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2020.10.22

経済産業省が進めるDX関連施策まとめ ー2025年の崖って何!?

最終更新日:

今、テクノロジーが既存のビジネスの構造を破壊するなど、新しい価値を生み出す「DX(デジタルトランスフォーメーション))」が世界中のあらゆる分野で起きています。

このトレンドが日本で大きな波を起こしたのは、2018年9月7日に経済産業省が発表した「DXレポート」がきっかけです。この「DXレポート」における提言を基に、DXの実現を経営者に向けて、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためのガイドライン(略称:DX推進ガイドライン)をまとめ、動き始めています。

この記事では、経済産業省がまとめた「DXレポート」の概要を確認した上で、それに基づいて決められたDXのさまざまな基準と対応を説明していきたいと思います。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か

DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義から知りましょう!

DX(デジタル・トランスフォーメーション)はもともと、「人間の生活に何らかの影響を与え、進化し続けるテクノロジーであり、その結果、人々の生活がよい方向に変化する」という概念です。スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱しました。簡単に言えば「業務環境をアナログからデジタルに移行させよう」という意味です。

その一方で、日本経済産業省は2018年の「DX推進ガイドライン」にてDXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義しました。

インターネットの高速回線、携帯電話やスマートフォンの普及など、日本は昔から世界の他国より比較的にデジタル化が早い段階で進んでいる国です。しかし、経済産業省が発表したDXレポートでは、現状の国内の企業を取り巻くIT関連の課題を解決できない場合、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約2倍)の経済損失が生じる可能性があると警鐘が鳴らされ、DXを進める必要性が強調されています。

なぜDXが進んでいると言えないのでしょうか?

実は、経済産業省が定義したDXは、単なるデジタル化を指すものではありません。予測不可能の変化に対応するには、組織の形や社員の働き方、価値観などを変革させながら、ただ単にデジタルを取り入れるだけではなく、企業がいち早く外部環境・内部環境の変化を捉え、デジタルの力を使って最適な経営戦略に導くことによって、新しい価値創出することが重要になっています。

▼DXについて詳しくはこちら

DXの注目のきっかけになった経産省の「DXレポート」

「DXレポート」とは

DX レポート (サマリー)

「DXレポート」は、正式的に「DXレポート:ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開」(略称:DXレポート)という報告書です。内容が3つに分けられ、「2025年崖」、「DX実現シナリオ」と「DX推進に向けた対策について」です。

内容をまとめると、「企業が今まで使ってきたレガシーシステムでは新しい時代に対応できなくなり、継続するには大きな負担になっている。新しいシステムに乗り換えないと、日本企業は海外と比べ、デジタル競争の敗者となってしまう。それを回避するためには、各企業や業界がデジタルトランスフォーメーションを意識的に進めるしかない」ということです。目標として「2025年までに」という期限が定められています。

この報告書は突然出てきたものではありません。今後、DXを実行していく上で、従来のITシステムが大きな課題であることから、ITシステムに関する現状の課題や今後の対策を、IT業界の関係者や経験者を含めたメンバーで構成されたDXに向けた研究会での意見や提言をまとめたものです。

経済産業省の立場としては、このレポートを通じて日本企業に危機感を抱かせ、DXの推進を後押ししたいという意図があります。日本企業、また日本でビジネス展開している企業ならば、業界に関係なくこの報告書の内容を把握し、その提言を受け止めなくてはならないでしょう。

2025 年の崖:「DXレポート」が訴えていること

「2025年の崖」とは、日本でDXが進まないがために、2025年以降に年間で最大12兆円の経済損失が生じるとことを表した言葉ですいうものです。

まず「2025年の崖」の内容は大きく分けて以下の3点です。

①市場に対応できないと、デジタル競争の敗者になる
②システム維持管理費がIT予算の9割以上を占め、技術的な負債が起きる
③システムトラブルやデータの滅失リスクの高まり

DXレポートでは、「2025年の崖」という言葉とともに、現在のITシステム基盤に対する警鐘が鳴らされています。この「2025年の崖」の背景には、企業のレガシーシステムの問題があります。

