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AIに関連した特許の出願件数が増加しています。
特許庁によると、2019年度におけるAI関連特許の出願件数は5000件以上にも上るそうです。それほど、国内ではAIの技術が進歩していると言えます。
そこで今回は、国内におけるAI関連特許に関する概況についてまとめていきたいと思います。
目次
AI特許とは
AI特許とはAIに関する特許のことで、2つの種類があります。
1つはAI自体の技術に関するもので取得する特許です。学習処理の内容などがこれにあたります。もう1つはAIをシステムの中に組み込み、AIによる推論を利用したシステムで取得するものです。AIによって建物に出入りする人の年齢や性別を識別するシステムなどがこれにあたります。
現在、ビジネスにおいて注目されているのは後者のAIを利用した特許で、AIを応用したシステムに関心が集まっています。
AI特許を取るには
AI特許はどんな物でも取得できるわけではなく、AI特許を取るには4つの要件を満たす必要があります。
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これらの要件を1つでも欠いているとAI特許は取得できません。
「発明を適切に記載して出願すること」は出願において特に問題になる可能性があります。AI特許出願において、入力データをどのように処理して出力データが得られるかの論理(アルゴリズム)を出願書類で説明する必要があります。
しかし、この説明が不十分だと、発明が開示されていないとして出願が拒絶されてしまいます。この説明が不十分であったからという理由で、出願後に追加して完全な物とすることは認められないのが原則です。
そのため、AI特許を取得する際は出願の時点で上記のアルゴリズムを十分に説明しておく必要があります。
AI特許の活用事例
AI特許の活用事例を紹介します。
「認知症レベル推定装置」は、回答者と質問者の会話情報から認知症レベルを計算するシステムです。
今までは専門医が質問し、回答ぶりから判断しており、経験が必要な診断でした。しかし、機械学習を活用したAIがこの認知症レベル推定を算出できるようになると、経験の浅い専門医の診断支援が可能になりました。
「リンゴの糖度データ及びリンゴの糖度データの予測方法」は、所定期間分のリンゴの糖度データや気象条件から、将来の集荷時のリンゴの糖度を測ることのできるシステムです。
このシステムを活用することで、データに基づき、リンゴの糖度を所望のものへ近づけるための栽培支援ができます。
「体重測定システム」は膨大な人の顔の形状や身長・体重のデータを学習し、人物の体重を推定するシステムです。フェイスラインと体重の関係から、フェイスラインを測定するだけで体重の推測が可能です。
これは体重計を用いることなく、外出先でも気軽に体重を測定できます。
AI関連特許数の推移
ビジネスや福祉、日常生活にもAIが活用されるようになり、社会にAIが普及するようになりました。それに伴い、AI関連の特許数は増加しています。
AI関連特許件数は増加中
国内におけるAI関連特許の出願件数は第三次AIブームをきっかけに年々増加しています。
2013年には963件ほどだったAI関連特許の出願は、2019年にはその約5倍の5045件にまで増加しました。
また、AIそのものに付与される特許数は特に増加しており、2013年の151件から2019年には2109件まで増加しています。今後もこの傾向が続いていけば、AIの技術面でのさらなる発展を期待できるのではないでしょうか。
具体的な分野の内訳
具体的にどの分野の特許数が多いのかを以下で紹介します。
現時点における AI関連特許の分野の内訳
もっとも多い分野は画像処理
AI関連特許の分野のうち、もっとも多いのが画像処理に関するものです。
画像認識技術はカメラが人間の目のように働くことで、幅広い分野で活用されています。
そして、現在も様々な画像認識を使ったサービスが生まれています。
そういったことから、画像処理に関する技術の需要は高く研究が進んでいると言えます。
情報検索・推論が続く
情報検索・推論に関する技術関連の特許も増加しています。
情報検索は私たちがインターネットで情報を検索する際など、身近な部分で触れることも多い技術です。そのような検索技術も日々進化し、便利になっています。
今後も技術発展が進めば、ますますインターネットでの検索が便利になっていくのではないでしょうか。
企業別のAI関連特許数
日本企業も世界ランキング入り
今日、日本はアメリカや中国に比べて遅れていると言われることが多いですが、特許出願数に置いて日本企業がトップ3以内に入ったというのは日本として大きな進歩だと言えます。
今後も国内でのAI分野の研究が進んでいけば、世界のAI界における日本のプレゼンス力向上に繋がると期待できます。
上記のグラフは2021年における企業別の特許出願数をランキング化したものです。
トップがSeiko Group、4位にPanasonicが並んでいます。Seikoは知的財産を重要資源ととらえ、開発など、知的財産の獲得とその活用に積極的に取り組んでいる企業です。
またPanasonicは2019年度は8位でしたが、2年で4位まで上り詰めました。それほど、AIの開発は重要な知的財産であるとされるようになったのです。
政府は国内のAI分野の発展を推進
日本政府は国内におけるAI分野の発展を推進しています。
例えば、政府によって発表された「Society 5.0」では、AIによって情報社会を変革するというビジョンが示されています。
また、政府によるAI戦略2019では2025年度までに毎年25万人ものAI人材を輩出することが目指されています。現在の年間の出生率が約100万人ほどなので、およそその年に生まれた4人に1人が将来はAI人材として活躍する社会が訪れるということです。
もし、その目標が達成し国内にAI人材が豊富に活躍するようになれば今よりも一層AI分野の発展が進んでいくと期待できます。
政府のAI戦略に関する記事はこちら▼
まとめ
AI技術の研究は日々進んでいます。
その証拠として、国内で出願される特許のうちAIに関するものは年々増加しています。そして、世界的な視点で見ても国内企業のAI関連特許の数は上位に入っています。
そういった国内におけるAI研究の発展が今後も続いていけば、今以上に社会のなかでAIが活躍する機会も増えると期待できます。
慶應義塾大学商学部に在籍中
AINOWのWEBライターをやってます。
人工知能(AI)に関するまとめ記事やコラムを掲載します。
趣味はクラシック音楽鑑賞、旅行、お酒です。