AI導入・活用推進から半年で従業員の70%が毎週ChatGPTを使うディップのAI活用企業文化の作り方【COOが語るAI活用のポイント】

2023/12/04
2023/12/05

 

はじめに

DX magazine powered by dip編集長の西野です。

ディップではAINOW、AIアクセラレータなど、2016年からAIに関する取り組みを始めており、2023年4月にはAIエージェント事業の開発開始を発表しました。また、社内でもAI活用を推奨しており、2023年11月のアンケートでは、従業員の96%がAIを利用したことがあり、70%は毎週ChatGPTを使っている、という驚異のアンケート結果になりました。

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今回、ディップの有識者がAI活用について語るインタビューの連載を始めます!
トップバッターは、COOとして熱いリーダーシップでディップを牽引する志立。AI活用が進む企業文化の作り方について聞きました。

 

プロフィール

志立正嗣

1991年凸版印刷株式会社入社。1998年よりヤフー株式会社にてサービス開発に従事。2012年より同社執行役員に就任し、広告・メディア事業・データ部門の責任者、社長室長、コーポレートグループCIO等の要職を務めた。2017年株式会社IDCフロンティア代表取締役社長に就任。2019年ディップ株式会社社外取締役、2020年同社取締役COOに就任。

 

インタビュー

ディップは圧倒的に情報システム(情シス)職種が働きやすい職場

 

西野:今日はよろしくお願いいたします。
私、知り合いの情シスの方から、「ディップはいいな」「なぜそんなに経営陣の理解があるの?」みたいな話をされることが多いんです。一体、なぜなんでしょうか?

志立:ディップは、圧倒的に情シスが働きやすい職場なんですよ。

西野:はい、私はもともと情シスとしてディップに入社したのですが、本当にすごく働きやすいです。

志立:なぜか。COOである僕が他社でCIOやったことがあるからなんです。だってこないだ鈴木さんがくるまで、僕がCIOだったんですよ。

西野:そうですね。

志立:前職のヤフー株式会社(現:LINEヤフー株式会社、以下ヤフー)でCIOをやっていたんですよね。事業責任者もやっていたけど、CIOもやったことがある。結構いろんな経験をしているんですけど。CIOをやったことがあるのは、多分すごく大きい要因です。

情シスを刷新することで、会社の風土・方向性を指し示して、モダナイズすることができる

 

志立:情シスは、費用対効果のROIが短期的には出しづらいんですが、会社の環境や風土、文化を作っていく上で、実は情シスの投資が一番効きます。情シスを刷新することによって、会社のカルチャーや風土、会社の方向性を指し示し、モダナイズすることができます。

西野:はい。

志立:そういう意味で言うと、情シスの投資は短期的よりも中長期的な会社の風土や文化、そして働き方を考える上で、1年や2年、3年といった長いスパンで投資すべき場所なんです。

残念ながら、システム投資があって普及し、みんなが使いこなして初めて成果が出るため、結構時間がかかります。ですが、投資のゴールのイメージができていれば、費用対効果は中長期的に非常に良いです。

だから、それを理解している人は情シス部門で攻めることができますし、それを理解していない人は最後の落とし前をつけるというか、つじつま合わせの守りで情報システムを考えてしまいます。そうするとコストカットされます。

西野:他社の情シスでは、IT担当の執行役員がいないところもありますね。

志立:システムの運用が負担になってくると、ときに丸投げしてしまう会社があります。実際、情シス部門をアウトソーシングするというのが、最近では流行っていますよね。しかし、そうすることで、戦略部門から外され、コストをどうやってコントロールすることのみが問われてしまう。

おそらく、会社を良くしていくために、情シスで風土を変えられるような環境ではない。会社を変える機会を捨てているということなので、もったいないです。

志立のユニークなIT系事業会社の社長・CIO経験

 

志立:あともう一つ、僕がユニークなのは、データセンターとIaaSをやっている事業会社の社長をやっていたんですよね。AWSのコンペティターをやっていました。

西野:えっ。

志立:僕が社長だったときに、GCPとその会社で戦略的提携があって。あと、顧客データ統合基盤のグローバル企業の日本の総代理店もやっていました。

西野:私は、知り合いから「あなたの会社はなんでそんなにいい感じなの?」と聞かれたとき、「2019年にヤフーからCOOが来て、ものすごく変わったよ」みたいな回答をしていたんですが、それだけじゃなかったんですね。

