カーツワイルの「GNR」に「I」(情報科学・情報工学)が含まれていない理由を考える(2)

(前回の記事)

カーツワイルの「GNR」に「I」(情報科学・情報工学)が含まれていない理由を考える(1)

前回の記事の続きです。

GNR」論には、なぜ情報工学の「I」が含まれていないのか?

ところで、ここで一歩立ち止まって考えてみると、この「GNR」には、なぜか、「情報技術」(情報科学、情報工学, Information Technoogy)の「I」の字が、含まれていません。

ここで、シンギュラリティ」論の立論構成が、「ハードウエア技術」と「ソフトウェア技術」という2つの「コンピューティング」技術(=「情報テクノロジー」)によって、人間と同等か、それ以上に優れた知性を持つ(知的)情報処理を行うことができる「コンピュータ」が(技術的に)生み出されるというストーリー(シナリオ)を骨組みとするものであったことを思い出すと、GNR」に、「情報技術」(Information Technoogy)の「I」の字が含まれていないことは、不思議に思われるのではないでしょうか。

「シンギュラリティ」論の近未来シナリオを実現させる上で骨組みとなる技術(テクノロジー)は、Information Technology [I] であると、考えることができるからです。

 2つのコンピューティング技術

  1. 演算実行基盤(ハードウェア)としてのコンピューティング技術
  2. 人間の知的思考の動作メカニズム(動作原理)を「機能的」に模倣するソフトウェア(アルゴリズム)としてのコンピューティング技術 

特に、「ソフトウェア」(アルゴリズム)としての「コンピューティング技術」である「人工知能(A.I.)技術は、今日、産業界の競争地図から、政治・外交の世界における国家どうしの力関係まで、社会の隅から隅まで、これまでの既成の構造を塗り替えつつある、21世紀の基幹技術であると、ひろく受け止められています。

それにもかかわらず、2005年に提案した「GNR」論には、Information Technologyの「I」が含まれていません。

このことは、当のカーツワイル氏本人が、「情報技術」(I)の業界で、高校生の時から目覚ましいキャリアを築いてきた人物であることを踏まえると、さらに不思議に思えます。

カーツワイル氏は、小学生低学年のころからプログラミングを始めた人物です。そして、高校生の時に、自作したシンセサイザーをテレビ番組で発表すると(当時は、まだ1960年代)、当時の(米国)大統領であったリンドン・ジョンソン米大統領から、ホワイト・ハウスで技術メダルを授与されたことで、社会デビューを果たした「コンピュータ・エンジニア」です。

そして、コンピュータ着技術によって開発した数々の製品とサービスを商用展開するために、複数の企業を立ち上げた起業家でもあります。

このような経歴を持つ同氏は、まさに、今日、「情報産業」(IT業界)と呼ばれている「エレクトロニクス業界」(1980年代あたりに使われた言い回し)で、発明家・起業家として、地歩を築き上げてきたのです。

R」は、人工知能搭載ロボットを作る技術として、「I」を含んで入るが・・・

『シンギュラリティは近い』を読むと、情報技術(Information Technology)とA.I.(Artificial Intelligence)は、たしかに、「R」の1文字を通じて、「GNR」の3文字の中に、その位置を占めていることは、分かります。

同書の説明では、「R」を頭文字にもつ「ロボティクス」(Robotics)技術は、人工知能を搭載して自律的に稼働するロボットを開発する技術として定義されており、「人工知能」を含むためです。

しかし、「GNR」論が提案された2005年は、まだiPhoneこそ発売されてはいなかったものの(iPhoneの発売は、2007年)、2001年に発売されたiPodは、IT業界のヒット商品となってから、すでに4年が経過しており、A.I.(人工知能)はまだ一般には普及していなかったものの、「IT革命」という言葉は、SONYのAIBOが1999年に発売されて話題となったこともあり、すでに世の中を席捲していました。「IT革命」による「ニュー・(デジタル)エコノミー論」などが、テレビや雑誌で特集番組や特集号が編成されて、話題になっていた時期でもあります。

そう考えると、「R」という1文字を通じてではなく、「GNR」の3文字と同格の位置づけで、もう1文字、「I」の字を加えられなかったことが、不思議に感じられてきます。

なぜ、カーツワイル氏は、「GNR」に「I」の字を加えなかったのでしょうか?

カーツワイル氏とは?

