経営陣が語るDXのポイント:継続的に進化できるシステム環境と組織に作り変えたい

2021/06/16
2022/03/23

この記事は、ディップをけん引するトップたちがDXをどのように捉え、ディップの未来をどのように描こうとしているのかを伝えていく「経営陣が語るDXのポイント」シリーズです。

ディップは「カケザンプロジェクト」や営業支援アプリ「レコリン」など、社内業務の自動化やDXを進めてきました。そして現在では、お客様に対してもデジタルサービスの提供を開始し、特に中小企業のDXを推進しています。デジタルレイバーの提供による業務の自動化や、どこよりも早く採用が決まる求人サービスを目指した改良など、さまざまな取り組みが行われています。

今回の記事では、人材領域とDX領域の双方からさまざまなサービスを提供するディップのシステム基盤を担う開発部門を統括するCTO・豊濱 吉庸にインタビューしました。

豊濱は2020年11月にディップにジョインしたばかりです。今大きく変革が起きようとしているディップで豊濱はエンジニアとして、CTOとして何に取り組み、どこを目指すのか聞きました。

豊濱 吉庸 プロフィール

執行役員 兼 CTO(最高技術責任者) 2020年11月入社。大手ITサービス企業ではコンテンツの設計・開発、開発リーダー、テクニカルディレクター、CTO-Boardのキャプテンなどを担当。その後は、さまざまな企業にてシステムアーキテクチャを担当。ディップ初のCTOとしてジョイン。

ディップのエンジニアに求められる働きとは

内製化への一歩は社内のイニシアチブを高めること

ディップは2021年4月に「中期経営戦略 dip2025」を発表し、その中で「ガンガン作れる200人体制」という戦略を掲げています。

これは現在の「外注中心」の開発体制から、「内製中心」の体制に変えていく計画です。アイデア、設計、開発を社内で主導的に行っていくことで多くの事業やサービスをスピーディーに産むことができるようになります。

――商品開発の内製化を進める狙いは何でしょうか。

現在、システム開発部は社員のエンジニアと業務委託(外注)エンジニアの比率が1:4ぐらいで、実際にコードを書いているエンジニアの比率だと1:8ぐらいです。業務委託の方の協力の上に成り立っているといえます。

理想としては、社員でまずどういう形が最適かを考え、それを実現するために内部の力が不足しているときに業務委託の方の力を借りる、という形だと思っていて、それが理想とする内製化なのかなと感じています。

――「ガンガン作れる200人体制」というのはエンジニアの社員を200人採用していくという意味でしょうか。

どちらかというと「200人雇うくらいの気持ちでいくぞ」ということを表していますね(笑)エンジニアは一人ひとりの能力には、とても差があります。単純に10年エンジニアをしてきた人の中でもスキルが全く違うこともあります。なので単純に200人雇えばいいというわけではないのでそこは難しい部分です。

一方で、200人というのは目安でありながらも、あながち外れていない数字だと思っています。エンジニアを社内で増やすことができれば、システムをどうしていくかを社員で決めて、必要なときに外部の力を借りられる組織ができると思ってます。

「ディップでやりたいことがある」エンジニアを増やしていきたい

ディップの開発組織では、開発の規模をはかるために人月という概念を使用しています。これまでエンジニアの評価は「大きいプロジェクトを遂行した」など開発規模での評価がなされることが多かったのです。

これに対して豊濱は「エンジニアの評価制度を変えていきたい」とし、成果に対する評価の仕方やディップのエンジニアに求める素質について語りました。

――エンジニアの評価制度についてどうお考えですか。

本来であれば、より少ない工数で最大限の効果を生む方が正しいですよね。5日で作ったものが300万人に使われるほうが大成功ですよね。

にも関わらず、開発力とか開発の規模を図るのに”人月”でやろうとしてるところがあります。この理論で評価すると、先ほど言った5日でいいものを作ったことが評価されないですよね。
人月に変わる指標を作らなくてはいけないなと考えています。

――かけた時間やプロジェクト規模にこだわるのではなく、売れるいいものを作ろうという視点ですね。エンジニアに必要な要素はなんでしょう。

エンジニアはプロダクトを作るスキルだけでなく、企画視点を持っていることも重要です。作り方を一番知ってるのはエンジニアのはずですから、エンジニアも主体的に動く必要があると思います。
ディップにいる人たちは「ここでなにかしらやりたい」と思ってくれてる人ばかりで、この会社で実現したいことがある人が多いと感じています。これからエンジニアを採用していく上でもそういうマインドを持っている人を積極的に採用していきたいですね。

――エンジニアはAIやDXなど、求められる技術やトレンドが目まぐるしく変わる世界にいると思います。そうした中でこれからのエンジニアには何が求められるんでしょうか。

僕自身、一生エンジニアでいたいと思ってます。しかし、「エンジニア」と呼ばれ続けるためには、環境の変化が激しい中でそこにコミットしている人にならなくてはいけません。常に勉強して「エンジニアって何だろう」「自分たちって何をするべきなんだろう」という情報収集をして自分のものにできる人がエンジニアには必要です。

