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ソフトバンクグループがAIへの投資を加速させています。
「AIを制するものが未来を制する」という考えのもと、孫正義氏はAIを生かした各産業のトップ企業同士のグループを形成する「AI群戦略」を構想していることが、2018年7月に開催されたSoftBank World 2018にて明らかになりました。
ソフトバンクのAI群を構成する企業も既存の産業に大きなインパクトを与えうるような革新的で高い技術力を持った企業ばかりが揃っています。
そのようなトップ企業ばかりで構成された企業グループは、効率化や低コスト化など現在の産業や生活環境に大きな変革を未来にもたらすに違いありません。
そこで今回は、そのような孫正義氏が掲げるAI群戦略について、その概要と構成企業についてご紹介していこうと思います。
AI群戦略とは
AI群戦略とはソフトバンクが世界の各産業のAI関連のトップ企業に出資することで、形成する企業グループ戦略です。
現在、AIの技術は急速に進化し、幅広い産業に対して大きな影響を与えつつあります。ソフトバンクは「AIを制するものが未来を制す」という考えのもと、さまざまな産業のトップ企業が協力し、AIを生かして、産業を従来の形からより新しいものへと再定義することを目指しています。
ソフトバンクが目指す企業グループは各企業がお互いに情報や技術、能力を交換して助け合い、またソフトバンクの持つノウハウを各企業が活用して企業価値を高め合うグループです。
そのような企業グループが成功すれば、私たちを取り巻く環境も急速に進んでいくに間違いありません。
目次
ソフトバンクが出資した主な企業
ソフトバンクはソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)というファンドを設立しています。投資先として選ぶ企業は交通から自動車、ソフト開発など幅広い分野に渡ります。どの企業も、自社の事業にAIを生かすことで、社会に貢献し、業界に対して大きなインパクトを与えることを目指しています。
(1)DiDi
国:中国
事業:AI配車サービス
サービス内容:世界最大規模の交通プラットフォームを手がけています。特に、AIを生かした需要予測とスマート配車システムを活用したスマートフォンによるタクシーの配車サービスを展開しており、タクシーの大幅なサービス向上が期待できます。乗客はアプリで配車をし、タクシーが来るまでの時間も確認することができます。運賃はあらかじめ登録したクレジットカードから支払われます。また、運転手は需要の高い地域を地図で確認でき、効率的に乗客を拾うことができます。
(2)Petuum
国:アメリカ
事業:ソフトウェア開発
サービス内容:AIの基本である機械学習の開発のためのソフトウェアを開発しています。特に、機械学習開発におけるデータの用意と機械学習のモデル選択を自動化するソフトウェアとユーザーが使用しているハードウェアに合わせて最適化するソフトウェアの開発に力を入れています。同社は初心者からエキスパートまで幅広く使うことができるソフトウェアの開発を目指しています。
(3)Cruise Automation
国:アメリカ
事業:自動運転システム開発
サービス内容:運転者が不要の無人自動車によるAIを生かした自動運転システムを開発しています。すでに路上でのテストも終了しており、高度なマッピングシステムの導入にも成功しています。自動運転技術が普及すれば、渋滞の緩和や、自動ブレーキによる交通事故が現象、運転手の負担の軽減などメリットが大きいことから、自動運転技術への期待は大きいと言えます。
(4)Paytm
国:インド
事業:決済サービス
サービス内容:アプリを通じた決済サービスをインド国内で3億人のアプリ登録者を抱えています。同社のアプリ「Paytm Wallet」では航空券やタクシーの手配、通信料や電気代の支払いを行うことができます。今まで煩雑だったさまざまな決済をスマホ1つでできるようになったことから、人々の生活を大きく変えていく企業だと言えます。
(5)Zhongan
国:中国
事業:保険
サービス内容:インターネットによる保険販売を行う企業です。同社ではビッグデータを活用し、顧客の個人情報や特徴からAIによって、同じ保険商品でも個人によって異なる価格での販売を可能にしています。2016年度の顧客数はなんと4.92億人、保険の契約数は72億件で圧倒的な規模を誇っています。さらに、顧客一人当たりの平均保険購入単価は2016年で9.3元(約155円)と非常に安いのが特徴です。
