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2021.10.28

「シンプルな課題にシンプルに活用」|JALがチャットボットの導入に成功したポイントとは

近年、自然言語処理技術が注目を集めています。さまざまなシーンで活用が見られますが、その中でもチャットボットは、みなさんも触れる機会が増えているのではないでしょうか。

顧客とコミュニケーションを取る手段として、電話やメールの他に、チャットが当たり前のように活用されています。それだけではなく、チャットボットは社外だけではなく、社内に向けた活用も広がっているのです。

航空業界のリーディンカンパニーである日本航空株式会社(以下、JAL)は、「チャットプラス」というサービスを導入し、社員からのお問い合わせ対応にかけるコストをカットすることに成功しました。

今回は、累計で11,000件もの導入実績があるチャットプラス株式会社(以下、チャットプラス)の大江氏と、JALのIT運営企画部業務グループの宮本氏に、導入の裏側や活用の秘訣についてインタビューしました。

チャットボットによる新しいカタチでの情報提供

チャットプラスの導入を決意した背景

ーーチャットプラスを導入された経緯を教えてください。

宮本氏:私のチームは、会社のイントラサイトにて社員に社内情報を共有しています。

しかし、それだけでは必要な情報にたどり着けないユーザーが多くいました。そのようなユーザーは、電話で問い合わせることが多く、対応するチームのコストが大きくなっていました。コストカットのための工夫に取り組む中で、今までと違う形式で情報提供ができないかと思い、社内でも定評があった「チャットプラス」を導入することにしました。

イントラサイトでは、情報が縦割りで並んでいたため、目的の情報に辿り着くまでに時間を要していました。一方チャットボットでは、改めてその部分を再構成して、順番に質問に答えていく形式で情報に辿り着けるため、従来とは異なるカタチでお問い合わせ対応が可能になりました。

また、チャットプラスの活用方法として、お問い合わせ対応とは違った活用も進めています。社内向けのオンライン相談を開催する際に、今まで受付係が担当していたのですが、現在はチャットプラスが担っています。チャットプラスに置き換えたことで、参加者を自動的かつ正確に振り分けることができるようになりました。

現在、私のチームではこの2つのスタイルでチャットプラスを活用しています。

ーーチャットプラスを導入したことで、なかなか情報にたどり着けないユーザーにリーチすることができ、新しい活用方法も見出したということですね。

宮本氏:チャットプラスでも質問に回答した結果、探していた情報が見つからない場合は、電話でお問い合わせできるようになっています。

もちろん、はじめから電話で問い合わせするユーザーもいますが、今まで情報の探し方がわからない人は、チャットプラスに触れることで、該当する情報を見つけることができる機会が増えました。

柔軟にカスタマイズ可能なチャットプラス

ーーチャットプラスの有用性について教えてください。

大江氏:チャットプラスは、自動応答と有人対応、さらにAIを活用した対応、プランによってはその3つの対応を組み合わせながら活用できるチャットツールです。AIはお好みのAIエンジを選択でき、APIを介して接続いただければお使いいただける仕組みになっています。

チャットプラスの用途は、大きく分けて、宮本さんのように「社内でご利用いただくケース」、「社外向けのお問い合わせの効率化でご利用いただくケース」、そして「Web 接客や新規お客様獲得を目的としたケース」の3パターンに分けることができます。

チャットプラスは、ご対応する人数が大きい規模の企業様でもご利用いただけるシステムになっておりますので、大規模にお問い合わせ業務を行っている企業様でも、ご安心してご利用いただけます。

また、プランやオプションによって、AIのエンジンを掛け合わせて、担当者向けに自動で回答を提案する機能もあります。ですので、お客様のニーズに合わせてかなりリッチに使っていただけたり、機能を狭めて手頃に使っていただけたり、自由にお使いいただけるようになっています。

ーー業界でも最安値をキープしていると思うのですが、その点も魅力の一つですよね。

大江氏:おそらく国内のチャットボットツールでは最安値だと思います。

日本のクラウドサービスですと、利用料金が大体3万円からという価格帯が一般的ですが、グローバルで見た時に、1ヶ月20ドルという製品がありました。

私たちは、チャットプラスを立ち上げる際に、グローバルを視野に入れないと価格で負けてしまと考えたため、月額1,980円、1年契約だと月額1,500円というプランを用意しました。