会社の基盤となっていた、既存システムの中身が複雑化・老朽化・ブラックボックス化していくことで、既存システムが残存した場合に想定される国際競争への遅れや日本経済の停滞などが起きてしまいます。

この損失は大企業だけのものではありません。サプライチェーンの一端を担い、レガシーシステムを利用し続ける中小企業にとっても「2025年の崖」は大きな脅威となる可能性があります。

その一方で、もしDXが実現できれば2025~2030年に実質GDP130兆円超の押し上げができるとも述べられています。

「DX レポート」をもう少し詳しく読み解くと、「2025年の崖」を解消しない場合、ユーザーとベンダーに対してそれぞれどのようなリスクが起こるかが詳しく解説されています。

ユーザーのリスク

  1. 爆発的に増加するデータを活用しきれず、デジタル競争の敗者に
    データ・ドリブンと呼ばれる市場の変化についていくことができず、企業の競争力が落ちる
  2. IT予算の9割以上となり、多くの技術的負債を抱えていく
    現行システムの管理維持費が高額化、業務基盤そのものの維持・継承が困難に
  3. 保守運用の担い手が減り、セキュリティレベルが低下する
    サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやダウン、データ滅失・流出などのリスクの高まり

ベンダーのリスク

  1. 技術的負債の保守・運用にリソースを割かざるを得ず
    最先端のデジタル技術を担う人材を確保できない
  2. レガシーシステムサポートに伴う人月商売の受託型業務から脱却難
    新規事業投資に当たって株主や経営層の理解を得ることが難しく、新しいサービスに注力できない
  3. クラウドベースのサービス開発・提供という世界の主戦場に参入できない
    カスタマイズ・機能改善ができなく、運用コストが高い

こういった状況の中、経済産業省は、2025年までに既存のITシステムを廃棄、マイクロサービスの活用による段階的な刷新、協調領域の共通プラットフォーム活用などでリスクを低減していく対策を提案しています。

これらにより、ユーザー企業がこれまでの技術的負債を解消して、人材や資金を維持し、保守業務から新たなデジタル技術の活用にシフトできます。また、データ活用などを通じてスピーディな方針転換やグローバル展開への対応も可能になります。

マイクロサービス・・・ソフトウェア開発の技法の1つ。1つのアプリケーションをビジネス機能に沿った複数の小さいサービスの疎に結合された集合体のこと。マイクロサービスは複数の小さなサービスをAPIによって連携させるアーキテクチャのことで、AmazonやLINEなどの企業が導入している

このような取り組みなどを通じて、「2025年の崖」を乗り越えることを目指しています。

経営者向けにDX推進法がまとまった「DXガイドライン」

「DX推進ガイドライン」の概要

それでは、実際にDXを推進していくには、どうすればいいのでしょうか。経済産業省は、その1つの方針として2018年10月に「DX推進ガイドライン」を取りまとめました。

「DXレポート」の中で、DXを実現していく上でのアプローチや必要なアクションについての認識の共有が図られるようにガイドラインを取りまとめることが必要」と経済産業省は指摘しており、それとともに「DX推進ガイドライン」が発表されました。

このガイドラインは、DXを推進するにあたって経営者が押さえるべき事項を明確にし、取締役会や株主がDXの取り組みをチェックする上で活用できるものとすることを目的としています。

内容は

  • (1)DX 推進のための経営のあり方、仕組み」
  • 「(2)DX を実現する上で基盤となる IT システムの構築」

の2つから構成されています。特にDXの推進のためには、Iシステムだけでなく、経営のあり方から見直し、検討していくことが重要です。

(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み

「DX推進ガイドライン」では、DX推進のための経営のあり方、仕組みを創り上げるために、以下の5つの項目に取り組むべきだと示されています。

  1. 「経営戦略・ビジョンの提示」
  2. 「経営トップのコミットメント」
  3. 「DX推進のための体制整備」
  4. 「投資等の意思決定のあり方」
  5. 「DXにより実現すべきもの:スピーディーな変化への対応力」

