハッシュタグのみを用いたアプローチは簡単ですが、大量の外国人アカウントにアプローチしてしまったり、副業系や競合企業アカウントにもアプローチしてしまうこともあり、企業のブランディングやプロモーションとして利用することは難しくなってしまいます。そこが「アカウントの可視化」を推進する理由だと担当者の方はおっしゃっていました。

このAILINKは良質なフォロワーを増やすだけでなく、インスタグラムを介して顧客満足度や顧客属性のプロファイリングも可能になるそうです。

今後の展望は?

ーー最後に今後の展望について教えてください。

私たちのエンジンは非常に横展開がしやすいです。今は商品の分析が主ですが、ファッションや食にも転用することができます。

しかし、根本としてあるのは「今その人が何に興味があるのかを可視化する」ということです。

今後、さまざまな人の興味を可視化するベース部分を創り上げて、さまざまなサービスの根底を担えるようになりたいです。

編集後記

AIQさんの取り組みは一つの大きな目的・ビジョンがあるところが面白いです。画像認識が目的となってしまって受託開発に終止してしまう会社も多いですが、「興味を可視化する」という面白いテーマで、展開を進めている点に感銘を受けました。

今、転移学習もホットなテーマですが、Object Scouterは転移学習を有効活用しているといいます。転移学習によって、今まで学習してきたモデルを他のモデルに有用的に転用することができ、大きく学習コストが下がります。スマホで認識できるというとこと合わせて見ても、省力化やネットワークに頼らないエッジ化を進めているところに先進性を感じました。

Appleの新しいiOS11には「Core ML」といってスマホだけで機械学習を実装する技術が図られています。こういったスマホへのエッジ化に今後大きく進む中でこのAIQもどんどん大きくなっていくでしょう。

2018.02.13 取材・編集:おざけん@ozaken_AI

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