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AINOW アドベントカレンダー8日目です。
株式会社クロノスでAIの推進をやったり、AI開発の講師をしている鈴木健男です。
クロノスはシステムの開発と、エンジニア教育を主な事業としています。2017年は「AI・人工知能EXPO」に出展してから多くのお客様からAIのシステム開発とAIの研修に関するご相談をいただきました。
アドベントカレンダーのテーマが「AIの未来予想」ですので、今日は「AIのシステム開発」についての未来予想を考えていきたいと思います。
知能の無いAI
「AIを使って解決したい問題がある」とのことでお話を伺うと「一応既にシステム化されているけれどもAIを使えばもっと良くなりそう」という期待で、レコメンデーションだったり、チャットボットだったり、異常検知といった、機械学習の範疇ではあるものの、およそ”知能”というには程遠い開発がほとんどです。
もちろん、機械学習でお客様の課題を解決できることはお客様にとっても私達開発者にとっても嬉しいのですが、それですら実現に至る案件は極わずかです。
というのも、お客様が持っているデータが十分でない場合が多くあります。お客様と一緒に今あるデータを活用する方法、データを取得する方法を検討しますが、どうしてもデータを集められない、あるいはデータを集めるのに時間やコストが掛かりすぎるといったケースが出てきます。
新たにデータを収集できる込みがある場合は、
ことで、時間はかかるかもしれませんが解決できますし、そういった提案をします。
しかし、収集の見込みが立たない場合はどうすればよいでしょうか?
Linked Data / Thematic Web
近い未来にはより多くのデータが関連性をもってインターネット上に公開されるようになります。
オープンデータ構想は始まってから結構経ちますが、今はまだまだ途上です。しかし、近い将来には公開データは関連するデータとの繋がりが示された”Linked Data”となって公開される日が来ます。その時にはデータ基盤を個々のシステムで持つ必要がなくなり、AIのシステム開発ではオープンデータを取得、活用できることが成否を握るようになります。
それと同時にデータ整備の技術が今以上に重要になってきます。”Linked Data”では「生のデータを今すぐに」を合言葉として公開していきます。そのためノイズ、表記ゆれ、その他そのままでは使いづらい状態となっているでしょう。オープンデータの利用者は自らデータ整備をする必要があります。
今、自然言語解析やIoTデータを活用する際に用いられているデータ整備の技術があらゆる場面で、より高度に求められ、システム開発の多くのリソースはココに集約されていくと考えられます。
もっと先の未来
機械学習の基盤や、モデルの作成に係る負担は今後ドンドン減っていくと思います。それはここ数年のChainer・TensorFlowによるコード記述の容易さ、AWS・Azureなどの環境準備の容易さ、IBM Watson・Google Vision APIなどのAPIの豊富さなどの発展具合が、引き続き、もしかしたらAPIは今まで以上に整って、システム開発の現場ではそれらを利用するだけの状況となりそうだからです。だからこそ、データが重要となっていくのです。これからのシステム開発は「データを適切に扱えること」が重要になってくるかもしれません。
編集後記
僕は囲碁が好きで、機械学習を始めた当初は「プロ棋士に匹敵する囲碁プログラムを機械学習で作りたい」と思っていました。その時にはAI+棋士のペア碁が人間の碁を進化せせる未来を夢見ていました。
それから間もなくAlphaGoが現れて、あっという間にプロ棋士を凌駕するようになってしまいましたが。。。
それでも僕は当時見ていた夢はあまり間違っていたと思っていなくて、本当にコンピューターに知性が宿るのは当分先だと思っていて、それがビジネスや・一般社会に出てくるのもまだまだ先で、そのまえにAIと人間が共同してこれまでの世界を変えるような時期が近い将来来るんじゃないかと感じています。
そのためにも様々な情報が公開されて、つながっている必要があって、ちょっと古いですが”セマンティックWeb”だとか”Linked Data”だとかが意味をなしてくるんじゃないかなと思っています。
よーするに僕がTim Berners Leeが大好きだということでした
[参考] https://www.ted.com/talks/tim_berners_lee_on_the_next_web/transcript?language=ja