みなさんはディープラーニング協会という組織を知っていますか。
本記事を読んでいる方の中には「ディープラーニングについては知っているけど、ディープラーニング協会についてはよくわからない」という人も多いと思います。
そこでこの記事では、ディープラーニング協会で行われているイベントやサービスについて詳しく紹介していきます。
▼「そもそもディープラーニングを詳しく知らない」という方はこちら
日本ディープラーニング協会とは
まずは、ディープラーニング協会に関する基本的な情報をご紹介します。
この2点について見ていきましょう。
協会概要
JDLAは日本の産業がディープラーニングをより有効に活用して、産業競争力を高めていくことを目指して設立されました。
東京大学大学院工学系研究科 教授の松尾豊氏を理事長とし、ディープラーニングの有識者が中心となって、産業促進を促すために設立された団体です。
関連メディアや団体
メディア
▼AINOW (http://ainow.ai/)
パートナー
▼AI-SCHOLAR (https://ai-scholar.tech/)
▼Ledge.ai (https://ledge.ai/)
▼AVILEN AI Trend( https://ai-trend.jp/ )
▼アイブン(https://aiboom.net/)
活動内容
ディープラーニングを中心とする技術によって日本の産業競争力を向上させるために以下の5つに分かれた活動を行っています。
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組織
ディープラーニング協会に属する委員会についてご紹介します。
上記の3つの委員会について詳しく解説します。
産業活用促進委員会
産業活用促進委員会は、協議会やワークショップ等のイベントを開催し、産業応用事例や導入課題と対策など、産業が必要とする情報を提供しています。
また、分野ごとのワーキンググループを設置することで、技術課題や法的課題といった分野特有の課題に整理し、解決を目指します。
人材育成委員会
人材育成委員会は、ディープラーニングに関する知識を持ち、事業活用するジェネラリストとディープラーニングを実装するエンジニアの人材育成を目指す組織です。
各々に必要な知識やスキルセットを定義し、資格試験を行う他、協会が認定した事業者によるトレーニングを提供します。また、大学との連携も予定しています。
公共政策委員会
公共政策委員会は、ディープラーニング等の人工知能技術システムに対して法的・倫理的・社会的・政策的に議論されている議題の調査と情報発信を行っています。
具体的には協会の会員を対象とした勉強会の開催や海外機関との連携、政策目標の決定などを行っています。
日本ディープラーニング協会の提供するサービス
ディープラーニング協会の提供する3つのサービスについてご紹介します。
G検定
G検定とは、ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業活用する能力や知識を有しているかを確認するための民間の試験のことです。
E資格
E資格とは、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有しているかを認定する資格のことでG検定の次のステップに位置付けられる専門的な資格です。
オンライン講座
ディープラーニング協会では、AI For Everyone(すべての人のためのAIリテラシー講座)というAI/ディープラーニングについて知ることができる無料エントリー講座も提供されています。
G検定について
G検定について以下の4点から詳しく見ていきましょう。
試験範囲
シラバスによると試験範囲は以下の8項目に分類されます。
人工知能とは | 人工知能の定義、人工知能研究の歴史 |
人工知能をめぐる動向 | 探索・推論、知識表現、機械学習、深層学習 |
人工知能分野の問題 | トイプロブレム、フレーム問題、弱いAI、強いAI、身体性、シンボルグラウンディング問題、特徴量設計、チューリングテスト、シンギュラリティ |
機械学習の具体的手法 | 代表的な手法(教師あり学習、教師なし学習、強化学習)、データの扱い、評価指標について問う問題 |
ディープラーニングの概要 | ニューラルネットワークとディープラーニング、既存のニューラルネットワークにおける問題、ディープラーニングのアプローチ、CPU と GPU、ディープラーニングのデータ量、活性化関数、学習率の最適化、更なるテクニック |
ディープラーニングの手法 | CNN、深層生成モデル、画像認識分野での応用、音声処理と自然言語処理分野、RNN、深層強化学習,ロボティクス ,マルチモーダル、モデルの解釈性とその対応、モデルの軽量化 |
ディープラーニングの社会実装に向けて | AIと社会、AIプロジェクトの進め方、データの収集、データの加工・分析・学習、実装・運用・評価、クライシス・マネジメント |
数理・統計 | 数理・統計 |
出典:一般社団法人日本ディープラーニング協会より
受験料 試験日
G検定は1年に2〜3回ほど実施されます。2022年の試験実施日程は以下の2つです。
・2022年7月2日
・2022年11月5日
受験費用は以下の通りです。
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対策方法
「G検定に興味があるけど、何から手をつけたら良いのか分からない」「おすすめの対策方法が知りたい」という人も多いと思います。
そこで今回は、2つの勉強方法をご紹介します。
1つ目は、「書籍を利用して勉強する」という方法です。
書籍で勉強するメリットは、講座を取って勉強するよりも安く済む点です。現在はG検定対策の書籍が多く出版されています。おすすめは、日本ディープラーニング協会が出版している「深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト 第2版」です。
同書籍は、公式から出されている本なので、内容の信頼が高く分かりやすい解説もついているためおすすめです。
書籍であれば、普段勉強時間が取れない人でも通勤、通学など、隙間時間に勉強を進められます。
2つ目は、「オンライン講座を利用して勉強する」という方法です。
G検定対策講座にもさまざまな種類があり、自分にあった講座を選べます。また、カリキュラムが組まれている講座もあるため、何から勉強すればいいのかが分からない人におすすめです。
オンライン講座については下記にて詳しく紹介します。
体験談
実際に受験した人の体験談として、時間制限が厳しいという声が多くありました。
G検定、お疲れ様でした!
