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2019.03.11

日本のAI戦略 〜安倍首相が提唱する国際的なデータの流通の重要性〜 「AI/SUM」 開催記念スペシャルセッションレポート

最終更新日:

おざけんです。

2019年1月23日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に5年ぶりに出席した安倍晋三首相は「成長のエンジンはもはやガソリンではなくデジタルデータで回っている」と述べ、データの国際的な流動性の重要度を強調したことで話題になりました。

そこで安倍晋三首相によって提唱されたのは信頼ある自由なデータ流通(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)の頭文字をとった「DFFT」です。

2019年6月には大阪でG20が開催される予定で、「世界的なデータガバナンスが始まった機会として長く記憶される場としたい」とも語っており、2019年は日本政府にとって「データ戦略」を大きく打ち出す1年になりそうです。

そしてG20に先駆けて、4月22日〜24日に日本経済新聞社が主催の「AI/SUM」が開催されます。経済産業省が後援となり、AIを実社会にどのように適用するかにスポットをあてた日本最大級のグローバルAIカンファレンスです。

G20を前に、国内外の専門家や、政策当局者、関連企業、スタートアップ、金融関係者が集結し、AIが社会にもたらすインパクトを探り、AIにどのような可能性があるのかを世界に強く発信していく一大イベントです。

AINOWは日本最大のAI専門メディアとして、「AI/SUM」のメディアパートナーになり、AI/SUMについて発信していきます。国際社会の中で日本が「AIの活用視点」で社会に貢献できるのか、読者のみなさんと一緒に考えていければ嬉しいです。

この記事では、「AI/SUM」の内容や、3月7日にPlug and Play DemoDayで行われたAI/SUMスペシャルセッションの内容をお伝えします。

スペシャルセッション「これからの日本のAI戦略とは」

(左から)日本経済新聞社 編集企画センター ゼネラルプロデューサー 山田康昭氏(モデレーター)
経済産業省 商務情報政策局 総務課長 伊藤禎則氏 (パネリスト)
株式会社PKSHA Technology 代表取締役 上野山勝也氏(パネリスト)

このセッションでは日本経済新聞社の山田氏がモデレーターとして、パネリストに経産省の伊藤氏、PKSHA Technologyの上野山氏を迎えてセッションが繰り広げられました。日本独自のAI戦略の特長、強みはなにか、どんな課題があるのかをAIの政策・社会実装の現場を代表する2人から伺います。

6月のG20で安倍首相がアナウンスする日本のAI戦略

伊藤さん「昨年から経産省のAI・IoT・データ政策の責任者をしています。世界でいま何が起きているのか!?ディープラーニングに先導されていろんなビジネスやサービスが出てきているのはもちろんですが、起きているのはもっと構造的な変化だと思います

今年のダボス会議の最大の論点はAIテクノロジーと社会との関係でした。ジョージ・ソロスはAIがオープンな社会に対する脅威になっているのではないかという警鐘を鳴らしました。

AIはビジネスの道具になります。ただ、私たちにとってAIとは本当は何なのでしょうか。例えば私たちはAIというものを考えるときに、ドラえもんを想像します。日本で最も有名な人工知能のロボットです。人(のび太くん)とロボットが友達で、常にドラえもんが手を差し伸べてくれます。そして最後にはのび太も成長します。

日本のAIを考えるにあたっていくつかのコンセプトがあります。
・Co-Evolution(人とAIが共に進化する)
・Human argumentation(人の力を引き出す、強化する)
・Human-centric AI(人間中心のAI)

いま日本政府の中でAI戦略を作っています。今年は6月につくばでG20 デジタル閣僚会合、6月にはG20首脳会合、アメリカからはトランプ大統領、中国からは習近平国家主席が招待されています。その中において日本は何を発信していくか。日本のAI戦略の4つの大きな柱は以下です。」

ELSI:倫理

伊藤さん:これを推し進めるために何が大切か。一つのメッセージは「人間中心のAI」。そして「国境をまたいだデータの自由な流通」です。

ただし、自由にデータを流通させるにはコストが伴います。プライバシーやセキュリティをきちんと守らなくてはいけません。そこで「トラスト=信頼」の上に成り立つデータフリーフローを通じて、人を管理したり、人の仕事を奪うわけではない社会課題を解決するAIテクノロジーが必要になります。

そんな日本独自のAI戦略を発信していくために、4月22日〜24日に大規模なシンポジウムを開催します。日本のAIを発信し、世界から人と資金を呼び込んでいく仕掛けをしていきます。

経済産業省 商務情報政策局 総務課長 伊藤禎則氏

日本のAIの特長、そして米国、中国との違い

エーベックスがライブイベントをカメラで映してお客さんの感情を分析をする実証実験をしました。どの曲のときに満足度が高まって、どの曲で寂しそうな顔をするかを認識する取り組みです。ラスト1曲のときにお客さんが一番寂しそうな顔をすることもはっきりわかったんですね。