かつ、ディップのような事業会社のエンジニアは、単に作るだけとか技術者のエゴにならずに事業の貢献できるかが重要ですね。技術一本で研究をし続ける研究所のようなやり方ではなく、最小の努力で最大の効果を生むことができる方が望ましいです。

柔軟で、効率の良いWebシステムに進化させる

ディップのプロダクトの課題と取り組み -継続的に作り変えられる土台作り

――これからDXが進んでいく中で今のディップのプロダクトに足りていないことはなんでしょうか。

本来、Webシステムは常に進化していかなくてはいけません。10年経つとこの世界はかなり変わってきますし、かつてよりも効率良く・早く・より良いものを提供できるようになっています。ですが現状は、荒っぽく言うと10年前のシステムを10年後の今も使っているというような状態です。新しい技術をすぐに導入しようとしてもできない状態なのは課題だと思います。

もう1つあります。エンジニア以外も含めた、プロダクトを開発するフローが硬派だと感じています。

「ノリで3日くらいで作って出しちゃおうぜ」っていうのが言いづらい雰囲気がありますね。今のスタートアップは2〜3ヶ月で作って、ユーザーからフィードバックしてもらって、改善していくというやり方でやっています。それが大きい会社だからできないというわけではないと思っています。ディップは小さくはやく作るというやり方に”慣れてない”というのが課題ですね。

――そうした課題を解決するために、どのような取り組みをされていますか。

まずはクラウド技術の活用ですね。
うまく使うことでメンテナンスや運用業務、リリース作業などを自動化・省力化し、ミスを減らした上で、人間はより人間にしかできない部分により集中する、という形を目指しています。

あとはこのような技術的改善を継続的に進められる組織や仕組みを作るところです。これから出てくる技術を使いこなすには一度ドカンとやって終わりではなく、改善をし続けられる環境が大事で、結果的に一番事業に貢献できると考えています。

これを繰り返していけば、小さく早く作る環境ができ、みんながそのやり方に慣れて、ノリで3日ぐらいで出しちゃおうぜって感じになれるのではないかと思っています。

最小の工数で最大効果を生むための開発体制を整える

――より良い製品を作るために求められる組織やプロジェクトの進め方について教えてください。例えば、現在は企画を考えるMP(メディアプロデューサー)と実際に作るシステム開発は部署が分かれていますが、ここが統合されることはないんでしょうか。

僕も一緒にやっていくことが理想だと思ってます。何かを作ろうとしたときに、詳細を詰めてからエンジニアに渡すという作り方ではなく、最初からエンジニアもチームにいる状態で作り始める体制にしたいですね。初めからみんなで動きながら考えて、最小の工数で最大効果生むために少しずつ前に進んでいくというやり方でやっていきたいと考えています。いわゆるアジャイル開発・スプリントと呼ばれているものです。

また、プロダクトやサービスを作っていると最初からいろんな機能を載せたくなるものです(笑)「小さく作る」って簡単そうですが実はとても難しいんですね。Apple社の製品とか見てると分かると思いますが、極端にボタンや端子を減らしたりしてますよね。足すのは簡単ですが引くのは難しい。でも、そうやって本当に必要なものはなにか、を突き詰めたときに良い製品ができると思ってます。

“5年後、誰かにCTOを渡したい” そのときまでにエンジニア組織を成長させる

これまでディップにはCTOという役職はありませんでしたが、昨年末(2020年11月)に豊濱が初のCTOとして着任しました。技術領域における最高責任者が着任したことで、ディップの意思決定はどう変わっていくのでしょうか。

――これから大きく変わっていこうとしているディップにおいて、CTOの設置はどのような意味をもつと考えていますか。

CTOがいることで、社内外へのメッセージの発信力が強くなると思っています。

経営やプロジェクトの判断をする際にシステムサイドに立って判断できることは重要です。例えば、システムのメンテナンスをどのくらいの頻度や規模、お金をかけて行っていくべきなのかを会議で提言できることで、経営的な視点と技術的な視点を合わせた意思決定ができると思います。

――豊濱さんのCTOとしてのミッションをお聞かせください。

僕は5年後にCTOを誰かに渡したいと思ってます。「進化していかなきゃエンジニアじゃない」と僕が言ってるのに、僕自身がCTOを10年20年もやってたら違うと思うんですよね(笑)

例えば、2025〜2026年くらいに誰かにCTOを渡すには、それだけエンジニアがたくさんいて組織が成長し、適切な環境が整わなくてはできません。有象無象の中で価値のあることを実現していくことはそれなりの経験がないとできないですし、モチベーションが保てないと思います。あと5年でそれくらいのところまで組織を作っていき、誰かにCTOを渡せたらいい感じにミッションが達成できたということになると思っています。

――かっこいいビジョンですね! 5年後、豊濱さんはなにをしたいのですか。

現在、組織設計とかCTOという範疇を越えてやってることも多いです。なので、全然違う事業にコミットするのもありですね。この会社だったらできることがたくさんあると思ってます。こんなにいい人がいて、いろんなことに挑戦できる会社ってあまりないのでディップはとてもいい環境です。

――貴重なお話、ありがとうございました!

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