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デジタル技術を浸透させて、ビジネスを変革させる、デジタルトランスフォーメーション(DX)。今、AIやRPAなどの技術とともに注目されています。
特に、少子高齢化による労働力不足が問題氏される今、DXへの期待とニーズは高まるばかりです。
一方で、どのような業務がDXで変革されていくのでしょうか。具体的に自分の会社や業務のでどのようにDXをはじめていけばいいかわからないと思っている人はいませんか。
この記事では、多くの分野に渡って、DXの事例を紹介します。実際に具体例を知ることで、自社の業務と照らし合わせ、自社に応用できるかを検討しやすくなります。
DXとは
そもそもDXとは何でしょうか。
IDC社は、DXを「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラ ットフォーム(クラウド、ビッグデータ、モビリティ、ソーシャル、)を利用して、 新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
簡単に略すと「デジタル技術でビジネスを変革して、価値を創出すること」と言えます。
デジタル技術のなかでも、特に今注目されているのはAI技術です。技術的な発展によって精度をあげたAIは、多くの業務に応用されています。
▼AIについてもっと詳しくはコチラ
また、RPAの注目度も高まっています。RPAとは、コンピュータ上の繰り返される単純業務を、ロボットにやってもらうシステムのことです。
▼RPAについてもっと詳しくはコチラ
それでは、AIやRPAが導入されていないと、DXと言えないでしょうか。そんなことはありません。DXで大切なことは、デジタル技術を用いて課題解決や、新しい価値の創造に繋げることです。
AIやRPAなどの手段が頭でっかちになっている場合は、むしろ評価されるべきではないでしょう。現場の課題に対して、技術をあくまで手段として適応させるのが欠かせません。
今回の記事では、実際にDXを行った30の事例を紹介します。この記事をみて、どんな課題や業務に対して、どういう手段が有効なのかを、少しでも掴んでいただけると幸いです。
▼DXの定義や方法論について、もっと詳しくはコチラ
DXの事例
業種別で30の事例を集めています。
この記事の主な使いかた
- 自社と同じか近い業界から選ぶ(事例は業界別にまとめています。)
- 「取り入れられるかどうか」の視点で読む
- より、詳細が気になる場合は、各事例のリンク先に飛ぶ
IT・インターネット業
労務の社内ポータルの導入
ジタルマーケティング事業を展開している株式会社キュービックは、株式会社SmartHRの展開するSmartHRを導入しています。業務効率化や、情報正確性を担保するのが目的とのこと。実際に入社手続きにかかる時間が、1/2に削減されるなどの効果がでました。
参照:https://smarthr.jp/case/cuebic/
文字認識AIの活用
オーダーメイドスーツ・シャツを扱う株式会社FABRIC TOKYOは、株式会社Cogent Labsの手書き文字認識AI「Tegaki」を活用して、採寸を行っています。手書きの採寸表を読み取る文字認識AIの導入で、労働時間を月180時間削減しました。
参照:https://www.tegaki.ai/user-case-fabric-tokyo/
人事部門でのRPA活用
株式会社アシストは、人事部門にRPAを導入しています。およそ20体のロボットを稼働させて、1年あたり約370時間削減することに成功しています。特に、勤怠システムからデータを抽出して加工する作業は、間違いが許されず複数人でチェックしていたため、膨大な時間がかかっており、効果が大きかったとのことです。
参照:https://it.impressbm.co.jp/articles/-/18679
食品・飲食業
モバイルアプリの導入
スターバックスのモバイルアプリは、強化学習の技術を使って、ユーザーに最適化された、オススメの商品を提供するようにしています。最寄りの店舗の在庫、任期商品、ユーザーの注文履歴などを反して、オススメの商品を推奨します。
マーケティングの自動化
江崎グリコ株式会社は、商談率をあげるためにセールスフォース・ドットコムによるマーケティングオートメーション(MA)を導入しました。特に、法人向けの備蓄食料サービスで成果がでており、問い合わせからの受注率が100%になりました。
参照:https://www.salesforce.com/jp/customer-success-stories/glico/
原価管理のデジタル化
『骨付鳥・からあげ・ハイボール がブリチキン。』を中心に、バルやダイニングなど12業態を運営する株式会社ブルームダイニングサービスは、原価管理をデジタル化し、事業拡大に繋げています。具体的には、商品の価格や規格が数字ではっきり分かり、簡単に管理できるようになったといいます。
参照:https://www.infomart.co.jp/case/0135.asp
製造業の事例
社内システムのDX
京セラ株式会社は、社内DXに多額の資金を投じている企業です。具体的な内容は明らかにしていませんが、今後数年に年あたり100億円以上を投じるとしており、社内DX担当の求人も行っています。
参照:https://newswitch.jp/p/20581
SaaS型のERPソリューション
株式会社スノーピークは、NTTデータグローバルソリューションズの支援のもと、IT基盤にSaaS型ERPソリューションを採用しました。同社は、韓国や台湾などに海外進出を進めていましたが、IT基盤は統一されおらず、事業横断的な活用ができていない課題がありました。そこで新たに、英国と米国に進出するのに際し、SaaS型のERPソリューションを導入。日本から、海外の子会社をマネジメントしやすくなったとのことです。
