全員がDXをわかる組織に 現場で活かせるIT・DXリテラシー向上の取り組み

2021/08/25
2022/03/23

「バイトル」などの人材サービスを展開しているディップでは、人材サービス事業と並ぶもう一つの事業の柱として、DX事業を掲げています。DX事業の主力商品は「コボット」です。

ディップが今までの人材サービスとは全く異なるDX商材であるコボットを提供するためには、従業員がDXについて十分に理解する必要があります。しかし、システム関連の職種以外の従業員については、ITリテラシーが不足している状態でした。そのような状況で立ち上がったのが今回ご紹介するDX教育プロジェクトです。

ディップのDX教育は、営業に向けたDX基礎教育と、管理職へのDX教育に大別されます。
今回は営業に向けた基礎DX教育を推進している長﨑と、管理職へのDX教育を計画している小澤に話を聞きました。

長﨑 大補 プロフィール

人事総務本部 人材・組織開発室 マネジャー

社内の教育・研修を担当。
内定者教育・新人教育(eラーニング・対面研修)・階層別研修・360°サーベイ研修・スキル別研修などの企画・運営を行っている

小澤 健祐 プロフィール

次世代事業統括部 dip Startups
AINOW / SDGs CONNECT編集長

AI専門メディア「AINOW」、SDGs専門メディア「SDGs CONNECT」編集長。ディップの「仕組みメーカー」になるべく、メディア運営だけでなく、社員総会の運営や、教育、中期経営計画の策定、新規事業などにも関わっている。ときには社内カメラマンとしての活動も。

営業に向けたDX基礎教育「DX時代の新教養」を展開

扱う商材の変化に応じて営業もITリテラシーの向上が必要だと感じた

――営業へのDX教育を行うようになった経緯を教えてください。

ディップで扱う商材は、時代とともに変化してきています。
直近では、事業ドメインが変更となり、従来の人材サービスに加え、DXサービスが取り扱われるようになりました。

これまで人材サービス商材を扱っていた営業が、突然DXサービス商材を扱うことになったのですが、営業のITリテラシーは十分とは言えない状態でした。これでは今の時代に合わせた提案はできません。商品の進化とともにITリテラシーの向上をしていく必要がありました。

また、2020年にカケザンプロジェクトが始まり、時代に合わせたITツールを全社で利用していくことになったため、ITリテラシーの向上が社内外で重視されるようになりました。

無理なく徐々に高めていく営業のITリテラシー

――施策のポイントを教えて下さい。

営業のITリテラシーを継続的に高めていくため、「DX時代の新教養」と銘打って、毎週気軽に楽しく学べることを意識した、クイズとテキストの提供を開始しました。

この教材は無理なく続けられるようにということに主眼をおいています。内容は以下のとおりです。

1.毎週月曜に、2分程度で答えられるクイズを用意し、学びの導入・動機付けを行う。
2.クイズに回答すると、そのクイズにちなみ、DXやITリテラシー向上につながるテキストに遷移する。
3.テキストの学び度合いを測る確認テストを実施する。
4.確認テストの回答状況は、リアルタイムに表示される。

DX時代の新教養の概要

営業の現場の声を取り入れながら推進

――どのような体制で推進しましたか?

全社の営業教育ということで、人材・組織開発室がPMとなり、営業現場の声や営業の今欲しい情報をキャッチできる営業推進部という部署と一緒にクイズ・テキスト・確認テストづくりをしています。

導入後の運用と見えてきた効果

――導入後はどのように運用していますか。

毎週月曜配信とし、事務的な処理(社内への広報・社員への促進・未回答者への案内・回答状況の整理などの定型業務)はすべて自動化しておくことでコンテンツ制作に注力できるような運用をしています。

――導入して見えてきた効果と課題はありますか。

「DX時代の新教養」のクイズ回答率は90%近い回答率を継続できており、社内でDXという言葉の浸透が高まったと感じます。

一方でクイズや確認テストに答えることに慣れ始め、クイズに答えることが目的になっている人が出てきてしまいました。
マンネリ化しないようにより質が高く、社員のレベルにあった問題を提供できるように工夫をしていきたいと考えています。

現在人材・組織開発室から提供できているDX教育コンテンツは、あくまで基礎レベルです。ここで身に着けたDX・ITの知識を実践でき、商品やサービスについて語れるようになるレベルにするためにはさらなる取り組みが必要だとも感じています。