1つ目の「経営戦略・ビジョンの提示」は、データとデジタル技術を活用して、どの事業分野でどのような新たな価値を生み出していくのか、明確な経営戦略とビジョンを提示できているか、というDX推進にあたっての基本姿勢が問われています。

そのほかに、2つの失敗例も提示されています。まず、「経営者が明確なビジョンがないのに、部下に「AIを使って何かやってほしい」など、丸投げのやり方は避けるべきです。また、明確な目的がない技術起点のPoC(実証実験)は、企業とベンダー両社の疲弊と失敗を招きます。

2つ目の「経営トップのコミットメント」は、経営トップ自らがこれらの変革に強いコミッ
トメントを持って取り組んでいるかという項目です。DX推進には、組織や企業文化における大きな変革が求められるため、社内からの抵抗があることも想像がつきやすいです。この場合には経営者がリーダーシップを発揮し、責任を持って意思決定することが求められます。

3つ目の「DX推進のための体制整備」は、経営戦略や提示されたビジョンと紐づけられた上で、経営層が各事業部門に対してDX推進のための新しい挑戦を促し、かつ挑戦を継続できる環境を整備しているか、という項目です。ここでは、3つの取り組みを実施します。

  1. 「マインドセット」:新たな挑戦を積極的に行っていく
  2. 「推進・サポート体制」:経営戦略やビジョンの実現するために、デジタル技術の活用を推進するためのDX推進部門の設置など
  3. 「人材」:DXの実行に必要なの育成・確保に向けた取り組み

4つ目の「投資等の意思決定のあり方」では、DX推進のための投資における意思決定において意識すべき以下3つの点が提示されています。

  1. コストのみでなく、ビジネスに与えるプラスのインパクトを勘案して判断しているか
  2. 定量的なリターンや角度を求めすぎて挑戦を阻害していないか
  3. 投資をせず、DXが実現できないことにより、デジタル化するマーケットから排除されるリスクを勘案しているか

5つ目の「DXにより実現すべきもの」は、DXによるビジネスモデルの変革が、経営方針の転換やグローバル展開などへのスピーディな対応できるという項目です。変化への対応力を身につけることの重要性を強調しています。

(2)DXを実現するうえで基盤となるITシステムの構築

DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築のパートは2段階に分け、それぞれ3つの項目から構成されています。

①「体制・仕組み」

  1. 全社的なITシステムの構築のための体制
  2. 全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス
  3. 事業部門のオーナーシップと要件定義能力

1つ目の「全社的なITシステムの構築のための体制」は、各事業部の連携できる全社的なITシステムの構築するための体制が整っているか、という項目です。経営層、事業部門、情報システム部門などからなる少人数のチームを作り、トップダウンで変革を行うという先行事例が述べられています。

2つ目の「全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス」は、ITシステムが事業部ごとに個別最適となることを避け、システムが複雑化・ブラックボックス化しないためのガバナンスがあるか、またITシステムの刷新にあたっては、外部のベンダー企業に丸投げせずに自らがシステム連携基盤の企画や要件定義を行なっているか、という項目です。
付き合いのあるベンダー企業からの提案を鵜呑みしたり、実績があるベンダー企業の提案であれば問題ないと判断しがちであったりすることは避けるべきです。
3つ目の「事業部門のオーナーシップと要件定義能力」は、各事業部門がオーナーシップを持ってDXで実現したいこと事業企画や業務企画を明確にしているか、そしてベンダー企業から提案を踏まえ自ら要件定義を行い完成責任まで担えているか、という項目です。
各事業部門がオーナーシップを持たず情報システム部門任せなどにしてしまい、結局ITシステムが事業部門側の要求に満たさないといった失敗ケースもあるため、注意すべきです。
②「実行プロセス」

  1. IT資産の分析・評価
  2. IT資産の仕分けとプランニング
  3. 刷新後のITシステム:変化への追従力

1つ目の「IT資産の分析・評価」は、IT資産の現状を正しく分析し、評価ができているかという項目です。

2つ目の「IT資産の仕分けとプランニング」は、

  1. ビジネス環境の変化に応じたビジネスモデルの変革に適しているシステム環境を構築できるか
  2. 全体最適なシステムとなっているか
  3. 競争領域へのリソースの重点配分を図っているか
  4. 廃棄すべきものはサンクコストとして廃棄できているか
  5. 技術的負債の減少に繋がっていくか

