
原題:List of verticals and how they use chatbots(チャットボットの使用事例に関する縦断的リスト
この記事は、8の分野別にチャットボットの活用事例について解説されており、現在のチャットボットの活用を把握する上で有用な記事になっています。
どんなビジネスにおいても、顧客と対話するチャネルとしてチャットボットを使用することで、利益を得られる数多くの方法があります。以下の2つの方法でチャットボットを考えてみるとわかりやすいでしょう。
- 自動化されたメッセージングの形として。
- (Facebook Messenger、Kik、Telegram など)メッセージングアプリケーションの中にあるアプリケーション(とりわけグラフィカルなアプリケーション)として。
既存のアプリの中にある自動化されたメッセージングは、強力で非常に有益なビジネス用途を持っています。メッセージングアプリ内でチャットボットを使用できると、ボットをダウンロードしたり、ユーザを認証したりする必要がなくなります。スタンドアロンでのダウンロード、個別の認証、ユーザが学習しなければならない新しいシステム、もしくはその他のさまざまな使用上の摩擦もありません。ボットはクリティカルマス(※)に達するほどのユーザを抱えているという事実により、自動的に利益を得るのです。ボットは、こうしたユーザの大量引き込みを活用します。
8つのユースケース
以下では、さまざまな業種におけるボットの優れた活用事例を縦断的に挙げていきます。これらはすべてを網羅しているわけではありませんが、ボットがさまざまな業界において、さらには業界を横断してどのように使われているのかを説明しています。
カスタマーサービス
カスタマーサービスは、おそらく現在におけるチャットボットの最も人気のあるユースケースです。自然言語(人間が使用する言語)で投げかけられた質問にボットが簡単に答えられる技術があります。こうしたシステムは非常によく稼働するものも、単純で頻繁に尋ねられる質問に答えるチャットボットを提供することに限定されており、ボットが適切に回答できない場合、会話は人間に確実に引き継がれます。
カスタマーサービスにおけるチャットボットの機能は、単に情報を伝えるだけでなく、拡張することができます。テキストや音声コマンド、またはグラフィカルなインタフェースを介して、ユーザが実際に予約、注文の追跡、または保証書の購入などを行うことができます。
金融サービス
金融機関は、チャットボットがカスタマーサービスのコストを削減し、より便利な形で多くのサービスを提供することを理解しているので、すでに大々的に導入されています。支払いや残高照会などの簡単なタスクをチャットやSMSで行うことはすでに可能です。より高度なタスク、例えば保険の加入なども現実のものになりつつあります。HITL とグラフィカルなインタフェースの賢明な使用により、金融機関は、チャットアプリケーション内から最も一般的な取引の多くを完了する便利な能力を顧客に提供することができます。
電子商取引(eコマース)
チャットボットのeコマースへの応用には、いくつかの可能性があります。
eコマースのためのチャットボットのわかりやすい応用として、あなたが欲しいアイテムを見つけるのを手伝おうとする人間のリアル店舗内アシスタントに相当するものをオンラインで実現することがあります。チャットボットはあなたが欲しいものを尋ね、それを見つける手助けをしようとします。しかし、このユースケースには問題があります。オンラインストアの検索やフィルター機能は一般的に堅牢で使いやすいため、ユーザはリアル店舗で関連する商品を見つける際に直面する問題と同じような問題を抱えていません。
すでに十分に機能している検索やフィルター機能を置き換えるのではなく、チャットボットは購入体験をサポートする他のサービスを提供することができます。例えば、チャット内からよりシームレスな決済ソリューションを提供することが可能になるかもしれません。また、ユーザが大まかな検索を使って具体的なアイテムを特定した後に、そのアイテムに関する質問に答えてサポートすることも可能かもしれません。
チャットボットは、特に顧客が価値よりも利便性を重視する購買において、より高いレベルで機能することが可能です。例えば、チャットボットを使えば、ウェブサイトで花を注文するよりもはるかに効率的に購入して送ることができるかもしれません。こうしたチャットボットの利便性は、住所や支払い情報といったすべての関連事項がチャットアプリ内に保存されている場合に特に当てはまるかもしれません。
