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2024.08.12

AI資格取得が現在の就職市場について私に教えてくれた3つのこと

最終更新日:

ブルームバーグのエンジニアリングチームでリードを務めるコリー・ベッカー(Kory Becker)氏(同氏の詳細は同氏LinkedInページを参照)は2024年6月、Mediumに『AI資格取得が現在の就職市場について私に教えてくれた3つのこと』を投稿しました。この記事は、同氏がAI資格を取得したことから得た所見がまとめられています。
Oracleが運営するAI資格「Oracle Cloud Infrastructure AI Foundations Associate」を取得したことで、ベッカー氏が得た所見は以下のように箇条書きにできます。

ベッカー氏がAI資格を取得したことで得た所見
  • 企業は生成AIの活用法や生成AIの専門家に関する知見があまりなく、生成AI人材求人の必要なスキルとしてデータベース管理やデータサイエンスのような、生成AIに直接的に関連しないスキルを掲載することもある。
  • 生成AIの活用とその収益化はスタートアップや中小企業から始まって、徐々に大手・老舗企業に広がっている。
  • ソフトウェア開発についてはすでにコード生成AIの活用が始まっており、こうしたAIを使えるソフトウェア開発者とそうでない開発者の職務上の格差が広がるだろう。
  • 昨今ではAI資格が乱立しており、そうした資格を運営するのはオンライン講座提供企業、テック系企業、大学などである。
  • テック系企業がAI資格を運営するのは、そうした企業自体がAIに精通した労働者を求めているからである。
  • LLMをはじめとする生成AIの普及は不可避であり、これらのスキルに精通するためにもAI資格の取得は有益である。

以下の翻訳記事本文では、乱立するAI資格が具体的にリストアップされています。それらのほとんどは日本語にも対応しているので、AI資格取得を検討する際にそのリストが参考になるでしょう。

なお、以下の記事本文はコリー・ベッカー氏に直接コンタクトをとり、翻訳許可を頂いたうえで翻訳したものです。また、翻訳記事の内容は同氏の見解であり、特定の国や地域ならびに組織や団体を代表するものではなく、翻訳者およびAINOW編集部の主義主張を表明したものでもありません。
以下の翻訳記事を作成するにあたっては、日本語の文章として読み易くするために、意訳やコンテクストを明確にするための補足を行っています。

DALLEにより生成

私の体験談と、それがあなたの次の就職活動で意味すること。

技術者需要の回復

わずか1ヶ月間で、私はOracleの2つ目のAI認定資格に合格し、生成AIという全く新しいトレンドでスキルセットのレベルアップに成功した。

以上の成功により、私の経歴にこの1年間で大いに求められていたスキルセットと実績が加わった。雇用情勢が大きく変化するなかで、この資格の価値が発揮されることを大いに期待している。

以下では私がAIの資格取得から学んだ3つのキーポイントと、次の就職活動でどのように役立つかを紹介したい。

まず、私が気づいたやや意外な体験から話すことにしよう。それは、企業はまだすべてを理解しようとしている、ということだ。

1 – AIに関して企業は混乱している

多くの企業は、AIを使って具体的に何をすべきか、まだ混乱している。

私は、AIの専門知識を持つ新しいチームを作ることを目標に、「AIの専門家」のリーダー的役割を求めている複数の企業の採用担当者と話したことがある。しかし、これらの職務に求められる要件は、データサイエンスデータ分析データベース管理に重点を置く傾向がある。そうした要件には機械学習まで含むような記述もあるが、それでも現在のAIの動きに対応していない。

データサイエンスの専門知識を求める企業は、AIスキルに関して過去10年間と変わっていない。しかし、生成AIは(第三次AIブームにおけるAIとは)大きく異なる。

企業はまだ、それを完全に活用する準備ができていないのだ。

偽装されたデータベース管理者

AIに直接関連する、あるいはAIを職名に含む新しい求人情報の多くは、必ずしも見かけ通りのものではないかもしれない。

私は、いくつかの求人情報が「AI職務」と銘打たれているが、求められているスキルセットが従来のデータベース管理に重点を置いている傾向があることに気づいた。例えば

  • SQL
  • ストアドプロシージャ
  • データ分析
  • 抽出、変換、ロード(ETL)
  • AWS、Azure、クラウド

これらのスキルは、私にとってAIとは見なされない。しかし、AI能力の爆発的な需要と連動した求人情報の乖離にはそれなりの理由があり、こうした乖離は技術者雇用にとっては良いニュースかもしれない。