参照:https://www.nttdata-gsl.co.jp/case/snowpeak.html
営業システムのデジタル化
トヨタ自動車は、オンプレ基幹システムとクラウド型CRM(顧客管理システム)を「Salesforce」を連携させ、顧客情報を横断的に活用できるようにしました。これにより、販売会社の営業活動効率化を図るのが狙いです。
参照:https://japan.zdnet.com/extra/terrasky_toyota_201906/35139036/
相場情報のレポーティングなどに対するRPAの導入
コニカミノルタ株式会社は、オートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社のRPAソフトウェアを導入することによって、約24,000時間の業務時間の削減を実現しました。例えば、相場情報に関するレポート作成や商品化計画の配信や、受注登録や販売実績集約にRPAを導入しています。
参照:https://www.atpress.ne.jp/news/204394
RPAによる自動キッティング
KDDIエボルバの西日本物流センター、東日本物流センターでは、法人向けスマートフォン、タブレット、データカードなどの初期設定業務を請け負っています。そこで、RPAを導入して、キッティング自動化システムを自社開発。androidの場合は、78%、iOSの場合は、35%の自動化を実現しています。
参照:https://www.k-evolva.com/case/ict/rpa.html
利用者登録・削除などの典型業務にRPA導入
アズビル株式会社は、製品ライフサイクル管理システムの業務にRPAを導入しています。利用者登録・削除、登録情報の閲覧許可などの典型業務に対して、20以上のロボットが稼働。作業時間を5カ月間で約200時間削減し、入力ミスなどの人的エラーもゼロにできたといいます。
参照:https://it.impressbm.co.jp/articles/-/19447
200以上のRPAによるDX
株式会社リコーは、RPAを導入した業務改革を進めていると言います。購買単価の分析データの作成、評価用プリントジョブ作成業務の自動化など、200以上のロボットを稼働させています。結果として、月1600時間分の業務削減にも成功しています。4人の技術者を含む専門部隊を作ったのがポイントとのことです。
参照:https://newswitch.jp/p/16204
金融業の事例
次世代ATM
株式会社セブン銀行と、日本電気株式会社は、2019年9月顔認証技術を搭載した次世代ATMを開発し、搭載を進めています。顔認証技術を通じて、スムーズな本人確認を実現しています。
参照:https://jpn.nec.com/press/201909/20190912_01.html
地方銀行のDX戦略
横浜銀行は、2020年3月までに約300業務で年間20万時間以上の業務量を削減するという目標を打ち出しています。2017年10月の本格導入から約半年間で、5業務を対象に5000時間の削減に既に成功しているとのこと。例えば、デスクトップPCから社内イントラを通じて自社の顧客管理システム、取引履歴検索システムなどにアクセスし、照会内容を入力した回答書を印刷する業務などが自動化の対象となりました。
参照:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1902/15/news089.html
銀行の渉外営業にDX
栃木銀行は、渉外営業スタッフの事務作業時間を年間2万1000時間削減に実現しています。複数の書類に必要だったサインの簡素化や事務処理の効率化によって実現したといいます。システムには、インテックのクラウドCRMサービス「F3(エフキューブ)クラウド」が導入されています。
参照:https://japan.cnet.com/article/35145767/
建設業の事例
バックホウ自律運転システム
株式会社大林組、日本電気株式会社、大裕株式会社は、土砂の積み込み作業を自動化するシステムを開発しました。建設業は、労働力不足が問題になっており、自動化は生産性向上の一助となると考えれます。
参照:https://jpn.nec.com/press/201907/20190719_01.html
広告業の事例
ダイナミックビークルスクリーン
株式会社NTTドコモ、埼玉高速鉄道株式会社、株式会社ビズライト・テクノロジー、株式会社 LIVE BOARDの4社による、車両内に搭載する「ダイナミックビークルスクリーン」の活用が進んでいます。AIが電車のなかにいる人を認識、分析することで、最適化された広告がスクリーンに流れます。効率的な広告運用が可能です。
参照:
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52678160X21C19A1L72000/
https://www.s-rail.co.jp/public/dynamic-vehicle-screen-faq.php
物流業
タクシーのデジタル化による利便性の向上
Uberは、配車をお願いしたいユーザーと、車と時間が余っているユーザーを繋げるサービスです。日本では、法規制との関係で一般の人がドライバーとなることは実現していません。このサービスは従来の配車サービスの、料金表示をデジタル化することで、事前に利用料金が分かるようになっています(日本では実現していない)。また、ドライバーの質を担保するために、デジタル端末上で、評価をする仕組みも導入されています。
参照:https://www.uber.com/jp/ja/
