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DX銘柄とは、優れたデジタル活用をしている企業を業種別に選定・紹介するものです。急速にデジタル化が進む昨今、DXは中長期的な企業の成長に欠かせない要素となっています。
また国主体で企業のDXを推進する動きがあり、さまざまな認定・選定制度が登場しています。
今回は国が運営する選定制度である「DX銘柄」とは何かから、選ばれるメリットなどを徹底解説します。
目次
【初心者必読】DX銘柄とは?
DX銘柄とは、東京証券取引所に上場している企業の中から、優れたデジタル活用の実績を持つ企業を選定・紹介するものです。
DX銘柄に選定される企業は、単に優れたシステムを利用しているだけでなく、デジタル技術を経営やビジネスに応用している企業です。建設業、化学などの業種別に一、二社ずつ選定されるのも特徴となっています。
DX銘柄は、目標となる企業モデルを普及させ、各経営者にIT利活用の重要性を認識させることを目的としています。
また、DX銘柄選定企業の中でも特に優れた実績を持つ企業は、デジタル時代を先導する企業とされ、「DXグランプリ」として選定されます。
DX銘柄とDX認定の違いとは
「DX認定」とは、DXを推進できる体制が整っていることを認定する制度です。国が策定した指針を基に、優良な取組を実施する事業者を申請に基づいて認定します。
DX銘柄との最大の違いは、DX認定は上場企業に限らずすべての事業者が対象であるという点です。また申請・審査・認定も通年で行われており、手続きや認定維持において費用が発生することもありません。
また、DX銘柄に選定されるためにはDX認定の取得が必須条件となっているため、DX銘柄はDX認定よりも審査基準が厳しいと言えます。
参照:経済産業省 DX認定制度の概要及び申請のポイントについて
DX銘柄2021&DX注目企業2021の企業一覧と取り組み内容
こちらの章では、DX銘柄・DX注目企業2021に選定された企業と、その取り組み内容例をご紹介します。
DX注目企業とはDX銘柄に選定されていない企業の中から、企業価値貢献という点において、注目されるべき取組を実施している企業を指します。
それぞれ解説していきます。
DX銘柄2021に選ばれた28社
DX銘柄2021に選定された28社は以下の通りです。
【DXグランプリ2021】
- 株式会社日立製作所 (電気機器)
- SREホールディングス株式会社 (不動産業)
【DX銘柄2021(※グランプリ除く)】
- 清水建設株式会社 (建設業)
- アサヒグループホールディングス株式会社 (食料品)
- 旭化成株式会社 (化学)
- 中外製薬株式会社 (医薬品)
- 出光興産株式会社 (石油・石炭製品)
- 株式会社ブリヂストン (ゴム製品)
- JFEホールディングス株式会社 (鉄鋼)
- 株式会社小松製作所 (機会)
- 日本電気株式会社 (電気機器 )
- ヤマハ発動機株式会社 (輸送用機器)
- 株式会社トプコン (精密機器)
- 凸版印刷株式会社 (その他製品)
- 東日本旅客鉄道株式会社 (陸運業)
- SGホールディングス株式会社 (陸運業)
- 日本郵船株式会社 (海運業 )
- 日本航空株式会社 (空運業)
- ソフトバンク株式会社 (情報・通信業)
- トラスコ中山株式会社 (卸売業)
- 株式会社セブン&アイ・ホールディングス (小売業)
- 日本瓦斯株式会社 (小売業)
- 株式会社りそなホールディングス (銀行業)
- 東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社 (証券、商品先物取引業)
- MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社 (保険業 )
- 東京センチュリー株式会社 (その他金融業)
