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近年、将棋界でAI(人工知能)のが驚異的な実績をあげています。
今まで、自動対局機能は実装できても、人間最強の棋士にロボットが勝つことはないと考えられてきました。それは将棋の打ち手のパターンが多く、そのパターンに対応するシステムの構築が難しかったからです。
しかし、2017年、将棋AIはプロ棋士に完勝し大きく話題になりました。
今回は、将棋で活躍するAIについて説明していきます。
目次
将棋AIが人間を超えた!?
2017年に将棋AI(Ponanza)がプロ棋士に完勝
2017年、これまでプロ棋士として名声を築いていた佐藤天彦名人が、将棋AI(Ponanza)の前に惨敗しました。
このニュースが報道されると、人間がAIを超えた事例として、大きな話題になりました。
そして、今でも将棋×AIのサービスやツールは生まれ続け、AIの勢いは止まっていません。
将棋は完全情報ゲーム
なぜ将棋でAIがここまで台頭したのでしょうか。
将棋は完全情報ゲームと言われています。つまり、将棋は全ての駒の動きのパターンが有限個に決まっていますし、お互いの行動が相手に見える形になっています。
特に将棋は対局する人が2人で、一方の利益が相手の損失に直結するゲームです。そのようなゲームは二人零和有限確定完全情報ゲームと呼ばれています。将棋以外にも、オセロやチェス、囲碁などが挙げられます。
AIは過去の対戦データを学習することにより、自分がどのように打てば有利になるのかを容易に導き出せます。
しかし、人間は記憶力に限界があるため、全ての指し手を把握するのは不可能です。
そのため、将棋ではAIの方が人間よりも圧倒的有利になります。
AIなら感情のバイアスがかからない
AIの特徴として、人間のような感情のバイアスに左右されることはありません。
人間は先行きが予想できなかったり、リスクが大きい手の場合は心理状態に大きく左右されます。
しかし、AIであればそのような感情的なバイアスを気にせず、データに基づいた統計的な一手で、戦況がより有利になるように指すことができます。
そのため、長期的に見ると人間よりもAIの方が有利に展開されるといったことが起こります。
感情的なバイアスの無さもAIのメリットと言えます。AIは、人間のような感情のバイアスに左右されることはありません。
人間は先行きが予想できなかったり、リスクが大きい手の場合は心理状態に大きく左右されます。
しかし、AIであればそのような感情的なバイアスを気にせず、データに基づいた統計的な一手で、戦況がより有利になるように指すことが可能です。
そのため、長期的に見ると人間よりもAIの方が有利に展開されるといったことが起こります。感情的なバイアスの無さもAIのメリットと言えます。
棋士が将棋でAIを活用するケースも増加
将棋AIは棋力向上のためのツールに
実際、今では棋士が将棋の練習でAIを活用するケースも増えています。
ただし、これは実際に試合で活用して相手に勝つという使い方ではなく、自分の棋力を上げるためのツールとしての使い方が一般的です。
例えば、将棋の練習をする際にAIと対局し、今まで考えたこともなかった斬新な一手を発見したり、自分が正しいと思っていた指し方が実際にはどうなのかを検証したりすることで、対局に備えられます。
そのため、現在ではAIと将棋の練習を行うのが一般になりつつあります。
将棋で活躍するAI
リコー将棋AI棋譜記録システム
画像認識を生かした将棋の進行状況を自動で記録するサービスです。
日本将棋連盟では年間3,000局以上の対局が行われ、全ての対局で棋譜が記録されています。
その記録は全て手作業で人員が不足しているのが課題でしたが、対局の記録が自動化されることで、業務の省人化につながりました。
対局将棋ソフト K-Shogi
無料で遊べる対局将棋ソフトです。
