経営陣が語るDXのポイント:経営にとって、DXとは何か。ディップはDXで何を変革しているのか。

2021/04/05
2023/09/29

近年、さまざまな企業、組織でDXが進められています。DXとは、データとデジタルによって新しい価値をもたらしビジネスモデルを変革させる取り組みで、中には業界の競争環境を変化させるほどの影響をもたらしているものもあります。

そして人材サービスとDXサービスを提供しているディップも例外ではありません。

現在『レコリン』というサービスを活用した営業業務のDX化を始めとして様々なRPAやDXの取り組みを進め、人材だけでなくデジタルレイバーも提供する『労働力の総合商社』を目指しています。そんなディップのTOPたちはDXについてどう考えているのか。どんな想いを抱いているのか。

トップバッターとしてCOO(最高執行責任者)志立正嗣にDXのポイントを聞きました。

 

志立正嗣 プロフィール

ディップ株式会社 代表取締役COO
一般社団法人HAPPY WOMAN顧問、アダプティブ株式会社顧問、Radar Lab株式会社顧問。

<略歴>
ポータルサイト等を運営するインターネット関連企業にて執行役員を務めた後、2019年社外取締役、2020年に取締役COOとしてディップに入社し、2022年に取締役COO 兼 CIOに就任。2023年5月より代表取締役COO(最高執行責任者)(現任)

経営にとってDXの本質は全ての産業がIT産業化するというビジネス変革である

経営にとってのDXとは何かをよく理解することが大事だと考えています。デジタルという手段を使った変革ですから、何を変革するのか。それはビジネスそのものをIT、インターネットが存在することを前提に作り直す。これがDXによる変革の本質だと認識しています。

私は日本におけるインターネット商用化がスタートした1993年からこれまで、日本のインターネットビジネスに従事してきました。その体験から歴史を振り返ると、DXが日本で本格化する前までは、従来の産業とIT産業が別の産業として認識されてきました。ITバブルとかいう表現がその象徴ですね。従来の産業に、新産業としてIT産業が勃興した感じです。従来の産業から見ると「こいつらアヤしいけど、えらい儲かってるな。調子こいてて成金か?」みたいな感じです(笑)。まあ、世の中一般から見ると、こういう認識だったと思うのです。それは、デジタル技術がまだまだ未熟で、今まではリアルな世の中との接点を持つことが極めて限定的だったという背景から生まれています。インターネットの世界でのビジネスが、リアルの世界との接点を持つことが限定的だったため、このような産業構造になっていたのだと思います。

これが、ITの進化によって、DXという動きが生まれてきた。このことによって、産業の捉え方が根本的に変わりました。デジタルの力を前提に、IT側から従来のビジネスを眺めてみると、おかしなことや非効率なことが見えてくる。そもそも、この産業って何の課題を解決するために存在するのか。どんな価値を生み出すために存在するのか。そのような本質的なものに立ち戻って考えてみると、そもそもこの産業構造でいいのかという問いや、ビジネスモデルはこのままで良いんだっけ、などという疑問が出てくる。結果として、従来の産業構造でコンペティターだと考えていたのが、そうではなく、実は他業種にこれからのコンペティターが存在するということも頻繁に起こってくるのです。

例えば、ファーストリテイリングの柳井さんが数年前、「いずれGoogleと競合する」とインタビューで発言され話題になりましたが、まさに経営としてのDXを先取りした発言だと感じます。最近よく言われているサブスクリプションモデルというのも、このDXの動きの一つの具体的な現れですよね。これまで定期的にお金をいただくなんていうのは、ビジネスとして与える価値としても、コスト的に成立しない売り切りモデルの産業が、ITの力によって定期的にお金をいただくモデルにシフトしてきています。トヨタまでもがサブスクリプションモデルに本気で取り組もうとしている。これらの大きな産業の動きは、IT側から眺めてみないと、本質的な違いが理解できないのだと思います。このように、全ての産業をIT側からもう一度眺めてみる、再定義してみる。いわば、全ての産業がIT産業化していくという道筋。それが経営におけるDXの本質です。