カメ対ウサギ

業界大手の企業は、特に新興テクノロジーに関しては、より慎重かつゆっくりと動く傾向がある。

老舗企業は、収益性の高いベンチャー事業やコスト削減のための業界改革を導くために、AIの専門分野に長けた専門家を頼りにしている。認定資格を持っていれば、面接の際に他の候補者よりも優位に立てるというのは、私が経験したところである。

AIに特化したスキルが採用候補者のあいだで容易に入手できるようになれば、需要はよりAIに特化したスキルへと急速に進化していくだろう。

これは次の観察につながる。すなわち、AIには需要があり、それは大きくなる一方だ。

2 – 大規模言語モデル – それは時間の問題だ

テック業界の動きは非常に速く、ほぼ毎週、AIの精度におけるブレークスルーに関する新しいレポートが発表されているように思われる。

実際、あるAI企業が生成タスクの精度において他の企業を凌駕するのはよくあることであり、技術業界はこうした馬跳びゲームを大々的に繰り広げている(※訳注1)。多くの企業が、AIの次の大物としてOpenAIに対抗するために誕生している。

(※訳注1)前屈みになった人の背中を飛び越える遊びである馬跳びは、屈んだ人を飛び越える様子から転じて、ビジネスやテクノロジーのコンテキストでは「飛躍的に進歩する」「他を大きく追い越す」などの英語表現として使われる。

しかしながら、AIがどのように収益に利用されるかについて、中小企業やスタートアップから変化が起き始めているのを私は見始めている。そうした傾向は、AIでリスクを取っているより機敏な企業から始まるかもしれないが、同様に利益を享受することを望んでいるより大きな企業へと流れていくに違いない。

以上のようなAI活用による収益化について、ソフトウェア・エンジニアリング業界を例にとってみよう。

画像出典:Kevin Ku.

プログラマーを置き換える、あるいは補強する

メディアの誇大広告に惑わされずにいると、この先がどうなるのかがはっきりと見えてくる。

ソフトウェア開発は、LLMモデルが新しくリリースされるたびに、機械(としてのLLM)によってますます高い精度で実行されるようになっている。OpenAI、GPT-4o、Llama、Claude、その他多くのモデルを見れば、プログラミングの未来がAIに関わることは明らかだ。

AIが完全に開発者に取って代わるとは思わない。しかし、これまでのソフトウェア開発のあり方は大きく変わるだろうと感じている。

ソフトウェア開発はすでに進化している

以下の匿名の言葉は、私の考えを的確に言い表している。

AIがプログラマーに取って代わることはないが、AIを使うプログラマーがそうでないプログラマーに取って代わるだろう。

(※訳注2)GitHubは2023年6月13日、2023年3月14日から2023年3月29日にかけて実施した、従業員数1,000人以上の企業で働く管理職ではないアメリカ在住の開発者500人を対象にコード生成AIの使用に関するオンライン調査の結果を発表した。その結果によると、調査対象者の92%が業務内外で何らかのコード生成AIを使用しており、70%がコード生成AIの活用によって仕事において優位に立てる、と回答した。
またITエンジニアのキャリア形成とリクルーティングに対する支援事業を展開する日本企業LAPRAS株式会社は2024年5月28日、ITエンジニアのLLM活用に関する調査の結果を発表した。日本在住のITエンジニア881人を対象としたこの調査から、ChatGPTの利用率は4割でトップとなり、GPT-4がついで多くCopilot、Google Bardという順序であることがわかった。また、生成AIをプロダクトやサービスに利用しているエンジニアは3割である一方で、生成AIの利用をやめたという回答が14%であった。

LAPRASが発表した日本在住エンジニア881人のLLM使用順位

LAPRASが発表した日本在住エンジニア881人のLLM使用状況

そのため、生成AIのバックグラウンドを持つ自分のスキルセットをリフレッシュすること、さらには再発明することが、これまで以上に重要であることがわかった。

そして、以下に述べるのが3つ目の見解だ。利用可能な認定パスや講座を検索し始めたとき、私は非常に興味深い出来事に気づいた。AI資格が突然たくさんの中から選べるようになったのだ!