時間が足らず、見直しが途中までになってしまったけど、最後に焦って押したボタンが間違ってない限りは大丈夫だろう。感想としては、模試よりは良問だった。#G検定— ken3 (@breeze_cloud) March 5, 2022
G検定、終了。問題集やらWeb上の模試よりも難しいかもと思ってたけど、それ以上だった… #G検定
— コナ (@conamoe) March 5, 2022
また、どれだけ事前に勉強していても本番に全く新しい知識に関する問題が出題される模様で、試験時間中も知識が蓄積していく面白い試験でもあるようです。
このことから、G検定を受ける際は「どの情報源に知りたい情報が掲載されているのか」を把握し、すぐに最新の知識をキャッチアップできる環境を作ることが重要だと言えます。
E資格について
E資格について以下の3点から詳しく見ていきましょう。
試験範囲
E資格の出題範囲は以下の通りです。
応用数学 | 線形代数、確率、統計、情報理論 |
機械学習 | 機械学習の基礎、実用的な方法論 |
深層学習 | 順伝播型ネットワーク、深層モデルのための正規化、深層モデルのための最適化、畳み込み |
ネットワーク | 回帰結合型ニューラルネットワークと再帰的ネットワーク、生成モデル、強化学習、深層学習の適応方法 |
開発・運用環境 | ミドルウェア、軽量化、高速化技術 |
このようにディープラーニングからの出題が中心ですが、その基礎となる機械学習や応用数学、実装に関する技術など、幅広い範囲から出題されます。
受験料 試験日
E資格は1年に2回実施されます。2022年の試験実施日程は以下の1つです。
・2022年8月26〜27日
受験費用は以下の通りです。
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対策方法
E資格の対策方法としては、JDLA認定プログラムの受講を中心に進めていくことをおすすめします。
認定プログラムの受講だけでは、対策が不十分だと感じる人は、書籍を使って対策するのが良いと思います。そこで、おすすめの書籍を2冊ご紹介します。
①徹底攻略ディープラーニングE資格エンジニア問題集
この書籍は、AI人材育成のための教育事業を手がけるスキルアップAIの講師陣が執筆しているものです。ま
た、E資格試験の出題傾向を徹底分析した模擬試験が掲載されているため、E資格を受験する際には非常に参考になるでしょう。
②ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装
この書籍では、ディープラーニングやニューラルネットワークについての基礎的な部分だけでなく、誤差逆電波法や畳み込みニューラルネットワークなどについても実装レベルで理解できます。本格的な勉強を始めたい人におすすめです。
また、AVILENE資格本番模試やEもぎライトなどのオンライン模試サービスを活用することもおすすめです。
オンライン講座について
ここでは、ディープラーニング協会が提供するオンライン講座の他、AI関連の他講座について詳しくご紹介します。
AI For Everyoneについて
AI For Everyoneとは、AIやディープラーニングに興味のある全てのビジネスパーソンを対象とした無料エントリー講座です。
AIの基礎を学びたい方をはじめ、所属組織をAIの導入によって変革させたい全ての方に向けた内容となっています。
講座の内容は以下の通りです。
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出典:一般社団法人日本ディープラーニング協会より
受講料
受講は無料ですが、配信プラットフォームであるCoursera発行の受講修了証取得コースを希望される場合には、別途Courseraへの支払い($49)が発生します。
AI関連の他講座
AI関連の他講座は以下の通りです。
▼オンライン有料講座
▼オンライン無料講座
▼オフライン有料講座
▼オフライン無料講座
それぞれ紹介していきます。
オンライン有料講座
・機械学習オンライン/ディープラーニングオンライン(株式会社zero to one / E資格認定)
「学びに、自由を。学びで、自由を。」をモットーに、機械学習、IoT、ビッグデータといった最先端の分野に特化した講座が提供されています。
・AI Academy(サイバーブレイン株式会社 )
100種類以上ものテキストが揃っていて、自分に合ったカリキュラムでプログラミングを実践的に学ぶことができる講座です。
・全人類がわかるディープラーニング体系講座(株式会社AVILEN / E資格認定)
