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2019.03.05

弱者が強者になるためのAI導入戦略【THE AI 3rd講演レポート】

最終更新日:

2019年2月13日虎ノ門ヒルズでTHE AI 3rdが開催されました。
本記事では、登壇者のアローサルテクノロジーの久保田雄大氏、佐藤拓哉氏のセッションをご紹介します。

アローサルテクノロジーはオフショア開発、オーダーメイドシステム開発を経て、2016年よりAI導入の相談から実導入の支援まわりのコンサルティングを中心に事業展開しています。

今回の登壇では、リテラシーの低い弱者が強者になるためにはどのようにしてAI導入を進めていくべきか発表されました。

1.  未来の時代の強者とは?

久保田さん

皆さんは今の時代の強者は資本・情報・リテラシーのうち、どれを持っていると強者だと考えますか。

佐藤さん

僕らの考える今の時代の強者は、資本を持っている企業が強いと考えています。

久保田さん

しかし、我々が考える未来の強者は、リテラシーを持っている企業だと考えています。今後は情報の取捨選択や分類する能力が必要になっていくでしょう。そして、リテラシーがあるからこそ、資本も集まっていくと考えています。つまり資本があっても、リテラシーのない企業は弱者になると私たちは考えています。

佐藤さん

資本のだんだん価値がなくなっています。「もの」から「こと」に価値が変わっていっていると感じます。

2. 今後重要になるリテラシー

今後重要になる「リテラシー」とは何か。
二人はリテラシーとは以下の三つに分類されると言います。

・情報 / 技術を適切に見極める
・情報 / 技術を適切に判断する
・情報 / 技術を適切に活用する

正しい間違っているではなく、「適切に」ということが重要です。

では、自らのリテラシーが低い、またはわからない時にはどうすれば良いでしょうか。

久保田さん

例えば、法律に関するトラブルで困っているときにどうしますか。やはり多くの方は、法律のプロである弁護士に相談をすると思います。これはどの業界に同じようなことが言えます。

佐藤さん

やはり、できることとできないことがあります。自分のリテラシーを確認しながら、リテラシーの高い専門家を周りに置くことから始めることが重要ですね。

3. 「AIリテラシー」に求められる条件とは

久保田さん

注意しなければいけない点として、全てのAIエンジニアがリテラシーが高いというわけではありません。

佐藤さん

もちろん、AIエンジニアの中にはリテラシーが高い人もいるかもしれませんが、会社にAIエンジニアを置けば安心というわけではないですね。

AIエンジニアはデータサイエンティストと呼ばれることが多い中、一般社法人データサイエンティスト協会資料のなかでデータサイエンティストは三つの能力を兼ね備えることが必要だと二人は続けます。

しかし、この三つの能力だけでは不十分で、以下の項目のリテラシーが必要です。
最低でも下記の条件をクリアした人材が一社に集約していないと、複数の会社にコンサルや相談を並行することになり、ダブルスタンダードの板挟みになり話が進みません。

  • 俯瞰的視座
  • 高いコミュニケーション能力
  • AI各分野の基礎知識(プログラム、統計、設計、etc..)
  • 各技術難易度の理解
  • コンサルティングノウハウ
  • 異分野ネットワーキング
  • 多業種にわたるビジネス経験
  • 人間学の深い理解

4. 事業考案におけるCTOの必要性

現状として、会社にCFO(最高財務責任者)を置いたり、CFOサービスを使っている会社もあるかもしれませんが、CTO(最高技術責任者)を置いている会社はなかなかいません。

久保田さん

全ての事業にIT、AIが関わる今、テクノロジーの観点を欠くことは非常にリスクとなります。理想として全ての事業に顧問弁護士のようにCTOがつくことが一般的になってくべきだと我々は提言します。

佐藤さん

技術を追いかけることで、未来予測に繋がったり、リスクを判別できる人が身近にいることが会社として重要ではないでしょうか。しかし、このCTOが務まる人が現状として稀有ですね。