出典:2016年10月17日「日経ビジネス電子版」

ユニクロ柳井氏「いずれ、グーグルと競合する」

出典:2019年1月10日「日経クロストレンド」

MaaSに月額制乗り換え…トヨタは自らをどう変革するのか

ここで一つ、タクシー業界とUberの関係を事例としてご紹介します。日本ではUberが出前サービスだと思われていますが、オリジナルのサービスは配車サービスです。すでに世界6000以上の都市でサービスが展開されています。このUberを例にとって話をしましょう。従来のタクシー業は、業務用自動車と運転手という経営資産を抱えて、顧客に提供するという産業だった。大量の人と自動車を抱えなければビジネスができないモデルになっています。これに対してUberは、配車サービスとして、運び手と乗り手のマッチングプラットフォームサービスと再定義した。インターネットサービスとしてのマッチングプラットフォームが真ん中にあり、そのマッチングプラットフォームの利用者として、車を所有する運転手と乗り手を定義した。それによって、従来の事業定義では解決できない課題をITの力で解決できるようにした。つまり、大きなアセットを抱えることなく、最適な配置をビッグデータの力を使って予測することで、これまでとは全く違うアプローチで課題解決を目指したわけです。なぜ、それが可能なのかというと、タクシーという産業が果たしているバリュー、課題解決が何であるのかまで深掘りしたわけですよね。つまり、どこかに連れていって欲しいお客と、お客を乗せて収入を得たい運転手を、最適な形でマッチングできれば解決するはずと定義し、それを実現するプラットフォームを、IT側からアプローチして解決していく。その結果としてUberが生まれてくる。産業をデジタルの側から再定義して変革していくという、わかりやすい事例だと思っています。

出典:2020年9月18日「DIAMOND online」

”Uberのビジネスモデル”を「1枚の図」にしてみた!

求人メディア事業から仕事のマッチングプラットフォーム事業へ

現在ディップの主力事業は人材サービス事業(Human work force solution)です。この事業領域はインターネット以前の紙の時代から、業界としては求人広告業界とされています。つまり、大量の求人広告をいかにたくさんの人にお届けするのかが事業の価値の源泉となります。大量の情報をたくさんの人に届けることができれば、それが広告としてのメディアパワーになり事業が成長する。

ディップが創業した頃は、それが雑誌やチラシという紙メディアで行われていました。それをディップがインターネットメディアとして、求人広告事業をデジタル化するチャレンジをしたわけです。つまり情報流通の手段を紙というアナログの世界からインターネットというデジタルの世界へ移行させた。流通の手段をデジタル化したがビジネスモデルはそのまま。これがITによる変革の第一章と僕は考えています。ビジネスモデルは変えずに、アナログの非効率をデジタルの力で効率化していく。便利にしていく。それにディップは成功したわけです。

実際、このチャレンジにより、情報流通コストも劇的に下がりましたし、制限があった広告表現も、動画や豊富な画像を駆使して、より豊かな情報を届けることができました。アルバイトで働く時に、必ずしも時給が10円高いかどうかなどのスペックだけで選ぶユーザーばかりではありません。大半のユーザーは、会社やお店の雰囲気や仲間などを知りたいでしょうし、そこで自分が馴染めるかどうか、などが気になっているはずです。そういうユーザーに徹底的に寄り添い、インターネットテクノロジーを活用しながら課題解決してきた。それがディップです。お陰様でインターネット専業の有期雇用における求人メディアではNo.1になることができました。

しかし、これもDXの観点で見ると、単にビジネスを紙からインターネットに移行しただけで、メディアというビジネス自体は変わっていません。求人広告業界も変革の第二章が必要になる。ビジネス自体、産業自体を変革する必要がある。ディップはこれをDXの観点で事業を再定義し、「どこよりもはやく(仕事が)決まる」というテーマを掲げて、事業を進化させています。求人メディア事業から、求職者と求人企業のマッチングプラットフォーム事業として進化させることで、経営としてのDXを行っていきます。

“Labor force solution company”を掲げ、ディップが目指している世界

ディップは2019年3月に、新しいビジョン”Labor force solution company”を掲げ、働くに関するさまざまな課題を解決する決意をしました。従来の人材サービス事業を”Human work force solution”と定義し、そのビジネスに加えて、新たにDX事業(Digital labor force solution)を事業の柱に成長させていきます。

これまで述べてきたように、デジタル技術がすさまじいスピードと勢いで世界を大きく変えようとしています。既存の仕事も、組織も、そして、働き方も大きく変わっていこうとしています。ディップの取引先企業には中小企業も多いのですが、コストや人材の課題から、DXを進めることが難しい企業も多く存在します。ディップはこうしたお客様と伴走する形で、当社の「コボット」を始めとした様々なDX商材の導入を推進し、日本社会を支える中小企業の事業をデジタル技術の活用で変革し、新たな価値を創造できるように支援をしていきます。

結果として、お客様でのDXが進めば、人は誰にでもできるような単純な作業をロボットに任せ、「人にしかできない付加価値の高い仕事」に集中して取り組むことができるようになります。働くことが骨折りではなく、自分を活かした喜びを感じられるものへ。それが私達のビジョン”Labor force solution company”のゴールです。

「経営陣が語るDXのポイント」シリーズ

DX magazineでは、ディップをけん引するトップたちがDXをどのように捉え、ディップの未来をどのように描こうとしているのかを伝えていく「経営陣が語るDXのポイント」シリーズを公開しています。

dip DX approach -ディップとDX、事業戦略とその成果-』では「経営陣が語るDXのポイント」シリーズの一覧を掲載しています。ぜひご覧ください。

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2500人超の従業員の業務を支えるディップの社内ITカオスマップ』ではディップの社内IT環境と、募集している職種について記載しています。ぜひご覧ください。