- 株式会社GA technologies (不動産業)
- 株式会社ベネッセホールディングス (サービス業)
DX注目企業2021に選ばれた20社
DX注目企業に選定された20社は以下の通りです。
- 日清食品ホールディングス株式会社 (食料品)
- 株式会社ワコールホールディングス (繊維製品)
- ユニ・チャーム株式会社 (化学)
- 大日本住友製薬株式会社 (医薬品)
- AGC株式会社 (ガラス・土石製品)
- 三菱重工業株式会社 (機械)
- 富士通株式会社 (電気機器)
- 大阪瓦斯株式会社 (電気・ガス業)
- ANAホールディングス株式会社 (空運業)
- 日本電信電話株式会社 (情報・通信業)
- 三井物産株式会社 (卸売業)
- 住友商事株式会社 (卸売業)
- Hamee株式会社 (小売業)
- 株式会社三井住友フィナンシャルグループ (銀行業)
- 株式会社大和証券グループ本社 (証券、商品先物取引業)
- SBIインシュアランスグループ株式会社 (保険業)
- SOMPOホールディングス株式会社 (保険業)
- リコーリース株式会社 (その他金融業)
- 三菱地所株式会社 (不動産業)
- ユナイテッド株式会社 (サービス業)
引用:DX注目企業2021・デジタル×コロナ対策企業 選定企業
デジタル×コロナ対策企業に選ばれた11社
デジタル×コロナ対策企業とは2021年に新設された制度であり、デジタル技術を利活用し、新型コロナウイルスを踏まえた取組を実施した企業を指します。
それぞれ「製造・物流戦略部門」「カスタマーケア部門」「業務効率化部門」「レジリエンス部門」の4つに分類されます。
デジタル×コロナ対策企業に選出された11社は以下の通りです。
【製造・物流戦略部門】
- ヤマトホールディングス株式会社 (陸運業)
- アスクル株式会社 (小売業)
【カスタマーケア部門】
- 株式会社資生堂 (化学)
- コニカミノルタ株式会社 (電気機器)
- 東急不動産ホールディングス株式会社 (不動産業)
【業務効率化部門】
- 株式会社大和証券グループ本社 (証券、商品先物取引業)
- 東京海上ホールディングス株式会社 (保険業)
【レジリエンス部門】
- サントリー食品インターナショナル株式会社 (食料品)
- 日本電気株式会社 (電気機器)
- アステリア株式会社 (情報・通信業)
- 三井不動産株式会社 (不動産業)
引用:DX注目企業2021・デジタル×コロナ対策企業 選定企業
2021年グランプリ2社の取り組み
2021年のグランプリには、株式会社日立製作所とSREホールディングス株式会社の2社が選ばれました。
株式会社日立製作所の取り組みで特に高く評価されているのが、「Lumada」です。「Lumada」とは日立のエコシステムを用いて、顧客との「協創」を支援する製品を指します。
「協創」とは日立が持つ「画像解析技術」や「需要予測型自動発注サービス」などを、他社のシステムに組み込むことで、新しいモデルを創造するという意味です。
またデータ活用を主とした自社工場の業務効率化も、優れたDX推進として評価されています。
SREホールディングス株式会社は、不動産業を営む傍ら、そこから得たデータを基に不動産や金融業界向けのAIソリューション・ツールを提供するという特徴的なビジネスモデルを持つ企業です。
SREホールディングス株式会社のDXに関する取組として、自社不動産事業のスマート化やSaaSプロダクトの外部提供が挙げられています。
具体的な取組として、不動産事業の現場メンバーとエンジニアが業務効率化に取り組むとともに、実務性の高いソフトウェアツールの開発などを推進していると述べています。
2社ともDXに正面から立ち向かい、デジタル技術を活用して自社でしかできないビジネスモデルを打ち出している点が評価されています。
参照:【第2回】「DX銘柄2021」グランプリ選定の日立製作所、DXへの取り組みが評価された理由とは?
