第1回:データ・AI活用のつまづきポイント(今までの開発を通して溜まったノウハウなど)

富士通クラウドテクノロジーズ株式会社 営業マーケティング本部 データ・IoTデザイン部
データディレクター 加藤 大己氏 (右)データサイエンティスト 吉田 孟弘氏(左)

おざけんです。今回は、データを活用して企業課題を解決するソリューションセンター「IoTデザインセンターbyニフクラ」を運営する富士通クラウドテクノロジーズ株式会社(FJCT)からデータの利活用について全3回に渡ってノウハウをお伝えできればと思います。

今回は、プロジェクト開始前と開始後の2つのセクションにわけ、どんな課題がある企業が多いのか? その課題をどのように解決すべきか?を紐解いていきます。
特に多くの企業では蓄積したデータがありながらも、データ分析や機械学習のために、どのように利用できるかが曖昧なパターンが多いです。普段から多くの企業のデータ活用の課題を解決しているFJCTの現場から、ノウハウを共有してもらいましょう。

【プロジェクト開始前】

課題①:「そもそも取り組むべき課題が明確でない」

まずプロジェクト開始前、つまり検討中のお客様によく見られる課題として、「そもそも課題が明確ではない。」ということがあります。現在、弊社では主にメーカー様やサービス業様のデータ活用/AI活用を支援しておりますが、最初にご相談いただくケースで多いのが、「データ活用/AI活用をしなければならないと会社で決まったが、何から初めてよいかわからない」という相談です。

解決策①:「データを診断し、課題を明確化する」

上記パターンで、まず我々が確認するのは「活用し得るデータの有無」です。明確な課題がない場合でも、お客様自身にてご用意可能なデータがあれば、まずはデータの形式や状態問わず、活用できるかどうか「診断」いたします。(これを弊社ではデータアセスメントといいます。)「診断」させていただいた結果として、活用の糸口が見えましたら、(ここからプロジェクト開始となります。)データの前処理/可視化をして、インサイトを見つけ、課題を抽出するご支援をさせていただきます。いわゆるデータコンサルティングという表現が適切かもしれません。逆に「課題が明確ではなく、データをご準備いただけない」お客様の場合は申し訳ないですが、ご支援をお断りするケースが多いです。

課題②:「データ・AI活用すべきポイントがわからない」

次に、課題が明確なお客様についてですが、「データ・AI活用すべきポイントがわからない」ためプロジェクトをうまく進められないという課題があります。例えば、あるお客様の営業部門にて「自社の見込み顧客に対する商品/サービスの受注件数が低迷しているため、なんとかしたい」という課題があるとします。会社によって様々な要因が考えられますが、データを見る習慣がないお客様ですと、感覚に頼り改善アクションをしてしまう結果、なかなか効果が見られないという状況が多いです。

解決策②:「現状を整理し、活用のポイントを明確化する」

そこで弊社ではお客様へのヒアリングを通して、図1のような「ワークフローマップ」を作成させていただきます。データ活用やAI適用され得る業務の実施事項・利用システム・業務フェーズごとのKPI等を時系列で整理可能なフレームワークとなります。Before、Afterという形で作成するケースが多いです。

【例】受注件数向上を目的としたワークフローマップ

これにより、実際にデータやAIシステムを活用する人の行動、関わるシステム、データ活用やAIシステムによって変更される業務、導入で得られるメリットを整理できます。

また資料化し、関係者間で配布しておけば、「何のためにデータ活用するのか、AIを用いるのか」「誰が使うのか」というプロジェクトの前提、いわばビジネス要件を共有し、認識のずれを回避できます。

このように、プロジェクト開始前に課題を明確化し、現状を整理することで、プロジェクトの進行をスムーズに行うことが可能になります。

※上記についてはブログに詳しく記載しておりますので、ぜひご参照ください。

【プロジェクト開始後】

次にプロジェクト開始後に発生する課題です。

課題③:「要件のすり合わせ不足による、プロジェクトの遅延」

ここでいう要件のすり合わせ不足とは、お客様と分析チームでアウトプットイメージが違うことを指します。例えば、以下のような例です。

ある日の商品の売上予測を行うケースでは、予測精度が高いのは「1か月前まで」よりも「1日前まで」のデータを使った場合です。ですから分析チームからすると「とりあえず予測ができるか」というタスクのみを与えられた場合、「1日前まで」のデータを使って予測します。しかし、お客様からしてみれば「1か月前」に予測できていないと商品の発注ができないというケースがあります。アウトプットしてから初めて相互の認識がずれていることがわかり、解析し直しとなった結果、プロジェクトが遅延してしまいます。

