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こんばんは、AINOWの亀田です。
昨年、NIPSが開催され、日本では年末にかけて各論文について輪読会が開かれていたかと思います。そんなNIPSで素晴らしい成果を上げているクイズAIがあるとの情報を聞き付け、株式会社Studio Ousia 渡邉さんにお話を伺いに行ってきました。
目次
お伺いした人
株式会社Studio Ousia
http://www.ousia.jp/ja/
渡邉 安弘 (Yasuhiro Watanabe)
Co-founder, CEO
日本合同ファイナンス(現 JAFCO)、アイエヌジー生命保険の後、インキュベイトキャピタルパートナーズ設立、株式会社ファンコミュニケーションズ、株式会社コマース21、株式会社エー・アイ・ピー等に出資。2007年にStudio Ousiaを設立。空手有段者、サーフィン18年、キャンプ、海釣り、自転車が好き。
NIPSで勝利したAIはどんな仕組みなのか?
ニューラルネットワークなどのAIに関する世界最高峰の国際会議NIPS(The Neural Information Processing Systems)では、コンペティショントラックの一つとして開催されている「Human-Computer Question Answering Competition」の中でクイズ対戦ゲームを解くAIの開発が競われています。
株式会社Studio Ousiaが開発したAIは質問応答システムである「QA ENGINE」の開発の過程で得られたノウハウを元にしているとの事。二つのディープラーニングを用いた自然言語理解モデルと、複数の情報検索モデルから出力された複数の特徴を、アンサンブル学習を用いて組み合わせて開発されているそうです。
回答精度が高く、機械学習の運用が簡単な「QA ENGINE」とは?
QA ENGINEはディープラーニングを用いて、ユーザからの自然文による質問を解析し、回答を返すことができるAIです。
現在活用されているシーンとしては、ヘルプデスクの効率化・自動化、チャットボット、ナレッジシェアなど。特に精度が高く、運用も簡単で賢くなっています。では、仕組みはどのようになっているのでしょうか?
ヘルプデスクでの「QA ENGINE」活用例
クラウド会計ソフト大手のfreeeでは、チャットボットを用いたサポートシステムで「QA ENGINE」を利用しているそうです。
freeeでの具体的な利用イメージは以下のようになるそう。ユーザーが質問するとボットが自動で回答を返します。ボットの答えにユーザーが満足できない場合には「担当者に質問を引き継ぐ」ボタンをクリック、人間のオペレータが対応するフローとなっており、「QA ENGINE」で解決したかどうかKPIを設けて判断をしていくそうです。
確定申告の提出期限が目前に迫る最繁忙の月では、問い合わせ数が月間3万件近くになるそうですが、「QA ENGINE」を導入することでユーザの解決率は50%まで上昇したとのこと。その結果、ペルプデスクでの業務効率につながったそうです。
「QA ENGINE」の機械学習システム
「QA ENGINE」は、利用者側で回答候補や学習データの追加、機械学習の実施が簡単にできる仕組みとなっており、非エンジニアの方でも高精度なAIを試せる仕組みを整えているのが大きな特徴です。利用者は、以下の手順は3つ行うだけで導入が完了します。
①:ヘルプデスクでの回答データと質問パターンを用意して「QA ENGINE」にアップロードする。
②:「QA ENGINE」の管理画面内にて、回答データと質問パターンのヒモ付を定義する(1回答あたり10件程度)。
③:機械学習自体はボタンを押すだけで開始。
④:「QA ENGINE」により生成された学習モデルを確認するデモ画面も用意されており、実際に質問を入力して回答結果の表示し、回答精度検証を行う。
他の自然言語系サービスだと、学習の度にエンジニアの開発が必要になったり、辞書を作成して精度を改善していくのが一般的ですが、「QA ENGINE」ではその必要がなく、管理画面だけで学習が完結してしまいます。
Zendeskとの連携
Zendeskは顧客の理解を深め、より良いコミュニケーションを実現するためのカスタマーサービスソフトウェアです。Webフォームやメール、チャット、電話、ソーシャルメディアなどのマルチチャネルに対応しており、160以上の国の114,000社を超える企業が利用しています。
「QA ENGINE」は、Zendeskと連携することで、カスタマーサポートでの導入実績数を増やし、利用者の利便性とコアエンジンの回答精度をさらに向上させていくとのこと。
また、有人オペレーターとのコミュニケーションを希望したユーザーに対しては、Zendesk管理画面側でオペレーター応対希望を確認でき、オペレーターがユーザーにメールで返信をすることができるそうですよ。
世界トップクラスの質問回答AIを作れた背景
自然言語処理の研究投資とサービス開発を行い、輝かしい成果を残せている理由をCEOの渡邉氏に伺いました。
渡邉氏が共同代表でCTOの山田育矢氏とともに起業したのは2007年。設立以来、Wikipedia等の大規模知識ベースを活用した自然言語処理の研究開発に力を入れ、Wikipediaの情報収集と解析を繰り返していたそうです。
知識ベースにある情報は、自然言語処理の様々なタスクに有用であるものの、あまり有効に活用されていなかったとのこと。そこで、Studio Ousiaでは知識ベースを用いた新しい分散表現の学習手法の開発や、知識ベースによる質問応答システム、テキストを知識ベースのエンティティにリンクするエンティティリンキングなど、知識ベースを活用した自然言語処理技術の開発に取り組み、この取り組みが今回の質問回答 AIの成果につながったとのこと。
また、NAIST(奈良先端科学技術大学院大学)との共同研究や、著名な国際会議での論文発表などを継続的におこなうことで、自然言語処理の研究開発力を高めており、この開発力の高さが自然言語処理、機械学習に精通した人材を魅きつける要因にもなっている。
自然言語処理というと会話をイメージする人も多いかと思いますが、Studio Ousiaでは文章の分類に注力して研究開発を行ってきたとの事。1つの分野に特化したからこそ、現在の成果に繋がっていると感じました。
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