経営陣が語るDXのポイント:現場と経営陣が理解を示し、フットワークを軽くできればDXは進んでいく

2021/04/07
2022/03/23

近年、さまざまな企業、組織でDXが進められています。DXとは、データとデジタルによって新しい価値をもたらしビジネスモデルを変革させる取り組みで、中には業界の競争環境を変化させるほどの影響をもたらしているものもあります。

そして人材サービスとDXサービスを提供しているディップも例外ではありません。

現在『レコリン』というサービスを活用した営業業務のDX化を始めとして様々なRPAやDXの取り組みを進め、人材だけでなくデジタルレイバーも提供する『労働力の総合商社』を目指しています。

こうしたディップのDX化を第一線で推進し、さらには新規AI・RPA事業の創出・運営をしているのが執行役員 兼 商品開発本部副本部長の進藤 圭です。

進藤は『いちばんやさしいRPAの教本』『いちばんやさしいDXの教本』の著者であり、社内外でこれまで多くのDX推進支援をしてきました。

今回は進藤がディップのDXの事例からみるDX成功のポイントや働き方の変化、そしてディップのこれからについて語ります。

進藤圭 プロフィール 

ディップ株式会社 執行役員 兼 商品開発本部副本部長
株式会社GAUSS取締役、株式会社JollyGood取締役

<略歴>
早稲田大学を7年かけ卒業後、ディップに新卒入社。営業職、ディレクター職を経て、開始後3年で15億円の売上に成長した看護師人材紹介「ナースではたらこ」など、40件以上のサービス企画に参加。直近では、AIアクセラレーターやDigital labor force「コボット」を提供するAI・RPA事業がある。書籍「いちばんやさしいRPAの教本」、「いちばんやさしいDXの教本」を執筆している。

ディップDX化の始まり

――ディップのDXおけるこれまでの取り組みを教えてください。

ディップという会社は営業が8割くらいの会社なので、営業の現場が一番デジタル化が求められていました。人員数も多く、ビジネスのコア。そこから手をつけるのが一番ビジネスモデルも変えやすいだろうという考えで営業から始めました。

一番最初に開発したのは「レコリン」というプロダクトです。元々メールと電話と使い勝手の悪いCRMとでやっていたアナログな業務を「レコリン」というスマホアプリに一気にまとめました。これがディップのDXへの第一歩でした。

 

業務をデジタル化していく2つ目のステップは、レコリンの中に入ったデータを使ったデジタル化です。

データというのはディップや他社に求人広告を出しているお客さんのリストです。どういう媒体にどういうお客さんが求人広告を出しているのかを分析し、どういうところに営業すれば受注しやすいかを割り出しました。

3つ目は、その営業の結果を使ったデータ分析です。営業が1500〜1600人いて、彼らが電話してアポイントを実際に取れたかの結果が入るので、ここがアポをとれやすい・とりにくいというのが簡単にわかるようになりました。

4つ目は、営業が受注した後の事務処理を効率化しました。元々は人が手で書いてPDF化した申込書を送っていたものを、レコリン上で自動で申込書が作れるようにしました。

そして、掲載する広告の原稿を自動作成するツールも作りました。過去の効果があった原稿のデータを元に、案を自動で提案してくれるものです。その画像版としてバナーの自動生成もできるようにしました。

つまり、営業がリストを作る→テレアポをする→商談をする→受注する→広告を作るという流れを全てDXツールのみでできるようにしたのがディップの営業におけるDXの変遷です。 

同じように社内事務、制作などは個別でRPAを使ったり、市販のSaaSを導入したりして事務作業を効率化していますね。

進藤の考えるDXを成功させるポイント

実際にシステムを使う人の動きを動物園みたいに観察してみる

実際にレコリンを営業に導入すると、社員から様々な意見が出てきたと進藤は話します。
新入社員からは「逆にこのツールがなかった時はどうやって営業をやってたか分からない」という声も寄せられたようで、導入の効果は大きかったと言えます。
営業の社員が望むもの・満足するものを作り出すためにどういった工夫をしたのでしょうか。

――レコリンの開発はどのように進めたのでしょうか。

一番最初は、業務全体を見た時にどこを変えたら効率が良くなるかを仮説出しします。次のステップは営業の現場に行って、営業をしている人を観察することをしました。動物園みたいな感じですね。

そこで無駄なこととかよく分からない行動をしていたら「何でこんなことやってるの」と聞きます。それを繰り返して、こんな解決策だったら解決できるんじゃないかという案を出していきます。その案をプロトタイプと呼ばれる仮のツールを作って、それを実際に使ってもらいます。うまく解決できたらシステムを作るというふうに繰り返して作ってます 。

 

――なるほど。実際にシステムを使う営業の方と一緒に作っていったということですね。

そうですね、むしろ営業が作っていると言えますね。他の会社のDXではほとんど営業の人が出てこないけれど、うちの場合は営業の人が率先して入ってやってますね。

▼レコリンの開発の裏側をさらに知りたい方はこちら

営業DXのヒケツは営業になりきること?【Sansan Innovation Summit 2020 受賞レポート】

 

デジタルツールは基本”失礼な”ツール。現場や経営層が理解を示すことが大事

近年多くの企業がDXを取り入れ始めています。新型コロナウイルスの影響でリモートワークが主流となりDX化はさらに加速しました。
業務の生産性が向上し、新たなビジネスの可能性も広がるDX。しかし、中にはDXが浸透していかない日系企業も多くあります。

