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2019.08.27

AI教育とは?メリット・デメリットから活用事例や書籍を紹介

最終更新日:

AI教育-メリットデメリット事例や書籍を紹介

こんにちは、AINOWの今井です。

昨今、さまざま分野でAIの導入が進んでいますが、教育業界でAIはどのように活用されているのでしょうか。
そして、AIの普及によって教育のあり方は大きく変わっていくと考えられます。

この記事では、教育にAIを導入するメリット・デメリットから実際の活用事例、AIサービス、書籍など幅広く解説しているので、ぜひ最後までご覧いただき参考にしてみてください。

AI教育とは

まず、AIとは総務省によると、

「人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術といった広い概念」のことです。

引用元:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd113210.html

つまり、人間の代わりに考えてくれるということです。

教育分野では、生徒の科目ごとの成績のデータなどをもとに分析し、一人一人の苦手分野を考えどんな学習をすれば良いか考えたりすることができます。

AIを教育に活用するメリット

AIを教育に活用するメリットは3つあります。

以下でそれぞれ解説していきます。

一人一人に合わせた最適なアドバイス

AIはデータが多ければ、より精度の高い分析を行うことができます。間違えた問題や回答時間の長さから苦手な分野を分析したり、学習進度やテストの成績から学習の改善点を見つけだしたりすることで質の高い学習を一人一人することができます。

従来からの学習では全員が同じ教材で同じ問題を解いており、未学習の分野を学ぶ際には効率的かもしれませんが、身に着けるためには記憶の定着には反復作業が大事だと言われています。量を重視して解ける問題も何回も解くよりも、AIが分析した間違いやすい問題を解けるようになる方が効率的です。

教育者の負担軽減

教育業界では、教師の長時間労働といった私生活に影響するほどの負担が社会問題になっています。文部科学省の令和4年に実施した教師不足に関する実態調査によると、小・中学校の教師不足人数は合計2,086人、高等学校の教師不足は217人となっています。実際に、教師が足りず校長先生が授業を担当する対応をしている公立中学校もあります。

そこで役立つのがAIです。教師は授業以外にも業務はたくさん存在しているので、AIによる自動化によって業務効率化を図り、教師の負担を軽減することができます。

また、近年教師の採用試験の倍率は下がってきている状況です。AIによって業務負担が大きくないという印象を与えることができれば教師を目指す若者が増え、人手不足問題の解決にも繋がっていきます。

参考:教師不足に関する実態

客観的な生徒への成績評価

人は無意識の中で評価を行う際に主観的評価が影響してしまいます。その中で教師一人に対して、生徒何十人何百人と評価をするときに必ず平等に評価ができる保障はありません。

AIが評価することで良い意味で感情的な部分がなく、過去のデータをもとに正確に一人一人同じ評価基準で成績評価ができます。そして、成績評価が自動化されることで先生は生徒と向き合える時間が増え、生徒のマネジメントに集中することができます。

AIを教育に活用するデメリットと課題

AIを教育に活用するデメリットと課題は4つあります。

以下でそれぞれ解説していきます。

評価の過程が見られない

AIによって自動化ができ効率化を図れますが、なぜそのような評価になったのかを把握することができません。例えば、一人一人に最適化された問題が出題される場合は、なぜその問題が出題されたのかはわかりませんし、成績評価において不満をもった生徒がいても説明ができません。

AIを成績評価などに導入していくには、業務の標準化や生徒の納得のいくように慎重になる必要があります。

自ら考える力が育まれない

AIがカリキュラムなどを考えることで効率化を図ることができますが、自ら考える力は育まれません。遠回りをすることで周辺知識も身につくということもあります。

そして、自分の課題はなにかを見つける課題発見力、課題を解決するためにどんな解決策があるか考える問題解決力は、将来問題にぶつかった際にとても大切です。よって、AIに頼りすぎてしまうのは、教育において気を付けなければいけません。

環境整備のハードルが高い

コロナ禍でオンライン化は進みましたが、いまだに日本では授業で黒板を使っておりノートやテストを紙で行っている人がほとんどです。AIを導入する上で、デジタル化したり仕組みそのものをDX化することが重要になってきます。

また、AIがより精度の高い分析や予測を行うために、たくさんのデータをAIに学習させなければいけません。そのために必要なデータを蓄積するための時間や機器を整備するコストが高いため、容易に導入することは難しいです。

