「AIを制すものが未来を制する」孫正義が描くAI群戦略【SoftBank World 2018 基調講演レポート】

おざけんです。ザ・プリンス パークタワー東京で開催されているSoftBank World 2018(ソフトバンクワールド2018)にて行われた孫正義氏の基調講演の内容をお伝えします。

SoftBank World 2018(ソフトバンクワールド2018)

新たなビッグバンが起きる

基調講演はビッグバンの話題ではじまりました。135億年前のビッグバンで宇宙が誕生し、今でもなお宇宙は拡がり続けています。

シンギュラリティはもう一つのシンギュラリティです。一言で言うと、人工知能の叡智が人間の叡智を超えます。人工知能=超知性が生まれることで、さらゆる産業が再定義されるようになります。まさにシンギュラリティは人類史上最大の革命です。

人工知能の発展はクラウドとエッジの両輪が大事

孫正義氏はarmを買収しました。しかし、世間ではなぜarmを買ったのかが正しく理解されていませんでした。ソフトバンクは通信の会社だとまだ多くの人に思われていますが、それはソフトバンクの歴史の3分の1程度でしかありません。

今までソフトバンクが取り組んできた通信事業はあくまでも情報革命の中の中核事業でした。通信もAIのための通信です。情報革命はAI革命です。

armのチップは欠かせないものになります。2017年に15億台のスマートフォンが売れました。今30〜40億台のスマートフォンが世界中で使われています。そしてその全て、100.0%のスマートフォン内に存在しているのがarmのチップです。しかも末端部分ではなく、エンジンに相当する中心部分で使われているのです。

だからこそarmのチップの買収には意味があると思っています。armのチップは今となってはスマートフォンだけでなく、工場のセンサーなどあらゆるものに組み込まれています。2017年までで累計1000億個を超えました。

このチップの数が2030年には1兆個になると予想しています。1兆個のチップが地球上のあらゆるところにばらまかれ、それがインターネットでつながる時代になります。

このチップこそ、AIのエッジ部分として機能し始めます。AIの能力を発揮しやすいようにしていきます。小さなIoTデバイスにまでこれからAIの機能が入っていきます。これからは監視カメラやドローン、自動運転などあらゆる物の中に、armのチップが入るようになります。

armはチップとそれぞれの機械学習フレームワークを結びつけるソフトウェアライブラリも開発しました。デバイス側のほとんどに組み込まれるarmのチップが共通項になっていくと思っています。

ソフトバンクが必然ととらえるAIがある未来

2030年までに1つのチップあたりの計算能力が200倍になると予想しています。AIはクラウドとエッジの二次曲線でさらに進化していきます。

未来がわからないからAIについて考えるのをやめるのではなく、間違いなくAIがその能力を高めていき、さらにはエッジ側のデバイスが1兆個出荷されるということは重要な事実です。

すべての産業を再定義するAI

孫正義

これからすべての産業が再定義されます。
オクスフォード大学による予測では50年以内にAIがあらゆる面で人間を上回ると言われています。

大事な議論はAIが人間を上回る時代に向かっているということです。一度AIに抜かれたら二度と追いつけません。人間の能力の1万倍、100万倍の能力で分析や推論が行われるようになります。

ほとんどの野球やサッカーのプレーヤーはボールが来てから、追いかけます。しかし名プレーヤーはボールが動き出す前に相手の構えや配置を見て、推測してボールが動く前に走り始めます。これが本当の名プレーヤーです。予測する能力が大事なんです。

今後は天気などのデータからヒートマップを作成して、需要予測をしてタクシーを配車したり、AIで分析して人よりも早く正確な予測判断ができるようになります。

AIの技術競争は日本よりも遥かにアメリカや中国がトップを走っています。中国ではレベル4のトラック走行テストが終了し、自動運転バスや無人コンビニが導入されています。

AIの進化はエッジとクラウドで同時に能力が進化しながらあらゆる産業を再定義していきます。そうするとあらゆる産業がAIに依存するようになります。AIを制したものが未来を制するようになるのです。

未来のことはわからないのではなく、当然の事のように起きる。起きる未来を見据えて備えていくことが大切です。

会場で「自分の会社がAIに積極的に取り組んでいる」「人材が揃っている」という方はいらっしゃいますか?