参照:「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2021」および「DXグランプリ2021」に選定
DX銘柄2022&DX注目企業2022の企業一覧と取り組み内容
こちらの章では、DX銘柄・DX注目企業2022に選定された企業と、その取り組み内容例をご紹介します。
それぞれ解説していきます。
DX銘柄2022に選ばれた33社
DX銘柄2022に選定された33社は以下の通りです。
【DXグランプリ2022】
- 中外製薬株式会社 (医薬品)
- 日本瓦斯株式会社 (小売業)
【DX銘柄2022(※グランプリ除く)】
- 清水建設株式会社(建設業)
- サントリー食品インターナショナル株式会社 (食料品)
- 味の素株式会社 (食料品)
- 旭化成株式会社 (化学)
- 富士フイルムホールディングス株式会社 (化学)
- ENEOSホールディングス株式会社 (石油・石炭製品)
- 株式会社ブリヂストン (ゴム製品)
- AGC株式会社 (ガラス・土石製品)
- 株式会社LIXIL (金属製品)
- 株式会社小松製作所 (機械)
- 株式会社IHI (機械)
- 株式会社日立製作所 (電気機器)
- 株式会社リコー (電気機器)
- 株式会社トプコン (精密機器)
- 凸版印刷株式会社 (その他製品)
- 株式会社アシックス (その他製品)
- 株式会社日立物流 (陸運業)
- SGホールディングス株式会社 (陸運業)
- 株式会社商船三井 (海運業)
- ANAホールディングス株式会社 (空運業)
- KDDI株式会社 (情報・通信業)
- ソフトバンク株式会社 (情報・通信業)
- トラスコ中山株式会社 (卸売業)
- 株式会社ふくおかフィナンシャルグループ (銀行業)
- 東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社 (証券、商品先物取引業)
- SBIインシュアランスグループ株式会社 (保険業)
- 東京海上ホールディングス株式会社 (保険業)
- 東京センチュリー株式会社 (その他金融業)
- 株式会社GA technologies (不動産業)
- 三井不動産株式会社 (不動産業)
- 応用地質株式会社 (サービス業)
引用:経済産業省 「DX銘柄2022」「DX注目企業2022」を選定しました!
DX注目企業2022に選ばれた15社
DX注目企業2022に選出された15社は以下の通りです。
- 株式会社ミライト・ホールディングス (建設業)
- キリンホールディングス株式会社 (食料品)
- 株式会社ワコールホールディングス (繊維製品)
- 日立建機株式会社 (機械)
- 株式会社荏原製作所 (機械)
- 日本電気株式会社 (電気機器)
- 横河電機株式会社 (電気機器)
- 大日本印刷株式会社 (その他製品)
- 日本郵船株式会社 (海運業)
- アジア航測株式会社 (空運業)
- BIPROGY株式会社 (情報・通信業)
- 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (情報・通信業)
- アスクル株式会社 (小売業)
- プレミアグループ株式会社 (その他金融業)
- トランス・コスモス株式会社 (サービス業)
引用:経済産業省 「DX銘柄2022」「DX注目企業2022」を選定しました!
2022年グランプリ2社の取り組み
2022年のグランプリは、中外製薬株式会社と日本瓦斯株式会社の2社が選ばれました。
中外製薬株式会社はバイオ医薬品をはじめとする医薬品の研究や開発を事業とする医薬品企業です。DX推進に「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を掲げ、それを実現するために「デジタル基盤の強化」などの明確な戦略を立てており、評価に繋がりました。
日本瓦斯株式会社はガスや電力などのエネルギー事業を提供する会社です。プラットフォーム事業とエネルギーソリューションへの挑戦が評価に繋がりました。
プラットフォーム事業では、従来のエネルギーを消費者に提供するtoC事業から、デジタルを活用した効率的なエネルギー提供の仕組みを競合他社と共有するtoB事業へと大きく収益モデルを進化させています。
エネルギーソリューションでは、エネルギー周りのサービスを包括的に提供することで、単なるエネルギーの供給事業にとどまらず家庭・地域・国が持つエネルギー課題解決ビジネスへの転換を図っています。
このようにDX銘柄選定の際は、ITの利活用を前提とした経営ビジョンが重要視されます。
参照:中外製薬公式サイト 「DX銘柄」に2年連続で選定されました。DXの”全社ごと”化を進める中外製薬の取組みについて
参照:日本経済新聞 ニチガス、DX銘柄のグランプリに選定
参照:デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022
2021年と2022年の結果比較
