垂直的機械学習のアプローチを使って、いかにしてゼロから400万の女性が利用するまでにファッションアプリを成長させたのか(前編)

筆者はファッションアプリ「Chicisimo」を提供する企業のCEO。同アプリはファッション・コーディネートの提案をAIを使って実行している。同アプリのAIを開発する際に、ミュージック・レコメンドアプリのAIを開発した経験を生かして、ファッション・コーディネートを楽曲のセットリストのように処理したと解説されているのが興味深い。 (AINOW 進藤)

われわれの論題:服装とはヒトの嗜好を理解する最良のアセットである。そして、ヒトの嗜好を理解することは、オンライン・ファッションの在り方を変える。

3年前にChicisimoをリリースした時、われわれのゴールは自動化された服装に関するアドバイスを提供することであった。このアプリが400万を超える女性が利用するアプリになった今日、われわれのデータと機械学習のアプローチがアプリの成長を助けたことを共有したいと思う。そのノウハウはかつては混乱したものであったが、今日では制御されている。

もしヒトが行うのと同じレベルで服装について自動でアドバイスするツールを作ろうとしたら、ヒトのファッションに関する嗜好を理解しなければならない。

友だちが服装についてアドバイスできるのは、その友だちはたいていアドバイスするヒトがいつも着ている服を見ていて、そのヒトのスタイルを知っているからだ。こうしたヒトのようにファッションの嗜好を学習するシステムをどのように作ることができるのだろうか。

われわれは以前、音楽とその他の分野に対して機械学習を応用したプロジェクトを手がけていたので、嗜好にもとづいたシステムを構築する経験と予備知識を持っていた。また近年開発された楽曲相互を関連付けるコラボレイティブ・フィルタリングツールが、ヒトの嗜好を全くわかっていない状態から完全に理解するにいたって、音楽産業を変えてしまったことを見てきた(Audioscrobblerの長文記事を参照)。

そして、楽曲フィルタリングツールが開発されたことで音楽愛好家たちの生活がより良くなり、その結果としていくつかのユニコーン企業を誕生させたのだった。

以上のような予備知識から、われわれは次のような命題を立てた。オンライン・ファッションはファッションの嗜好を理解するツールによって変えられるだろう。

なぜなら、ヒトのファッションに関する嗜好を理解していれば、適切なコンテンツと意義のある体験を提供することでヒトを喜ばせることができるからだ。さらに「服装」とは、ヒトが何を着て何をクローゼットにしまっているか、そしてひとりひとりのヒトがどんなファッション・スタイルを好むのかを理解し、学習することの助けとなる嗜好を知るためのアセットにほかならないと考えるようになった。

オンライン・ファッションは、ヒトの嗜好を理解するツールによって変えられる。なぜなら、もしファッションに関する嗜好を理解しているのなら、ヒトを喜ばせることができるからだ。「服装」とは、そうしたファッションの嗜好を理解する助けとなるアセットである。

こうして、われわれはファッションの嗜好を理解するツールを作ることを決意したのだった。そして、正確なデータセットとふたつのアセットを開発した。それらは(iOSとAndroidに対応したふたつの)モバイルアプリとデータプラットフォームである。

ファーストステップ:ヒトが自分たちのニーズを表現できるようなアプリを作る。

シンビアンOSの時代までさかのぼる以前のモバイル製品を作った経験から、ヒトにアプリを使わせることは簡単だが、ヒトをアプリに定着させるのは難しいということは知っていた。そのためユーザがアプリに定着したかどうかをできるだけ早く調べるために、短い繰り返しのプロセスを実行することに注力した。

われわれは極めて早期にひとつの鍵となる機能だけを実装したChicisimoのアーリーアルファ版をリリースした。

アーリーアルファ版はChicisimoとは違うアプリ名で、(Chicisimo開発会社本社があるスペインとは)違う国でリリースした。そのアプリは画像をアップロードすることもできなかった…しかし、そのアプリを使って繰り返し本物のデータを集め、多くの良質な入力を得ることができたのだ。そして、頃合いをみて本当のChicisimoをリリースし、アーリーアルファ版はAppストアから削除したのだった。

われわれは長い時間をかけてユーザがアプリに定着するにいたる本当のきっかけとは何なのか、そしてユーザとコンテンツをマッチさせるために必要となるアルゴリズムとは何であるのかを理解しようとした。

ユーザがアプリに定着するにいたるきっけかを調べるに際しては、以下のような3つの観点が助けとなった。

アプリリリースからのアプリ仕様率の推移を表したコホート分析グラフ

(a)ユーザの挙動をコホート分析して、アプリ定着のきっかけを特定した(コホート分析にはMixpanelを使用)。

コホート分析にあたってはユーザが実行したアクションだけではなく、ユーザが受け取った価値についても分析した。何がユーザのアクションで何がユーザが受け取った価値かを概念化するのは、Chicisimoのようなファッションアプリでは難しいものがあった。

※(原註)ニール・イヤール著 『Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール』で議論されている習慣を作るためのフレームワークがわれわれのモデル作成に役立った。

ユーザが受け取る価値が何でありどのように測定するかについて考え、その価値を測定し、そうした価値が発生しているイベントについてコホート分析を行ったことで、コホート分析をユーザが行ったアクションに対してだけではなくユーザが受け取った価値についても繰り返すことができるようになった。

きっかけではないもの(それらは主要な価値から分析を逸らしてしまうすべての雑音のようなもの)も定義し、それらを分析から排除し、様々な期間に関してコホート分析に関連したメトリクスを取得した。

