「DXをリードする会社にしたい」- ディップ代表取締役COO 兼 CIO志立の語る社内業務DX事例「カケザンプロジェクト」の舞台裏

2021/05/07
2022/03/17

ディップは2019年から掲げている「Labor force solution company」を実現するためにDXを進めてきました。営業業務を自動化・効率化する「レコリン」や、業務の自動化で企業をサポートする「コボット」など、数々のAI/RPAプロダクトを開発、導入してきました。

しかし、社内だけでなく事業までDXを進めるにあたって大きな課題がありました。それは、ディップ社内におけるコミュニケーションの取り方やITリテラシーが不十分だということです。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、この問題が浮き彫りになりディップは改革を迫られました。

そこでディップのDXと“かけ算”して、社員一人ひとりの力を最大限に引き出すことを目標に始動したのが「カケザンプロジェクト」です。

今回の記事では「どのようにコミュニケーションを取れば社員のITリテラシーを引き上げ、パフォーマンスを最大化できるのか」を考え抜き、全社に改革をもたらした「カケザンプロジェクト」の生みの親である、ディップ代表取締役COO 兼 CIO・志立 正嗣がその裏側を熱く語りました。

志立正嗣 プロフィール

ディップ株式会社 代表取締役COO 兼 CIO
一般社団法人HAPPY WOMAN顧問、アダプティブ株式会社顧問、Radar Lab株式会社顧問。

<略歴>
ポータルサイト等を運営するインターネット関連企業にて執行役員を務めた後、2019年社外取締役、2020年に取締役COOとしてディップに入社し、2022年に代表取締役COO 兼 CIOに就任

「カケザンプロジェクト」が始まった背景

プロジェクトが始まる前のディップのツール環境

これまでのディップではコミュニケーションツールが組織によって異なっており、部署をまたいだ連絡はGmailを使うことが主流でした。「自部署での連絡はslackを、他部署や全社への連絡はGmailを」というように社内でのコミュニケーションが分断されていました。

また、OneDriveやGoogleドライブなどさまざまなクラウドストレージも乱立しており、資料を探すのも一苦労な状態でした。さらには接続の重いVPNを使っていたために各サービスへのアクセスに時間がかかっていました。

従来のディップはさまざまなツールをバラバラに使っていたことで業務が煩雑になり非効率的で無駄な作業を生み出していたのです。

こうした状況を変化させるきっかけになったのが志立のディップ着任でした。

ディップに埋もれていた上記のようなコミュニケーションの課題をどのように発見・抽出していったのでしょうか。

ディップを知るためにまずは約200名の社員にヒアリング

僕がディップに入社し、COOになったのは2020年7月でした。入って最初の1、2ヶ月は、ディップのみんなのことを知ろうと色んな社員に話を聞いていました。

社員に「何やってるのか・どんなこと考えて、どんな悩みがあるのか・どうしたいのか」をテーマに対話を重ね、ディップの社風や社員の考えてることを知ることから始めたんです。着任から3週間後の7月下旬に社員総会が開催されましたが、それまでに約200人と話しました。

まず感じたのは、とてもいい会社だということです。みんな素直で企業理念・ビジョンが浸透している、「強いコミットメントでやりきるぞ」という気持ちがある社員が多いと思いました。

一方で驚いたのは、自分たちのすごさをわかっていないということ。新卒でディップに入社した人がほとんどで、ディップ以外の環境を知らない人が大半だからです。話を聞いている中でも、違う会社から来た私に「ディップってどうなんですか」と外から見た印象を聞かれることが頻繁にありました。

ディップに足りないと感じたのは社員のITリテラシー

そもそもディップという会社はインターネットのみを使った求人メディアを立ち上げた会社です。今まで紙だった求人媒体をこれからのインターネットの時代を見据えて「ネットで届ける」ということを始めた会社です。つまり、インターネットの会社と言ってもいいと思うんです。

しかし、その割にはインターネットのリテラシーが低い気がしていました。 インターネットをベースに全てが動いている会社にはなっていない、自分たちの会社がIT企業だという意識が足りない点がもったいないと感じました。社員にディップについて聞かれた時もその認識を共有することを重視していました。

特に課長や部長などの中間管理職からITリテラシーが低い“におい”がしていました。(笑)インターネットが社会に出てから浸透した世代が多い会社のため、仕事でそれなりに使いこなしていても、どう活用していくのかという意識を持っている人は少ない現状だったのです。

「仕事の仕方を変える」のは「習慣を変える」ということだから思っているより難しいんです。

コロナで明らかになった『時代遅れなコミュニケーション方法』

志立は社員との対話を通じてITリテラシーの低さがディップの潜在的な課題だということを発見しました。
課題に気付いた時には新型コロナウイルスの影響でリモートワークが浸透していたディップでしたが、この新しい働き方がまた新たな問題を発見することになりました。

