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2019.01.28

なぜSansanで研究開発に取り組むのか

最終更新日:

みなさんこんにちは。

Sansanの連載企画「出会う、が、世界を変えていく。」の第4弾。今回は趣向を変えてインタビュー企画をお届けします。

Sansanではさまざまな分野の専門家である研究員が多数所属しています。

彼らは何に惹きつけられ、何に可能性を感じてSansanに集まったのでしょうか。研究員および、研究を支えるデータ分析基盤を構築している3名にインタビューし、彼らの目線から見たSansanについてご紹介いたします。

ビジネスネットワークデータに隠れるつながり

前嶋直樹
(DSOC R&D Group)

– 簡単に自己紹介していただけますか?

前嶋:前嶋直樹と言います。現在、DSOCのR&D Groupで、社会ネットワークに関する研究をしています。

私はデータサイエンティスト職の経歴としては少し特殊かもしれませんが、学部・大学院ともに社会学を専攻していた、いわゆる「文系」出身です。社会学では、いまだに文献研究の側面が強く、古典読解がカリキュラムの比重として大きいです。その一方で、社会調査法などで調査設計や統計分析についても学び、質的・量的アプローチを問わないジェネラリストであることが求められます

学部・大学院では、生まれや人種、思想・信条などで異なる属性を持った人々同士はなぜつながらないのかという「社会的分断」というテーマに一貫して取り組んできました。具体的には、団地や高校のクラスに実際に向かい、質問紙調査やインタビュー調査を行っていました。修士論文では、高校のクラスにおける人間関係の分析をメディア(対面、LINE、SNS)の観点から調査しました。興味深いのが、男女間や異なる部活同士の関係性が、対面よりもオンラインで活発だということでした。これは、「エコーチェンバー」「フィルターバブル」のような、インターネットが社会の閉鎖性・同質性を促進するという主張とは異なっています。

– つながりの分析が好きなんですね。Sansanも名刺のつながりを分析していますよね。Sansanに対する興味もそこからですか?

前嶋:社会ネットワークの分断が「どうなっているのか」についての研究から、分断を乗り越えるために「どうすべきなのか」について、具体的な介入を伴った研究がしたいとずっと思っていました。学術の場では分析はできても、その分析結果をもとに、社会を動かすということは難しく感じていました。「どうにかしたい」という漠然とした思いが膨らんでいく中で、偶然TwitterでSansanの求人を発見し、「自分が呼ばれている!」という直感を信じて応募しました。DSOCが掲げる「出会いを科学する」というテーマは、自身のスタンスと完全に一致しています。

– Sansanでは今どのようなことに取り組んでいますか?

前嶋:どういう人と会えばいいかをレコメンデーションするための基礎研究や、社内のコラボレーションを促進するための研究開発に取り組んでいます。社内のコラボレーションとは、例えば社内で部署に縛られず円滑に仕事が進む良い「相棒」をレコメンドすることです。他には、社会調査の経験を活かして、新しいサービスの調査設計なども行っています。営業部の方々に対するヒアリングなども併せて行っています。

– 他部署の人と密接に関わりながら仕事をされているんですね

前嶋:Sansanの営業部が特殊であるがゆえに、密接な関わりが生まれていると感じます。

ITベンチャーですが、事業が名刺管理であるために、営業先は規模・ジャンルを問いません。すなわち自社を対象に分析したことが、一般的な話へと展開できる可能性が大きいということです。さらに営業さんもかなり積極的で有益なコメントが頂けることも、後押しとなっています

– 例えば、どんな瞬間に実感をもちますか?

前嶋:実際の現場から離れがちなR&Dですが、営業の肌感覚と分析結果が整合したとき、データの背後の人の動きを捉えることができたときに、手ごたえを感じます。データ分析はついつい手元のデータだけに着目しがちなのですが、現場の生の声があり混合研究法(量を質で検証する=トライアンギュレーション)のサイクルを社内で高速に回せるため、良い環境だと感じています。

– とはいえ、分析はなかなかうまくいかないですよね。

前嶋:たしかに、いくら特徴量を作って回帰分析を行っても9割は振るわない結果です。

しかし、データを触っているうちに光明が見えてくる瞬間は、何物にも代えがたいと思っています。

– あなたにとって名刺とは何ですか?

