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本稿は、サンフランシスコ・東京を拠点のAIスタートアップ特化型シードファンド、Hike Venturesの配信するメールレターのバックナンバーです。Hike Venturesはアメリカ・カナダを中心に投資をしています。「人とアルゴリズムの協業によって豊かさを生み出すエコシステムの創出」をモットーにアメリカ、カナダ、日本のシード段階のスタートアップの支援を行っています。バックナンバーはこちら。メール配信を希望の方は、Hike Venturesウェブサイト内フォームより登録お願いします。
5月前半は、F8 (Facebook Developer Conference 5/1-2), Google I/O (5/8 – 5/10), Microsoft Build (5/7-9)とテックカンパニーのカンファレンスが相次ぎ、AI関連の発表が盛りだくさんでした。AIで可能になる次世代型の体験が大分身近になってきました。
これまでは、GoogleやFacebookのAIによって実現する機能により、ユーザの目が肥えてユーザ体験(UX)に対する期待値が上がるのではと思っていましたが、今回のGoogleの発表を見る限り、彼らは、Androidと自社のユーティリティアプリ(Map, Photo, Assitant等)上で、自らAIを駆使し、Androidを中心とした彼らのプラットホーム上のアプリ全体のUXを上げていこういう姿勢を感じました。
Googleは、私たちとマシンの間に立つインテリジェント・レイヤーを構築し、Googleはそのレイヤーから、ユーザが必要としているアプリを起動したり、アプリの機能へアクセスするようになります。
彼らのAIを使ったUXは、私たちにもプロダクト開発におけるヒントを与えてくれますが、ユーザがGoogleのインテリジェント・レイヤーを日常的に利用するようになった時代に自社がユーザへ提供する価値、そしてユーザへブランドを覚えてもらう方法(もしくはGoogleに起動してもらえる方法)について考え始める必要がありそうです。
以下、Google I/O, F8でのAI関連の発表のハイライトです:
目次
GOOGLE I/O
- Google Duplex
AIエージェント。Google Assistantがユーザの代わりとなって美容院に電話をして予約を完了するデモが披露されました。(詳細は、Googleブログにて)今夏からβテストを始めるようです。デモが大変よくできていたこともあり、このプロダクトを今後どのように発展させていくかに関して既に議論が始まっている。 - Google Smart Display
Amazon Echo Show同様ディスプレイ付きのボイスコントロールシステム。7月から販売開始。ディスプレイ付きのボイスコントロールは今後主流となるか!? - Android P
ユーザのスマホの利用状況を学習し、バッテリー消費を最適化するAdaptive Batteryや、ユーザが次に使うであろうアプリを事前に予測するApp Actionsやアプリの機能へクイックにアクセスできるSliceなどが発表されました。 - Smart Compose
Gmailで書いている途中に、次の文言をサジェストしてくれる。
これら以外にも、Google Newsのパーソナライズ, Google Photoの写真編集機能強化 , Google Lensのカメラに写っている文字の認識 (Smart Text Selection), カメラから商品の検索(Style Match), Google MapのマシンビジョンとARを使ったWalking NavigationなどなどいたるところにAIを使った機能追加が見られます。
F8
ボイスファースト
- ボイスサーチオプティマイゼーションの必要性
Amazon Alexaは、ユーザからの注文を受けたとき、ユーザの買い物履歴かAmazon’s Choiceから商品を選びます。L2の調査によるとカテゴリ毎のAmazon’s Choiceはそれほど入れ替えがなく、電池などAmazonのプライベートブランドである場合もあります。そのため、ユーザのAlexa経由の注文を増やすには、モバイルやWEBなどのマーケティングを通してユーザに一度商品を買ってもらったり、覚えやすくて発音しやすい商品名にすることや、シンプルな商品構成など、商品のブランディングやオンライン・マーケティングで新たな対応をしていく必要がある。 - Amazonがヘルスケア&ウェルネスをAlexa部隊内に新設
CNBCによるとチームは、デジタルヘルスケア関連の法律の調査や糖尿病管理、新生児や母親のケア、エイジングなどにフォーカスしているという。
モビリティサービス
- 自動運転車の競争は誰が勝つか!?