(手はあがらない)

10年後に同じ質問をしたらほとんどの人が手を挙げると思います。10年前にスマーフォンを活用していますか?と聞いたら、手を挙げる人は少ないでしょう。でも今ほどんどの人のポケットにスマートフォンがあると思います。

AIはこれから我々の生活になくてはならないものになり、会社で当然のように取り組み、エンジニアはAIを中心に取り組むようになります。それがわかっているなら1日でも早くやったものが勝つんです。

わかっているならなぜ取り組まないんですか!?全力でAIに取り組まないのはなぜですか!?

取り組んでいないということは甘いということです。自分の仕事を真剣にやっていないことだと思います。

孫正義
ソフトバンクファミリーとして紹介された機械学習の構築プロセスの自動化を進める「Petuum」のファウンダーEric Xing博士

ソフトバンクファミリーとして紹介された機械学習の構築プロセスの自動化を進める「Petuum」のファウンダーEric Xing博士

それぞれの産業へのAIの取り組みとパートナーの紹介

製造業

ソフトバンクはロボットの会社の印象が少ないかもしれませんが、AIを搭載したスマートロボットにしか興味が無いからです。自らがAIの力を持って自動的に判断して自動的に動くロボットに興味があります。

今までの工業は人間がコントロールする時間でしか工場が動きませんでした。しかし、これからは24時間体制で工場が動き、人間の操作による不良在庫やミスは発生しません。低コストでミスのない製造ができます。

モビリティ

AIで事前に需要を予測して適切なタイミングで配車する技術が進んでいます。日本ではライドシェアが法律で禁止されています。馬鹿な国だと思います。未来を否定しています。

需要を予測して供給とマッチすることで混雑が減って事故が減ります。それが世界中で進んでいます。

世界最大の交通プラットフォーム「DiDi」社長のJean Liu氏 

世界最大の交通プラットフォーム「DiDi」社長のJean Liu氏 

6月28日にはソフトバンクとのジョイントベンチャー「DiDI Mobility Japan」が設立されています。DiDiは基調講演後に記者会見を行い、スマートフォンを使ったタクシー配車サービスをソフトバンクとともに今秋から提供すると発表しました。