前嶋:自分自身、営業のようにたくさん名刺交換をする職種ではありません。ただ、データから、名刺交換の背景にある人の気持ちに思いを馳せることが多くあります。名前や電話番号など、人をある種の無機質な情報の束に還元するものが名刺だと思います。しかし、そこには、単なる無機質な情報の羅列だけではない、様々な思いが込められています。名刺はそれぞれ趣向を凝らしてデザインが工夫されていますが、その背後には、自分のことを知ってほしいという想いや、「縁」を大切にしたいという願いが込められていると思います。無機質な情報の束としてだけではなく、名刺の人間的な部分を引き出せるような、名刺に込められた「願い」や「祈り」に応えられるような分析やサービス開発をしたいと思っています。

名刺の、名刺による、名刺のためのデータ分析基盤

千葉祐大
(DSOC / R&D Group – Data Engineer)

– 簡単に自己紹介していただけますか?

千葉:千葉祐大と言います。DSOCのData Direction GroupとR&D Groupを兼務して働いており、Data Engineerとして分析用のデータのライフサイクルを包括的に管理しています。

学生時代は情報工学科で多目的最適化から得られる多数の非劣解集合について、いかに把握しやすく整理・可視化するか、ということに取り組んでいました。具体的には、ハイブリッドロケットエンジンを題材に適用し、エンジンのエンジニアが扱う膨大なパラメータの特性を把握しやすくなるようなシステムを提案しました。

大学卒業後は、コンサルティング会社で会計システムの保守運用・改修や、WiFiサービスのログ分析を行いました。その後、ベンチャー企業に移り、サーバーリソースのメトリックデータの予測や、新規事業の企画・開発・営業を行いました。

その後、2017年にSansanに入社し、ゼロベースでデータ分析基盤の設計や構築、運用を担当しています。

– これまで新規事業の企画・営業や開発業務と様々なことに取り組まれていたのですね。

千葉:iPhoneアプリのプロトタイプ開発といったアプリケーション開発や、サーバー監視システムの保守運用、AIサービスの立ち上げから営業まで様々なことに挑戦してきました。

取り組んできたことを見返してみると、自身のロールを限定せずに手広くいろいろなことに挑戦させてもらっているので、職種に閉じない視点を持てている気がしています。

– そんな千葉さんですが、Sansanのどういった点に惹かれたんですか?

千葉:Sansanは、名刺を主軸にビジネス的に市場でどのように立ち振る舞えるか、ということを追求している会社だと思っています。そのような背景から、会社にコミットするためには、何をすべきか?ということを明確にしやすい点に惹かれました。

また、Sansanの扱うデータはビジネスパーソンのつながりに特化したデータと言えるため、分析しやすい点も魅力です。

他に、エンジニアを大事にしている環境にも惹かれました。例えば、エンジニア向けに技術書やツールの購入支援制度があったり、「イエーイ」と呼ばれる生産性向上のための在宅勤務制度などが活用できる点も魅力です。

– Sansanでは今、どのようなことに取り組まれていますか?

千葉:DSOCにおける、分析可能なすべてのデータの生成から活用、破棄まで一連のライフサイクル全体を包括的にマネジメントしています。直近では、Sansan Customer Intelligenceと呼ばれる、企業内に散在する顧客データを統合するカスタマーデータプラットフォームのデータ基盤構築や、研究開発のためのデータ分析基盤構築、つながり分析のためのDB設計に取り組んでいます。

– データ基盤を作る上での魅力はどのようなものですか?

千葉:Sansanならではの面白さは、削除を考慮したデータ基盤を構築することです。

これは難しさでもあるのですが、膨大な名刺データは、お客様の個人情報を取り扱うビジネス領域であるがゆえに、柔軟かつ厳密な削除に対応する必要があります。

このような要件は世の中で公開されている事例の少ない領域で、非常にチャレンジングな課題となり魅力的です。
オリジナリティを発揮でき、「俺のDBで分析しろ!」というような世界観を作り出しています。

– あなたにとって名刺とは何ですか?

千葉:名刺はビジネスの出会いの証跡として、ビジネスパーソンの財産であり、すべてのビジネスの始点だと思っています。

名刺の目的を突き詰めると、物理的な紙の名刺の必然性がないことは明確です。例えば、名刺を切らしてしまった時のシーンで、「次回改めてお渡しします」と伝えるシーンはありがちですよね。また、わざわざアナログな紙データをデジタル化すること、物理的なものであるがゆえに一度渡したら最後自分の個人情報の管理が困難ということもあります。

本は電子版がメインストリームになりつつあり、紙のきっぷや定期券を使う人はすでに少数派です。
名刺という媒体に囚われずに、出会いそのものの価値を高めることで、ビジネスのあり方を次のステージに引き上げるお手伝いをするのが、Sansanであるといいなと思います。

簡単そうで難しいけど価値あること

山本純平
(DSOC R&D Group)※インタビュー時の所属

– 簡単に自己紹介していただけますか?