Bloombergが現在自動運転テクノロジーの開発と商用化に名乗りを上げてる車メーカーとテクノロジー各社の戦略・進捗・年間予算・自動化する年(予定)などについてまとめています。トップは、Waymoですが、二位以下にランクインしたのはどこでしょうか!? - Ford, GMらがモビリティサービス向けのブロックチェーンイニシアティブを発表
イニシアティブの名称は’MOBI’。標準的なAPIを開発し、データ流通やペイメントを行う基盤となる。IT企業がデータを溜め込んで公開しないことに対し、オープンな環境を作ることが目標。 - MITが最小の地図情報だけで走行可能な自動運転技術を開発中
現実世界の詳細なマップは容量が大きくアップデートも大変コストがかかる。MITのリサーチグループ(Toyota Research Instituteが支援)は、最小の地図とLiDARで自動走行できる技術を開発中。郊外での運転テストを行っている
【調達ニュース】
フィンテック
-
StratiFi Technologies(New York, NY) Series A $7M
ファイナンシャルアドバイザー向けのプロダクト。クライアントのポートフォリオのリスク度合いを評価し、最適なポートフォリオ構成を提案する。
Wolverine Holdings, Cboe Global Markets, HOF Capital, AngelList等から調達。
マーケティング
- Tailor Brand(Tel Aviv, Israel and New York) Series B $15.5M
いくつかの質問に答えると会社のロゴ、ホームページのデザイン、Facebookページ、名刺、Tシャツなどを自動でデザイン(ブランディング)してくれる。クリエイティブな業務にもAIが活用され始めています。
Pitango Venture Capital Growth Fund, Armat Group, Mangrove Capital Partners , Disruptive Technologiesから調達。 - Moloco(Palo Alto, CA) Series B $11M
Adプラットホーム。同社が蓄積したデータを使って類似ユーザの特定・ターゲティング広告配信を行う。また、広告詐欺を防ぐテクノロジーも提供。
Samsung Ventures, Draper Athena, Mirae Asset Management, Smilegate Investment, KTB Venturesから調達。
不動産
- LeaseLock(Los Angeles, CA) Series A $10M
大家さん向けの賃料保険。借主からデポジット(敷金)をとらない代わりに、6ヶ月分の家賃を大家さんに保証する(延滞金保証)。ただし、大家さんは保険金(毎月19ドルからスタート)を支払う必要がある。現在100万件以上の物件をカバーしている。
Wildcat Venture Partners, Hivers & Strivers, Liberty Mutual Strategic Ventures, American Family Ventures, Moderne Venturesから調達。
ヘルスケア
- Suki(Redwood City, CA) Series A $15M
病室でのお医者さんと患者さんの会話のやりとりを理解しドキュメント作成のお手伝いをする。
Venrock, First Round, Social+Capital等から調達。 - BenchSci (Toronto, Canada) Series A $8M
抗体の検索エンジン。リサーチペーパーを学習し、370万の抗体を抽出し、タンバク質やバイオマーカーなどによって検索可能にしている。
iNovia Capital, Gradient Ventures, Golden Venture Partners, Afore Capital, Real Ventures, Radical Venturesから調達。 - iBeat (San Francisco CA) Seed $5M
スマートウォッチ型のウェアラブルでユーザの心臓の状態をモニタリング。心臓発作が起こりそうな検知(もしくは予兆を検知)し、ユーザに健康状態を確認。GPSが搭載されており、また携帯通信機能も付いているのでユーザが倒れた場合はすぐに駆けつけることができる。
Kairos, 8VC, City Light, Plug and Play, ChinaRock等から調達。
- mPulse Mobile(Encino, CA) Series B $11M
モバイルのチャット等を使った患者とのコミュニケーションプラットホーム。
HLM Venture Partners, EchoHealth Ventures, OCA Ventures, Bonfire Venturesから調達。 - Notable(San Mateo, CA) Seed $3M
往診中の音声をテキストで、記録し確認後電子カルテシステムへ格納。処方箋、医師の紹介なども音声で行うことができる。お医者さんの診察後の業務を大幅に削減する。
Greylock Partners, Maverick Ventures, 8VCから調達。
ボイスファースト
- SoundHound(Santa Clara, CA) ラウンド不明 $100M
ボイスアシスタントテクノロジーを提供。
Tencent, Daimler, Hyundai, Midea Group, Orangeから調達。 - Unisound(Beijing, China) Series C $100M
IoT向けの音声認識ソフトウェアとチップを開発。
China Electronics Corporation Data, 360 Technology, Qianhai Wutong Mergers and Acquisition Funds, Hanfor Capital Managementから調達。
モビリティ
- Miovision(Kitchener, Ontario) ラウンド不明 $15M
交差点に取り付けたカメラ映像のデータのマシンビジョンで解析、カウント、クラシフィケーションを自動で行う。都市計画や道路交通状況、緊急車の通行や渋滞の緩和のために信号機をコントロールするのに利用。17,000の都市で利用されている。
Montreal’s MacKinnon, Bennett & Co, McRock Capital of Torontoから調達。
ロボティクス
