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囲碁AIは、天文学的な数のパターンの中から、今まで人間が見つけてこなかった一手をAIが習得し、人間のチャンピオンを破りました。膨大なデータを分析し、AIを活用することによって、今まで人間が把握できなかった情報の因果を得ることが可能になっています。
2019年6月20日、xenodata lab.が記者発表を行い、膨大なニュースの情報を分析し、市場変化を予測するSaaS型サービス「xenoBrain(ゼノブレイン)」の正式版を発表しました。
xenoBrainは、経済ニュースや決算情報を自然言語処理技術(AI)で解析し、
AINOW編集部は、xenoBrainを提供するxenodata lab.の代表取締役社長の関 洋二郎氏に独占インタビューを行いました。記者発表の様子と合わせて、「xenoBrain(ゼノブレイン)」をご紹介します。
目次
経済・企業の将来予測をリアルタイムで提供する「xenoBrain」
経済は多くの事象が複雑に絡み合い常に変化し、その中でさまざまな企業が利益を上げています。一方、淘汰される企業も少なくはありません。
もはやその推移は人間には捉えきれません。2019年5月、アメリカのトランプ大統領が対中関税を大幅に引き上げると発表し、世界的に経済が大きく変動しました。このようなインパクトの多い事象だけでなく、社会ではさまざまな事象が複雑に絡み合っています。
xenoBrainはそんな複雑な経済の将来の動きを、大量のニュースをAIで解析することで、予測しています。
関氏:xenoBrainは簡単に言うと世界中からニュースを集めて、それを解析して分析結果を出すというサービスです。
世界中で毎日膨大なニュースがリリースされます。AIを活用することで、そのニュースがどんなことを言っているか自動で抽出し、そこから発生する影響を分析するんです。
例えば、新たな通信規格として5Gサービスが始まるというニュースについてです。5Gサービスが開始すると、データセンターの需要が高まる、データセンターの需要が高まると、光ファイバーの需要も伸びる。このように、膨大な経済ニュースを独自のAIで解析し、1つ1つの経済事象間の因果関係を特定することによって、ある事象が起きたとき、どのように経済や産業構造に影響を及ぼすのか、将来の予想に繋げるのがこのサービスです。
世界には多くのメディアがあり、多くの記者が日々取材活動を行っています。膨大なニュースのデータを学習し、過去のさまざまな事象のつながりを学習しているからこそ、ある事象が起きたときにどのように連鎖が起きるのかを予測することができるのです。
具体的にはどのようにニュースから要素を抽出しているのでしょうか。
関氏:まず、自動や人力などを組み合わせて膨大な辞書を作ります。例えば、「アルミニウム」「アルミ」という単語が登録されています。そして、それらは同じだという辞書も作ります。そうすると、システム上で「アルミニウム価格」も「アルミ価格」と同義だと理解してくれます。
次に、ニュースに含まれる文を意味ごとに分解し、構造化データに落とし込み、「何かがどうにかなった」というまとまりとして経済事象(例.米中貿易摩擦拡大、オーストラリアアルミ価格上昇、リチウムイオン電池需要増加など)を抽出、さらに、経済事象間の関係性を抽出していきます。と、口で言うのは簡単ですが、日本語の複雑性からとてつもなくさまざまなパターンに対応できるような仕組みにすることが難しかったところです。
今となっては商談時などにデモをお見せすると、リアルタイムで正確にビジュアライズされて驚いていただくことも多くなりました。
ニュースデータから会社の将来を予測するxenoBrainは経済分析を行うすべての人がターゲットです。
関氏:xenoBrainは当初は金融機関を念頭に開発・マーケティングをしていましたが、今では事業会社(特に、経営企画、調達部門、営業企画部門)の導入が急激に伸びています。
事業会社の経営企画では、事業計画や新規事業、M&A検討時の情報収集に、調達部門では数ある部材の安定調達のための分析ツールに、営業企画では将来伸びそうな企業や業界をスクリーニングするのに使うなどの活用が始まっています。
マクロに事象の因果を分析しビジュアライズできるxenoBrainは、日々のニュースチェックに忙殺されるビジネスパーソンにとって、必要不可欠なサービスになるかもしれません。
時事通信社やダウ・ジョーンズとの提携でコンテンツの拡充を実現