ーーチャットプラスは、業界の波にどのように対応されたのですか。

大江氏:お客様の情報をお取り扱いさせていただく以上、情報の安全性に関してとても重要視しています。一般の企業様、自治体様、医療機関など多くのお客様にご利用いただくので、セキュリティに特化した接続方法やプランもご用意しています。

また、弊社のサービスはお客様にご設定いただくクラウドサービスですので、初期費用もなく、低価格でご提供しています。私たちとしては、ツールをご利用いただくだけではなく、企業様の目的の達成や、課題解決に貢献したいため、設定や運用相談について、積極的にオンラインサポートをさせていただいております。

定性的なデータをチャットプラスで追跡可能

ーーチャットプラスを導入したことで、ユーザーからどのような声がありましたか。

宮本氏:イントラサイトの情報提供のシーンでチャットプラスを活用することで、今まで見えなかったデータが見えるようになりました。例えば、ユーザーはどのような経路で情報に辿り着いたのかということや、お問い合わせの検索欄にどのようなキーワードを入力しているかをトラックできるようになりました。

チャットプラスを導入する以前も、イントラサイトでどのようなページの閲覧数が多いかということは把握できたのですが、ユーザーの経路と検索キーワードを照らし合わせることによって、ユーザーが求めている情報が把握できるようになりました。

また、オンライン相談会の受付業務に関しても、「今までの受付係の待ち時間がなくなったため、本業務に集中できるようになった」という声を聞いています。

ーー他部署での導入は検討されていますか。

宮本氏:私たちのチームがチャットプラスを活用しているため、チャットボットの導入に関して相談を受けることがあります。

他部署でもコロナ禍でテレワークが主流になったことでコミュニケーションの課題を抱えており、社員への情報共有の改善を考えている部署がありました。社内では、その課題を解決できないかと模索する上で、チャットプラスを検討する動きがあります。

チャットボットの活用に成功する企業の特徴とは

ーーチャットプラスの活用に成功した要因は、どのような点にあると思いますか。

宮本氏:シンプルな要件に対して、シンプルに対応したことが大きな要因だと思います。最初から複雑なことをするのではなく、業務課題があるところにそのままチャットプラスを当てたため、効果がすぐに出たのかと思います。

どのようなお問い合わせが多いのか、どのような情報をユーザーが求めているのかを洗い出して、興味を持って調べそうな情報から先行してチャットプラスに入れて利用できるようにしていました。

ーーチャットプラスの導入に成功している企業には、どのような特徴がありますか。

大江氏:現状を分析して、何が必要なのか、目的意識を持って行動することが1番重要です。「チャットボットを導入したら、どうにかなるのではないか」というぼんやりとした状態では、何を解決するべきなのかもわからなくなりますし、弊社としてもベストな対応ができません。

膨大なお問い合わせがある場合は、本当にニーズがあるものとニーズがないものを分けることで、効果があるチャットボットを作ることができます。

問題意識と現状分析がしっかりできている企業様は、弊社のサービスをうまく活用していただいていると思います。

今後の展望

ーー今後の展望を教えてください。

宮本氏:今はシンプルな課題に、チャットプラスをシンプルに活用しています。現段階で効果が出ているのですが、もっと活用の幅を広げていきたいと考えています。チャットボットの特徴を活かして、お問い合わせをすべてチャットボットで受けることも視野に入れています。

チャットボットと組み合わせることで、従来までの「電話対応」というコミュニケーションを大きく変革させていきたいと思います。

大江氏:弊社は、あらゆる目的のお客様に使いやすいツールの提供を目指し、日々さまざまなアップデートを重ねるよう尽力しています。日本航空様の事例では、お問い合わせの件数の削減に貢献させていただきました。

社内利用の場合、弊社がサポートできる範囲は限られてしまいます。ですが、今後はそのような場合でも、私たちが最大限のサービスを提供することで、チャットプラスを効果的に活用いただけるようにこれからも取り組んでいきます。

さいごに

課題について考え込むことで、複雑に捉えてしまい、なかなかAIを導入できない方々もいるのではないでしょうか。「より社員が気持ちよく働くためには」、「本質的な業務に時間を割くには」など頭を巡らせることも重要ですが、思い悩んだ時は一度課題を見つめ直してみるといいかもしれません。

課題をシンプルに捉えることで、JALがチャットプラスを導入したような解決方法が見え、現状の改善につながります。

自然言語処理の技術は、今後も大きな発展が見込まれている領域ですので、チャットボットの更なる機能拡充に期待です。

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