山本:山本純平と言います。DSOCにて企業データベースを作るための研究、開発をしています。

岩手県出身で、学生時代は地質学や岩石学を勉強していました。実際にカザフスタンや中国で1ヶ月ほど、地質図の作成や採掘した石の分析など、地球の成り立ちを考察していました。

– 地球惑星科学からプログラミングは遠いイメージがありますが

山本:本格的にプログラミングに取り組んだのは就職してからです。新卒で携帯電話のアプリ開発を行っている会社に就職しました。当時の携帯アプリはメモリ100kという制約の中でブラウザやアプリケーションを動かす必要がありました。今思えば、アプリ黎明期から携わっていたということになります。その会社は、当時の日本を代表するベンチャーであり、今で言うAndroidやiOSのような世界に通ずる携帯電話プラットフォームを開発しようとしていました。

– ITの黎明期ですね。強者揃いというイメージを受けました

山本:制約の中でアプリを開発するということで、ポータビリティを優先するために、コンパイラ以外は自前実装でした。メモリ管理からウィンドウシステムまで見ることができて、開発者として非常に勉強になったと今になって想います。

そこから、別のベンチャーにジョインし6年ほど働きましたが、アプリ開発は一通り経験したので、違うことがやりたくなってきたというところでSansanを知りました。

– Sansanのどういった点に惹かれたんですか?

山本:単なるWebサービスではなく、リアルな物体と接点のある会社を探していました。Sansanは名刺という物体を扱っており、そこに興味を感じました。

名刺を直接取り扱う部署を希望していましたが、エンジニア経験からAndroidアプリの開発を担当することになりました。希望とは違いましたが、そこから少しずつ名刺に関わっていこうと思い、R&D領域の勉強をしていました。

– R&Dに異動されてから、どういったことを取り組まれていますか?

山本:チャレンジングな課題である「企業名寄せ」に取り組んでいます。企業名寄せとは、例えば同名の会社があった場合に、それが同一の会社かどうかを判定することです。これを機械学習を用いることにより実現しています。

一見簡単そうに見える問題ですが、例えば、表記ゆれや住所の異なり(支店なのか別の住所なのか)であったり、メールや電話番号も一意に特定できるものかどうかは分かりません。その中で手がかりを掴んで、同一の会社かどうかを判定する必要があります。

– 特に難しかったことはありますか?

山本:Sansanのサービスクオリティとして求める精度が高く、要求を満たすのは大変です。製品として使えるものにするために、目的を再設定することもあります。例えば、候補を出すAPIとして提供することで、オペレータさんの人力作業で利用したり、サービスとしてユーザーが選べる形式にするなど、柔軟に考える必要があります。

– そういえば、地質学と少し関係のありそうなジオコーディングを作成されていましたね。

山本:名寄せを行うために住所と緯度経度を対応付ける機能を作成しました。会社名寄せでは、距離が近いと同じ会社といった情報が利用できます。意外と曲者なのが、同じビルで同じ読みなのですが、カタカナと英語表記の会社があったりもします(笑)

副産物として、実験的にですが「Business Network Earth」という名刺交換をリアルタイムで可視化するアプリケーションを開発しました。

住所の緯度経度がわかることで、名刺交換を可視化できるようになった

– あなたにとって名刺とは何ですか?

山本:世の中の人は、名刺を大事にしていると感じます。名刺交換をする際に、いただいた名刺を無下にはできないですよね。Sansanはそれをデータ化している。出会いの瞬間からビジネスが生まれるところまで名刺の可能性を追求しているのがユニークだと思います。

一方で、Eightでは名刺を無くそうという動きがあります。名刺は、長期的には何かにとって置き換わるものだと思います。そういう部分に関われればおもしろいです。

編集後記

Sansanは、これまでにないビジネスにおける人と人との出会いに着目し、そこから新たな価値をユーザーに提供すべく日々研究開発に取り組んでいます。
少々長文となりましたが、全く背景の異なる3つの観点からのSansanでの研究開発の面白さをご紹介いたしました。

ご自身の観点から、興味を持たれた方は、ぜひ一度、採用情報をご覧ください。

筆者:Sansan株式会社 高橋寛治

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