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はじめまして。オムロン株式会社 技術知財本部の小泉昌之です。AI搭載の卓球ロボット「フォルフェウス」の開発リーダーをしています。AIの未来予測というテーマに合わせて、ここでは、「フォルフェウス」の開発の背景と、目指す未来をご紹介します。
人と機械の関係性
はじめに、卓球ロボット「フォルフェウス」が開発された背景についてご紹介させてください。
オムロンは、創業者の「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な分野で活動を楽しむべきである」という理念のもと、人の創造性が活きるよりよい社会づくりを目指して、オートメーション技術を提供してきた企業です。
オートメーション技術の発展により、人と機械が共存し共に働くという場面が増えていく中で、技術を発展させることはもちろん、人と機械がどのように関係していくのかについても常に考えてきました。
AI技術の進化が著しい昨今、人と機械の関係性の変化はより多くの注目を集めるようになってきました。ディープラーニングのようなAI技術の進化により、物や状態の認識や判断が場合によっては人よりも正確にできるようになり、それが自動車、医療の診察、カスタマーサポート、接客など様々な分野に展開されつつあります。
しかし私たちは、この流れの中にあっても、AIによる機械の進化で完全に人手を置き換えることを重視するのではなく、あくまで機械によって「人の創造性をより引き出すためのサポート」を行えることが重要であると考えています。
将来は「融和」した関係へ
私たちは人と機械の関係性を3段階にカテゴライズしています。
まず1つ目の段階が「代替」です。
これは純粋に人の肉体活動を機械に置き換えることを表し、従来の機械化と呼ばれるものが該当します。
次に、「協働」です。
これは機械と人が作業を分担している状態です。現在は、AI、IoT、ロボティクスによって、この協働ができる範囲が飛躍的に広がりつつあります。
そして最も上の段階が「融和」です。
「融和」とは、機械が人を理解することや、その理解に基づいて機械が動きを変えることで個々人の能力や創造性を引き出すような状態と考えています。
私たちは、この「融和」の関係性をもたらす「賢い機械」を作り出すことを目指して日々の開発に取り組んでいます。
卓球ロボット「フォルフェウス」の誕生
「融和」を分かりやすく体現するために開発することになったのが卓球ロボット「フォルフェウス」です。
なぜ卓球かというと、
卓球というスポーツはテンポが速く、オムロンのコア技術である「Sensing & Control +Think」の発揮にうってつけであるとともに、人と機械が相互にボールを打ち合うという「融和」を感じるのにもぴったりな題材ということで、体験型デモンストレーションロボットとして2014年に開発されました。
そこから毎年進化し、初心者から上級者まで、幅広いプレイヤーとのラリーに対応するため、2016年にはプレイヤーのラリーレベル判定AIを開発し、プレイヤーのレベルに応じて打ち返すことができるようになりました。これは100人以上のデータを「時系列ディープラーニング」により学習し、プレイヤーのラリーの上手さを判断できるようにしたものです。
最新!4代目「フォルフェウス」
今年で4代目となる「フォルフェウス」は、ロボットの身体性の拡張と、AIによる賢さの拡張を取り入れ、卓球ラリーにおけるさらなる「融和」を体現することを目指しました。
まず、2台のロボットが連携してロボット側から「サーブ」を打てるようにしました。ラリーをするロボットに加えて形状の異なるアームロボットを同期制御することで人が行うサーブと同じ動作を実現しました。実は、卓球のサーブを打つというのは人にとっても意外と難しく、特に初心者はよく失敗してしまいます。ロボットからもサーブをすることで、誰とでも融和できる状態に一歩近づきました。
しかし、サーブ動作は想像以上に難しく、最初は全くトスが上がりませんでした。人がサーブをする動作を撮影し、何度もスロー再生しながら分析し、ハンドの形や動作を試行錯誤し実現にこぎつけました。
次に、「スマッシュ」に対応する機能を実装しました。これは人の動きを解析するAI技術を進化させたもので、人のスマッシュの動きを認識してスイング動作をコンパクトにし、返球することができます。上級者がスマッシュを打ち込んできてもラリーを続けることができ、より高いレベルでの融和へと繋がるものになっています。
ロボットの持つ身体性の制約から、元は速い球には追い付けなかったロボットでしたが、AI技術により「先を予測するという賢さ」を得たことによって、人でも返せないような速い球の返球が可能になりました。
これには開発した私たち自身も驚きました。
AI×ロボティクスに関して非常に大きな可能性を感じた一場面でした。
「フォルフェウス」に関するより詳しい内容はこちらをご覧ください。
今後の展望
今はスマッシュという一場面についてのAI判断機能を持ちますが、競技としての卓球を考えると弱いラリー、強いラリー、スマッシュなど、一球ごとにラリーの状態は異なり、その境目もシームレスなものになるはずです。そしてスマッシュを打ち返せたように、各場面に応じてロボットの身体性を補える賢い行動計画方法があるはずです。
これを学習によって獲得していくことができれば、プロの卓球選手とはいかないまでも、どんな球でも少ない動きで待ち構えて打ち返せる「熟練プレイヤー」のような卓球ができるのではないかと考えています。
まだまだ世の中に人とスポーツでインタラクションができるようなロボットは少ないので、AI、ロボット、そして人との関係性についてたくさん発見をしながら、本当に人を相手にラリーをしているような感覚になれる、究極の「人と機械の融和」型システムへと進化させていければと思っています。
人と機械が融和した社会の実現へ
フォルフェウスが「誰とでも融和できるロボット」になっていくということは、AIとロボティクスの実用場面においても、すべての人が機械の支援を得てより能力を発揮できるような未来が到来することにつながります。
フォルフェウスに使用される「人を見る技術」は、モビリティの領域の車内のドライバーの動作や表情からその人の状態を読み取るドライバーモニタリング技術との共通性を持ちますし、「ロボットの同期制御の技術」はファクトリーオートメーションの領域で、ロボットが担える仕事の範囲を広げつつ、共に働く人の動きに対しても安全を守ったり、最適調和をするような、次世代の生産工程などにも応用されていきます。
卓球ロボットの開発を通して得られる技術・知見を活かしつつ、自社の産業技術と合わせることで、「人と機械の融和」したワクワクする未来を実現できると考えています。
そのような未来の実現のためにこれからも卓球ロボットを進化させていきたいと思います。
今後の進化にご期待下さい!また、一緒に開発する仲間も募集しています!
さらに詳しい内容は下記からどうぞ!!
フォルフェウス開発ストーリー (https://goo.gl/GMfMai)
オムロンがめざす、人と機械の融和 (https://goo.gl/RAs4Dx)
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