チャットボットをグループで使用することができるという事実は、eコマース、特にソーシャル購入の分野で、グルーポン(※)のモデルのような興味深いユースケースを生み出す可能性があります。
最後に、チャットボットは地理的位置情報とリンクすることができるので、非常にコンテキスト(文脈)に沿った方法で割引や情報を提供することができます。例えば、ユーザがショッピングモールで特定の店の前を通ったときに、ボットは特定の店の割引クーポンを提供することができます。
マーケティング
マーケティングは、現在におけるチャットボットの大きな使用事例です。マーケティング担当者にとって、好みのチャットアプリ内で顧客に連絡を取れることが明らかな価値となっています。現在、チャットボットの開封率は電子メールよりもはるかに高くなっています。というのも、チャットボットには依然として新規的価値があるからです。
短期的にはボットの目新しさのために経済的なメリットがあるかもしれませんが、長期的には、このチャネルはEメールやその他のチャネルと同じように飽和状態になる可能性があります。
それにもかかわらず、ボットはコミュニケーションのチャネルであるだけでなく、操作のチャネルでもあるため、他のマーケティングチャネルに比べて大きなアドバンテージを持っています。つまり、ボットは製品あるいはサービスを宣伝するだけではなく、顧客がチャネルを離れることなくそれを使うことを可能とするのです。操作できるというボットのアドバンテージは、マーケティング担当者にとって強力なポテンシャルとなります。
ボットの潜在的なバイラル性とグラフィカルなインタフェースの使用は、ゲーム化されたソーシャルマーケティングキャンペーンの機会を開くでしょう。もちろん、マーケティング担当者にはアフィリエイトやネイティブ広告を使って人気のあるボットを活用する可能性もあります。
教育
(グループ内での)管理上の質問への回答や予約などのカスタマーサービスタイプのチャットボットの応用は、チャットアプリ内で教育サービスを提供するために流用できることは明白です。今日、スタンドアロンのアプリケーションによって提供されている体験の多くは、チャットプログラム内で直接行うことができるボットの経験に変換することができます。
例えば、言語を教えるボットは、チャットアプリ内で学生と対話することができます。学生はボットと対話し、質問に答え、メッセージを記録することができます。このタイプのテストとインタラクションは、他のテーマ領域にも適用できます。Duolingo(※)のようなプラットフォームは、独自のアプリに頼るだけではなく、チャットにも進出する可能性があります。
また、チャットアプリのソーシャル特性を利用して、ソーシャルな教育体験を作成することも可能です。学生のグループが質問に答えたり、コンテンツを作成したりするために競争することができるのです。
ヘルスケア
ヘルスケアには管理コストを削減し、患者の利便性を向上させるなど、多くのカスタマーサービスを改善する機会があります。医師の診療予約および検査の予約は、チャットボットの明らかな使用事例です。保険手続きをよりシームレスにすることは、チャットボットのもう一つの大きな応用事例です。
患者は、医者や病院を訪れるたびにアプリをダウンロードすることに抵抗があるため、チャットボットはこの分野での良い解決策になる可能性があります。地理的位置情報と連携したチャットボットは、病院内を案内し、患者がいる病院のセクションに関連した質問をすることができるようにします。
ヘルスケアにおけるAIは巨大化し、医療のプロフェッショナルの能力を強化するために広く使われるようになるでしょうが、チャットボットがすぐに医師の代わりになるわけではありません。しかし、処方箋や薬の使用状況を追跡したり、医師と患者が健康日誌を共有できるようにしたりする領域に対して、すぐに影響を与える可能性があります。
政府
政府部門におけるチャットボットには、特に有効な活用事例があります。というのも、市民は使用したい政府サービスのためにアプリをダウンロードすることに消極的だからで、とりわけ使用頻度が非常に低い政府サービスを使う時はいっそう消極的になります。
アプリを使用する代わりに、政府部門はチャットボットを使用して幅広いサービスを提供することができます。市民はチャットボットを使ってサービス利用に関する情報を得たり、請求書を支払ったり、質問をしたりすることができます。またビザ、パスポート、許可証に関する情報の提供を受けたり、チャットプラットフォームから離れることなく、行政手続きについて質問をしたりすることができます。