教職員のITリテラシー不足

教職員はITの専門家ではないため、一部の教職員はAIを導入した教育に慣れるために時間がかかるでしょう。AIが導入されることによって、教育業界がどのように変わっていくのか教職員の方々は対策を進める必要があります。

実際にAIを活用した事例やAI教育をもっと深く学ぶためにおすすめの書籍・論文を後半で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

教育現場でAIにできないこと

教育現場でAIにできないと考えられることは主に2つあります。

以下でそれぞれ解説していきます。

記述問題の採点

記述問題の採点に関しては、まだAIよりも専門としている人の方が精度が高いです。例えば、国語の文章問題の採点でAIも文章の添削や漢字の間違いは判定することができますが、詳しい内容は点数化することが困難で正確にはできません。

選択問題の採点はAIに任せ、記述問題は人がするという使い分けをすることが、正確な採点をしつつ教師の負担を減らす方法だと考えられます。

生徒のそばにいること

AIは生徒にアドバイスを与えることはできますが、関係はあくまでロボットです。生徒が悲しんでいたり悩みを抱えていることに関して、AIは共感したり助けることができません。

生徒は教師が自分のために頑張ってくれているから、自分も頑張ろうとモチベーションを保てたり、大事な存在になります。そのため、単純な業務はAIが行って教職員の負担を減らし、生徒のそばにいる時間に費やすことが生徒のためになります。

教育のAI活用事例

教育のAIを活用した事例は5つあります。

以下でそれぞれ紹介していきます。

日々の学習をデータ管理(Z会)

通信教育「Z会」を運営している株式会社Z会は、90年以上の指導実績から得たノウハウを搭載したAIサービスを2022年度から開始しました。映像授業の視聴から問題演習や学習管理まですべてタブレット端末ひとつで完結でき、人によるマネジメント指導をかけ合わさったAIサービスになっています。

また、Z会員の同じ志望大学を目指している同士の中で自分がどのくらいの理解度に位置しているのかを分析して最適な問題を選定してくれます。さらに、単元ごとの進捗度を可視化することができて、自分の学習の管理も明確にできます。得意・不得意や学習傾向に沿った学習ができるので抜けがなく最短経路で実績を伸ばすことが期待できます。

ディープラーニングで合格ラインを予想(英進館)

九州を中心に3万名以上の生徒が在籍している学習塾「英進館」を運営している株式会社英進館では、2018年からMAGELLAN BLOCKSのモデルジェネレーターを導入し、高校入試の予測平均点・各校合格ラインを算出しています。

MAGELLAN BLOCKSは、量子コンピュータやディープラーニングなどの最新技術を用いて正確な数理モデルを開発しました。従来では教師25人で約2時間かかっていた予測作業が、同じ精度のまま約10分で分析が可能になっています。

生徒の状況をリアルタイムで分析(野田塾)

主に愛知県で野田塾を運営している株式会社野田塾では、中学生向けの数学、理科、英語、社会の授業にatama+を導入しています。atama+は中高生向けのタブレット端末で行うAI学習教材です。

atama+ではAIが生徒の学習サポートをして、集中している、手が止まっているなどのリアルタイムで生徒の状況を分析しながら、教師が生徒にコーチングを行う時間と通常の集団授業の時間のハイブリッドで学習指導を行っています。

オンライン入試で試験監督(日本経済大学)

日本経済大学では、2021年度から一般選抜のオンライン入試でAIを導入しオンライン試験監督システムを実施しています。

株式会社旺文社と株式会社Edulabが提携して開発されたAI「Check Point Z」は、受検者の目線などの様子やPCの操作をすべて記録し監視しています。目視では全員の状況を見ることはできませんが、AIは一人一人についているので見落とすことがありません。

AIによる自動採点(日本英語検定協会)

日本英語検定協会では、2019年度から英検に導入し始めています。導入する上で自動採点実証研究を行い、英検におけるAIによる自動採点の主な特徴として以下の4点を挙げています。

・品質を保持したままでの24時間稼働の実現

・人間による通常採点を補完する採点精度の向上

・採点時間の短縮

・無回答や白紙答案仕分けによる採点者の負担軽減

引用:https://www.eiken.or.jp/eiken/info/2018/pdf/20181017_pressrelease_aisaiten.pdf