CTO人材は非常に希少であり、かつCTOをやりたがる人は日本に少ないです。
AIエンジニア以上に今後奪い合いになっていくことが予想されます。

5. 正しい事業の整理と理解

事業のイメージとして、細かいタスクや業務で構成されていると考えることができます。業務やタスクを分解したときに、小さい歯車や大きい歯車として考えることができます。それがどう噛み合って動いていくかということを事業の整理として考えます。

歯車一つがタスクや人、システムと考えた時、ある歯車だけをAI化したとしましょう。AI化された歯車が10倍速になったとしても、果たして全体の生産性は上がるのでしょうか。これでは他と噛み合わなくなってしまいます。

佐藤さん

スピード感を出すということは大切ですが、人の理解や、タスクの理解がそれぞれがどう噛み合っているということの事業の整理や理解が重要になっていきます。

6. 既存事業をアップデートせよ

ではどのような手順で既存事業にAI導入するべきなのでしょうか。

久保田さん

AIはアップデート手段でしかありません。いきなり「AIを導入しよう」ではなくて、しっかり現実のフローや歯車となる周りのタスクを整理した上で、どのような計画、手順で導入するかということが重要です。これを「AI導入計画」と読んでいます。段階的に全体としてパフォーマンスを上げられるように計画をもとにして実施します。

AI導入の段取りとしては、以下の点をしっかり行うべきだと佐藤氏は続けます。

  1. 現在の事業モデルを正しく認識する
  2. 目標を設定する
    (例 : 〇〇部門にAIを導入する××事業をサブスクリプション化する)
  3. 逆算してマイルストーンを設定
  4. 必要なリソースの洗い出し
  5. AIリソースの技術・価格調査
  6. トータルコストの算定

重要なこととして、「計画」と「実施」は完全に分けて考えること、ヒト・モノ・カネ・ジカンというコストが各々どれだけかかるかまず把握することが重要です。

7. 事業にAIを導入する

業務の代替化を考えた時、AI導入には正しい実施順があります。

久保田さん

ただ業務にAIを導入すればよいというわけではなく、非常に泥臭く地道なことを進めていく必要があります。現場にヒアリングをすることも重要であり、現場を見た上で、現場の人が何を考えていて、何がしんどいのか、どうなったら改善したと言えるかといったところを見た上で、上からも会社の業務の人を代替するかや、その上で最終形になっていくかを考える必要があります。

8. AI導入の障壁 Q&A

Q. お金がいくらかかるかわからない
A. だからこそ検討する、そのさきに費用感が見える

AI導入の最大の障壁として、お金の問題が考えられます。
AI導入にいくらかかるかわからない点が大きいかもしれません。

アローサルテクノロジーの答えは「だからこそ検討しましょう!」

久保田さん

AI導入に何をやりたいか明確ではない場合とでは、全然違います。数億円かかってもできないこともあれば、100万円からできることもあります。まずは検討しましょう。

Q. お金がないからAI導入は断念する
A. 弱者こそ痛みを伴う選択が能動的にできる

久保田さん

お金がないからAI導入を断念することが多いかもしれません。ただ、違う側面もあり、お金がない弱者だからこそ、スムーズにリスクを選択することができると思います。

Q. 会社規模が大きくて先進技術に保守的な人が多い
A. 競合他社は待ってくれない、計画検討だけでも実施すべき

久保田さん

計画と実践を切り離して考えるべきです。検討だけでも実施することが重要です。

9. まとめ

総論として、以下の2点をまとめとして提案されました。

  • AIリテラシーの高いパートナーを見つける
  • 実施はともかく、最速でAI導入計画を立てる

今後弱者が強者になるためには、資本ではなくリテラシーを高くすることが重要になっていくでしょう。
リテラシーを高くするためにCTOの必要性や、AI導入には、まず計画をしっかり立てた上で、正しいフローで実施する必要があるでしょう。

 

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