3 – AI資格の爆発的増加

突然、どこからともなくAI資格の乱立が始まったようだ。

オンライン講座や企業や大学をざっと見てみると、AIを学ぶための多種多様な選択肢が表示される。例えば、以下のような資格を見てみよう。

  • Coursera – 高度な問題解決のための人工知能を修得するオンライン講座。
  • Udemy – 実際の専門家による人工知能に関するオンライン講座。
  • Udacity – AIの訓練、機械学習ディープラーニング、コンピュータービジョン、自然言語処理のための人工知能スクール。
  • Google – Google AI Essentials。
  • IBM – AI開発者 プロフェッショナル認定証。
  • Microsoft – Microsoft Azure AI Fundamentals。
  • Oracle – OCI AI Foundations Associate。
  • DataBricks – Generative AI Fundamentals。
(※訳注3)以上の資格のうちUdacity以外は日本語対応している。

オンライン・プラットフォームだけではない。総合大学単科大学は独自のAI認定証や大学院プログラムを宣伝している。

熟練労働者への需要

AI認定資格の多様性は、今後数年間の(AI市場の)成長への期待を考えれば驚くことではない。

人工知能は2025年までに600億ドル産業になると予想されている。

(※訳注4)ゴールドマン・サックスは2023年8月1日、AI投資に関する予測を発表した。その予測によると、世界におけるAIへの投資は2025年までに2,000億ドルに達すると考えられる。そのうち半分にあたる1,000億ドルが、アメリカにおける投資と予想される。

ゴールドマン・サックスによる世界のAI投資推移予測

また、ブルームバーグ・インテリジェンスは2023年6月1日、世界の生成AI市場の成長予測を発表した。その発表によると、2022年の生成AI市場規模は400億ドルだったが、今後10年間で年平均成長率42%で拡大して、2032年には1兆3,000億ドル規模に成長すると予想される。また、2032年には生成AIに関する支出が技術的支出の10%強に拡大するとも見られる。

ブルームバーグ・インテリジェンスによる生成AI収益の推移予測

このように幅広い企業が、基礎的なトピックから始まり生成AIに焦点を当てたAI認定資格のスポンサーとなっている。こうした動向について、もちろん疑問が生じるだろう。なぜ、企業が生成AI資格認定のスポンサーになるのか。

その理由は、企業がAIに関する熟練労働者を求めているからである。現状では、単純にこうした労働者が不足しているのだ。

トレーニングあるいはマーケティング

AIに精通したエキスパートの雇用を最も望んでいる企業が、多くの場合、新しい資格のスポンサーになっている。

生成AI資格の運営は、(うまくいけば)自社に入社する新たな労働者集団を育成するための手段となる。

しかし、最終的に取得した資格を運営している会社で働くかどうかは別としても、資格取得によって、あなたの経験と仕事の見通しは改善する。

画像出典:Vojtech Okenka

納得のいく転職

生成AIのスキルが雇用主からこれほど求められているのは当然のことだ。

LLMの進歩が統合され始め、企業が信頼できる収益性の高い活用を見つけるにつれて、生成AIのスキルに長けている人たちが従事するような新しい仕事が一挙に増え始めると思われる。

私は、生成AIの概念とツールに精通した側でありたいと思っている。

そして、あなたもその側にいることができるのだ!

著者について

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(※訳注5)In Plain English(平易な英語で)は2018年に始まったテック系メディア。毎月350万ビューを獲得している。

原文
『3 Things an AI Certification Taught Me About the Current Job Market』

著者
コリー・ベッカー(Kory Becker)

翻訳
吉本 幸記(フリーライター、JDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #1、生成AIパスポート、JDLA Generative AI Test 2023 #2取得)

編集
おざけん

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