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2017.12.12

AIで仕事を奪うデベロッパー、仕事を奪われる経営者(ストックマーク株式会社 森住祐介氏)

最終更新日:

この記事は2017年 アドベントカレンダー企画「AIの未来予測」の記事です。寄稿してくださったのはストックマーク株式会社のチーフアルケミスト 森住祐介さんです。Twitterもぜひフォローしてくてみてください。https://twitter.com/ymorizumi

AIで仕事が奪われる

「AIで仕事が奪われる。」近頃はこんなフレーズがテレビ等のマスメディアを通じてこぞってAI時代の不安を煽っている。私も今回のAIの未来を通じて、敢えて煽ってみようと思う。
煽る対象はAIによって毎日日報を打ち込んでいた作業が自然言語処理で効率化される事務員か?あるいはAIによる自動運転によってお役目ゴメンとなるトラックやタクシーの運転手か?いや、違う。経営者だ。とくに、既存のビジネスの延長線で勝負している経営者は仕事を奪われる恰好の対象だ。おそらく、AIによって奪われるのは現場の仕事だと思っている経営者が大多数を占めていると思うが、実は現場の仕事だけが奪われると思ってはいけない。今後は経営者の仕事も奪われる。それも、人間に。

パラダイム・シフト

AIによってどのように経営者の仕事が奪われるのかの前に、テクノロジーの発展が社会や組織、職業、働き方に与えたインパクトのイメージを持ってもらうために過去に起きたパラダイム・シフトをご紹介したい。

—— 第一次産業革命 18世紀後半から19世紀初頭にかけて、手作業でやっていた綿工業が機械に置き換わり、これまで職人しか作れない製品を蒸気や石炭を動力源とする機械によって大量につくれるようになった。資本家と労働者という関係がある程度出来上がっていたイギリスでは、この労働力を機械に置き換えることで労働を効率化し莫大な利益を得ることに成功した。

産業革命がもたらした変化はその後の人々の社会や生活に大きな変化を生むことになる。生産するための工場が出来上がり、その周りには労働者が住む都市が形成され始める。労働者も裕福になり教育や新しい価値観にお金を払うようになる。生活も一変し、仕事中心に人々の生活や食生活も変わっていくことになった。

第二次産業革命以降も同様で、19世紀後半にかけて電気・石油を新たな動力源とする重工業中心の経済発展により社会が一変する。大量生産、大量輸送、大量消費の時代が到来。第三次産業革命が起きた20世紀後半、コンピューターなどの電子技術やロボット技術を活用し自動化が促進された。

以上のようにテクノロジーの発展によるインパクトはそれまでの社会構造を破壊し、一変させるインパクトを持っている。それは人の価値観や文化も変えるほどのインパクトである。いま、この新しいパラダイム・シフトが起きようとしている。それも既存のシニア経営者にはわからないように、ひっそりと。

テクノロジーの発展についていけない社会や組織

今はデジタルにつながるものや知識的価値、空間や時間の共感にお金を割くような時代だ。このデジタル化時代の到来を象徴する出来事は、実は2006-2008年頃に集中している。AppleからiPhoneが発売、そしてTwitterやFacebookなどのSNSのサービスがリリースされた年なのだ。さらにはAmazonからクラウドサービスがリリースされテクノロジーは急速に身近になった。このとき、AIで言うとIBM Watsonが開発され始めた時期と一致している。

この頃から、人々の情報収集のスピードが爆発的に伸びていくことになる。それまでのテレビやラジオ、インターネットからの一方的な情報だけではなく、個人がメディア化しSNSで発信し共感して共有する。結果、その連鎖によって指数関数的に知識量が増えていくことになる。

当然ビジネスにも変化が起きた。消費者と情報格差によって売れていた製品も、消費者も知識が増え、むしろ消費者の方がSNSやブログなどの評判を検索、徹底調査する場合があり、下手な営業よりも知識が豊富になるということも少なくない。これまでの新しいテクノロジーとは異なり、消費者の生活に溶け込む形で誰もがテクノロジーを駆使できるようになり、そこから既存のビジネスモデルが破壊され始めているのだ。

インターネット上に溢れている情報は、SNSや動画などのデータも含めて2006-2008年頃を境にホッケースティックカーブを描きながら猛烈なスピードで伸びている。この大量のデータを活用できるテクノロジーこそまさにAIなのである。しかしながら、多くの企業や社会、組織は、テクノロジーの発展スピードについていくことができずAIを活用できる状態にない。AIを既存のITの延長としか捉えず、既存のルールに当てはめて考えてしまい、活用できるビジネスメリットを見出していないのだ。AIの活用は経営課題に上がるが、既存のシニア経営層はそもそも腹落ちしなかったり、会社や組織、株主を説得できないというのがほとんどの現状である。

ここが実は盲点なのである。シニア経営者ではAIの価値を引き出すことができないのだ。

ニュータイプの登場

AIの価値を引き出すことができるのは誰か。

それはデベロッパーである。それもニュータイプのデベロッパーだ。経営的視点を持ち、デザイナー的クリエイティブな感覚を持ち、そして手段としてプログラミングができる人材だ。ビッグデータやテキスト情報、画像、音声などに眠っている”価値”を見つけることができる人材でなければ、次なる新しいビジネスを展開することはできない。

クリエイティブな右脳と論理的思考能力の左脳をバランス良く活用し、そして共感する力の源となる人間力がある者のみ到達できるニュータイプのデベロッパーだ。

もしかすると、もはやデベロッパーとは言わないかもしれない。現に、スタートアップや開発者コミュニティーではそういった人材がどんどん現れている。

生まれながらにデジタルとつながり、世界中の人と言語を気にせずコミュニケーションをし、バーチャルとリアルでプロジェクトを遂行していく能力を当たり前に備えた若い人材こそが、非連続に起こるこのパラダイム・シフトを乗り越えリードできる人材となる。

今後、既存のビジネスは縮小し、デジタル化されたビジネスに大きくシフトしていく。これをリードできる人材は既存のシニア経営層ではない。20代、30代のニュータイプのデベロッパー経営者だ。ニュータイプの人材が、企業の組織や文化を変え、新しいスタイルで新しいビジネスを創造していく。既存の経営層はこういった人材に席を譲り渡さねばならない時代がもうすぐやってくる。

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