以上の5つの項目を考案し、IT資産の仕分けやプランニングができているかという項目です。

3つ目の「刷新後のITシステム:変化への追従力」は、刷新後のITシステムはビジネスモデルの変化に迅速に対応できるものとなっているかという項目です。そして、IT システムができたかどうかではなく、ビジネスがうまくいったかどうかで評価する仕組みも問われます。

各企業が DX を実行していくにあたり、このガイドラインが「鍵」となることが期待されます。このガイドラインに基づいて、まずはそれぞれの項目を自社の現状で照らし合わせ、どれぐらいDXへの取り組みが達成しているかを把握してみましょう。まだ達成していない取り組みについては、新たな視点として今後の組織・事業運営に取り入れてみてください。

また、社会環境や技術動向は今後どんどん大きな変化が予想されるため、このガイドラインは、さまざまな環境の変化に対応できるように努めましょう。

デジタルを評価できる「DX推進指標」とは?

「DX推進指標」の概要

経済産業省は2019年7月31日、デジタル経営改革を推進するため、『「DX推進指標」とそのガイダンス』を取りまとめました。

「DX推進指標」とは、「DX レポート」、「DX 推進ガイドライン」を踏まえ 、「DX 推進ガイドライン」の2つの柱である「(1)DX 推進のための経営のあり方、仕組み 」と「(2)DX を実現する上で基盤となる IT システムの構築 」について、経営者や社内関係者が自社の取り組みの現状や、あるべき姿と現状のギャップ、あるべき姿に向けた対応策について認識を共有し、DX推進に向けたアクションを取っていくための気づきの機会を提供するものとして、DX推進指標が策定されています。

DX推進指標の使い方

DX推進指標の活用方法は、自己診断を基本とし、経営層以下関係者が DX を推進するにあたっての課題に対する気付きとなるよう、以下3つのステップで想定されています。

① 認識共有・啓発

「DX推進のための経営仕組み」と「その基盤となるITシステムの構築」に関して、経営幹部や事業部門、DX部門、IT部門などの関係者が集まって議論しながら、関係者間での認識の共有を図り、今後の方向性の議論を活性化します。なお、関係者が集まって議論する前に、関係者個々に自己診断し、関係者間でのギャップを明らかにします。

② アクションにつなげる

自社の現状課題や認識を共有した上で、あるべき姿を目指すために次に何をすべきか、アクションについて議論を行い、実際のアクションにつなげることが重要です。また、各項目に点数を付けるだけでなく、アクションについて議論し、実際のアクションにつなげることが重要となります。

③ 進捗管理

翌年度に再度診断を行い、アクションの達成度合いを継続的に評価することで、DXを推進する取り組みの年々変化を把握し、自社のDXの取り組みの進捗を管理します。また、一度診断を行っただけでは、持続的なDX実行につながらないため、年次ではなくより短期のサイクルで確認すべき指標・アクションを自社のマネジメントサイクルに取り込んで管理することが重要となります。

「DX推進指標」の構成

次に、「DX推進指標」の構成をご紹介します。

DXを推進する際に、現在の日本企業が直面している課題やそれを解決するために押さえるべき項目を中心に、2つの枠組みに構成されています。

  1.  DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標
    「DX推進の枠組み」(定性指標)
    「DX推進の取り組み状況」(定量指標)
  2. DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指
    「ITシステム構築の枠組み」(定性指標)
    「ITシステム構築の取り組み状況」(定量指標)

それでは、定性指標と定量指標をそれぞれ紹介していきます。

まず、定性指標には2種類のクエスチョンが設定されています。

  1. キークエスチョン: 経営者が自ら回答することが望ましいもの。
  2. サブクエスチョン: 経営者が経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門等と議論をしながら回答するもの。