具体的な保険の内容は、通販で商品を購入した際に商品に問題があれば、返品の際の送料を保証してもらえる保険があります。また、大手旅行サイトと提携している保険では、顧客が搭乗する飛行機が遅延した際に、遅延時間に応じた補償が受け取れるというものもあります。
このように、多種多様な保険を低価格で多数の顧客に販売しているのが特徴です。
(6)Guardant Health
国:アメリカ
事業:ガンの早期発見
サービス内容:ガンの早期発見を目指すスタートアップです。「Guardant360」という血液検査による検査方法の開発を進めています。この方法を使えば、患者の血液サンプルを取るだけで、血液中の死んだガン細胞のDNAを測定し、ガンを発見することができます。
同社はガンの早期発見に必要なデータを大量のガン患者から得て、AIによってそれらのデータからガンの複雑な構造の理解を進めています。
(7)平安健康醫療科技有限公司
国:中国
事業:ヘルスケアサービス
サービス内容:平安健康医療技術有限会社は中国のヘルスケアテックの先駆者です。2016年以降、MAUと
デイリーオンライン数において全国最大数を誇るオンライン医療プラットフォームを提供しています。
オンライン医療相談、健康グッズ販売や健康管理などをプラットフォームで提供し、200万人ものユーザー数を抱えています。
2018年より、人工知能のサポートを受けた医療人員によるサービスを開始。登録商品数はすでに17万を超えています。
プラットフォーム上では、3000院以上の病院、1100軒の検査センター、500院の歯科病院と、7500個のファーマシーを持つ医療における世界最大のエコシステムを作り、科学で人類の健康に寄与するというビジョンを持っています。現在、当プラットフォームが持つ国内最大級のユーザー数は他社の新規参入が難しいまでの規模になっています。
(8)Mapbox
国:アメリカ
事業:地図サービス
サービス内容:リアルタイムでのレンダリングをするベクター地図やナビゲーションサービス、地図検索サービスを提供するアメリカのベンチャー企業です。
同社の位置情報技術は自動車のナビゲーション技術や自動運転技術に活かすことができ、ソフトバンクからの出資を使って自動車用のコンピュータビジョン技術を生かした機器の新たな開発を目指しています。
(9)Cohesity
国:アメリカ
事業:ストレージ開発
サービス内容:ハイパーコンバージド型セカンダリストレージシステムの提供を手掛ける企業です。バックアップや分析などの膨大なデータを企業が統合することができるように支援しています。
同社は半年間で、200以上の新規顧客を獲得し、世界的に事業規模を拡大している企業です。同社はソフトバンクからの出資を使ってよりグローバル展開を強化することを目指しています。
(10)Arm
国:イギリス
事業;半導体
サービス内容:スマートフォン向けの半導体の設計をしているイギリスの大手企業です。
同社の半導体は省電力・高セキュリティが特徴で、世界では85%ものシェアを誇っており、他者に比べて圧倒的に高いです。同社の収入源は主に知的財産からの収益です。半導体の設計図を製造会社に渡すことでライセンス料を得て、さらに生産もさせることでロイヤリティを得ています。
また、同社はアメリカで日本人によって経営されているデータ分析企業トレジャーデータの買収を決定しました。この買収は同社のIoTビジネスへの強化の狙いがあるとみられております。
国内の学生を取り組むDEEPCOREの取り組み
ソフトバンクはSVFによって、世界の大手企業に出資するだけでなく、国内の学生を取り込み、新たな事業を作っていく取り組みも行っています。
2018年8月8日にソフトバンク子会社である株式会社ディープコアが学生中心のインキュベーション施設「KERNEL HONGO」をオープンしました。
AI技術者や研究者たちの拠点となるAI特化型インキュベーション施設「KERNEL HONGO」は技術で世界を変える志を持つAI技術者や研究者などを起業家として育成する、AI特化型インキュベーション施設です。
公募で選ばれた対象メンバー(以下「KERNELメンバー」)に、コミュニティを提供し、企業や研究機関などとの共同実証実験や、多様な交流の機会を通して自らの内なる可能性に気づき、社会にインパクトを与えるイノベーションを起こす人材に成長する場を提供します。
世界に通用する破壊的イノベーションを起こすことを目指しています。
同じ目標や興味を持つKERNELメンバーと交流し、情報交換や共同プロジェクトを行うことで、幅広いネットワークを築くことができます。
詳しくは以下の記事からご覧ください。
慶應義塾大学商学部に在籍中
AINOWのWEBライターをやってます。
人工知能(AI)に関するまとめ記事やコラムを掲載します。
趣味はクラシック音楽鑑賞、旅行、お酒です。