自動運転システムの開発をする「Cruise Automation」のダン・アマン社長

自動運転システムの開発をする「Cruise Automation」のダン・アマン社長

金融

あらゆる記号をトランザクションする金融はAIに適しています。日本ではおサイフケータイを世界に先駆けて開発していましたが今では中国やインドに抜かされています。

AIを金融で活用すれば即時審査で低リスクにカスタマイズされた金融サービスを利用できるようになります。データが鍵です。

インド決済大手のPaytmのファウンダー兼CEO Vijay Shekhar Sharma 氏

インド決済大手のPaytmのファウンダー兼CEO Vijay Shekhar Sharma 氏

中国におけるモバイル損保「Zhongan」のCOO Wayne Xu氏

中国におけるモバイル損保「Zhongan」のCOO Wayne Xu氏

医療

膨大な情報が詰まっているDNAを一人ひとり医師が診断することは不可能です。また一人ひとりにあった薬を創ってくれたり、これは人間業では難しいことです。

AIだからこそ一人ひとりに合った異なる薬をDNAで判断しながらピンポイントで提供することができるようになります。

がんの早期発見を目指すスタートアップGuardant Healthにソフトバンクは出資をしています。

中国平安保険の医療・健康サービスを手掛ける子会社「平安健康醫療科技有限公司」

中国平安保険の医療・健康サービスを手掛ける子会社「平安健康醫療科技有限公司」

他にも地図作成なども

位置情報や地図検索サービスを提供する「Mapbox」

位置情報や地図検索サービスを提供する「Mapbox」

ソフトバンクのAI群戦略

人々にとって良いことなのに薬局やタクシーなどの従来の形を守ろうとして未来を放棄している国に未来はありません。

法律で禁止してしまって未来が近寄れないようにしています。中国ではオンラインで処方箋を発行できて1時間以内に薬が届きます。

AIが家族の病歴を知っているから的確にアドバイスしてくれます。必要なら病院のベッドの確保などをオンラインでしてくれます。こんなサービスは日本にはありません。

「AIだからできるんです」

データはそれぞれの企業、サービスでどんどん集まってきます。いろいろなデータがあって、それを保管するのは大変です。自分のデータのマネジメントのために自分専用のSEが必要になる。それをまとめてくれるのがCohesityです。

ハイパーコンバージド型セカンダリストレージシステムを提供する「Cohesity」

ハイパーコンバージド型セカンダリストレージシステムを提供する「Cohesity」

ソフトバンクは情報革命をすると創業以来言ってきました。PCからモバイルインターネットになり、AIに中心が変わろうとしています。ソフトバンクは通信会社から投資会社に変わったと言う人がいます。確かに投資をしていることは事実です。しかしそれだけではソフトバンクの実態をつかめません。

ソフトバンクは今までインターネットの会社に投資してきましたが、ここ1年間でAIのトップサービスの会社をファミリーに抱え筆頭株主になりました。

AIによって判断のスピードが速くなるんです。コストが安くなり、安全になります。詳細に物事が見れるようになります。次に何が起きるのかを正確に推論できるようになります。

推論は人間に与えられた特権でした。しかし、もはやコンピュータは表計算だけでなく次に何が起きるのかの推論をできるようになっています。

インターネットは新しいメディアとして古いメディアが今まで提供していた広告収入、あるいはサブスクリプションの形を奪っていきました。それがインターネットの1番のメインのビジネスモデルでした。

これからは最先端のテクノロジーの中心だったインターネットがAIに移ると思います。今後は新しくすべての産業をもう一度再定義することにつながります。ありとあらゆる分野の産業がAIで再定義されることになります。

これからはAI群戦略

この1年間くらい、登壇の機会でソフトバンクの群戦略について言ってきましたが、これからはAI群戦略だと言えます。

ソフトバンクのAI群戦略

ソフトバンクは各産業のトップカンパニーの筆頭株主になっていきます。産業をAIで再定義し始めている企業は10年後には今のGoogleやAmazonに匹敵する会社になっていくと思います。

私はインターネットの黎明期にはお金がなくてここまでできませんでした。ファミリーを構成できませんでした。

今、AIのビッグバンが起きていくなかでビジョンファンドでAI群戦略の構えを作りました。これからはそれぞれの産業のキラーカンパニーが協力して、ファミリー同士が協力しあって産業を再定義していく。これをやりたかったんです、

ソフトバンクは今AIにまっしぐらに突き進んでいます。

AIを制するものが未来を制す

AIを制するものが未来を制します。


社会のルールや法律、AIが社会に入ってこれないようにしている日本の政府は未来を否定しています。

国がそれを難しくしているだけでなく、自分の会社の中で、自分の頭の中でAIの未来をまだ十分に想像しきれていなくて、まだ人間がやったほうが安心と思っているのであれば、それは未来を否定していることになります。

インターネットを馬鹿にした当時の大人と同じです。間違いなくすべての人のライフスタイルを変えていくでしょう。人々が問題としてることをAIは解決してくれます。

事故のない世界、病気を減らしてくれる世界、安心してすばやく正確に物事を処理してくれる。そうすれば人々の幸せが増えるはずです。
AIはお金儲けのためでなく幸せのためにあります。

ソフトバンクは人類を最も進化させる企業グループになっていきます。

おざけん

人工知能・AI専門メディア AINOWディレクター ┃ 趣味はカメラ撮影。
┃ Twitterでも発信しています。@ozaken_AI ┃ AINOWのTwitterもぜひ@Ainow_ai┃
出演: 日経CNBC「日経カレッジ・ラボ」日本テレビ 「ZIP!」など┃

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