技術が社会をどう変えるのかという考察に、長年取り組んできた人物である

ここで、カーツワイル氏については、すでに簡単に言及しましたが、もう少し、説明してみます。

カーツワイル氏は、未来学者・著述家としては、The Age of Intelligent Machines(1992年)や Age of Spiritual Machines (1999年)などの著書で知られています。

これらの著書を通じて、同氏は、20世紀後半のエレクトロニクス技術の進歩の速度は、年を追うごとに「指数関数的」(exponential)に早まっているという「収穫加速の法則」を提唱しました。

そして、2005年に米国で刊行した『シンギュラリティは近い』(”Singularity is Near”。邦訳書の標題は、『ポスト・ヒューマン誕生』)の中では、エレクトロニクス技術がこれまでの「加速度」を維持したまま進歩していくと、21世紀の中頃(2045年頃)には、コンピュータ・プログラムである人工知能が、「人間を超える知力(知性)」を獲得し、それ以後、人類は、生物学的な知力の限界を技術によって超えるといういまだかつて、人類が経験したことのない未知の時代に突入するという「技術的特異点」(Singularity, シンギュラリティ)を唱えました。

この「シンギュラリティ」論は、人工知能の「威力」に社会的な関心が寄せられているこの15年、人工知能がによって社会が大きく様変わりしていくという将来展望を提示している筆頭人物として、社会から注目を集め続けています。

そのカーツワイル氏は、すでに述べたように、高校生の頃に開発した「楽曲を生成するコンピュータ・プログラム」を、テレビ番組に出演して発表しています。そして、この作品が評価されて、当時のリンドン・ジョンソン大統領からホワイト・ハウスに招かれて技術メダルを授与されています。

その後、さらに複数の技術賞に輝いた後、1999年には、ビル・クリントン大統領(当時)から「アメリカ国家技術賞」(National medal of technology, 1999年)を授与されています。

このように、カーツワイル氏自身が、発明家・起業家として、「アイデア」によって「世界を変える」(井上 健 監訳 『ポスト・ヒューマン誕生』プロローグ)ことを長年、人生のテーマとして追求し、その「テーマ」の中で、数多くの実績を生み出し続けてきたのです。まさに、同氏自身が、当事者として、テクノロジーの進歩を推進することに貢献してきたのです。

「GNR」論・「シンギュラリティ」論を唱えた動機

「私は特異点論者(シンギュラリタリアン)だ」と題した節の冒頭部分(490ぺージ目)で、カーツワイル氏は次のように述懐しています。

しかしわたしは、通常の信仰に代わるものを求めてこの見解にたどりついたわけではない。

テクノロ ジーの流れを理解したいと思った動機はもっと実際的なものだった。すなわち、自分の発明が可能となる時機を計りたかったからであり、また、テクノロジー系企業を始めるにあたって最善の戦略を定めたかったからだ。

それがやがて、こうしたテクノロジーのモデリングが独り歩きを始め、わたしは技術の 進化を系統立てて理解するに至った。

そこから、いわば自然な流れとして、それらの重大な変化が社会的、文化的制度やわたし自身の人生に与える影響について考えるようになった。

したがって、特異点論者たらんとすることは、信仰の問題なのではなく理解の問題なのである。

だが、その1方で、本書で論 じてきた科学的動向を熟考することにより、伝統的宗教が取り組もうとしてきた諸問題-たとえば 道徳·不道徳の本質、人生の目的、宇宙における知性といったにたいする新しい見方が生まれることは間違いない。

そして、この直前の489ぺージ目では自身の足跡を以下のように振り返っています。

わたしは数十年にわたって、そうした考察を続けてきた。

言うまでもなく、それは決して答えの得ら れないプロセスである。

わたしが人間の思考とコンピューテイング技術の関係を考えだしたのは、まだ ティーンエージャーだった60年代のことだった。

70年代に入ると、テクノロジーの加速について研究を始め、80年代の終わりにそのテーマで最初の本を書いた。

つまりわたしはその間ずっと 行中の、人間の思考とコンピューテイング技術との重なり合う変化が社会-そしてわたし自身にもたらす衝撃をじっくりと観察してきたのだ。

 

GNR」には、すでに「I」の意味が暗黙的に内在している

カーツワイル氏が「GNR」論を提唱した前述の著書(邦訳本は、『ポスト・ヒューマン誕生』NHK出版)を読むと、G・N・Rの頭文字で(それぞれ)始まる「3つの技術」は、それぞれ、以下を「対象」として取り扱う技術(テクノロジー)として捉えられています。

小野寺が考えるGNR技術の「対象」についての解釈

  • G」の対象・・・世界を変える「行動主体」としての「人体」と「動物」の体
  • N」の対象・・・地球環境と宇宙環境をいまある状態にしている「物質」
  • R」の対象・・・人間以外の「新たな行為主体」として登場するAI搭載型自律稼働ロボットの頭脳を含む「体」