郵送コストの削減
富士通はA*Quantum社と共同で、日本郵便様の埼玉県新岩槻郵便局における運送便の最適化に取り組みました。輸送コストを、最小にてきような、ルートをデータを用いて算出。量子コンピューティングに着想を得た組合せ最適化問題を高速に解く新技術を使ったとのことです。従来⼿法と比べて便数を52から48に削減することが可能にしています。
参照:https://blog.global.fujitsu.com/jp/2019-09-10/02/
船舶の衝突リスク予測
シンガポール海事港湾庁(MPA)と富士通は、船舶の衝突リスクを予測するAIを開発しました。下手すると大事故に繋がりかねない海上交通の安全確保は、常に研究が進められてきました。特に、船舶業務や船舶とセンター間の意思疎通が複雑になった分、衝突リスクの予測が一層求められます。そこで、AIを使ったシステムを使うことで、海上交通の安全性を向上させることができます。
参照:https://blog.global.fujitsu.com/jp/2019-09-10/02/
イノベーションモデル空港
全日本空輸株式会社は、九州佐賀国際空港を、佐賀県の協力のもと、イノベーションモデル空港と位置付けています。具体的には、ロボットスーツを活用し重量物の運搬の負担を軽減したり、航空機の移動をリモートコントロールで行えるようにしたりしています。
参照:https://www.anahd.co.jp/group/pr/201903/20190326.html
物流業で、100万時間削減へ
日本通運株式会社は、定型的かつ単純な業務に対してRPAを積極的に導入する方針を打ち出しています。2021年度末までに累計500台のロボットを導入し、作業時間を100万時間削減することを目標にしています。例えば通運業務では、コンテナ発送貨物の着通運業者へのスポット発注と支払業務の、自動化を実現しました。
参照:http://cargo-news.co.jp/cargo-news-main/2083
データ入力業務の自動化
トッパン・フォームズ株式会社は、購買用Webサイトから発注したデータを自社システムに連携する業務において、RPAを導入しました。これが、年間で約384時間の削減に繋がりました。担当者からも空いた時間で更なる業務の見直しができると好評の声があがっています。
参照:https://solutions.toppan-f.co.jp/feature/4430/
人材業
記事配信の自動化
ディップ株式会社が運営する、日本最大級スタートアップ専門メディア「スタートアップタイムズ」において、RPAを導入。インタビュー記事の自動化を実現しました。これにより、記事作成にかかる時間を9割削減しました。
参照:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001027.000002302.html
プロジェクトを横断するクラウドの導入
株式会社リクルートライフスタイルは、Googleの開発したGoogle Cloud Platformを導入することで、サービスの速度・質・規模が変化したと言います。特に、データを集めて加工して、演算して、配信するというプロセスが、大幅に効率化、短縮されました。
参照:https://www.slideshare.net/GoogleCloudPlatformJP/cloud-onair-2018712
RPAで人材系の提携業務を自動化
株式会社フルキャストホールディングスは、スターティアレイズ株式会社の開発するRPAサービスのRobo-Patを導入しました。さまざまな業務にRPAを導入しましたが、特に効果を感じたのコンタクト履歴入力業務だといいます。会社全体で月500時間に削減に成功しています。
参照:https://reiworq.com/case/1080/
行政の事例
北九州市は、名刺の電子管理ツールのSansanを導入しました。名刺管理において、膨大な工数をかけていました。結果として、人脈が有効活用されない現実がありました。そこで、電子化して管理することで、工数が削減され、時間の創出が進みました。
参照:https://jp.sansan.com/case/kitakyushu/
不動産業
株式会社オープンハウスは、AI・RPAを駆使して、年間25,700時間の工数削減に成功しています。具体的には、AIを活用した区割り提案システム、顧客提案資料の抜粋と編集の自動化、物件関連資料の送信のRPAによる自動化を実現しています。
参照:https://ainow.ai/2019/11/05/180621/
教育業
株式会社ベネッセインフォシェルは、日立の統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」を採用し、2800時間分のITシステム運用業務の削減に成功しています。JP1は、IT環境全体の運用状況や、RPA利用の可視化などを可能にするシステムです。
参照:https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1225025.html
おわりに
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このように事例をみていると、やはり現場の課題と技術のミスマッチがないものが成功例になっていると感じられます。
まずは自社の業務を見直して、課題を洗い出してみましょう。そこから、事例を参考にしなつつ、デジタル化の方法論を選んでいくのがおすすめです。
その際AI技術を使ったような、大きな施策をうつ必要はありません。会議をオンラインにしてみる。Googleスプレッドシートで情報共有してみる。こういった小さくて簡単な、効率化を侮らずに進めていくことがDXの第一歩だと考えます。