「DX 推進指標」の構成

このうち、定性指標において、DX推進の成熟度を6段階で評価します。最終的なゴール(レベル5)となるのは「デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル」とします。この成熟度レベルを利用することで自社が今どのレベルにいて、次にどのレベルを目指すかを認識しながら、次のレベルに向けて具体的なアクションにつなげることが期待されています。

成熟度レベルの基本的な考え方

次に、定量指標には2つの考え方があります。

  1. 「DX 推進の取組状況」において、意思決定のスピード向上や新規顧客・サービスの拡大に関する指標など、DXの実行によって経営にもたらされる変化を反映できるものを設定します。
  2. 「IT システム構築の取組状況」において、自社で対象とするシステムやサービス、データをいくつか特定 した上で回答することを想定しています。

定量指標の成熟度レベルについて、なぜその成熟度と判断したかの根拠とその証跡を合わせて回答します 。また、「IT システム構築の枠組み」において、分野により IT システムの成熟度レベルに差がある場合、各システムで目指すべき姿との乖離により、成熟度レベルを判断します。

DX推進指標の自己診断の仕組み

最後に、DX推進指標を活用するに当たって、自己診断を支える仕組みを簡単にご紹介します。

ベンチマーキング

自己診断結果を中立的な組織に提出し、各社が行った診断結果を分析することで、他社との差を理解して自社のポジションを把握した上、次にとるべきアクションにつながります。

先行事例の提供

DX推進に関する評価が高い先行事例を積極的に参考にしながら、自社に適応したDX推進指標を決めていきます。

アドバイザーの活用

ITコーディネーター協会、企業内の内部監査や、外部監査のコンサルティングファームなどに相談し、DX推進の現状について客観的な意見をもらいます。

経産省が選定するDX銘柄・DX注目企業2020

経済産業省は2020年8月25日、東京証券取引所と共同で「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」を選定し、「DX銘柄2020」選定企業35社と「DX注目企業2020」21社を発表しました。それでは、「DX銘柄」の定義と「DX注目企業2020」を見ていきましょう。

「DX銘柄」の定義

「DX銘柄」とは、東京証券取引所に上場している企業の中から、DXを推進するための仕組みを社内でに構築し、優れたデジタル活用によって企業価値の向上を実現できている企業を指す言葉です。鹿島建設、ダイダン、アサヒグループホールディングス、日清食品ホールディングス、富士通などの35社が選ばれました。

引用:DX銘柄

DX注目企業2020

「DX注目企業2020」とは、DXの裾野を広げていく観点で、DX銘柄に選定されていない企業の中から、総合的評価が高かった企業、注目されるべき取組を実施している企業にを指しています。「DX注目企業2020」として、サッポロホールディングス、帝人、三菱ケミカルホールディングス、花王、大日本住友製薬などの21社が選ばれました。

コロナ禍において、DX推進を通じて、企業価値を向上させ、競争上の優位性を確立し、デジタル技術を最大限に活用した活躍が今後も期待される企業だと客観的に評価されています。そんな中で「DX銘柄」に選出されれば、投資家からの注目もより一層、集まることが期待できるでしょう。

DX注目企業

企業の競争力強化に資するDXの推進を強く後押しするため、「DX銘柄2020」選定企業の中から、業種の枠を超えて、「デジタル時代を先導する企業」と評価された会社は、「DXグランプリ2020」として選ばれました。ここからは、「DXグランプリ」に選ばれた企業の具体的な取り組みををご紹介します。

企業1:最もデジタル時代を先導する企業:コマツ

1921年に創立したコマツは、建設・鉱山機械分野で国際的なリーダーとしての地位を確立する一方、ユーティリティ(小型機械)、林業機械、産業機械や物流、サービス関連事業などの分野においても、幅広い商品とサービスを提供しています。

コマツの経営の基本は、「品質と信頼性」を追求し、企業価値を最大化することです。また、経営計画にて「未来の現場へのロードマップ」を掲げており、それを早期実現するために、社内のコア技術と外部の知見の融合(オープンイノベーション)による技術革新が行なっています。