このようにディップの問題点を考えているうちに、社員のリモートワークでの困りごとを耳にするようになりました。営業の部署では「リモートでコミュニケーションが取れず、決済や部下からの相談が遅くなった」という声が上がり始めたんです。

これまで営業は車を運転したり商談や面談をしたりとパソコンを開いてない時がほとんどでした。リモートワークの今、必ずパソコンの前にいます。パソコンの前にいるほうが連絡を取りやすいことは明らかです。なのに「コミュニケーションが取れない」という課題がでてきたことに違和感を感じました。

調べてみると、情報のナレッジシェアリングやコミュニケーションの方法が平成時代で止まっていたんですね。2000年代くらいといったところでしょうか。これがITリテラシーの低さ故に表面化してきた新たな課題でした。

例えば、メールが山ほどあって誰も読んでいない。メールでやり取りしてるのに読まなかったら連絡が遅くなるのは当たり前ですよね。

それから、さまざまなクラウドストレージに資料が散らばっていて探しづらい、iPhoneからはアクセスできない、など弊害が各所にあるということが分かってきました。

「やるからには徹底的に」-新たなツールの導入と目指すゴールの共有

『不足したITリテラシー』『時代遅れなコミュニケーション方法』の2点の問題に気付いた志立は社内で数人を招集し「カケザンプロジェクト」として課題解決のために動き出しました。しかし「初めからうまくはいかず、みんなが積極的というわけではなかった」と志立は語ります。

周りからの理解をどのように得て、プロジェクトを前進させていったのでしょうか。暗中模索の状態から新しいツールの全社導入を成功させることができた取り組みの概要について聞きました。

改革へのステップ① 社員の意識を変える

最初はやはりお金の事をみんな気にします。これまであまりお金をかけずにケチケチモードでやってきたからです。社内の環境はコストで左右されるので会社としては正しい考え方です。

ですが、インターネットの会社としては「インターネットを活用して生産性を上げるコスト」は投資として大胆に使った方がいいと判断しました。我々はDX事業としてお客様にも提供しているので、自分たちがITを使いこなし、生産性を上げて幸せになることにチャレンジしていかなくてはいけないと考えました。

そもそもITリテラシーっていうのは専門的な知識があるだけでは不足しています。ITをどう活用してどうパフォームさせるかがITリテラシーです。その考えが狭い人、足りない人が集まっていたから前に進まない現状があったのだと思います。実は日本の大半の会社がそうした状況です。

そうした意識、考え方を変えさせるためにまずはゴールのイメージを引き上げました。最先端のツールで爆発的にコミュニケーションのパフォーマンスを上げる。せこい事せずににドカンと効果を出す。そういう風に“絵”を描きました。ビジョンをしっかり持つことはとても大事です。

改革へのステップ② 既存の中途半端なツールをどうするか

BoxとSlackの連携によって社員が使うインターフェースを一元化

次の悩みは、ディップには中途半端に中途半端なツールが山ほどあったことです。 Office 365やG Suite(現Google Workspace)、Teamsなどのチャットサービス、あらゆるツールが存在していました。

お金をかけずに既存のツールを使いこなすか、もしくはもっと高みを目指して他のツールを使う方がいいのか、あらゆるシミュレーションをしました。

そうして考えると僕らが1つの会社としてコミュニケーションを最適化して理想の形にするには既存のツールはどれも中途半端でした。

そして僕らが選び全社的に導入したのがSlack、Box、Zscalerでした。

中でもZscalerは一番経営者を説得させられないツールです。経営者が本当に現場でITを使いこなしていて不便を感じていない限りは価値がないと判断されるからです。たまに使うくらいだったら少し応答が遅くても待てます。しかし、毎日使っているとたった数秒待つ時間でも面倒、不便を感じます。Zscalerを使うというのは経営と現場のリテラシーが高くないと決断ができませんが、今のディップでは確実に活用できています。

アクセスするまでの数秒の差であり、アクセスの高速化自体は一銭にもなりませんが、ストレスフリーな仕事環境にしていくことはITリテラシーの入り口としては必須だと考えています。

当初、ITリテラシーが低いことがディップのペインポイントだとは思っていましたが、新型コロナウイルスの影響でそれが露呈しました。2020年7月にディップに着任して以降、この問題にメンバーと試行錯誤しながら取り組み、日本で今手に入る最先端の環境を整えることができました。やるからには徹底的にやろうと決めていたので実行できてよかったです。