AIを利用することで、大幅な効率化が可能になっています。

また、日本英語検定協会公式の学習サービス「スタディギア」では2020年12月からライティング・スピーキングテストにおいて自動採点機能を追加し、回答後すぐに採点結果とアドバイスを確認ができます。

参考;https://www.ei-navi.jp/information/2569/

AIを活用した教育サービス

AIを活用した教育サービスは主に5つあります。

以下でそれぞれ紹介していきます。

スタディサプリ

スタディサプリ

https://studysapuri.jp/

スタディサプリは、リクルートマーケティングパートナーズが運営しているインターネット予備校サービスで、CMで見たことがある人も多いのではないでしょうか。

英会話やTOEICテスト対策など英語に特化したコースや大学受験講座、中学生向けの講座など目的に合わせた学習ができます。スタディサプリでは、講義を動画で受けられるので学校のように学べます。

生徒が自分の得意・不得意や志望大学などを入力することで本番までのカリキュラムを自動で組んでくれたり、その学習状況や到達度テストの蓄積されたデータをもとにディープラーニングを行い、生徒の能力に合わせた問題を予測することで効率的な学習ができます。

Qubena(キュビナ)

Qubena(キュビナ)

https://qubena.com/

Qubena(キュビナ)は株式会社COMPASSが開発したタブレット端末のAIサービスです。利用者はすでに100万人以上おり、全国170以上の自治体、2300校以上の小中学校が導入しています。

一人ひとりに最適化された問題演習を繰り返し、学習意欲の維持と基礎学力を身に着けられるサービスです。教師側も、授業中や課題の問題を作成から採点まで行えるので、作業負担を大幅に減らすことができます。

atama+(アタマプラス)

atama+

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000037602.html

atama+は株式会社atama plusが開発したAI学習サービスです。全国の3,200以上の塾教室で導入されており、2020年度には日本e-Learning大賞を受賞しています。

生徒にレベルに合った簡単すぎず難しすぎない問題を出題して、解けることによって勉強を楽しいと感じることで成長していける仕組みになっています。また、間違った問題に対しては解説だけでなくその分野を復習できる動画を提案してくれるため、基礎を積み上げることができます。

Terra Talk(テラトーク)

Terra Talk

https://www.terratalk.rocks/

Terra Talkは株式会社Joysが開発した実践的な英語を学べるアプリです。日本人は世界的に英語のスピーキングがとても劣っています。Terra Talkはリスニング・スピーキングが重視されており、チャット形式でAIと会話をして発音や構文を身に着けられます。

学校・塾では教科書や参考書に対応した教材があったり、法人では業種に合った会話内容の教材が提供されており、それぞれ学習者の苦手を分析して最適な会話レベルにすることができます。

Life is Tech!(ライフイズテック)

Life is Tech!

https://lifeistech-lesson.jp/

Life is Tech!は株式会社ライフイズテックにより開発された国内最大級のプログラミング学習サービスです。2011年にサービスを開始し中学生・高校生向けに3DCGやアプリ制作、映像、音楽など幅広く技術を提供しています。

中高生にITの楽しさを伝えることを目標にしているので、パソコンが苦手な人でもどうすれば興味をもってくれるかカリキュラムなどが工夫されており、いままでに、約4万人の中高生が参加しました。

例えば、Life is Techでは対話による学びを重視しており中高生には大学生が教えています。中高生と年齢が近い大学生が教えることによって、気軽に話すことができたり、自分も将来そうなりたいと思ってくれるかもしれません。そのために、大学生は中高生との接し方と高い技術力を身に着ける100時間以上の研修「リーダーズ」を実施しています。

AI教育に関するオススメの本・論文

AI教育に関するオススメの本・論文は3つあります。

以下でそれぞれ解説していきます。

教育AIが変える21世紀の学び:指導と学習の新たなかたち

教育AIが変える21世紀の学び:指導と学習の新たなかたち

https://honto.jp/netstore/pd-book_30594053.html

内容

人工知能について述べる前に、生徒が何を学ぶべきかを明確にしていき、それを学ぶためにはどのように学習指導を行うのが適切か考えて行く内容になっています。AIを用いた活用例も紹介され、今後のAI教育を本質から考察し、新学習指導要領の最終的な目標を理解できます。