プログラミングが未経験だったり苦手な人であっても補講講座が充実しているので安心の講座です。
・現場で使えるディープラーニング基礎講座(スキルアップAI株式会社 / E資格認定)
日本初のディープラーニング協会のE資格認定講座です。
・ディープラーニングハンズオンセミナー(株式会社キクガク / E資格認定)
ハンズオン形式で知識や技術を効率的に身に着けることができます。2つのコースから自分にあったコースを選べます。
・現場で潰しが効くディープラーニング講座(アイスタディ株式会社 / E資格認定)
現場で未知の課題に直面しても潰しがきくスキルを身に着けることが目的になっています。
・codexa(株式会社ロンバード)
数時間で学習できる講座から数週間かけて学習する講座まで、幅広い講座が用意されている点が魅力的です。
・はじめてのAIコース(Tech Academy)
受講生1人ずつに現役エンジニアのメンターが担当でつき、ビデオチャットを使ったマンツーマンメンタリング、質問し放題のチャットサポートなどが魅力的な講座です。
・AI-Mendes(株式会社ONLINE)
AI学習支援・転職支援を行うAI学習専門プログラミングスクールです。
・メディカルA・Study AIコース オンライン講義資料(株式会社Preferred Networks・株式会社キカガク)
医療において必要とされるAIを使うために最低限度の知識やノウハウをGoogle Colaboratoryによって学習できます。
オンライン無料講座
・Chainerチュートリアル(株式会社Preferred Networks)
Pythonに触れたことがなくても、ディープラーニングを問題なく理解できるほど充実したコンテンツとなっています。
・Grow with Google(Google)
講座はビジネス向け、個人向け、学生・教育者向け、スタートアップ向け、そしてデベロッパー向けと細かく分かれています。
・Elements of AI(ヘルシンキ大学)
ヘルシンキ大学が公開する、AIの無料学習講座です。
・Learn with Google AI(Google)
Googleによって無料で公開されているAI学習ページです。機械学習の基礎を動画で学習することができます。
・Amazon Machine Learning University(Amazon)
Amazon内部での使用が想定されているプログラムで、AIをビジネスで活用するノウハウを学習できます。
・Coursera(Coursera株式会社)
自分のペースで学習を進めることができ、毎週課題が課されますのでスキルアップすることが期待できます。
オフライン有料講座
・NECアカデミー for AI(日本電気株式会社)
AIに必要なスキルを体系的に学ぶことができる上に、メンターのもとで豊富な実践経験を積むことができます。
・AIジョブカレ ディープラーニング講座(エッジコンサルティング株式会社 / E資格認定)
優秀な講師による実用的なカリキュラムを提供している他、AI関連の求人を紹介しているなどの特徴があります。
オフライン無料講座
・42 Tokyo
24時間利用可能な施設、学生同士で課題を克服するピアラーニング、学費完全無料などの仕組みが魅力的です。
・AI Quest
参加者同士で切磋琢磨しながらAIを生かした企業の課題解決方法を習得することを目的としています。
ディープラーニング関連書籍
・人工知能プログラミングのための数学がわかる本
・チャート式シリーズ大学教養 線形代数
実際に紹介している書籍を2冊ほど挙げました。
DCON(全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト)
最後に、ディープラーニングを活用したコンテスト、DCONについてご紹介します。
DCON2022の開催概要
DCONは、高等専門学校生が日頃培った「ものづくりの技術」と「ディープラーニング」を活用した作品を制作し、その作品によって生み出される「事業性」を企業評価額で競うコンテストです。
今回ご紹介したディープラーニング協会の理事長を務める松尾豊氏は、このDCONの実行員会委員長も務めています。
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まとめ
今回はディープラーニング協会について、基本的な情報から提供しているサービスや開催イベントまで詳しく解説しました。
ディープラーニングを学習している方やディープラーニングに興味のある方は、検定の受験やオンライン講座の受講を考えてみてはいかがでしょうか。