その上で、カーツワイル氏は、上記の3つの技術が対象として取り扱う客体は、どれも、「情報のパターン」をその本質とする実体であるという立場を、同書の「プロローグ」で、すでに明らかにしています。

以下、「プロローグ」の結びの部分を引用します。

詩人のミュリエル・ルーカイザーは、「宇宙は、原子ではなく物語でできている」と語った。第7章で、わたしは自分のことを「パターン主義者」と論じるつもりだ。情報のパターンこそが現実の根本だと考える人のことをこう言う。
たとえば、わたしの脳や身体を構成している粒子は数週間で置き換えられていく。それでも、これらの粒子が形作っているパターンには継続性がある。物語は、情報でできた意味のあるパターンと見なすことができる。
だから、ミュリエル・ルーカイザーの警句も、そういう観点から解釈することが可能だ。

このように、カーツワイル氏は、「宇宙」も、人間の「脳」も「身体」も、「情報のパターン」を「現実の根本」にして「形作」られている、という見方を提示しています。

GNRという3文字の中に、すでに、「情報パターン」を解読し、書き換える技術という意味での「I」(情報技術)の「本質」が込められている

小野寺の解釈では、先ほど掲載した「GNR技術の『対象』」である「人体」と「動物」の体と、宇宙を構成する「物質」と、AI搭載型自律稼働ロボットの頭脳を含む「体」を、「情報のパターン」として捉える見方は、具体的には、以下の捉え方をしているのだろうと受けとめています。

「情報パターン」としての「GNR」の客体  

  •  [G] DNAにおける塩基「A」・「G」・「T」・「C」の配列構造(=AGTCの「並びパターン」)
  •  [N] 物質を構成している原子・分子の立体配列パターン(原子・分子の「並びパターン」)
  •  [R] AIロボットの頭脳で処理される「特徴表現ベクトル」における数値の「並びパターン」

これら3つの「並びパターン」=「情報パターン」を、解読し、さらに、その「パターン」の並びを、意思をもって書き換えていく技術が、「情報解析技術」であり、「情報編集(・改変)技術」としての、遺伝解析技術・遺伝子編集技術(遺伝子組み換え技術)と「ナノ・テクノロジー」と「人工知能技術」であるというのが、小野寺の解釈です。

「G」について、『ポスト・ヒューマン誕生』の326ページ目は、以下のように言及しています。(以下に引用。但し、太字は小野寺による)

モリー2017 わたしたちの本質は情報パターンだとわかったけれども、それでもまだなにか物理的な形で存在する必要があったわ。

(中略)

モリー2017 生物をシミュレーションしたものが本物の生物とまったく区別がつかないのなら、物理的な存在にこだわらなくていいでしょう?

(中略)

モリー2017 (中略)今もあなたは粒子レベルでは絶えず変化しているのよ。変わらないのは、情報のパターンだけ。

モリー2007 でも、2107年には自分の情報パターンもすぐに変えられるんでしょう。今のわたしには、それはできないのよ。

420ページでは、より踏み込んで以下のように表現されています。

生命というソフトウェア-個々の「精神のファイル」-も一緒に消える。 しかし、われわれが脳(および神経系、内分泌系、その他精神ファイルを構成する組織)と呼ぶパターンに収められた数兆バイトもの情報

 

また、「N」については、『ポスト・ヒューマン誕生』の331ページ目の一文が、以下のように言及しています。(以下に引用。但し、太字は小野寺による)

ナノテクノロジー(情報から物理的な製品を作り出す分子製造アセンブラー

カーツワイル氏はこのように、GNRの3つの技術は、すべて、「情報パターン=記号の並び順」をその本質に持つ客体(「生命体の脳と身体・体」、「物質」、「DNA」)を解析・解読して、さらに、解読した(既存の)並びパターンを、意思を持って組み替えて、書き換えていく技術という意味合いでは、本質的に共通する技術であると、理解しているように思われます。

同氏は、「G」と「N」と「R」の3つの技術、自然界がうみだした既存の「情報の配列構造・配列パターン」を操作し、改変することで、これまで自然界が生み出した生命体の体や物質としては存在しなかった、新しい「肉体」なり「物質」を組成し、作り出していく技術として、捉えているのです。

G」・・・A・G・T・Cの塩基「配列」のパターンを解析して、意味(=どのようなたんぱく質を組成するのか)を読み取ったり、意味の解読が完了した塩基配列「パターン」を組み変え(書き換え)て、これまで自然界に存在しなかった動植物を生み出すのが、遺伝子解析・編集技術です。