特に、活用例も通して教育にはAIがどのように使われていくのかを知りたい方におすすめです。

読者レビュー

人々は自分の専門を決めた後には二度と使わない内容の学びに多くの時間を費やしています。これを解決するには、基礎となるもの(コア概念)を強固かつ柔軟に理解することが必要です。これを「専門的アマチュアリズム」と呼びます。第一部では、ルーチン化された業務がAIとロボットに移行する21世紀において、何をどう学ぶべきについて議論されています。

第二部では、教育における人工知能(AIED, Artificial Intelligence in EDucation)について書かれています。知的で、適応的で、パーソナライズされた学習システムの発端から始まり(私を含め現在50-60代の研究者はこの発端の話を懐かしく読むでしょう)、これからどうなっていくのかということが展望されます。

引用元▼
Amazon:教育AIが変える21世紀の学び

AI時代の教師・授業・生きる力:これからの「教育」を探る

AI時代の教師・授業・生きる力:これからの「教育」を探る

https://www.amazon.co.jp/AI%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E6%95%99%E5%B8%AB%E3%83%BB%E6%8E%88%E6%A5%AD%E3%83%BB%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%82%8B%E5%8A%9B-%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E3%80%8C%E6%95%99%E8%82%B2%E3%80%8D%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%82%8B-%E6%B8%A1%E9%83%A8%E4%BF%A1%E4%B8%80/dp/462308941X

内容

いまの教育のあり方から、AIを導入することによって、教師や授業などはどう移り変わっていく必要があるのか。8人の研究者が実践に基づく考えを議論を通して検討していく。そして、AI時代の中での「生きる力」とはなにかを解いていく。

特に、これからAI時代の中でなにが必要になっていくのか知りたい人におすすめです。

読者レビュー

本書は、『AIに負けない「教育」 (認知科学のフロンティア)』(2018年)の続編、実践の書。AI時代の「教師」とは?「授業」とは?「生きる力」とは?8人の専門家の研究実践報告とディスカッションを通して「10年後の教育」を探っていく。

教育現場の経験知をAIが学習し、教師たちがネットで共有する事例、WEBを活用した教員研修システムの構築事例、デジタル教科書を使用した模擬授業の事例から、AI時代の生きる力をいかに育成するかといった議論まで幅広く紹介されていて、この分野の先端を一望することができる。

著者の一貫したテーマであるが、AIなどのテクノロジーはたんに既存の教育を効率化したり、高い成果を得るための道具なのではなく、テクノロジーを活用していくことで、教育そのものの考え方やあり方が変わっていく。そんなパラダイムシフトに、メンバー一同が注目している。

▼引用元
Amazon:AI時代の教師・授業・生きる力

人工知能は教師の役割をどう変えるか

東洋大学斎藤里美教授によって書かれた論文「人工知能は教師の役割をどう変えるか-教師に求められる役割と論理-」は、AIの発展によって現在できることや今後どういったことが可能になるのかを簡潔に説明しています。

特に、AIはどんなことを得意として教師はの役割はどう変わっていくのかを知りたい方におすすめです。

AI教育のこれから

これまで紹介してきたようにAI教育には多くのメリットがあり、さまざまなサービスが進められています。教育業界では、従来通りの「知識・技能」に加え「思考力、主体性」といった個々の強みが問われるようになってきました。

AIの導入によって、基礎学習の効率化や興味関心が生まれることによって一人一人の個性をより育める社会になることでしょう。

そして、AIが導入されても教師の役割は大切でコミュニケーションを取り、生徒に寄り添うことがより大切になっていきます。AIの強みを活かせる部分には導入していき、役割を明確にしていくことでAI教育はよい方向性で進めていけるでしょう。

まとめ

現在、教師の人手不足や過重労働が問題になっています。AIはこれらの問題を解決すると共に、生徒の学習を最適化する手伝いが可能です。そのため、今後AIは教育業界のソリューションとして活用が広がっていくことが予想されます。

同時にAIの登場によって、社会から求められている力が変化を遂げているのも事実です。このような時代の流れに適応できるような力を、教育によって与えていくことが今後の課題になってくるでしょう。

AIの活用を進めつつ、今後さらに教育の質の向上を目指していくことが必要になってくるのではないでしょうか。

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