志立:ヤフーの中でも、情シス部門の担当を結構やっていましたよ。

多分現場と、情シスの人間として話せるCOOってあまり上場会社ではいないはずです。ディップに入る前は、CIO Japan Summitで登壇していました。

西野:すごい。ほんとうにすごいCIOだ。

志立:そうそう。前ディップ内のイベントの情熱教室にきてくれた長谷川秀樹さんとか。彼は非常勤で、コープさっぽろ、株式会社ゴーゴーカレーグループなど、何社かでCIOをやっています。そういう人たちとCIO仲間で繋がっていました。

西野:長谷川さんには、社内イベントに登壇してもらって。お話できて本当に楽しかったですね。

志立:そういうバックグラウンドがあるから、普通の会社のCOOよりは、かなり情シスに対する理解が深いし、そんなCOOはなかなかいないぞって言いたいです(笑)。

攻めのCIO

 

西野:うちのCIOって、CIOっぽくないCIOが多くないですか。新CIOの鈴木さんも結構攻めだし。志立さんもいろんなことをやっているし。

志立:いや、今のCIOは、攻めないと。

西野:私、昔からのイメージで、CIOは結構セキュリティのことに強そうな守りの人のイメージです。

志立:古くから情シスの責任者でCIOになったというトラディショナルな人たちが何をやっているかというと、ベンダーコントロールなんです。

西野:はい。

志立:例えばネットワークとかいろんなものに対して、コンペをやって見積もりを取って、ネゴシエーションをしている人が多い。だから、情シスの中にはベンダーコントロールする人しかいないことが多く、中で物を作ったりする人はほぼいないんです。

西野:じゃあ、うちの会社はちょっと変な会社なんですね。ゴリゴリ企画開発していますし…。

志立:情シスに力を入れて投資しているのは、攻めるためです。ディップを進化させるためには、まず情シスで先駆けて何をやるかにかかっていると思います。だって、今までの実績もそうでしょう。

西野:そうです。

志立:情シスで仕掛けるから、会社の風土も変わって働き方も変わってくる。Slackだってそうでしょう。働き方がガラッと変わりましたよね。

RPAだ!DXだ!AIだー!みたいなことをしてきました。それは全て、会社の進化や、会社の風土をモダナイズするために、情シスに投資をすることでスピードを上げてきたんです。ディップはそれができる会社。情シス部門に対して経営層がとても理解が深いからですね。

西野:社長の考えはいかがですか?

志立:テクノロジー、特にAIを活用して、ディップをトップランナーにしたいという思いは社長から伝えられています。ゴールを示したりビジョンを作るのはやっぱり社長の仕事だから、情シスに関しても、それはもう明確にゴールはできているんです。そして、僕は社長から、テクノロジー分野はかなりの部分を任せていただいていて、どうやるかのHOWは僕に任されています。

AIやるぞ!→半年で96%の従業員がAIを使いだす、ディップのフィロソフィー経営と企業文化

 

志立:二つ目は、これはもっと本質的な話だと思います。今まで培ったディップのフィロソフィーがあるおかげで、情シスが攻めを仕掛けたときに、現場が即座に反応して、即座に成果が出るわけです。

西野:「やるぜ!」って言ったら、「おー!」って言って頑張りますよね、みんな。

志立:Slackだって、本格導入して1ヶ月で利用率が100%近くなってNotionはアクティブユーザー率93%でしょう。

AIやるぞって言ったら、半年で96%の従業員がAI使ったことあります、ChatGPTの週間利用率は70%(※記事執筆時点)です、というのは普通の会社ではありえないです。

西野:そうなんですか…。

志立:世の中でAI活用が先進的だと言われている他社の事例だと、2月か3月にはChatGPTのAPIを繋いで、自分たちで仕組みを作って社内でこんな使ってるんですって言ってたけど、利用率は何割か聞いてみたら、2〜3割だと。その基準からすると、僕たちの70%は、本当に正直ベースか?みたいな(笑)。

西野:本当です!(笑)

志立:盛ってないか?というくらい、世の中的には異常な数字です。これはなぜできるかというと、僕らのフィロソフィーが浸透していて、やりたいと思っている社長の想い、ビジョンが浸透して、「どうやるか?」というところで社員が自主的に動けるからです。