この課題を解決するためにディップではより高度なDX教育を提供するプロジェクトを開始しています。このプロジェクトは小澤が中心となって推進しています。

より高度なDX教育を展開予定

「基礎知識」から「日常業務で活用できるレベルの知識」へ

――それでは小澤さんにより高度なDX教育についてお伺いします。まずこちらのプロジェクトをなぜ導入することになったのか教えてください。

ディップで働く上で、DXの知識は最重要と言っても過言ではありません。ディップは従来の人材サービスに加え、DXサービスをクライアントに提供することで、複合的に労働力を提供するLabor force solution companyに進化しようとしています。

一方で、DXといっても定義は幅広く、個人によって認識の齟齬が生じてしまいます。再度DXを軸に世の中の流れだけでなく、技術の動向、会社の変化を捉え、日常業務に落としてもらえるようにしていくことが重要です。

ですが、先ほど長﨑から話があったように、今まで実施してきたDX基礎教育だけでは、日常業務で活用できるレベルの知識を付けることができないという課題がありました。
この課題をいち早く認識していた代表取締役COO 兼 CIO志立からDX関連の教材の導入検討を提案されたことをきっかけに導入検討が始まりました。

ディップのDXに関連した教育の現状を把握し、誰にどんなDXの知識が求められるのかを検討しより高度なDX教育を実施することになりました。

――「日常業務で活用できるレベルの知識」とありましたが、詳しく教えてください。

現場が違えば必要となる知識も異なるので、所属や職種にあわせて教材を分ける必要があると考えています。

例えば、営業の視点では、DX関連商材を売る上で、DXに関する基礎知識だけでなく、その業界のトレンドを正確に捉え、商談で提案できるようにならなければなりません。

また、企画職やエンジニア職では、技術の動向を捉え、適材適所で技術を応用していく必要があります。

今まで実施してきたDX基礎教育は、現場で活用できる専門的な知識を身に着けるための素地になります。しかし、DX関連の商材をお客様に提供していくためには、そのレベルで留まるのではなく、それぞれが自分の職掌にあわせて、さらに高度で専門的な知識を付けるフェーズにステップアップしていく必要があると考えました。

――どのようなDX教育を企画されているのでしょうか。

「一人ひとりがDXを現場に」をコンセプトにプロジェクトを進めています、例えば、営業部門は、DX商材をストーリーで語れ、コーポレート部門はデータやツールを活用でき、企画/開発は時流に合った技術活用を進められる知識を得られるように教育機会の設計を進めています。

このコンセプトを実現するには外製のコンテンツだけでは賄いきれないと考えています。ときには内製のコンテンツも設計し、ディップの現場とDXの知識をしっかりと結び付けられる教育を実践していきたいです。

最終的には全社で実施をしたいのですが、現在は、部長以上の管理職向けにDXの発展的な知識を学んでもらうべく計画を進めている最中です。より現実感を持って、自分ごととして知識を得てもらうため、ディップのDX商材を売るためのアイデアや、社内DXのアイデアを出すところまで実施する予定です。

――現在はどのような体制で推進していますか?

現在は上司の進藤※の協力を得ながら、企画提案を行っています。

今後はさらに全社的にDXの教育を提供していけるよう、必要に応じて柔軟に仲間を増やしながら取り組んでいきたいです。

(※執行役員 兼 商品開発本部副本部長)

何が必要かを考え抜き、より質の高いDX教育を創る

――今後DX教育を推進していくにあたり、小澤さんが大切にされている考えなどはありますか?

「AI」や「DX」などのトレンドワードにばかり注目して、現場をないがしろにしない教育を実施していくことを重視しています。

今進めているDXプロジェクトは、結局は、業務が効率化されて従業員が働きやすくなったり、売上が増加するなど、最終的にはなんらかの結果に好影響を及ばさなくてはいけません。

だからこそ、社会で注目されるキーワードだけでなく、社内の状況を捉え、時には内製コンテンツを作る気概をもって取り組んでいきたいと考えています。

現在、巷では多くのDX関連の教育サービスが生まれています。

一方で現場に落とし込むことを考えた際には単なる知識、トレンドの理解だけでは十分ではないと考えています。

だからこそ今回の取り組みで困難だったのは、ディップの現在の業務にどのようなDXの知識が必要なのかを考え、仮説を出し、それを解決するというプロセスを通して、質の高いDX教育の企画をおこなうことでした。

DX教育はすぐに効果が見えるわけではなく、実施する側としては不安も伴いますが、以上の点でどれだけ頭を使いきれるかというところが、長期的な視野では大きな結果につながると信じて頑張りたいと考えています。

――ありがとうございました!

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