40段階のレベルに分かれていて、初心者から有段者まで幅広く楽しめます。
AIと対局できる他、棋譜を解析して次の一手のヒントを教えてくれる機能もあります。
Ponanzaの生みの親が開発「将棋ウォーズ」
AI開発を手がけるHeroz社が開発したオンライン対局サービスです。
AIのレベルを設定でき、初心者から上級者まで、すぐに適切な相手を見つけられます。
また、佐藤天彦名人を破ったAI「Ponanza」によるアドバイスも活用できるため、初心者であっても強い相手に勝利する方法を学べます。
囲碁AIが将棋にも応用「AlphaZero」
AlphaZeroは、囲碁で世界チャンピオンを破ったAIphaGoに将棋とチェスの機能が追加されたもので、どのゲームでも世界チャンピオンのプログラムを破っていたそうです。
特に将棋では、2017年の世界コンピュータ将棋選手権で優勝した将棋ソフトelmoと100回対局し、AlphaZeroは90勝8敗2分という圧勝でした。
AIと棋士の関わりあい
AIが将棋の世界に進出したことで注目されるのは、これまでの将棋界を築いてきた棋士との関わりあいです。
AIが将棋界にさまざまな影響をもたらしてきている中で、現代でしのぎを削っている棋士たちはAIに対してどのような行動を取っているのでしょうか。
AI将棋の申し子・千田七段
現在26歳の千田翔太七段は、修業時代であった2012年からAIを駆使したトレーニングを開始しました。
「AI将棋の申し子」として話題に挙がることも少なくない千田七段ですが、AIソフトによる棋譜を参考とすることの利点として、人間のもつ特有の「悪い手」がないことを挙げています。
また、将棋AIが発展した後の将棋界に千田七段が求めるのはファンが楽しめるかどうか、という点だと述べており、AIの将棋界への進出によって、今までよりも明確に対局の細やかな部分まで楽しめるようになることを千田七段は期待しています。
AIを凌駕しうる藤井七段
千田七段は、今後の棋士教育においてAIが重要な役割を果たすと考えていましたが、藤井聡太七段はそのAIによって成長する世代の、代表的な棋士のひとりです。
プロ棋士養成機関である奨励会時代からAIをトレーニングに活用しているという藤井七段は、幼少より続けていた詰め将棋によって培われた棋力を更に向上させ、現在の強さを得ました。
AI時代で話題の中心となっている藤井七段ですが、特に世間を驚かせたのは2020年6月29日に行われた渡辺棋聖との第二局です。
藤井七段が打った一手は、AIの4億手に及ぶ分析でも候補手に選ばれなかったものでしたが、その後6億手の分析にて最善手とされたもの。AIでさえ一筋縄ではたどり着かなかった一手を、藤井七段は23分という短い時間で編み出したのです。
AIを活用したトレーニングによって、AIを超える思考で最善手を打った藤井七段は渡辺棋聖に勝利し、大きな話題を呼びました。
将棋業界は今後どうなる?
AIの発達によって、練習では先例に囚われない指し手を簡単に見つけられるようになったことから、若手棋士の教育レベルは遥かに上がりました。そのため、将棋業界の全体のレベル向上につながります。
また、今まで棋士は指し手のパターンは先代の人間が考えたものを覚えて対局するのが普通でした。
しかし、最近ではAIが導き出した手を対局で使用するプロ棋士は増加しており、新しい戦法に対応するために従来の法則に囚われないクリエィティブな思考が要求されるのではないでしょうか。
まとめ
将棋や囲碁などのゲームにおけるAIの勝利は、「AIが人間を超えた」とよく話題になります。
しかし、将棋や囲碁はあくまでも人間が楽しむためのゲームであり、AIの実力は関係ありません。
将棋AIは将棋を練習するツールになりつつあり、AIをどう活かすかがスキルアップにも繋がります。
将棋の中にAIをうまく生かすことによって、今まで以上に将棋の魅力が向上するでしょう。
そして、将棋に限らず他の知的格闘技のおいても同様にAI活用が広がっていくと期待ができます。