2021年6月30日、7月1日に開催された「第1回 電子化・オンライン化支援EXPO / テレワーク・在宅勤務支援EXPO / ニューノーマル オフィスEXPO」で1日、日本ディープラーニング協会(JDLA)の特別顧問である西山 圭太氏が特別講演に登壇しました。
講演では、デジタルリテラシー協議会が定義する、全てのビジネスパーソンが持つべきデジタル時代の共通リテラシー「Di-Lite」の策定背景や必要性を解説しました。
2021年4月20日、一般社団法人データサイエンティスト協会、一般社団法人日本ディープラーニング協会 (JDLA)、独立行政法人情報 処理推進機構(IPA)の3団体が共同で「デジタルリテラシー協議会」を設立。 デジタルリテラシー協議会は、現代におけるビジネスパーソンのデジタルリテラシー「Di-Lite(ディーライト)」の整備と社会標準実装を目指し、官民連携の会議体として活動。情報発信や啓発活動を通じて、社会全体のリテラシーレベルを向上し、日本の産業力強化に貢献することが狙い。
今回の記事ではこちらの講演内容をレポートします。
(記事作成にあたり、講演内容を一部割愛、編集しています。)
デジタルを使う人材の重要性|協議会の設立背景・目的
講演ではまず、デジタルリテラシー協議会が設立された経緯について語られました。
西山氏:デジタルリテラシー協議会はオブザーバーとして経済産業省も参画しており、官民共同で取り組みを行なっています。官民連携の目的はデジタル人材育成を加速することであり、特に協議会の議論の中では爆発的に加速させる、強力に進めたいと思っています。
「デジタル人材」にはさまざまな意味がありますが、DXという枠で言うと、デジタルで製品サービスを“作る”だけでなく“使う”人材を含めてデジタル人材の育成が必要だと考えていて、それを視野にいれた取り組みをしています。
(この取り組みの)大きな背景としては DXを社会全体で進めるニーズが高まっているにも関わらず、デジタル人材の不足が課題になっていることがあります。
さらに、企業側が人材の数が足りないとわかっていても、「どんなバックグラウンドを持った人材を」「何人採用するべきなのか」「その人材が自社で何をしてくれるのか」が結びついていないケースが多く、それが企業の課題だと思います。その課題を解決できることに我々は取り組んでいこうとしています。
「スキルレベルの水準がわからない」日本のDX人材育成の課題
西山氏は、「自社がやりたいことのためにプログラミング言語を1から理解し構築するのではなく既存のAIサービスを活用していく時代になっている」と話し、AIを活用できる人材の採用、育成の重要性について説明しました。
西山氏:社員のデジタルリテラシーレベルをあげていく、つまりデジタルへの知識を深めようとする企業は多くあると思います。
ですが、本屋に行ってデジタル関連の書籍を見ると限りなくありますし、それらを調べていくと時間もかかります。さらにデジタル技術の変化はとても速い。何から手をつければいいかがわからないことが多いと思います。
また、IPA が行った調査でビジネスパーソンとしての自身のスキルレベル認識についての質問で、「自身のスキルレベルの水準がわからない」と回答した人がアメリカ、ドイツの回答に比べ非常に多い傾向にありました。(※)
つまり、ユーザー自身も育成する企業側もどうしたらいいかわからない状況と言えます。こうした人材育成の課題を3団体で力を合わせてやっていきたいと考えています。
(※)参考:IPA「デジタル時代のスキル変革等に関する調査」
DXの思考法 – 日本企業がDXマインドを持つべき理由
講演の最後に、協議会として今後目指すものを4つ挙げた上で、デジタル化のこれからのかたちや考え方について西山氏自身の知見を述べました。
西山氏:我々は学び続けるラーニングカルチャーが必要だと考えています。3団体※が協力する目的の1つには「常に変わり続ける技術を伝えていきたい」というものがあります。
そこで今後我々が目指していくこととして4つあります。
※一般社団法人データサイエンティスト協会、一般社団法人日本ディープラーニング協会 (JDLA)、独立行政法人情報 処理推進機構(IPA)
- ソフトウェア × データサイエンス × AIでデジタル領域全体をカバーする
- ユーザー側の人材を意識する
- 各々の役割と必要なリテラシー、スキルを紐づける
- 誰もが必要なDX「マインド」を意識する
西山氏:3つ目に関して、我々は例えとして「7人の侍」と言っています。1人の人がすべての分野を理解するのは難しいので社内の人と分担してリテラシーを身につけていく必要があります。それぞれがどういう役割でどんなリテラシーを持てばいいのかを見分ける全体像マップのようなものを作りたいと考えています。
4つ目は、共通して持つべきDXマインド、つまり思考法を持つべきだということです。日本社会は基本的に縦割りです。業種や部門も縦割りであることが多いでしょう。しかしデジタルの構造は原理的に横割りです。
つまり、縦割りの発想でデジタルを使おうとするとうまくいきません。どんなに専門的な知識を身につけても結局ビジネスを変える力がありません。デジタルでは横割りのレイヤーが先にあって、そこに人間が入っていくイメージです。会社全体がレイヤーの積み重ねでできているということを自覚することが重要です。
また、日進月歩で技術は変わっていくので、その時々で身につけなくてはいけないリテラシーや知識も変わってきます。なので我々は学び続けるカルチャーを作り、発信していくことも必要だと考えています。
おわりに
2021年4月に発足したデジタルリテラシー協議会は2021年7月に「第1回 デジタルリテラシー協議会」を開催する予定です。今後の取り組みの方針や3団体での共同推進の充実化について話し合われます。協議会の積極的な活動によって、日本企業やビジネスパーソンのデジタルリテラシーの向上やDX活用の進展が期待されます。
AINOWでは、JDLAのメディアパートナーとして今後も協議会やデジタル人材育成に関するさまざまな情報を発信していきます。ぜひチェックしてください。