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2019.05.20

【Microsoft公式AIブログ】リーダーたちはAIを取り入れようとしている、とりわけ急成長企業はその恩恵を受けている

最終更新日:

Microsoftアメリカ法人が運営している「The AI Blog」に掲載された記事のひとつでは、同社が調査したAIとリーダーシップの関係が報告されています。

7ヶ国のヨーロッパ諸国とアメリカの企業リーダー800人を対象として実施された調査は、AIを有効活用すると企業リーダーは社員のモチベートや人材への投資といったヒトにしかできない業務に専念できるようになる、ということを証明しました。こうした調査結果は、AIの有効活用によってリーダーは「マネージャーからモチベーターになる」と表現されています。

調査からわかったもうひとつの重要な知見は、成長している企業のリーダーほどAIの活用に積極的である、ということです。さらにはこうした優秀な企業リーダーは、企業経営における意思決定支援のようなリーダーシップのコアとなるような業務にAIを活用しようとする傾向があることもわかりました。

以上の調査結果は、企業経営者がAIを理解し有効活用することが企業の成長に大きく影響することを示唆しています。こうした調査から得られた知見をうけて、Microsoftは企業経営者向けのAIビジネススクールを開講しました(日本における開講は未定)。

今年3月に日本政府のAI戦略が発表されて、教育課程におけるAI人材教育が今後活発になることが明らかになりましたが、日本がAI強国となるためには企業経営者もAIを学ぶ必要があるのではないでしょうか。

なお、以下の記事本文はMicrosoft広報部より翻訳許可を頂いたうえで翻訳したものです。

Microsoft調査チーム
2019/3/5


アナリストと研究者は産業や経済に対する人工知能(AI)のインパクトについて研究してきたが、AIがいかにリーダーシップにインパクトを与えるかについてはほとんど研究していなかった。こうした状況はAIがリーダーシップに与える影響について詳しく調査する新たな機会を提供しているとも言え、調査を通してAIがリーダーの役割に与え得るインパクトについて学びたいと思っているリーダーたちの興味に応えることにもなるのだ。

正しいリーダーシップがなければ、ビジネスはつまずき失敗してしまうのは周知の通りである。リーダーシップとAIのあいだにある関係についての研究は、企業がAIをうまく活用するようになる行程を進むことを助ける重要な情報を明らかにできるはずだ。こうした問題意識を心に抱きながら、わたしたちはAltimeter グループ(※註1)のAIアナリストであるSusan Etlinger氏とザンクトガレン大学(※註2)に所属するリーダーシップについて研究しているHeike Bruchとともに新しい研究に着手したのだった。

調査では7ヶ国のヨーロッパ諸国(フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ロシア、スウェーデン、イギリス)とアメリカ合衆国にいる800人の企業リーダーを対象として、各人がどのようにAIの活用を計画しているか、そしてAIをビジネス活用するとどのようにリーダーシップが好ましく変化すると考えているのか、という質問を共有した。

以上のような調査の要点を以下に示す。また、MicrosoftのEMEA(※註3)地域の首長であるMichel van der Bel氏には調査結果から導かれた個人的な考察を彼のリーダーとしての立場から執筆してもらった。わたしたちMicrosoftの調査チームは読者と対話し続けることを望んでいるので、@MSEuropeから各人の考えをぜひ聞かせたもらいたい。

(※註1)Altimeterとは、最新テクノロジーの活用に関して助言することを基幹業務にしているコンサルティング会社。アメリカ、イギリス、スイス、中国に拠点を置く。
(※註2)ザンクトガレン大学とは、スイスのザンクト・ガレンにある単科大学である。単科大学のため規模は小さいものも、経済学部に関してはヨーロッパでトップクラスの大学とされている。
(※註3)EMEAとは、英語の”Europe, the Middle East and Africa”の略称でヨーロッパ、中東およびアフリカを総称する表現。Microsoftのような多国籍企業の事業担当区分を表す表現として多用される。

ヒトへの投資

この調査における主な発見の1つは、AIが企業でより一般的になるにつれて、従業員のモチベートと投資がリーダーにとって最優先事項になったことを示している。こうした調査結果は、ヒトに固有な特徴こそが企業の成功に影響することをリーダーたちは認識していることを示唆している。

創造的な問題解決、共感、信頼の醸成、および個性は、ビジネスの成功にとって非常に貴重な人間的側面である。とりわけ企業が変化と変革の過程にある時には、こうした人間的側面が貴重なのだ。

