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こんにちは、編集長の亀田です。
みなさん、スマホでゲームを通勤時にやっている人も多いかと思います。ガチャを引いた時の喜びや悲しみ、クエストをクリアした時の達成感もAIに見られていることをご存知でしょうか?今回は、グリー社にてソーシャルゲーム内で活用されているAIサービスの作り方、チーム体制について伺ってきました。
目次
お話を聞いたのは、応用人工知能チームの鈴木氏
2012年新卒入社してWebプロダクトのエンジニアリングからマネジメントまで幅広く取り組んでいる。2016年から機械学習を活用したサービスを複数導入し、チームを引率されているそう。
応用人工知能チームの発足背景
ソーシャルゲームは、ダウンロードからのインストール数、ログイン回数、イベント消化数などのKPIが非常に細かく設定されており、データ分析が事業を左右すると言っても過言でないくらいデータにシビアな世界です。
その為、AIによる新しい手法を研究する必要はあるが、成果を考えると導入が難しい項目だったとか。グリー社内では、昨年あたりから社内で機械学習や深層学習のライブラリを試用して研究を各部署で行っていたそうです。
事業会社では良くある風景だと思いますが、最初から専門のチームを立ち上げるのではなく、有識者の集まりから始まり、今年の4月に人工知能の研究開発を行う専用チームを作ったとのこと。
ソーシャルゲームにおけるAIの活用シーン
ゲーム内には様々な機能がありますが、どこでAIを活用しようとしているのかお話を伺いました。ソーシャルゲームはユーザのプレイログを何億規模で蓄積しているので学習には最適だそう。その中でも、機械学習に関わるいくつかの活用事例を紹介してもらいました。
1つ目はPush通知の最適化で、アイテムの消費、イベントでのアクション傾向や回数、フレンドとのアクションを機械学習で学習させて、このユーザがいつ離脱しそうかや、どのタイミングで通知するべきかを予測して、Push通知で最適なアクションを促す仕組みを実装しているそうです。
2つ目はレベルアップ時にテストが膨大になるレベルデザイン調整で使用しているとの事です。ゲームは段々強いカードや武器が登場して、ユーザの強化と敵の強化が測られていきますが、その際に過去実装したステージやアクションが新しい武器でも問題ないバランスなのか人力で調整する必要があるとのこと。ここをAIに代替えさせる事で工数が大きく減少するのだとか。
3つ目はARINEという美容メディアにおいて画像分類に活用しているとのことです。髪型やネイルの写真のタグ付けを自動で行っているそうです。
4つ目は自然言語系サービスとして、プロダクトでのチャットボットを実装している。まずはトライアルで動かしていて、うまくいくようであればプロダクト内のキャラクターAIで活用していきたいと構想を膨らませているとお話頂きました。
プッシュ通知最適化へ挑戦してわかったこと
活用事例のうち、熱量の高いユーザと離脱しそうなユーザに向けたPush通知最適化問題について、具体的な感想を伺いました。
特徴の決め方
様々な特徴を抽出して学習させるそうだが、当初のモデルだと1年前の訓練データでは80%と結果が良いが、直近のデータでは60%くらいになってしまっているそうです。時間経過によってゲームバランスが変化し、同じモデルを適応できないことが原因だったよう。そのため、特徴量にバラツキがあるものは前処理段階でデータを可視化し、人間から見ても判断しやすいデータに変換してから、特徴選択するようにして精度を向上させたとのこと。
重要度の高い特徴
実際に学習を行ったところ、ユーザのプレイ熱量の大きさに紐づく特徴を選択することで精度が向上したそう。その中でも、イベントでのアクション回数などの熱量が大きく起因していたそうです。様々なユーザプレイセグメントごとに、どのイベントをプレイしていると継続率が高くなりやすいという中間層が確認出来たのだとか。ソーシャルゲームではユーザのアクティブ率を最大化することが鉄則になるので、最終的なデータだけでなく、各ユーザセグメントごとに有効な中間層を数値化して特定できたのがプロダクトにとって有益だったと鈴木氏は説明してくれた。
AIチームの構成について
チームのビジョン
兼任のメンバーも含めて6人のチームを編成しており、機械学習に特化した未踏スーパークリエイターの新卒も在籍し、組織として力を入れているそうです。他のメンバーは部署横断的な形で、Hadoop関連のデータエンジニア、データサイエンティストも参加しているそう。鈴木氏は機械学習の前処理や実装など全般的に担当しているそう。
ビジョンとしては、まずは事業への親和性を高めて、サービスにおけるAIをExcelを使う感覚で業務効率化に活用していきたいとのこと。そして、チームとしての技術を高めて、論文やOSSなどコミュニティでの存在感を高めていきたい。現在はプロダクトやゲームタイトルを限定せずに、様々なジャンルでAIが活用できないか応用範囲を広げている段階とお話頂きました。
力をいれているのはバランス調整
ソーシャルゲームおける親和性が高く、効率化に対しても事業に対しても貢献が期待できるのは、ユーザニーズにあったレベルデザイン設計だと鈴木氏は説明している。
ヘビー/ミドル/ライト層のユーザデッキパターン、ボス側のパラメータの複数パターン、特殊能力がある場合のパターンなど、膨大な組み合わせのバランス調整を行なっている。ユーザセグメントごとのプレイ開放感や壁に当てる部分など、細かいバランスデザインに力を入れている。しかし、現在これが人力でコストがかかっていること、特定のプランナーに属人化していることに課題を感じているそうです。
そのため、自社に保存しているデッキやバトルのビックデータから、次のイベントの最適なパラメータを自動化し、それだけでなく、その理由を客観的な数値で説明できる状態にすることが重要になると言う。
チームの課題
今、AI開発に投資しているコストが見合うかどうかが気になっているそう。どうしてもリソースにコストがかかるので、事業効果が見積もりにくいところもあり、機械学習まわりのタスクに対しての投資量の判断が悩ましいのだとか。
とはいえ、今AIのブームに乗らないと優秀な人材が集まりにくいことも考えられるので、率先してやっていきたいそうです。
システム的な課題としては、長期的に使えるモデルを検討するところ、システムが属人化しやすいのでメンテナンスのコストがかかりやすいことなどがあるとのことでした。
学習データが過去のイベントを基にしていると、変化が激しいソーシャルゲームでは1年後の世界に対応できるかどうかわからない。あまり変動しない特徴量を基にしてシミュレーションするように心がけているそうです。
分析の基盤が完成している事がグリーAIの強み
自社で大規模なDWHを作っていて、自由にカスタマイズできるのが強みと考えており、その理由としては、データを取り出して前処理などで加工しやすい事にあるとの事。そして今が力を入れるべきタイミングだと考えているそう。この強みを活かして、競争力をアピールしていきたいとの事。
今後は、AIを導入することの投資対効果を検討して、人間とAIの棲み分け、ハイブリッドな環境を構築していきたいそうです。
グリー キャリア採用 募集職種一覧
ステキな分析基盤が揃ったグリーではエンジニアを募集しているそうですよ。興味あるかたはぜひご応募ください。