N」・・・自然界に存在する物質の分子構造を、分子レベル・原子レベルで構造解析したり、(原子レベルの物質の世界で働く物理法則を理解することで)自然界にある物質の原子の並び順を改変することで、これまで自然界になかった新しい物質を生み出すのが、ナノ・テクノロジーです。

なお、「R」については、AIを搭載した自律稼動ロボットは、これまで自然界に存在しなかった客体であるため、自然界には、「書き換える」べき「既存の『並びパターン』」は存在しないのではないか、という指摘を受けるかもしれません。

「R」に関しては、人工知能搭載ロボットが、ある時点で生み出した「特徴表現ベクトル」が、同じ人工知能ロボットによって、リアルタイムに逐次、上書き更新されて、書き換えられていく、という意味であると、小野寺は解釈しています。

人工知能を搭載した自律稼働型ロボットは、「周囲の状況」についての認識内容や、「過去に行った行動内容の効果・価値」と「今後、行うべき行動」についての認識内容を、随時、「特徴表現ベクトル」(=「数値ベクトル」というデータ形式をとる)として自分の計算メモリの中に生み出します。

そして、そのロボットが、「周囲の状況」の「変化」を認識したり、新たな行動を積み上げていくたびに、これらの「特徴表現ベクトル」は、当のロボットによって、書き換えられていくのです。

ロボットは、稼働中に、随時、これらの「特徴表現ベクトル」(=数値の「並びパターン」)を生み出しては、書き換えていきますので、行っていることは、まさに、「情報パターン」(=「数値の並びパターン」=「特徴表現ベクトル」)生成と書き換えなのです。

「記号の並びパターン」=「情報パターン」(遺伝配列・原子の3次元配列・特徴情報ベクトル)に宿る「意味」を生み出し、解読し、書き換える「N・G・R」テクノロジーは、すべて、「I」(Information Technology)である

以上、見てきたように、「GNR」という標語を構成する3文字のG・N・Rの中には、「『記号』の並びパターン」としての「情報パターン」が持つ意味内容を、それぞれの「情報解読技術」(=遺伝子解析技術、ナノ・テクノロジー、機械学習や深層学習その他の人工知能モデル)を用いて、解析し、解読し、理解(了解・把握)し、さらに、意味を理解し終えた「『記号』の配列順序」を「書き換える」という主題が、含まれているとみることができます。

そして、この、「情報パターン」が持つ意味内容を、なんらかの「情報解読技術」を用いて、解析・解読することで、その記号列が担う「意味」(=「情報内容」)を了解・把握したり、意味を理解し終えた「『記号』の配列順序」を「書き換える」という事柄は、I」(情報処理技術)の主題の本質です。

(なお、ここで、その「並び方」が意味ある「情報」を担う「記号」とは、DNAを構成するA・T・G・Cなどの「塩基」や、物質を構成する「原子」や「素粒子」や、特徴表現ベクトルを構成する「数値」のことです)が含まれています。

このように、GNRという概念の中にはすでに、「I」(情報処理技術)の主題の本質が含まれているのではないかというのが、この記事の受けとめ方です。

この解釈がカーツワイル氏の意図したことと合致するならば、「GNR」に、「I」の字を、ことさらあえてInformationの「I」を頭文字として刻み込む必要性を、カーツワイル氏は感じなかったのではないでしょうか。

これが、私の(現時点での)受け止め方です。

SingularityHubの記事における定義

この「G・N・R」の定義については、カーツワイル氏が発起人の一人として立ち上げたSingularityHubの公式ウェブページに、2016年4月19日付けで掲載された(執筆者はカーツワイル氏とは異なる人物である)ある記事Ray Kurzweil Predicts Three Technologies Will Define Our Future の中では、次の文言で示されています。

  • The genetics revolution will allow us to reprogram our own biology.
  • The nanotechnology revolution will allow us to manipulate matter at the molecular and atomic scale.
  • The robotics revolution will allow us to create a greater than human non-biological intelligence.