以上の調査結果について、Microsoft のEMEA地域の首長であるMichel van der Bel氏は次のように述べている。「AIがリーダーたちの運用タスクをより効率的に支援するようになると、彼らは社員を活気づけることに自らの焦点をシフトさせることができます。こうしたリーダーシップの変化は、社員がそれぞれのやり方で挑戦しようとすることを信じ、また社員がベストな状態であることを確かなものとすることを意味しています。簡単に言えば、AIの活用によってリーダーはマネージャーからモチベーターにより効率的にシフトできるのです」。こういうわけで、AIは戦略会議室におけるツールと見なされるだけではなく、リーダーが社員により多くの時間を再投資することを可能とするのだ。

AIはリーダーを多忙さから解放してより人間的にすることでより良いリーダーを育む、とわたしは考えているのです。(ザンクトガレン大学Heike Bruch教授の発言)

ザンクトガレン大学でリーダーシップと人材管理に関する研究所を率いているHeike Bruch教授は、次のように述べている。「成功するリーダーはAIを運用タスクに使うだけではなく、AIを使うことによって自らがより効果的なリーダーとなるのです。このことを別の言葉で言えば、企業が成長するにつれて、リーダーの最優先事項が正しく再設定され、社員をインスパイアするようになるのです。企業内でAIが一般的になるにつれて、リーダーが社員をインスパイアすることにより多くの時間とエネルギーを費やそうとするのを見るのは非常に興味深いことです。こうしたわけで、AIはリーダーを多忙さから解放してより人間的にすることでより良いリーダーを育む、とわたしは考えているのです。」

スキルの拡張

今回の調査によってAIはリーダーが社員の成長により多くの時間を投資することを促すことがわかったのだが、AIを積極的に使うことでリーダーが自らのスキルを拡張していることに気づいたのも重要だった。

調査結果は、(2桁成長しているような企業の)成功しているリーダーの半数近くが、視点の創出や戦略の設定のような企業方針の策定を支援するためにAIを活用していることも示している。この調査結果との対比として、低成長の企業リーダーのうち36%しか企業方針の策定にAIを活用していなかった。

調査結果は、高成長している企業のリーダーの過半数がAI時代においては自らのスキルを変化させたいと思っていることも示している。彼らは企業戦略やゴールの策定、あるいは新規市場の参入機会の創出といったよりリーダーシップのコアとなるものが求められる目標に焦点を合わせたいのだ。こうした新たな目標は、すべてヒトの創意工夫によって解決されるべきものである。以上のことは、AI時代においてはリーダーたちが自分たちの職務を全うする方法が変わってしまうことを認識しており、AIがリーダーシップに関わるスキルを洗練する助けとなることを歓迎さえしていることを示唆している。

AIについて知れば知るほど、AI活用が緊急性のある課題だという意識がより高くなる(Altimeterグループ・アナリストSusan Etlinger氏の発言)

調査対象企業のAI実装の現状。高成長企業ほどAI導入に積極的

AI導入計画、AI導入業務、企業の成長率の関係を表すグラフ。
高成長企業ほど早い段階でAIを意思決定のために導入する傾向にある。

(※註4)英語原文記事では、以上の画像は調査対象国や成長別に見た企業等を選択することができるインタラクティブなグラフとなっている。

レースはすでに始まっている

調査結果は、高成長企業は低成長企業に比べて2倍近くAIを活用しており、さらには低成長企業より短い時間枠でAIを活用する大きな計画を策定していることを示している。調査対象となった2桁成長の企業は、そのほとんど(94%)が今後3年以内に意思決定のためにAIを活用しようとしており、今後12ヶ月以内でも半数以上がAIを活用する予定であった。対して、低成長企業の大多数は今後3年から5年以内に意思決定のためのAIに投資することを目指すにとどまっている。

「調査結果において衝撃的なのは、高成長企業と低成長企業のあいだの違いです」と、Altimeterグループの産業アナリストであるSusan Etlinger氏は述べている。「2桁成長の企業はAIの実装をまさに進めている最中であると同時に、AIのさらなる活用こそがきわめて緊急性のある課題だと認めているのです。高成長企業は1年から3年以内という時間枠でAIを導入しようとしています。しばしば年内の導入に焦点を合わせている企業もありました。対して低成長企業は、5年以内という時間枠でAIの導入を計画しています。以上の調査結果から私が言えることは、AIについて知れば知るほど、AI活用が緊急性のある課題だという意識がより高くなる、ということです。」