DX銘柄には、毎年のように選出される常連企業が存在します。2年連続選ばれた清水建設株式会社、旭化成株式会社や、3年連続選ばれた株式会社ブリヂストンや株式会社トプコンなどが例に挙げられます。
その一方、2022年に新たに選出された企業も11社存在します。DX銘柄2022に新規選出された企業は以下の通りです。
- サントリー食品インターナショナル株式会社(食料品)
- 味の素株式会社(食料品)
- 株式会社LIXIL(金属製品)
- 株式会社リコー(電気機器)
- 株式会社アシックス(その他製品)
- 株式会社日立物流(陸運業)
- 株式会社商船三井(海運業)
- KDDI株式会社(情報・通信業)
- 株式会社ふくおかフィナンシャルグループ(銀行業)
- SBIインシュアランスグループ株式会社(保険業)
- 応用地質株式会社(サービス業)
参照:DX銘柄2022のグランプリは中外製薬と日本瓦斯 2020年から銘柄を比較する
DX銘柄に選定されるメリット
DX銘柄に選定されるメリットとして「企業のブランド力向上」が挙げられます。
こちらの章で詳しく解説します。
企業のブランド力向上
DX銘柄に選定される最大のメリットは、自社のブランド力向上です。
DX銘柄に選定されることで”DX推進にて優れた功績を残した企業”というお墨付きを、日本政府から貰えます。そのため、デジタル技術を前提としたビジネスを行う先進的な優良企業として、信頼度が高まります。
また起業家や投資家などのステークホルダーから見た企業価値向上にも繋がるので、株式市場での注目度も高まります。
このようにDX銘柄は、企業価値や信頼度の向上を通じて、企業に多くの恩恵を与えるのです。
DX銘柄の評価基準
DX銘柄では「一次評価」と「二次評価」、2つの評価基準が存在します。
まず一次評価では、デジタルガバナンス・コードに沿った評価が行われます。デジタルガバナンス・コードとは、DX推進にあたって経営者に求められる32項目の指針をまとめたものです。
デジタルガバナンス・コードの設問例を挙げると、「DXを推進するための戦略が具体化されているか」「DXを推進する、組織上位置付けられた専任組織があるか」などです。
二次評価では「企業価値貢献」および「DX実現能力」の観点から評価されます。例えば企業価値貢献の観点では、「IT/デジタルにより、他社と比較して持続的な強みを発揮しているかどうか」などに注目します。
このような2つの審査を乗り越えた企業が、DX銘柄とDX注目企業に選ばれるのです。
「DX銘柄」選定までの4つのステップ
こちらではDX銘柄選定までのプロセスを、以下の4つに分けてご紹介します。
それぞれ解説していきます。
①対象企業の選定
まず東京証券取引所上場会社を対象に「デジタルトランスフォーメーション調査」が実施されます。
2022年度は、上場企業約3,800社にデジタルトランスフォーメーション調査を実施し、回答した企業401社のうち、「DX認定」を取得している企業が選定対象となりました。
上述した通り、DX銘柄に選定されるためには「上場」と「DX認定の取得」が必須条件となります。
②一次評価
一次評価では、エントリー企業から提出されたアンケート調査の「選択式項目」及びROE(自己資本利益率)の直近三年間平均値に基づき、スコアリングを実施し、一定基準以上の企業が候補企業として選出されます。
こちらのスコアリング基準についてはDX銘柄評価委員会にて決定されています。
③二次評価
二次評価では、一次評価で選定された候補企業について、エントリー企業から提出されたアンケート調査の「記述回答」の評価をDX銘柄評価委員会が実施します。
上述の通り、二次評価では「企業価値貢献」および「DX実現能力」の観点から評価されます。
④最終審査
二次評価の結果を基に、「DX銘柄評価委員会」による最終審査を実施します。そして、業種ごとに優れた企業が「DX銘柄」として選定されます。
また、DXの裾野を広げていく観点で、「DX銘柄」の選考から漏れた企業の中から、総合評価が高かった企業、注目されるべき取組を実施している企業について、DX銘柄評価委員会の審査により「DX注目企業」も選出しています。
さらに、企業の競争力強化に資するDXの推進を強く後押しするため、「DX銘柄」選定企業の中から、業種の枠を超えて、「デジタル時代を先導する企業」と評価された会社は、「DXグランプリ」として選定されます。
DX銘柄のまとめ
こちらの記事では、DX銘柄について紹介しました。
「DX銘柄」を取得するためには「DX認定」の取得と、IT技術の利活用を前提とし、デジタル技術による社会を踏まえた経営ビジョンの策定・公表などが求められます。
DX銘柄2022に選定された各企業の具体的な取り組みは、経済産業省が公開している「DX銘柄2022」選定企業レポートでも具体的に紹介されています。
DX銘柄に選定されることが企業の最終目標というわけではありません。しかし、DX銘柄という目標を掲げることでやるべきことが明確化し、社員のモチベーション向上にも繋がります。
こちらの記事を参考に、ぜひ「DX銘柄」や「DX認定」取得を目指してみてはいかがでしょうか。