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2019.03.22

AI法務は格差を無くすか!?士業とAIのこれから【THE AI 3rd イベントレポート】

最終更新日:

先日、株式会社Ledgeが主催する「THE AI 3rd」が虎ノ門ヒルズで開催されました。そこで行われた講演【士業の業務はAIに代替されるか~「AI-CONの挑戦」~】についてのレポートをお伝えします。

講演者は、GVA TECH株式会社の代表取締役「山本 俊さん」です。GVA TECHは、AI契約サービスのAI-CONを開発しています。

AI-CONの開発に至る経緯・想い・困難などから「士業とAIのこれから」を考えることができました。

AI-CONとは

どんな会社でも法律からは逃れられません。法律のプロを雇うコストがそのまま格差となってしまう現状があります。特にスタートアップベンチャーでは顕著です。

このような、法律に関するコストをAIで大きく下げるのが「AI-CON」です。

AI-CONとは、GVA TECH株式会社が提供している契約業務のサービスです。その中でも、「弁護士」の専門的な知識が必要とされている、契約書の作成から交渉までをAIの力でサポートします。

AI-CONを使うメリット

  • 契約書レビュー時間の削減(約80%ダウン)
  • レビュークオリティの統一化
  • レビュー費用の削減(約90%ダウン)

また、契約書のドラフト作成サービス「AI-CONドラフト」。法人登記支援サービス「AI-CON登記」も提供しています。

AI-CON開発の背景

ーー山本さん
元々は、弁護士としてキャリアをスタートさせました。その中でも、IT系スタートアップを中心に弁護士を務めてきました。
IT法務は、法務のITにおける部分だけを知っていれば対応できました。それが2015年あたりから変わっていきます。

Fintech,不動産techなど、既存の業界をITやAIで代替していく事業が始まっていきました。今の法律は、ITを前提としていません。法律に触れるかグレーとなる部分が出てきます。そのため尚更スタートアップに法務の力が求められてきました。

法務の問題点

ーー山本さん

ビジネスにおいて、法務における力の差は大きいです。やり手の経営者も法務によって足を引っ張られることがよく見られました。

法務力の強い大企業相手と内容がよくわからないまま契約をしてしまう。これがお金で解決できるなら、まだ対応ができるかもしれません。しかし、株や知財が問題になってしまえばビジネス自体がストップしてしまいます。一方で、新人の弁護士でも一人付けば法務力の問題はかなりの部分解決します。

そこで、一つの問題意識が生まれました。

「契約における法務格差を無くしたい」ということです。

法務にテクノロジーを組み込むと、コストが限りなく下がっていきます。法務のコストがゼロに近づけば、そこで格差はなくなっていきます。これによって、法務の面で不自由なく事業が行える世の中にしていきたいです。

AI-CON 開発のプロセス

ーー山本さん

このような問題意識から、法務でルーティン業務に近いものをテクノロジーで代替できないかどうかを考えました。そこで、契約書の作成やチェックに目を付けました。

契約書が作成には5つの段階があります。

  1. 案件を受ける
  2. 自分の経験や過去の判例等との類似した案件を探す
  3. 過去の事例と照らし合わせて修正の要否を判断
  4. 修正の上、修正意図を伝える
  5. 交渉/一旦完了

契約書は間違いが許されません。そのため、誤字脱字チェックやリサーチに時間を犠牲にしてます。一方で、この業務は一般人が行う場合とかかる時間が変わりません。このあたりをルーティン化できないのか。

また契約書の業務では、多くのポイントで判断を伴い多くの時間を要します。質・スピードにばらつきがでてしまいます。これを統一できないのか。

AIは、過去の契約書からデータを持ってきて規則的に分類していくのが得意です。学習さえできてしまえばシステム化できるのではないかと思いました。

つまり最初の学習が大事です。しかし大学の教授等にヒアリングをしていく中で、どうも難しいという意見をいただきました。特に、契約書における「意図」の部分を読み取ることが難しい点が問題です。

そこで、意図の部分を学習しやすい形で表すことが出来ないかと思いました。契約書の「意図」にもパターンがあって、定型化できる部分があるのではないかと考えたのです。事業性の理解や有利、不利の尺度等、非定型なものを定型にすることで、AI化は可能!という結論にいたり、AI-CONというサービスは実現しました。

AIは士業に代替されるのか

ーー山本さん

テクノロジーによって士業を代替するサービスは増えてきています。AI-CONでも、新たに法人登記のサービスを開始しています。法人登記の多くは、システムに落とし込むことができるでしょう。例えば、書類作成のような定型業務は遅かれ早かれテクノロジーに代替されると思います。

一方で新しい問題発見はAIには難しいあるいは、お客さんに寄り添ったコミュニケーションの部分も大切です。なぜなら、その人が求めている解決を引き出す必要があるからです。テクノロジーで、裏側の定型業務に取られている時間を、コミュニケーションに当てることができます。

私がよく使う例があります。会計事務所はソロバンでやっていたことを電卓によって効率化しました。すると、新しい業務が生まれるようになりました。他の士業でもこのようなことが起こると思います。

士業のなかでも、AIと人の棲み分けがされるということです。

おわりに

意図の部分をパターン化するという点が印象に残りました。他の業界でもAIを取り入れていくための考え方として応用できるのではないでしょうか。

「AIによって仕事が奪われる」という議論はしばしば耳にします。一方でAIは、使いこなし人間と上手く住み分けることで、格差の解消など人間に対してポジティブな可能性を秘めます。

AIが仕事を代替していくことは、不可逆となりつつあります。AI悲観論に必要以上にとらわれずに、AIの特性と人間の役割を見極めることが大切です。

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