さらに重要なのは、AIを導入する行程において後塵を拝している企業やリーダーが今からAI導入を始めて自社の競争力を維持するチャンスを増やそうとしても、遅すぎるということはない、ということだ。

小さく始めて、早く学習して大きくする

調査の結果わかったのは、AIは企業のリーダーたちの戦略立案とその実行に役立つと同時に、リーダーたちが人材に多くの時間を費やすことにもうまく使われる、ということである。加えて、リーダーたちが自分のスキルを成長させる助けとするためにAIの能力をどのように評価しているかについてもわかった。

調査はもっとも急成長している企業ほどすでにAIの投資し、かつ今後もAIに投資し続ける証拠となっている。こうした企業のリーダーによって触発されたAIはビジネスを確固たるものにするものとして重要視され、リーダーたちはより先進的な企業との競争に敗れるリスクを冒す前に、AIを推進する行程を後回しにせず早く歩もうとするのだ。

調査に関するMicrosoftのEMEA地域のプレジデントであるMichel van der Bel氏の言葉を引用すると、次のようになる。「AIの導入は小さく、しかし意図をもって始めるのがよいでしょう。こうしたことがAIを導入するチームの結束を固め、フィードバックから学んでAI導入に対する信頼を築くことになるのです。簡単に言えば、意図をもって小さく始めることこそAI導入に至る行程を力強く始める助けとなります」。AIの導入を日々進めれば、近い将来に企業のリーダーと企業全体の両方にAIの恩恵がもたらされるのだ。

AIの導入に関する行程についてもっと知りたい場合は、AIビジネスのリソース集にアクセスしてください。

調査で判明したことの要点

註記:高成長企業とは、収益に対する相対的な自律的成長(※註5)が2桁の数字を期待できる企業のことである。

(※註5)自律的成長とは、企業に蓄積された商品やサービス、技術によって企業における本業を成長させること。この成長には企業の合併や買収によって得られた利益は含まれない。なお、英語原語では、organic growth(直訳すると本質的成長)と表現される。

高成長企業のリーダーたちは、効率性の向上だけではなく成長のためにもAIをより活用することが急務である、と感じている。

  • 高成長企業のうち93%が1年から3年以内に意思決定のためのAIを活用することに投資している傾向にあった。12ヶ月以内の活用に対する投資は53%であり、低成長企業では33%にしか過ぎなかった。
  • 低成長企業のうち64%が、3年から5年以内に意思決定のためのAIに投資する傾向にあった。

AIの活用が幅広くなるにつれて、リーダーは以下のような課題に時間を費やすようになる。

  • 社員をモチベートし、インスパイアする
  • 新規市場に参入する機会を特定する
  • 正しいゴールを設定する

来るべきAI時代をよりよく迎えるために、リーダーたちは自分の強みとなるスキルを変えるための助けを求めている。

  • 高成長企業の76%のリーダーが自分のスキルを変える助けを求めているのに対して、低成長企業の67%のリーダーが同じように考えている。

意思決定者は、AIがリーダーシップに良い影響を与えると思っている。

  • 高成長企業のリーダーのうち76%がAIはリーダーシップに良い影響を与えるだろうと述べており、さらにそのうち8%がすでにAIがよい影響を与えていると言っている。
  • 以上と同じ質問を低成長企業のリーダーに尋ねると、64%がAIはリーダーシップに良い影響を与えるだろうと答え、さらにそのうち3%がすでにAIがよい影響を与えていると言っている。

高成長企業が近い将来にAIをより活用したいと思っている3つの業務領域とは、以下のようなものである。

  • 意思決定:53%(低成長企業では33%)
  • 業務の最適化:43%(低成長企業では34%)
  • 新製品と新サービスの開発:28%(低成長企業では27%)

AI導入に関連して、リーダーが直面する主な課題とは

  • (AI導入によって)新規かつ流動的になる市場環境に迅速に適応すること(47%)
  • AIが普及するような文化をヒトに奨励すること(41%)
  • AIが顧客の問題解決に付加価値をもたらす方法について、考えること(40%)

原文
『Leaders look to embrace AI, and high-growth companies are seeing the benefits』

著者
Microsoft Reporter

翻訳
吉本幸記(フリーライター、JDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #1取得)

編集
おざけん

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