顔認証の技術が上がったときに、心理状態も吸い上げられます。ただそれが面白いねだけじゃなくてAIの設計思想を持ってくことが大切ですよね。

松尾豊先生の言葉で印象的なのは「アメリカはGAFAがデータを集めている。中国では国家統制型のAIを作っている。日本ではものづくり、あらゆる産業があり、リアルデータがたくさんある。そして、その品質が高い。それを網にかける仕組みになっていない。」という言い方をしていて、日本のAIは面白くなる可能性があると感じました。

参考記事:「ライブ会場で、コンサートで、参加者の満足度を人工知能が分析

日本経済新聞社 編集企画センター ゼネラルプロデューサー 山田康昭氏

AI以前のデジタルトランスフォーメーションの問題

伊藤氏:現場でAIの実装がまだ進まない感覚はみなさんが感じていると思います。AIの本質の一つはパーソナライゼーションだと思います。消費者向けの商品・サービスがパーソナライズされていくだけでなく働き方もパーソナライズされていくと思います。

パーソナライゼーションをビジネスに繋げていくためにはデジタル化を進め、仕事のやり方そのものを変えていかなければいけません。そしてデータのインフラ、基盤を整えていくことが大切です。

では、日本の企業でその準備ができていますか!?未だに大量生産を前提としたビジネスになっていませんか?本当の意味でのパーソナライゼーションとはなんなのか。それはすべての会社の組織、あり方を変えていかないといけないと言うことだと思います。

上野山氏:人工知能技術分野の技術は平たく言うと高度なIT技術です。簡単なITを活用しないのに高度なIT技術(AI)を活用できるのかというと難しいかと思います

旧来型のソフトウェアと機械学習ソフトウェアは水と油の性質を持っていることを認識することが必要です。旧来型は一行残らず演繹的に記述しているソフトウェアです。アウトプットが一意的に固定されています。それにより日本の品質基準に合っています。

機械学習ではパターン認識をするようなソフトウェアなので、大枠の骨組みを人が作って、それに合致したデータを入れるとモデルの中のパラメータが変わって完成する。これによりパターン認識ができるという仕組みです。人が見ても間違えるので精度は100%はありません。なので、旧来型のシステムに合わせてローンチの判断をすると永遠に時間がかかります。

機械学習分野の製品は (製造業的なものの見方からすると) 未完成品を世の中に出すという決断が必要になります。この2つをどのように組み合わせるのかが大事です。

株式会社PKSHA Technology 代表取締役 上野山勝也氏

AI/SUM アプライドAIサミット〜AIと人・産業の共進化〜

AI/SUM(アイサム): Applied AI Summit は、AIを実社会・産業にどう適用にスポットをあてた日本最大級のグローバルAIカンファレンス。2019年4月22日から24日の3日間にかけて東京丸の内にある丸ビル・新丸ビルで開催されます。

人を支配するのではなく、人と共にあり、人の力を強化し、社会課題を解決するためのAIの可能性と潜在力を世界に力強く発信します。

有識者のセッションだけでなく、ワークショップやショーケース、など幅広いコンテンツがセッティングされています。

登壇者の一覧

IT科学技術担当大臣の平井卓也氏から、東京大学 特任准教授の松尾豊氏、楽天の三木谷浩史氏など、幅広い登壇者が集結します。まだまだ登壇者はアップデートされる予定で、アップデートがあり次第お伝えします。

AI/SUM開催にあたって

上野山氏:データはIoTデバイスから取得できます。さまざまな領域の技術者もコラボしています。

どんなデータをセンシングすると、どんな体験を生めるのかデザインしていくことが大切です。いま、応用するための要素技術は揃っていると思います。

社会のどの課題を解決したいのかの議論が大切だと思っています。AI/SUMでは前向きな議論をしたいです。

伊藤氏:大きなテーマの一つは人材です。AI人材やIoT人材が足りていないと言われますが、本当はいるんです。例えば松尾研究室の主役は国内の高等専門学校からの編入生なんですよね。高専生はハードウェアを勉強してきて、今やAIを学んでいるシリコンバレーにもいない競争力のある人材です。

学生・社会人のリトレーニングで人と人(技術と技術)をつなぐことが大切です。また、AI/SUMでは100社くらいのベンチャーが登場します。それをつないでほしいです。そうすると大企業を含めて、今の日本がAIやIoTを使いこなす人材を求めているんだというメッセージが若い世代に伝わります。

そうすると若い方がどんどんこの分野に入ってくる、そんな大きな起爆剤になればいいなと思います。

AI/SUM 概要

日時: 2019年4月22日〜24日
場所:丸ビル・新丸ビル(東京 丸の内)

終わりに

AI/SUMは経済産業省が後援していることもあり、活用視点でAIについて考察できるイベントになりそうです。「活用フェーズがきた」と言われることも多いAI(人工知能)ですが、産業だけでなく政府も一丸となって、AIが組み込まれた社会をデザインし活用を進めていく必要があります。

AINOWでは、当日の様子をレポートし、日本のAI戦略をサポートできるように発信してまいります。読者のみなさんもぜひ参加して活用視点でAIについて考えてみてください。

 

 

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