AIに助けられた科学を用いて、余震の発生場所を予測する

著者のPhoebe DeVries氏は、アメリカ・ハーバード大学のポスト-ドクター・フェローで地震について研究しています。この記事では、同氏とGoogleに所属する機械学習のエキスパートが協力して、余震の発生場所を予測するモデルを作ったことについて解説されています。

余震については発生する時期と発生規模に関する理解は進んでいるものも、発生場所を予測することは困難とされてきました。こうしたなか、同氏とGoogleによる共同研究チームは、サウジアラビアにあるアブデュラ王立工科大学で地震について研究している Paul Martin Mai教授が公開している世界で発生した重要な地震に関するデータベースを活用して、余震発生場所に関する予測モデルを作ることを試みました。具体的には、件のデータベースを学習データとして、AIに機械学習させることで予測モデルを算出したのです。このようにして作られた余震発生場所に関する予測モデルはまだ高精度の予測を実現できていませんが、将来的には地震発生時の避難計画に利用されることが考えられています。ちなみに、今回の研究に活用された地震データベースには、1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震に関するデータも収録されています。

近年、地震予知にAIを活用する研究は盛んに行われており、例えば2017年3月にはイギリス・ケンブリッジ大学の研究チームは、地震発生前に生じる音をAIに機械学習させて地震予測モデルを作ったことを発表しています。こうした研究が積み重なって、そう遠くない将来において地震や余震の発生を高精度に予測するAIが誕生するかも知れません。

Phoebe DeVries
ハーバード大学・ポスト-ドクター・フェロー

2018年8月30日


ハリケーンや洪水、さらには火山噴火や地震のように、地球上では突発的かつ劇的な活動が継続して起こっています。なかでも地震とそれに続いておこる津波は、直近10年間における大きな破壊の原因となっていました。この記事を書いているあいだにも、ニューカレドニア、南カリフォルニア、フィジーで地震があり、こうした地名は地震が起きた場所のほんの一部に過ぎません。

地震は、連続して起こることを典型としています。最初に起こる「本震」(本震がたいてい地震報道の見出しとなる)の後には、しばしば一連の「余震」が起こります。たいていの余震は本震より小さい揺れであるものも、場合によっては地震から復旧しようとする努力に著しく水を差すこともあります。こうした余震の規模と発生時期については、すでに確立された経験的な法則によって解明され説明することができます※。しかし、余震が発生する場所を予測することに関しては、規模や発生時期を予測するより挑戦的なことであることが証明されています。

※気象庁作成のウェブページによると、余震は「本震直後に多く、時間とともに少なくなっていく」(改良大森公式で数式化できる性質)と「規模が大きい地震の数は少なく、規模が小さい地震の数は多い」(グーテンベルク・リヒターの法則で数式化できる)を組み合わせて、「今後3日以内にマグニチュード5以上の余震の起きる確率は30%」というように余震の規模と発生時期を予測できる。

余震がどこで起こるか説明するために機械学習を応用できないかどうか調べるために、わたしたちはGoogleの機械学習の専門家とチームを結成し、本日、わたしたちの発見を論文として発表しました。とは言え、まずはわたしたちがどのように今回の発見に至ったのか、もう少し説明しましょう。わたしたちは、118以上の世界中の重要な地震情報についてのデータベースを入手することから始めました。

1992年に南カリフォルニア・Landersで発生したマグニチュード7.3の地震をビジュアライゼーションしたもの。多色のブロックで色付けした部分が本震で、赤いブロックで表したのが余震の発生場所。
画像提供:Google

入手した地震のデータをもとにして、わたしたちは本震によって起こる静的応力※の変化と余震の発生場所のあいだにある関係の分析にニューラルネットを応用しました。このニューラルネットを使ったアルゴリズムは、有益なパターンを特定するのに役立ちました。

※応力とは、外部から作用する力に抵抗する物体内部に生じている力のこと。静的応力とは、静止している物体に生じている応力を意味する。地震が発生した場合、地殻変動によって地殻内部で生じている静的応力にも変化が生じる。

以上の分析から得られた最終結果を使って、余震の発生場所を予測するための予測モデルを改良しました。この予測モデルはまだ不正確なものですが、余震の発生場所を予測するために歩む道のりを前進するきっかけとなるのです。こうした機械学習にもとづいた余震発生場所の予測は、いつの日か危機管理サービスの運用や余震が発生するリスクのある地域に対する避難計画の告知に役立てられるかも知れません。

Landersで起こった地震における余震発生場所の予測分布図。暗赤色の箇所は、余震が体験されることを予測した場所を示している。黒いドットは実際に余震が観測された箇所であり、黄色の線は本震が発生した時に生じた亀裂を表している。
画像提供:Google

今回の研究では予期せぬ結果も得られました。研究結果は、地震発生において重要となっているかも知れない物理量を特定する助けともなりました。地震に関するデータセットにニューラルネットワークを応用していた時、予測結果を額面通りにそのまま受け取ることよりも、余震発生場所を予測するうえで重要となる特定の要因の組み合わせを詳しく調べることができました。この思わぬ調査結果は、自然現象をより理解できるようになる潜在的な物理理論を見つけることができる新しい可能性を切り拓くものなのです。

地震による損害を軽減するために、わたしたちは地震の背後にある神秘を解き明かすために機械学習が将来的に可能とすることを見たいと願っています。

記事カテゴリー:AI


原文
『Forecasting earthquake aftershock locations with AI-assisted science』

翻訳
吉本幸記

編集
おざけん

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