――DXがうまく進んでいく会社・進まない会社の違いはどこにあるのでしょうか。ディップがうまくDX導入できているのはなぜでしょう。

DXが進んでいく会社の特徴は3つあると思います。

1つは、カジュアルな会社、フットワークが軽い会社であることです。

 ITツールというのは正直触ってみないと分からないしやってみないと分からないんです。すごく固くて真面目な会社だとそれをやるのにすごくがカロリーを消費する。なので、ディップみたいに「試してみれば?」と言えるかどうかが大きな分かれ目になっています。

2つ目はフラットな会社であること。

ITツールは同じツールを一斉にみんなで使うことで効率が何倍にもなる。言葉だってそうですよね、1つの言語だから効率が良くて、たくさんの言語があると混乱する。だから「うちの部署はこのツールを」みたいな部署の意識が強すぎる会社はうまくいかないです。ディップみたいなフラットであまりそういうこと考えずにやってる会社はうまくいくように思います。

3つ目は会社のトップです。

経営陣がデジタルなど新しい技術に興味はあるかどうかというのは、けっこう大きいです。社員がDXやろうと言っててもトップが全然興味をもってない会社はやっぱり進まない印象です。ディップは社長や経営陣が普段からITに触れたりしている分、理解があると思いますよ。

あとはね、意外と大事なところ。基本デジタルツールって日本では失礼なんですよ(笑)元々外国のものであって「恐れながら申し上げます」とか「名を名乗れ失礼だなキミは」的ないわゆるジャパニーズウェイと相性は悪いので受け入れるのが難しい日本の企業も多いんです。

 

――部署や役職の隔たりがなく風通しの良い会社がDX化を推進していけるんですね。

DXがもたらす働き方の変化  -顧客の複雑化するニーズへ対応

業務の自動化、効率化によって人の仕事が減り、やがて人の仕事がなくなるのではないかと危惧する見方も世間ではあります。しかし進藤は、DXによって雇用は減らないと語ります。
ディップの中でもDXが真っ先に進んでいる営業では今何が起きているのでしょうか。

――ディップだと営業の働き方はどう変わってきているのでしょう。

従来、求人広告の営業というのは、とりあえず色んなお客さんの所に顔を出すというやり方でした。それはお客さんがいつ求人を出すか分からなかったからです。どこに電話していいか(営業をかければ良いのか)分からない、だからとにかくガンガン営業にに出向く。これはどの求人広告会社もやっていたパターンでした。よくよく考えるとこれって迷惑な側面もありますよね。

今ディップではどうなってるかと言うと、データを活用することによって営業をかけるお客さんをある程度特定できるようになりました。だから、むやみにお客さんに飛び込みをする、テレアポをする、といったスタイルから、Web商談ツールなど、インターネットを使って営業をすることができるようになっています。

また、1人のお客さんにかける時間が増えてきました。その背景には、お客さんが求めていることの種類が複雑になってきているということがあります。今までは「アルバイトを雇えればいい」とおっしゃっていたお客さんが「 RPAを使いたい」とか「 SaaS サービスってどうやって使えばいいか教えて」とおっしゃることが増えてきてニーズが多様化しているんです。

つまり、ディップの営業では『データを使いながら営業する』という側面と、『複数の商材を1人のお客さんに売る』という側面が新しく生まれています。雇用が減るというよりは、より仕事が高度になり複雑になっていると言えますね。

こうした動きはどこの業界もみられることだと思います。

デジタルでデジタルの労働力を提供していく  -ディップの未来

――今ディップで行なっている新たなDXの取り組みを教えてください。

営業のDXではデータを使って自社の業務自動化をするという、DXの階段の2個目を今までやってきました。今取り組んでるのは、お客様をDXしようという3段階目のディップ自体のビジネスモデルを変えるって言うところです。

つまり、今まで僕らはアナログでユーザーとクライアントをマッチングして労働力を提供するというやり方でしたが、これからはそれだけでなく、デジタルでデジタルの労働力も提供するというビジネスモデルにデジタルトランスフォームしようとしてます。これが今やってる大きな軸ですね。

業務を自動化するっていうところまで来て、次は自動化をしている仕組みをお客様に販売してお客様のビジネスモデルごとデジタル化してしまう、ということをしてます。

 

――DXを進めるステップの最終段階まできているんですね!今後、ディップの未来はどうなっていくと考えておられますか。

今は人の労働力を提供しているのが全体の9割以上です。しかし、現実的には若い人はどんどん減ってきて、おじいちゃんおばあちゃんが増える。ということはひとりの人がサービスを提供する相手はどんどん増えていきます。人間の力だけでは労働力が足りなくなってきた時、ロボットとかそういうものを提供する世界に入ってくのかもしれませんね。

 

――今後も時代を先取りして進化を続ける会社となりそうです。最後に読者のみなさまに一言お願いします!

DXは楽しいです!こんなに人を楽にできる仕事はないと思うんです。「ああ、楽になったよ、ありがとう」と言ってもらえる。しかもデジタルだから限界がない。ディップのお客さんをDXできれば、提供する労働力は何万、何十万人の規模になり社会をちょっといい方向に変えることもできるんですよね。

元々人の働くを扱っているディップだからこそ、人とデジタルの組み合わせでその成果を何倍にもできる。こういう仕事ができる職場はあまりありません。是非一緒にやりましょう。

 

――熱いメッセージ、ありがとうございます!

「経営陣が語るDXのポイント」シリーズ

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