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国内を代表するハンバーガーチェーン「モスバーガー」を運営する株式会社モスフードサービスが、音声認識を活用した無人レジの実証実験を関内店にて始めると発表しました。2月15日(金)から2月27日(水)までの期間で実施する予定です。
少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により、働き手不足が叫ばれるなか、飲食店の人件費の高騰などが課題になっています。国内では画像認識や音声認識を活用した店舗運営の効率化が進んでおり、2018年10月にはJR東日本 赤羽駅にて、無人レジコンビニの実証実験が開始されるなどAI技術の活用も進んでいます。
まだ、実運用の事例は少ないですが、着実に店舗運営の効率化、ひいては無人化に向けての取り組みが加速しています。
タッチ&音声認識を使った無人レジを導入したモスバーガー
AINOW編集部は、実証実験が始める2月15日にモスバーガー関内店を訪れ、無人レジを体験してきました。縦長のディスプレイにWEBカメラ、マイク、スピーカーが外付けされたレジが店内に配置されていました。
実際に試してみましょう。まずは最初の画面で、注文方法を選択します。
ここでは音声での注文を選択します。
メニューの一覧が表示されました。表示される順番はWEBカメラによる画像認識で最適化されます。注文する人の年齢・性別・感情などを推定し、最適化されます。実際に違う人が試してみると違った順番になっていることがわかります。また「野菜が多いメニュー」と話しかけると野菜が多いメニューが表示されるなど、カスタマイズにも対応しています。
開発の担当者によると、どんな並びにすると購買につながるかははっきりしていないそうです。今後実証実験を通して反応を見つつ、どんな世代、性別、感情の人にどんな順番でメニューを表示したほうがいいのかを検討していくといいます。
メニューの選択後はドリンクやサイドメニューも声で選択することができます。
最後に決済を行って終了です。現金、クレジットカード、楽天Edy、交通系ICカードなど幅広い支払い方法を選ぶことができます。
音声認識を使った無人レジの課題は!?
人件費の削減などの効果も見込め、実証実験が進む無人レジ。音声を使ったレジにはどんな課題があるのでしょうか!?以下のような課題が挙げられるといいます。
- 周りの音の問題
店の外部を車が通ったり、人が会話をしており、店舗内では常にさまざまな音が発生します。音声認識においては、ノイズと注文する人の声をしっかりと区別しなくてはいけません。また、注文する人がマイクから遠い場所で話すときの精度が落ちてしまうという課題もあります。
今後は、マイクの選定や、立ち位置の誘導、ノイズをより正確に除去できる仕組みの構築などが必要になります。 - 2人が話しているときに声の認識ができない
レジの前で2人の人が話しているときに正しく声を聞き取ることが難しいという課題もあります。画像認識と組み合わせて口の動きを認識するなどの工夫が今後求められます。 - 通信状況の悪い店舗がある
店舗によっては、通信状況が悪く、音声データや画像データをクラウドに送信するのに時間がかかってしまうケースがあります。モスバーガーの無人レジではクラウドに接続するタイプと独立して使えるタイプの2種類を開発したそうです。今回の実証実験では、精度の高いクラウド型のモデルを採用しているとのことですが、今後は通信状況の悪い店舗には独立型のタイプも導入していく予定があるそうです。
今回の実証実験を通して、無人レジがどのくらい使えるのかの確認や、さらなる課題の洗い出しを行っていきます。
今後は無人レジのみの店舗での実証実験や、モバイル連携で事前注文ができる機能追加も検討中。今回の実証実験では実装されていませんが、外国語対応なども開発済みで今後、順次実装していくとしています。
さいごに
開発担当者は、「なぜ音声認識機能を取り入れたのか」という編集部の質問に対し「デジタルデバイド」という言葉を使って、「誰でも使えるようなデザインを心がけたい」とおっしゃっていました。ディスプレイが使えないようなユーザであっても、使うことができるようにしたいという思いがあるそうです。だからこそ、現金でも決済ができるようにしたといいます。
労働者不足が叫ばれ、売り手市場の今、外国人労働者の受け入れだけでなく、効率化も同時に進めていかなければなりません。そして、その効率化において画像認識や音声認識など、それぞれの業態にあった活用方法が求められます。しかし、それ以前に利用する「ユーザ」の気持ちを考えたユーザファーストな設計が求められます。
実証実験は2019年2月27日までです。関内駅の近くに訪れた方はぜひ立ち寄ってみてください。