年4835時間の削減を見込む、スクラム体制で作り上げた求人原稿作成支援ツール GENKO 開発の裏側
ディップでは「バイトル」「はたらこねっと」などの求人サイトを展開しています。それらの媒体に掲載する広告の原稿作成なども自社で行っていますが、その業務の煩雑さが以前より課題となっていました。
その課題を解決するために立ち上がった「GENKO」プロジェクトは、スクラム体制で最適な解決策を模索し、原稿作成支援ツールの内製を行いました。この取り組みは、年間4835時間の工数削減を見込んでいます。
今回はそのプロジェクトにおいてスクラムマスターと開発メンバーを兼任し、プロジェクトを成功に導いた宗里に話を聞きました。
宗里駿 プロフィール
次世代事業統括部 dip robotics Dev Robo課
チーフエンジニア
煩雑難解で新人には難しすぎた今までの原稿作成業務
――どのような課題をお持ちでしたか。
ディップでは、求人原稿作成の業務があります。この原稿の作成に手間と時間がかかっているという課題がありました。
既存のバイトル管理画面で原稿を作成するには、ページ遷移が複雑なうえに、入力項目も初見ではわかりづらいものが多いなど、慣れていない人には操作しづらいUIだったのです。
入社したての社員は特に原稿作成に時間がかかっていました。またリアルタイムでプレビュー表示されず、自分が今書いている原稿を確認するためにはページ遷移が必要となるなど、利便性の低さも課題でした。
原稿の作成には時間がかかるために外部委託も利用していたのですが、経費がかさむという課題もあり、いち早い解決が求められていました。
――システム導入検討の経緯について教えてください。
原稿作成画面のUIの改善と文言のレコメンド機能によって、原稿の作成時間が短縮できるのではないかというコンセプトから、プロジェクトの検討が開始しました。
誰でも原稿が作れるように。既存システムに合わせたツールの内製を選択
――どんなシステムを選びましたか。
原稿作成支援ツールを内製することにしました。そのツールをGENKOと命名しました。
――そのシステムを作るうえで目指したのはどんな状態ですか。
経験の有無に関わらず「誰でもバイトルの求人原稿が作れる」という状態を目指しました。
スクラム体制で、従来サービスに影響を与えない解決策を開発主導で実現
――どのような体制で取り組みましたか。
「プロダクトオーナー」「スクラムマスター」「開発チーム(3人)」といったチーム構成で進めていきました。
プロダクトオーナーは求人原稿を最もたくさん作っている広告制作部が担当しました。それよって「このサービスがどのような価値を提供するのか」がとても明確になってプロジェクトが潤滑に進みました。
今回取った「スクラム」という開発体制では、まずプロダクトオーナーが「どういう価値を提供したいか」「どういう課題を解決したいのか」という点を洗い出します。
それを受けて、開発チームで何を作ればその要件を満たすことができるのかを考えながら、動くものをバンバン開発して、プロダクトオーナーに見せ、フィードバックを受けて修正していくという流れで進めていきました。
今回私はスクラムマスターとして、「どうすればプロダクトオーナーと開発とのコミュニケーションが潤滑に進むか」「どうすればチームの成果を最大限発揮できるか」、「どうすればチームのモチベーションを維持できるか」といった点に常に気を配りながら進めていきました。
――本取り組みで困難だったことについて教えて下さい。
バイトル管理画面とのデータ連携が難しかったです。
今回のプロジェクトは既存のバイトル管理画面の一部機能の改善にあたるのですが、どれだけ従来のサービスに影響を与えないようにするかを考慮するのが大変でした。
――どのように問題解決しましたか。
今回はスクラムという体制なので、開発チームでどうすればその点をクリアできるのか議論しながら、解決策を探りました。
その結果、まずは開発工数が少なくて済むRPA的手法でデータ連携する形で課題解決していきました。
バックエンド側でクローリングする仕組みにすることで、既存のサービスへの影響を極力小さくして導入することに成功しました。
開発チームとして「何を解決するのか」「何が本質的な課題なのか」という点をしっかり理解しなければ正しい方向性の議論もできなくなってしまうので、その理解の部分にスクラムマスターとして力を入れたことが功を奏したかなと感じています。またリリース方式に関しても、クローリングによる負荷が既存サービスに急激にかからないように、段階リリースにするなどの工夫もしました。
年4835時間の削減見込み。原稿作成の手間の大幅削減に成功
――現在の運用を教えてください。どのような利用方法をしていますか。
営業の原稿作成業務に利用してもらっています。
――どのように課題が解決されましたか。
原稿文言レコメンド機能によって文章を考える工数が削減されました。
GENKOの導入によって、原稿作成に必要な時間を最低でも1原稿あたり5分は短縮できます。年単位にして4835時間の工数削減、人件費に換算して5250万円の削減が見込まれ、しっかりと成果を出すツールを開発することができたと感じています。
――導入してよかったと思う点や便利な機能があれば教えてください。
文章レコメンド機能は導入してよかったと思っています。
これまで求人原稿の文章を1から考えることが面倒だと言われていたのですが、GENKOでは予め作成する原稿の特性によって文章がレコメンドされるので作業時間が短縮されました。また、原稿のプレビューも作成画面の横に表示されるので、リアルタイムで記事の様子を確認することができるようになり、利便性が向上しました。
――運用上で生じている課題などはありますか。
クローリングによる外部連携となっているため、レスポンス速度が遅いというのが課題です。
利便性のさらなる向上を目指す今後の展望
――今後取り組みたい改善はありますか。
現状はRPA的なクローリングでバイトル管理画面から原稿作成に必要なデータを連携しているので、それを本格的なAPI連携に変えていきたいと思っています。
このことによってより早くデータを連携できるようになるので、作業スピードのアップが見込めます。
現場の営業がGENKOでより早く簡単に原稿を作成できるように、今後も現場の声を聞きながら機能改修に取り組んでいきたいです。好評な原稿文言レコメンド機能に関しては、現在は広告制作部に提供してもらった文例の中から提案しているのですが、過去のバイトル求人情報に利用された文章を表示して原稿の作成をアシストするAIの実装にも取り組んでいます。こちらは去年インターンで今年新卒入社をしたデータアナリストの社員がロジック構築に取り組んでいます。
――ありがとうございました。
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