ホテル
政府部門と同じように、よほどの常連客でない限り、ホテルの宿泊客はアプリをダウンロードすることには消極的でしょう。しかし、インターネットによって非常に便利に利用できるサービスはたくさんあります。こうしたサービスは、チャットボットによって提供される可能性があります。明らかな使用事例としては、ホテルの施設についての質問やルームサービスの注文などがあります。
地理的位置情報を使用することも可能です。チャットボットは、物理的なコンテキストによって必要とされるときに表示されます。例えば、顧客がコーヒーショップやレストランに入ると、関連するボットが注文を取ることができます。また、宿泊客がどこにいるかにもとづいて、彼らがフィードバックを残したり、質問できるようにしたりすることも可能です。例えば、宿泊客がプールのそばにいるときに、プール施設についてのフィードバックを残すことができるようにするのです。
例
請求書の支払いを求めるメールを受け取ったとしましょう。このメールには、請求書を支払うためのシステムへのリンクが含まれている場合があります。支払いを行うにはそのシステムを開き、ログインし、関連するページに移動してから、請求書を支払うために必要な関連手順を実行する必要があります。
今度はチャットアプリ内で請求書の支払いを求めるメッセージを受け取ったとします。メッセージは、請求書を支払うためにチャットアプリのボタンをクリックすることができるボットから送信されます。ボタンをクリックすると、グラフィカルな画面がチャットアプリに表示され、支払処理に必要なすべての主要な詳細がすでに入力されています。あとは支払いボタンをクリックするだけです。
チャットアプリによる支払いを実現している2番目の例は、ユーザにとってはるかに優れた体験であり、はるかに高い成約率が得られることがわかります。ボット体験ではユーザは既にチャットアプリの認証済みユーザであり、支払いを要求するメッセージが支払い機能と密接に統合されているという事実から恩恵を受けることができます。
ボットの恩恵を受けられる体験は、思いつく限りで数え切れないほどの種類があります。ユーザがボットから情報をさがし、チャットアプリで直接さがしている情報にアクセスできる例もあります。また、ユーザがアプリをダウンロードして使用するのではなく、チャットアプリで直接アクションを実行したい場合もあります。
チャットボットの限界
ボットに関する様々な実現可能なユースケースについて議論する前に、その使用に際してはいくつかの限界があることを知っておくことが重要です。
第1に、どんな新しい技術でもうぬぼれからの利用に陥りやすいものです。そのため、ボットがエンドユーザにとって実際に問題を解決しているかどうかを確認する必要があります。そして、ボットがアプリやウェブサイトよりも優れている理由を説明する必要があります。ボットの体験は、従来のツールを使用した場合に比べて、セットアップの体験を含めたさまざまな側面において、実際に改善されている必要があります。
第2に、ボットを複雑にしすぎたり、多くのことをさせたりするのは簡単です。例えば、自然言語処理は、広範囲で表面的なタスクでは非常にうまく機能しますが、よりコンテキスト指向のタスクでは人間のエージェントの代わりになることは不可能です。これらの制限を理解し、必要に応じて人間に会話を引き継がせる機能(ヒューマン・イン・ザ・ループ:HITL機能)を使用するなどして、ボットの設計を通して制限事項を緩和する必要があります。
また、チャットのインタフェースは、多くのタスクを完了するのに最適ではありません。特にユーザの関心が変わる場合や、多くの可能な選択肢に関するコンパクトな概要を見る必要がある場合には、最適ではありません。このような場合は、(ボットによって制御される)グラフィカルなインタフェースの方が良い選択肢になることが多いのです。
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ビジネス上の顧客体験を向上させるために、チャットボットが活用できる方法は非常に多くあります。近い将来、すべての企業は、企業とのコミュニケーションだけでなく、企業が提供する多くのサービスと相互作用する方法として、チャットボットが提供されるようになるでしょう。

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