2019年3月、xenodata lab.は時事通信社をはじめとした13社と4名の個人から総額7.8億円の資金調達を行いました。
xenodata lab.はこの資金調達の目的を「xenoBrain」の機能・コンテンツ拡充としています。今までxenoBrainは世界最大級の取材網を持つ経済系の通信社 ダウ・ジョーンズを始めとする過去10年分、30万本超の記事に含まれる過去の経済事象の連関から企業の利益影響をAIが分析し、業績予測を行ってきました。
この資金調達によるコンテンツ拡充はどんな意味があるのでしょうか。
関氏:時事通信社との提携により、過去10年間100万本のニュース記事を提供していただきました。
これまではダウ・ジョーンズからニュースを獲得していたので、グローバルのマクロ系には強かったんです。
しかし、国内のニュースには弱いという課題がありました。そこで時事通信社と提携を結ぶに至りました。
さらなるコンテンツ拡充に向けて ダウ・ジョーンズの分析プラットフォームをアジアで初めてサービスに活用
記者発表をでは、xenoBrainの正式版の発表だけでなくダウ・ジョーンズとのさらなる業務提携も発表されました。
ダウ・ジョーンズが持つ世界各国の主要新聞、業界紙、雑誌、通信社など数千メディアのニュースコンテンツを包括的に提供する分析用データプラットフォーム「ダウ・ジョーンズDNA」をアジアで初めて展開し、将来予測の解析対象ニュースの大幅な拡充を実現しました。
ダウ・ジョーンズから提携している業界紙、地方紙、海外ニュースなど160のメディア、5,000万本のニュースデータの提供を受けることができるようになり、xenoBrainのさらなる精度アップが実現するといいます。
記者発表では、アジア太平洋地域の情報ビジネスの戦略やパートナーシップを主導してきたダウ・ジョーンズのクリストファー・エリス氏からダウ・ジョーンズの分析用データプラットフォーム「ダウ・ジョーンズDNA」について紹介がありました。
DNAプラットフォームは世界で最も多くの包括的なニュースライセンスを保有し、高度なデータ分析を可能にするデータプラットフォームの1つです。2017年から提供を開始しています。
クリストファー・エリス氏:ダウ・ジョーンズが提供する「DNA」はニュース分析を業務に活用する企業に大きなメリットをもたらす強力なプラットフォームです。xenodata lab.との今回のパートナーシップを通じ、ダウ・ジョーンズのニュースデータとxenodata lab.の持つマーケットをリードする洞察力・分析力を組み合わせた画期的な情報を日本企業に提供します。
xenoBrainはベータ版を三菱UFJ銀行や第一生命をはじめとする数十社に提供してきました。ベータ版の提供を行いながら精度をアップしてきましたがニュース数が足りないことが課題だったそうです。時事通信社との提携、ダウ・ジョーンズとのさらなる提携によりニュース数が担保され、さらなる機能強化につながることが期待できます。
サプライチェーン分析の取り組みも|今後のビジョン
xenoBrainの今後のビジョンを伺いました。
関氏:今は日本の上場企業についての分析となっていますが、今後は海外企業や未上場企業の分析も追加し、より幅広い顧客にxenoBrainを広げていきたいです。
また、政府関連機関や民間企業がリリースする統計データも予測に反映させていきたいとも考えています。
そしてサプライチェーンを分析し、企業のリスク管理を可能にしていきたいとも考えています。今、ニュースを通してマクロな環境から企業の状況を把握しようとしているのですが、得意先や仕入れ先の倒産や利益の増加などの観点でも分析できるようにしていくのが目標です。
さいごに
関氏が銭湯で思いついたビジネスが約3年間かけ、やっと正式版としてリリースできたそうです。
今まで膨大すぎる情報に埋もれて因果関係が把握しきれていなかった経済事象がxenoBrainによって結びつくことで、金融機関から事業会社まで幅広い会社の意思決定においても重要なサポートツールになるでしょう。
xenoBrainは最低4.8万円から導入でき、無料トライアルも可能です。興味のある方は、ぜひ試してみてください。
■AI専門メディア AINOW編集長 ■カメラマン ■Twitterでも発信しています。@ozaken_AI ■AINOWのTwitterもぜひ! @ainow_AI ┃
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