2020年4月より、新たに4つのIoTデバイスと、8つのアプリケーションを導入した「デジタルトランスフォーメーション・スマートコンストラクション」の国内導入を開始しました。今まで取り組んできた建設生産プロセスの部分的な「縦のデジタル化」だけでなく、施工の全工程をデジタルでつなぐ「横のデジタル化」を進めることで、現場の課題に対する最適なソリューションをを提供します。

DXを用いた「スマートコンストラクション事業」では顧客の課題だけではなく、業
界および社会の課題の解決にも目を向けています。コト(施工のオペレーションの最適化)」と「モノ(機械の自動化・自律化)」の2軸を結合して、安全で生産性の高いスマートでクリーンな未来の現場を実現しようとしている姿勢は高く評価されたようです。
企業2:トラスコ中山株式会社

日本のモノづくりを支えるプロツールカンパニー「トラスコ中山株式会社」は、製造業や工事などの現場向けに39万を超えるプロツールを取り扱う卸売企業です。

「独創経営」を競争力の源泉として掲げ、40万点の在庫、ドライバー1本から即日配送できる独自のモデルを構築しています。

2020年1月に基幹システムを刷新。企業経営においてITを活用しDXを図り、社内の業務改革はもちろんのこと、「問屋」としてサプライチェーン全体の商習慣を変えて利便性を高め日本のモノづくりに貢献していく、と位置づけた点が評価されました。

また、「MROストッカー」という新規ビジネスの創出も展開しています。最新のIT技術と高度なデータ分析を利用することで、先回りしてユーザー様の手元に必要になるプロツールを在庫化し、必要なときに必要な分だけ商品を利用することが可能となります。

さらにコロナ禍においては、同社独自の会話アプリ「T-Rate」とオンライン通話アプリを組み合わせたサービス「TRUSCOいつでもつながる『フェイスフォン』」を開始し、営業スタイルを変革させる取り組みを導入しています。

トラスコ中山株式会社は、DX施策をKPI化し、具体的な KPIをリアルタイムで経営判断に活用しています。また、様々なソースからデータを収集し、AI等を活用してデータを分析し、それを同社の独創力としてサービスに転換するサイクルを柔軟に回すことが高い評価をされました。

「2025年の崖」への対策にDX推進の補助金を活用

DX化を推進する上で、補助金・助成金、税制優遇措置制度といった公的支援制度を活用できます。ここでは、中小企業向けの役立つ補助金や助成金制度の事例をいくつかご紹介します。

IT導入補助金

IT導入補助金はIT機器やソフトウェア、各種システムなどを導入する際の経費の一部を支給する補助金です。業務効率化や売り上げアップを目的とし、それぞれの企業が抱える課題を解決すべくITベンダーやサービス事業者と相談しながら最適なシステム導入につなげることができます。枠によって、30万円~450万円の補助金を受けられます。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

「ものづくり補助金」と呼ばれています。中小企業の生産性向上を支援するための補助金として運用されています。革新性のあるものづくりや、成長が見込めると同時に収益が伸びると期待される分野を対象に支給されます。一般形の申請で100万円~1,000万円の補助金を受けられます。

キャリアアップ助成金

厚生労働省が提供し、パートやアルバイト従業員を非正規雇用から正規雇用の労働者として、処遇を改善した場合に支給される助成金です。キャリアアップ助成金を活用しながらパートや契約社員などを募集し、優秀な人材をを育成する際に役に立つでしょう。コース別で補助金が支給されます。

まとめ

経済産業省が指摘する「2025年の崖」を回避するために、企業のDX推進は欠かせず、そのためにはレガシーシステムの刷新や先進技術に精通した人材の育成が重要です。また、コロナ後のニューノーマルに対応し、生き残るためにもDX推進は必須と言えます。

グローバル化によって企業間の競争が激しくなる中、これからの時代を生き残っていくためには従来のやり方に固執しないで、自社の「DX推進指標」を明確させ、補助金を活用しながら経営トップを巻き込んだ全社的な取り組みを推し進める必要があるでしょう。

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