この記事を独自に日本語に翻訳したExponential Japanというウェブページの記事「カーツワイルの近未来予測(GNR)」では、上記の「GNR」を定義した文は、次のような言い回しで、日本語に訳出されています。

カーツワイルは、ジェネティクス(G)、ナノテクノロジー(N)、ロボティクス(R)、つまりG・N・R3つを我々の生活を劇的に変えていく革命を率いるものとして定義します。

  • ジェネティクスにより、人間自体をプログラミングできるようになります。
  • ナノテクノロジーにより、分子及び原子的スケールで物質を扱うことができるようになります。
  • ロボティクスにより、人類より優れた知能をつくることができるようになります。

上記のように定義されたGNR」のなかに、「設計情報の解読と書き換え」という主題を見出すのが、この連載記事の立場です。

[ 小野寺による「GNR」技術の解釈 ]

  • [Genetics] 私たち人間を含む生命体(動植物)の「体」の「設計情報」を「解読」し、「書き換え」る技術
  • [Nano-technology] 地球環境を含む宇宙の環境を構成している「物質」の「組成情報を解読」し、ナノ・スケールにおける原子・分子間の時空で働く力学を理解することで、原子・分子レベルで、物質の組成を「組み換え」る技術
  • [Robotics] 人工知能搭載型のロボットが、周囲の環境の状態を、自己の行動目標に引き寄せて、(理想状態と現状との差分として認識される)「状況認識」を、「特徴ベクトル」というデータ形式認識する(「特徴ベクトル」という「数値の配列パターン」の生成)。そして、現状を「目標状態」に近づけるために、選択した行動を実行した結果、状況がどう変わったのかを改めて「状況認識」する(状況認識=「特徴ベクトル」の情報更新)、これら、「数値の並びパターン」(=「特徴ベクトル」)の生成と書き換え(更新)を行う技術

上記の定義を述べた文中、「設計情報」という単語は、先述した「情報パターン」(=「記号」の出現(並び)のパターン)と同義の言葉として、用いています。

なお、小野寺の上記の解釈と同内容の捉え方が、すでに「Hatena Blog シンギュラリティ教徒への論駁の書」の2007年11月12日付けの記事である「GNR革命: 生命、物質、情報 第6章」でも提出されています

ここでは遺伝子工学は生命を、ナノテクノロジーは物質そのものを情報テクノロジーの配下に置き、指数関数的な成長を発生させようとする試みであると位置付けることができるでしょう。

上の一文では、G」と「N」が、「情報テクノロジー」(I)の『配下に置』かれている、という『位置づけ』がなされています。

この「位置づけ」方は、カーツワイルが提示したGNR」というテクノロジーの概念のなかに、I」(情報処理技術)の本質である「(設計情報の)解読と編集」という「主題」が、すでに織り込まれているという小野寺の見方と通じるものがあると、受け止めています。

3回目の記事に続く。

カーツワイルの「GNR」に「I」(情報科学・情報工学)が含まれていない理由を考える(3)

小野寺信

敗戦の前年、長野県に3男として生を受ける。
旧制一高の学生であった兄二人が、ロス五輪のバロン西に憧れ、馬術に熱を上げていたのを見て乗馬教練場に通い始めるも、落馬して腰を痛め、爾来、書斎と学校・職場を行き来する生活習慣に転じる。

同級生がデカンショ(デカルト・カント・ショーペンハウエル)に没頭する中、ひとり、同時代のベルクソン、フッセル、ハイデッゲルなどの「生の哲学」と「現象学」・「超越論的存在論」に傾倒する。

1930年代の「物」論考、「哲学への寄与」論考など、いわゆるハイデッゲルの中期思想と、西田幾多郎ら京都帝大の「場所の論理学」の思想の架橋を志すも、九鬼周造の「偶然性の哲学」の文章に触れて、己の非才を悟り、断念。大学は文科に進学するも、計算機科学と知能の計算論的再現に強く惹かれ、日米関係の職務に奉職する傍ら、理科に進学した兄達の人脈を頼り、今日でいう人工知能の研究に、在野の人間として、思索に励む日々を送る。

定年退職後のいま、米国IBMやGoogleを見上げて戦意喪失の虚脱状態にある若いAI産業人や学部生・大学院生に対して、「人間とは異なる独自の言語」を紡ぎ出すAI Agentにをシミュレーションによって生み出す「言語創発」研究の領域において、カオス理論と身体性に立脚した、「米国の後追い」では「ない」我が国自身の「AI研究アプローチ」実在することを、事実として知らせるための連載を「言論ドットコム」誌に連載中。

「言語創発」研究以外のAI領域についても、研究の方向性が、いま、本質論としてどちらの方角にむいたベクトルとして発展しているのか、本質を掘り下げた議論を喚起するきっかけとなる所論を書いてみたい思いに駆られ、Ainow誌上での連載の筆をとった次第です。

尊敬する日本人は、同名の小野寺 信(元ストックホルム駐在武官)、高木 惣吉 (海軍省調査課長)、堀 栄三(陸軍情報参謀・陸自幹部自衛官)。

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