- UBTech(China) Series C $820M
AI技術(顔認識、SLAM、音声認識)などを内蔵したロボットを開発している。トイ・ロボット、教育用ロボット、サービスロボットまでをライナップ。
Tencent等から調達。
エンタープライズ
- Passage AI(Mountain View, CA) Series A $7.3M
コーディング無しでチャットボットを構築できる技術を開発。
Blumberg Capitalから調達。 -
MindBridge Analytics(Ottawa, Canada) Series A $8.4M
AI監査。
Real Ventures, Reciprocal, National Bank of Canada, The Group Investment, 8VCから調達。 - Lucidworks(San Francisco, CA) Series E $50M
検索エンジンプラットホームを提供。Reddit, Staples, at&t, redhat, Moody’s, Verizonなどが顧客。
Top Tier Capital Partners, Silver Lake Watermanから調達。 - Squelch(Redwood City, CA) Series A $8M
カスタマーサービスと顧客間のやりとりや社内のデータやコミュニケーションから学習し、顧客の問題を解決したり、成約率を上げる支援をするSaaSプロダクト。
Shasta Ventures, Correlation Venturesから調達。 - Gamalon(Cambridge, MA) Series A $20M
カスタマサポートと顧客のやりとりのテキストからディシジョンツリーを自動生成。ディープラーニングのアプローチと比較して、答えを探すまでの判断ロジックの透明性が高く、人間でも編集可能な状態となる。
Intel Capital, .406 Ventures, Omidyar Technology Ventures, Boston Seed Capital, Felicis Ventures , Rivas Capitalから調達。 - ThoughtSpot(Palo Alto, CA) Series D $145M
企業向けBIツール。ユーザの回答に答えるとともに、関連性があり重要であると判断した情報も同時に表示する。Amway, Bed bath and beyond, Chevron, Opentable, BT, CapitalOneなどが顧客。
Sapphire Ventures, Lightspeed Venture Partners, Future Fund, Khosla Ventures, General Catalystから調達。 - Starmind(Küsnacht, Switzerland ) Growth $15M
社内の誰が何のエクスパートかのプロファイルを構築し、他の社員からの質問を最適な人に転送する。Accenture, Bayer, Nestlé, Telefónicaなどが顧客。
Digital + Partnersから調達。 - Avaamo(Los Altos, CA) Series A $14.2M
顧客との会話を自動化するAI。銀行、保険、電話会社など25種類の業界特有のAIモデルを準備している。14言語の音声とテキストに対応。一日100万インタラクションを処理している。
Intel Capital, Ericsson Ventures, Mahindra Partners, Wipro Ventures, WI Harperから調達。
カメラファースト
- Algolux(Montreal, CA) Series A $10M
自動運転者向けのマシンビジョンシステムを開発。
General Motors Ventures, Drive Capital, Intact Ventures, Real Venturesから調達。 - Loom.ai (San Francisco, CA) Seed $3M
写真から3次元アバターを作るテクノロジー。
Samsungから調達。 - AI.Reverie(New York, NY) Seed 金額不明
AIトレーニング用のシュミレーション空間を提供。
Vulcan Capital, Compound, Locke Mountain Venuresから調達。 - Drishti (Palo Alto, CA) Series A $10M
現在でも工場内での作業の90%は人手で行われている。同社は、マシンビジョンを使い、作業の内容を理解しプロセスの改善に役立てる。
Emergence Capital, Andreessen Horowitz. Benhamou Global Venturesから調達。
HR
- Humu(Mountain View, CA) Series A $30M
GoogleでPeople Operation担当のLaszlo BockがCEO。機械学習と行動科学(+love)を元に従業員の行動を変え働きやすい職場を作るソフトウェアを開発しているとのこと。(ステルス)
Index Ventures, IVPから調達。
コアAI
- Peltarion(Stockholm Sweden) シリーズ不明 $13M
企業が簡単にディープラーニングをモデリングできるツールを提供。
FAM, EQT Ventures等から調達。 - XNOR(Seattle, WA) Series A $12M
少ないコンピューティングリソースしかないエッジデバイスでディープラーニングを走らせることができるテクノロジー。マシンビジョンや音声認識などでの利用を想定。クラウドやインターネット接続を必要としない。
Madrona Venture Group, NGP Capital, Autotech Ventures, Catapult Venturesから調達。
IoT
- Yobe(Boston MA) Seed $1.8M
AIを搭載したシグナルプロセッサー。ハードウェア上で、雑音から聞きたい人の声だけを抜き出したりといったことができる。
Clique Capital Partnersから調達。 - Applitools (San Mateo, CA) Series C $31M
ユーザインタフェーステストの自動化サービス。
OpenView, Sierra Ventures, Magma Venture Partners, iAngels, La Maisonから調達。