西野:やってみよう、という風潮は強いかもしれません。

志立:そうそう。AI活用アンバサダーも言ってしまえば、ボランティアじゃないですか。250人の手が挙がって、みんなでワイワイ流行って利用率70%に持っていくって、普通の会社じゃ無理なわけです。

西野:私はアンバサダーは表彰してあげたいと思っていますね。

志立:僕らが持っている文化の力。それがベースにあって、それを僕らが情シスをモダナイズすることによって、より強化されていく。この良いスパイラルが回ってるところが、二つ目の大きいポイントなんじゃないかな。

西野:他社からしたら、あんま真似できないですよね…。

私、DX magazineの記事を書いていて、他社の参考になれば嬉しいですって書こうかなといつも思うんです。でも、いや、うちの風土とかあってできたことだから…というのがあって、書きづらくて。

志立:情シス投資が活かされる前提として、会社のフィロソフィーが浸透しているというのが、実はとても大事なんです。経営、情シス、現場が、同じ方向を向いてドーンと走れるかどうかは、企業文化や環境の要因がすごく大きいので。

ディップがAIを使って作りたい世界

 

西野:ディップは、2020年から取り組んできたDXを経て、2023年からはAI活用に取り組みます。これからはどういう世界を作っていくんでしょうか?

志立:AIを活用した事業と、業務生産性向上に取り組みます。特に、AIエージェント事業。これは社会に幸せなマッチングを増やしていくものです。

西野:今までのDXと、新たなAI活用とでは、何が変わるのでしょうか。

志立:「システム」と「人」の距離感が、優しく縮まります。

「システム」は、プロセスやルールを記載してプログラムを書けば、その通りに動いてくれます。

「人」はそんなに大量にはできないけど、クリエイティビティがあって、非定型なことが得意で、でも、時々間違えます。

DXは、大量に処理するシステム側に投資をして、システムの方に人をアジャストして、人間中心ではない働き方で生産性を上げるというアプローチでした。システムというのはルールベースで、基本人がシステムのルールに合わせる働き方にしないといけませんでした。

そして、今度は「システム」と「人」の間に、AIが出てきました。

AIが入ることによって、自然言語でいろいろな課題解決ができるようになります。ルールでガチガチだったシステムが、AIによって会話が可能になり、どんどん人に寄ってきてくれるようになるんです。

西野:システム側に柔軟性がでてくるんですね。

志立:システムが人に寄り添い、人がより働きやすく、自分中心で働き方やプロセスを考えられるようになるんです。これはすごい可能性を秘めています。

「システム」は、AIによってより機能が強化され、柔軟に、人に優しくなっていく。そして、「人」は、AIを自分のアシスタントのように使いこなすことで、モビルスーツのように能力が拡張し、強化されていきます。

僕らは、この二軸のアプローチをしています。

自分の気持ちが不明確でも、対話の中から自分のやりたいことを見つけられるAIエージェントが作る幸せマッチング

 

志立:今までのウェブサービスは、「トップページに来たら検索ワードを入れろ」「どこのカテゴリーだ」「条件を入力しろ」って。結局、システムが答えを出すための条件を、システムに合わせてインプットしないと答えが出ない仕組みでした。

けれど、ChatGPTを始めとする生成AIができたおかげで、人が自然に対話する中で、システムに対してちゃんと最適な条件を与えてあげることができるようになっています。

西野:なるほど。

志立:ディップはAIエージェント事業によって、従来の、検索のQueryとしての条件が明確な人しか使いこなせなかった求人サイトから、対話をベースに人に寄り添うサービスへと、まったく異なる進化を遂げることを目指しています。

不明確な気持ちを抱えていても、対話の中から自分のやりたいことを見つけられるようになります。自分が望んでること、自分が避けたいことを会話の中から見つけていくことができるんです。自分の中で潜在的にあった深いニーズに対して最適な答えがくるから、マッチング精度アップに決まっていますよね。

西野:はい。

志立:AIの台頭によって、「システム」が「人」に寄り添ってくれるようになった。だから、これからは、従来のシステムに人が合わせるアプローチと比べて、幸せになるしかないですよ。先日のビジネスカンファレンスでもお伝えした通り、AIエージェントは『幸せマッチング』というキャッチコピーです。

西野:いいキャッチコピーすぎる。大好きです。

志立:AIを使って、システムがもっと人に寄り添うような環境に会社がなれば、それはもっと幸せな働き方になる。西野さん社内DXとAI活用担当でしょ。よろしくね。

西野:がんばります(笑)。