解決策③:「密なコミュニケーションによる、分析・ドメイン知識の相互補完」

大切なことは、お客様側は分析知識を、分析チームはドメイン(お客様の業界)知識を相互補完するために、密なコミュニケーションを取る機会を設けることです。データ活用プロジェクトは、「やってみないとわからない」世界ですので最初の要件定義で実施内容を詰めることが困難となります。ですので、いかに計画を修正しつつゴールに向かうかが非常に重要です。

今回の課題の場合、目的変数(出力データ)の認識違いがあったということになります。なぜならば、お客様は目的変数を考慮にいれなければならないという知識がない場合が多いので、「とりあえず予測ができるか」を要件に設定してしまいがちだからです。(弊社経験より)なので、プロジェクトが始まったあとも解析結果を出す前に、解析アプローチ(今回の場合は出力データ)の確認は随時行う必要があります。そのようなコミュニケーションを取り続けるうちに、お客様自身の分析知識も補えますし、我々もお客様の業界のドメイン知識を補え、分析にフィードバックすることが可能になります。

課題④:「予測モデルのブラックボックス化による実利用不可」

導入しようとした需要予測モデルの判断基準がブラックボックス化しており、人の勘による予測の属人化を避けようとしたら、属”AI”化してしまった。

このような本末転倒な結果によって、導入を見送る例が比較的増えてきています。

どういうことかというと、AIを用いた予測モデルの精度が実導入できるほどの基準を満たし、いざシステム化を検討している場面をイメージしてください。この場面でシステム化検討のために上申すると上役のかたからこんな指摘を受けます。 -「そのモデルはどのようなロジックで予測をしているんだ。精度はいいかもしれないが、それがわからないとリスクがあるだろう。」- これに対して明確な説明ができず、なかなか実利用に至らないというケースがあります。

解決策④:「AIの説明性担保 / ブラックボックスでもよい分野でのAI活用」

このような課題に対しては2つのアプローチがあります。1つ目は説明性を担保する技術を使う方法です。「AIの説明性」が研究のトレンドの1つとなってきています。具体例として、Grad-CAM(※1)と呼ばれるモデルが画像のどこを見て判断しているのかが分かる技術や、Shapley additive explanations(※2) という決定木の寄与度を可視化する技術等があります。

※1詳細は論文をご覧ください。

※2.詳細は論文をご覧ください。

2つ目は、需要予測等の結果に対してリスクのある(売上等に直接影響するもの)ものに対していきなりAIを適用する前に、ブランディング施策など予測結果に対してリスクのない部分でAI導入の先例を作ることです。例えば、マイクロソフト社の提供する「How-Old.net」というWEBサービスでは、自分の顔写真をアップロードすると推定年齢が算出されます。これは年齢を推定する上で精度を担保しているわけではなく、何かマネタイズが発生しているというわけではありません。ブランディングとして活用されていると考えられます。このようにまずは、AIの特性を把握するという意味でも、ブランディング施策として活用するのも良いかもしれません。

上記のように、AIの説明性担保(脱ブラックボックス化)に取り組むか、そもそもブラックボックスでもよい分野でのAI活用に取り組むことで、実利用ができなくなるという課題は解決可能です。

課題⑤:「検収のための納品形式問題」

この問題は、AI案件の納品物が検収を通らないというものです。機械学習案件がアプリケーションを納品するのではなく分析結果を納品することに起因します。一般的には、分析結果を納品するために我々のようなAIベンダーはレポート資料や学習済みモデルのファイルを渡すのですが、これらのファイルはお客様自身の環境上で動くことを想定していないため、予測システムの動作確認ができず検収ができないといったケースがあります。

解決策⑤「納品イメージのすり合わせ」

特に一番最初の取り組みの際は、この課題は必ず発生するものとしてプロジェクトを進めるべきだと考えます。プロジェクトがある程度進んだ段階で、一度納品物のイメージをすり合わせる工数を取っておくのが正解です。予防するのではなく、起きることを前提に軌道修正を行うことが大切という考え方は課題③の要件のすり合わせと同じ形です。

第1回まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回の第1回ではデータ・AI活用のつまづきポイントについて、プロジェクト開始前と開始後に分けて説明していただきました。

次回の第2回ではFJCTさんの支援事例から紐解いた、データ活用の分野ごとの違いや業界ごとの活用ポイントについてお伝えしていきます。

「IoTデザインセンターbyニフクラ」富士通クラウドテクノロジーズ株式会社

富士通クラウドテクノロジーズ株式会社の「IoTデザインセンターbyニフクラ」は、データを活用して企業の事業課題を解決するソリューションセンターです。

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