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2019.01.22

【IBM×面白法人カヤック】 寿司ネタを当ててくれるLINEチャットボット「ガリオ」の開発の裏側

最終更新日:

最近はチャットボットが進化しています。将棋AIが組み込まれたチャットボットや、画像を送るとAIがアレンジしてくれるチャットボットなど、多種多様なチャットボットが生まれています。

今回ご紹介するのはIBM Watsonを活用した寿司職人AI「ガリオ〈Gario〉です。寿司の写真を送ると、どのネタの写真なのかを見分けてくれたり、ユーザの気分に合わせた寿司を創作するなど、斬新なチャットボットです。

▼実際に寿司AIを試してみる

ガリオとは

ガリオは「寿司を正確に握るために生み出された寿司職人AI」として日本アイ・ビー・エムと面白法人カヤックによって開発されたチャットボットです。特徴は寿司に特化しているということ。

ガリオはIBM Cloud上のWatson APIで作られています。主な機能は3つ。それぞれをご紹介します!詳しくはこちら

寿司スキャン

LINE上で寿司の写真を送ると、寿司の種類を見分けてそのうんちくを教えてくれる機能。

例えば、回転寿司で頼んだ甘エビの写真をガリオに送ると…

しっかりとエビと見分けてくれます。

AI創作寿司

ガリオから与えられた質問に答えることで、独特な寿司を考え出して返してくれる機能。
例えば、「苦い味」が好きと送ると、「ゴーヤチャンプルー寿司」を返してくれました。

心握り寿司

ユーザが今の気分を教えることでそれにぴったりの寿司を送ってくれる機能です。

例えば「寂しい」と送ると「大トロで元気を出しな」と励ましてくれます。

開発の裏側 大変だったのは画像認識

今回は開発にあたった3人にお話を伺いました。

安田氏(右)
日本アイ・ビー・エム シニア・アーキテクト マネージャー。音楽配信システムのプログラマーを経て、グリッド、分散処理や可視化のエンジニアとして活動。2010年からアーキテクトとして様々な規模のシステム設計を手がける。2015年からクラウドのエンジニア集団を率いるマネージメント・チームに合流。
遠藤氏(中)
CGクリエイターとしてキャリアをスタートし、その後エンジニアに転向。その際に開発したコールセンター支援AIシステムや不動産のレコメンドAIの実装経験から、面白法人カヤックに入社し、ガリオの実装担当に。ガリオをきっかけにAIとエンタメをかけわせたプロダクト開発が趣味となり、現在プライベートでもAI開発をしている。
片山氏(左)
面白法人カヤックのプランナー / ディレクター。今回のガリオの企画を構想。ガリオの機能はもちろん、ビジュアルのディレクションを担当した。

ガリオの開発にあたった遠藤氏と安田氏は画像認識「寿司スキャン」の実装が一番大変だったとおっしゃいます。きっかけや開発の苦労を伺いました。

ーー開発のきっかけはなんですか?

片山氏:2018年3月くらいにIBMさんからユニークなAIを作ろうとお話をいただきました。大企業やデベロッパーのみならず、今までとは違う層に対してIBM Cloudのアピールをしたいというニーズがありました。

いろいろ提案して企画を決めるまでに3ヶ月ほどかかりました。いろいろ提案した結果、IBMで有名な食材などからレシピを考案してくれるツールを思い出し、その延長線上で寿司Watsonみたいなことができたら面白いんじゃないかなと思ったんです。アウトプットは、一般的なユーザにも使っていただけるようにLINE上のチャットボットで実装するのが一番良いと考えました。

遠藤氏

ーー実際に開発で大変だったところは?

安田氏:画像認識が一番難しかったですね。正直白身の魚って人がパッと見ても言い当てられないじゃないですか。最初はエンガワがイカと認識されたり、イカがエンガワと認識されたり、精度を上げていくことがとても難しかったです。

安田氏

ーー教師データを集めるのが大変そうです。どのように集めたんですか?

遠藤氏:実際にチームのみんなで何度も寿司屋に足を運びました。スシローなどの回転寿司だけでなく、スーパーで買ってきたり、出前を取ったり…大変でしたね。今週は絶対にみんな昼は寿司を食べるぞ!みたいに強制的に寿司を食べた週もありました笑

片山氏:個室を借りて寿司をひたすら頼んで、食べずに写真ばかり撮っていたこともありました笑 寿司ネタはマグロやウニなどの大分類から、小分類では本マグロ・ビンチョウマグロ・漬けマグロといった小分類まで、合計100種類ほど撮影しました。

ーー画像の向きなども重要になってきそうです。何枚くらいの写真を集めたんですか?

遠藤氏:1ネタ1000枚ずつくらいの画像を用意しました。なので合計100,000万枚ほど撮影した計算になります。それぞれ上から撮ったり横から撮ったり、さまざまなバージョンを用意しました。お皿の種類を変えたり、寿司以外の物が写ったときは、「人」「車」と認識するなど、さまざまな状況に応じられるように工夫もしています。

心握り寿司 / AI創作寿司の開発はWatsonでは意外と簡単だった

画像診断の精度をあげるために、自分たちでデータを生成して学習させた一方で、心握り寿司やAI創作寿司の開発はスムーズに行ったといいます。

遠藤氏:心握り寿司では、ガリオが質問をすることで、ユーザから回答が返ってきます、それぞれの言葉のベクトルを抽出して24種類くらいの感情に分類します。それに応じた回答を用意しているという仕組みです。

実はWatsonにはTone Analyzerという感情分析の機能が元から備わっています。、日本語対応していないため、今回はWatson Discovery という機能を使いました。自然言語解析が元になっている機能なのですが、入力された日本語に対してマッチングをして返答してくれるんです。

ーーAI創作寿司も同じような仕組みになっているんですか?

遠藤氏:AI創作寿司もほとんど同じです。ガリオに都道府県を聞かれたりするので、それに答えると、用意した情報とマッチングしてレスポンスをする仕組みになっています。それぞれ自然言語解析している部分が人工知能らしいところです。

AI創作寿司では、機能作りよりも、むしろ各都道府県ごとのレスポンスのアイデアを考えることのほうが大変でした。全都道府県の名物を調べたりして、かなり考えましたね笑

さいごに

ガリオは機能性よりもエンターテイメント性を追求し、Watsonを活用して徹底的に「無駄な」機能を突き詰めたチャットボットです。

遠藤氏:無駄な機能だからこそ、ユーザに楽しんでもらえるように、仕様や会話のフローを工夫しました。

片山氏:IBM Cloudは、エンタープライズ向けで敷居が高いイメージがありますが、ガリオを通して、一般のユーザーの方々がエンタメや遊びにも使えることを伝えられたらと思います。

安田氏:今後は、インバウンド向けに展開もできるかもしれません。日本語のメニューがわかりづらい海外の方向けに、展開して日本文化を知るきっかけにできたらおもしろいと思っています。

チャットという誰もが親しんでいるUIの中で面白いAIを実装する。AIの可能性を感じてもらうためにチャットボット×AIの取り組みはとてもおもしろいかもしれません。

ぜひみなさんも寿司を食べるときはガリオを試してみてください。

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