社員幸福度No. 1カンパニーに進化させたい

多くの協議を重ね、社員の意識改革とツール導入を少しずつ進めてきた「カケザンプロジェクト」。
そもそもなぜ、志立は「コミュニケーションの必要性」を訴えたのでしょうか。
ここには志立が強く抱くディップへの想いと期待がありました。

ディップのこれまでのコミュニケーションの方法を改善すると2つのいいことが起きます。

1つはコミュニケーションやナレッジシェアの生産性が大幅に上げることができます。
コミュニケーションはリテラシーの原点と言えます。社員のリテラシーが低いことにはビジネスの判断や業務の変革のリテラシーも上がらない、経営のDXをやろうとしても現場がついてこない、ということになってしまうんです。社員の働き方や生産性の向上、会社の体質をインターネットカンパニー化するということにとっても大事になってくると考えています。

もう1つは、社員幸福度の向上が期待されます。
僕がディップに入ろうと思った動機の1つには、社員幸福度No.1カンパニーに進化させたいという冨田社長の想いに共感したということがあります。

仕事でいう幸福って、仕事を成し遂げて「やってやったぞ!」って思いながら会社の中で成長していくことだと思うんです。それをやるためには、本来自分がやるべき事にフォーカスできているほうがいいですよね。間接業務と言われる本来業務ではない部分(経費清算、日報など)は多くありますが、それをコンパクトに、簡便にすることで全体の生産性が上がって、社員幸福度が上がるはずだと思いました。

コミュニケーション周りをモダンにすることで、リテラシーが上がり、パフォーマンスも上がり、社員の幸福度も上げることができます。

短期間でのツール導入成功の要因 -現場を巻き込むこと×ディップの文化

2020年12月に全社に導入されたSlack、Box、Zscalerの3つのツールは、さっそく社内で効果が現れています。

Slackに関しては、導入月に社員の90%がアクティブユーザーになりました。社内のやり取りはメールとSlackを並行利用する期間を設けましたが、結果月に800万件のメールが減少し、3ヶ月経った頃には社内のやり取りはほぼSlackに移行できています。

ディップのSlack利用浸透の結果

BoxとZscalerは、全社アンケートの結果90%が「効率化された」と答えていました。

Slack・Box・Zscalerの導入に関する全社アンケート

上記のデータのように社員全体に納得して使ってもらえるようになった背景には、現場を引っ張っている立役者の存在があったと志立は語ります。

このカケザンプロジェクトは最初は5人くらいで始めました。プロジェクトというのは方向性が決まるまでは小規模でやるべきです。みんながやりましょうと思えるところまでは少人数で固めてあげるのがいいです。

次第に人を巻き込んでやっていくのですが、今回のプロジェクトの大成功の要因の1つとも言える、営業の本部長を巻き込めたことは重要なポイントです。

DXの取り組みは大抵はIT部門が旗振り役をやって営業の現場の人たちが冷めてることが多いです。だから現場ではなかなかツールが使われず、既存の古い環境を切れないというのが続くため導入までに時間がかかるものです。

しかし今回、井上さんという営業の本部長で非常に影響力のある方がこのプロジェクトに賛同しリードしてくれました。そのおかげで現場の人がすんなりとSlackやBoxを使ってくれるようになりました。

フィロソフィーが息づいているディップだからこそ、「ITリテラシーを高めていこう」という思いで全社が同じ方向を向いて進んでいくことができました。この姿勢が結果に繋がっているのだと思います。IT部門の方たちの努力ももちろんですが、企業文化を自分たちで作って、それをドライブさせている現場の方たち一人ひとりがすごいのだと思います。

「カケザンプロジェクト」の今後の展望

社内コミュニケーションの改革のために始まった「カケザンプロジェクト」でしたが、その後社内のDXの取り組み全体を総称するワードになり、現在では次のフェーズに取り組み始めているようです。

最後に今後の展望、そして志立の考えるディップの目指す姿を聞きました。

今までやってきたことはフェーズ1です。環境の移行はスムーズに出来てよかったです。今直接的に導入した効果も高まっていますが、『使いこなす』というのはまだまだこれからです。それをどういう風にやればいいのかというのが次のフェーズになってきます。

使いこなすフェーズの方が業務が変革されるので効果は高いです。この環境だったらどういう仕事の仕方をすればいいのか、みんなで棚卸しをして本当の意味でのDXを各業務でできるとさらに生産性の高い業務が可能になると思ってます。

今はまだコミュニケーション周りやナレッジシェアにしか手を出していないので、それ以外の業務に関わるさまざまなところをモダンにしていかなきゃいけません。それは今後優先順位をつけながらやっていこうと思っています。

ゴールは、デジタルを使いこなす会社として会社自体が世の中のDXをリードしていくことです。ここまでデジタルを前提とした会社に変われるんだと思っていただけるような、模範となる会社にしていきたいです。

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