調査に採用した期間にはファーストセッション、アプリリリース初日、アプリリリース1週目といったものがあった。こうした高度に特定されたメトリクスが、何度もコホート分析を実行することを可能としたのだ。

(b)ユーザがアプリに定着するきっかけが分かったら、オンボーディング・プロセス(新人研修におけるプロセスではなく、ユーザにアプリが定着するまでのプロセスという意味で用いられている)を見直した。

われわれは、オンボーディング・プロセスをユーザがアプリにサインアップしてから、ユーザがアプリから離脱する前にその価値をできるだけ早く見出すまでのプロセス、と定義した。このプロセスにおいて、発生が必要とされている出来事(その出来事の内容と起こる時期)も正確に決めた。

こうしたことは、次のように行われた。もしユーザがファーストセッションにおいて7分以内に何もしなかったら、そのユーザはもはやアプリを使わない。

そのような時は、ユーザの離脱を起こしたアプリ体験を変えなければならない。以上のユーザテストを様々なタイプのユーザに対して何度も行い、ユーザがアプリに定着するきっかけをどのように受け取るのかを観察したのだ。

(c)アプリを改善する方法の学び方を定義する。これまで説明してきたデータにもとづいたアプローチはユーザがアプリに定着するきっかけを見つける鍵ではあっても、ユーザに愛されるアプリを作るにはデータ以上のものが必要となる。

われわれのアプリの場合、第一にユーザは何を着るのかという問題こそがユーザがアプリに定着するにいたる重要ななキーと考えており、実際この問題を重視した。この問題について理解しようと懸命に取り組み、われわれの施策が何らかの問題解決の助けとなっているかどうかについても理解しようとした。

こうして、「ユーザは何を着るのか」という問題にわれわれなりに敬意を示したのだった。

この問題に取り組むなかで、私のモノ作りに関する考え方に関して、もっとも驚くべき見解のひとつに導かれた。その見解とは、以前には持っていなかった知識の集積にアクセスることこそが、モノ作りを顕著に進化させる、ということである。

こうしたモノ作りに関する画期的な学びを得る時には、その学びはいつも次のようなふたつの側面に焦点が当てられている。ひとつはヒトはどのようにして問題と関係しているか、そしてもうひとつはヒトはどのようにして作るモノと関係しているか、ということである(下の図の赤い矢印がこのことを示している)。

このふたつの関係において多くの微妙な問題が発生しており、こうした問題を理解することによってChicisimoを作ったのだ。ともかくモノ作りにおいては、往々にして分かっていないことにこそ重要なことがあることが分かったのだが、そうなると次のような疑問が常に出てくる。

それでは、分かっていないことからどのように学ぶことができるのか、それもすぐに?

このモデル図はわれわれが問題に取り組む時に助けとなった。他にも似たようなモデル図があるのを知っているが、以上の図が本記事に関わるものである。

私が女性の同僚のひとりと話していた時、彼女は私にこう言った。「ユーザが何を着るか、という問題はデータに関する問題ではない、ヒトに関するものだ」と。

この指摘はまさに真実であった。そして、この真実を聞いたその日からわれわれは女性たちが「何を着るのか」という問題にどのように関わり、解決しているかについて女性たちと会話することによって、Chicisimoの開発に関する大きな学びを得たのだ。女性たちと会話するにあたっては、いつくかの仕組みを使った。

その仕組みとは女性たちに直接会って話を聞いたり、事前に質問を用意することはしないで女性に問い合わせてからもらったEメールを読んだり、特定の話題に関して尋ねてフィードバックを得たのだった(現在では質問形式でユーザからデータを集めるツールTypeformを使っている。このツールは製品に関する洞察を得ることができる素晴らしいものだ)。

以上のような学びを実行して、われわれはチーム内で話し合ったり、学んだことを明瞭化しようともした。アプリやユーザ以外のもので参照できるものを探した。

Chicisimoとは違うアプリのユーザとも話し、インスピレーションを刺激する多くのアプリを試し、われわれのモノ作りの助けとなるような記事を読み直したりした。

こうした一連のプロセスがアプリを改善するための学びを可能とし、学んだことによってアプリ作りに必要な技術も開発し、ついにはアプリを作ったのだ。

Chicisimoは幸運なことにアップルのAppストアチームに何時かの時点で気づいてもらい、アプリデーにおいて世界中に向けてフィーチャーされた(アップルのAppストアチームによるChicisimoの解説は、ここを参照)。

2017年12月31日、ChicisimoはアップルのAppストアチームがセレクトしたアプリのひとつに選ばれた。アプリの頭文字の「C」をあしらったピンクのアイコンがChicisimoである。下の図の左側を参照。

こうしたフィーチャーのおかげでChicisimoは957,437のユニークユーザに閲覧され、閲覧回数は130万回に達した。われわれの経験では、アプリをフィーチャーするとファーストインプレッションからアプリインストールに至るまでのコンバージョン率は0.5%である(通常、ファーストインプレッション→アプリ解説ページ→インストールと進む)。

ASO3(アプリストア最適化:App Store Optimizationのこと)を実施した結果、コンバージョン率は3%になり、リファラからの流入は45%を占めた。

後編に続く….

垂直的機械学習のアプローチを使って、いかにしてゼロから400百万の女性が利用するまでにファッションアプリを成長させたのか(後編)

原文:https://hackernoon.com/how-we-grew-from-0-to-4-million-women-on-our-fashion-app-with-a-vertical-machine-learning-approach-f8b7fc0a89d7
著者:Gabriel Aldamiz-echevarria
訳者:吉本幸記 編集: おざけん


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