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未来技術推進協会は、「テクノロジーで社会課題を解決する」という合言葉をもとに、デジタルテクノロジーを駆使したSDGsの課題解決、事業創出に向けて活動しています。
「SDGsという言葉を聞いたことはあるが、それをどのようにビジネスにつなげればよいか分からない」、「AIを社会課題の解決に活用した例を知りたい」という方に向け、今回の記事では、SDGsへの理解を深めてもらうと共に、SDGsをAIビジネスに活用するヒントについて協会から発信していきます。
目次
SDGsの理解を深める
持続可能な開発とは
「SDGs (Sustainable Development Goals) = 持続的な開発目標」は、2015年9月に国連サミットで採択されました。誰一人取り残さない持続可能な社会を実現するため、社会、経済、環境のあらゆる課題に対して17の大きな目標、169のターゲット、232の指標が定められ、加盟国193か国は2016年~2030年の15年間でその目標を達成するための行動を起こしていくことを宣言しました。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
「持続可能な開発」という概念が初めて提唱されたのは1987年の国連総会のことであり、「世界環境開発委員会」が総会に宛てた報告によるものでした。自由な経済成長だけに基づくアプローチに代わるものとして、環境資源を保護しながら現在および将来の世代のために経済的福祉をもたらすような開発の必要性が理解されるようになってきました。
持続可能な開発というテーマは繰り返し議論されるようになり、2000年に開催された国連ミレニアム・サミットにて、SDGsの前身となる「ミレニアム開発目標(MDGs)」が採択されました。MDGsは2015年を目標年として、極度の貧困や飢餓の撲滅など、8つのゴールを設け、加盟各国がその達成に向け努力することが定められました。
しかし、MDGsなどで定められた目標は発展途上国やNGOが主体となるものが多く、一人ひとりが当事者意識を持ちにくいという課題がありました。そこで、SDGsはその目標の策定にあたり、先進国も含めて企業や市民社会など様々な立場に属する人たちが協議を重ねてきました。SDGsは政府や国連に加えて、企業、自治体、個人が参加でき、一人ひとりが主役となって行動を行っていくための目標となっています。
(出展:持続可能な開発|国際連合広報センター https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/)
具体的な達成指標があってこそのSDGs
SDGsは規則や規制など、法的な枠組みは定められていません。自主的な取り組みを促すための目標です。従って、やり方は十人十色であり、国や企業、老人やこどもなど、それぞれに合わせたやり方に委ねられています。その唯一の仕組みは、「測る」ことです。
2017年の夏、SDGsの進捗を世界全体で測るための232個の指標が定められました。「測る」ということは「比べる」こともできるということを意味します。比べられると、より良い成績を収めようという競争心が生まれてきます。SDGsは競争することによって、世界が「持続可能でない」ところから「持続可能な」ところへ変化していくことを目指しています。
(出展:一般社団法人 Think the Earth 「未来を変える目標 SDGsアイデアブック」 p.9)
また、具体的な達成指標が定められていることによって、バックキャスト思考に基づいて解決方法を考えることができます。例えば、目標12「つくる責任、つかう責任」の中のターゲット12.3は以下のようなものです。
「2030年までに小売り・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」
この目標を達成した世界から考えると、コンビニエンスストアなどで毎日大量に食品が廃棄される日本の流通システムや消費行動を見直す必要性に気付かされます。
SDGs達成にAIを活用するために
SDGsとAIの結びつきを考える
AIテクノロジーはIT革命以上にあらゆる産業に影響を与えると言われています。あらゆる業界で利用可能な非常に汎用性の高い技術だからです。利用環境の整備と拡大によって、個別の領域を超えて利用が進み、新たなエコシステムが構築されることが期待されています。
しかし、AIがあれば何でも解決できるという考えだけでは、そのビジネスは行き詰ってしまう可能性があります。なぜなら、AIがデータから学習した能力を活かして課題解決を行うためには、実証実験=PoC (Proof of Concept)の壁を超える必要があるからです。PoCを成功させるためには、AIベンダーが課題を理解し、その課題が本当にAIテクノロジーで解決できるのか見極める必要があります。
もしAIテクノロジーを用いて社会課題の解決に貢献したいと考えているのならば、今日の世界はどのような課題を抱えているのか知るために、SDGsを理解することは非常に有意義であると言えるでしょう。バックキャスト思考などを基に、本質的な課題解決手法を探っていくことが、PoCを乗り越えられるビジネスにつながります。
課題解決事例からアイデアのヒントを得る
AIテクノロジーが社会に浸透していくにつれて、AIテクノロジーを活用したビジネスを通してSDGsで掲げられている社会課題の解決に貢献しようという動きが大きくなっています。実用化が進んで成果につながっている例も数多くあります。
SDGsの17目標には、社会、経済、環境あらゆる側面の社会課題が挙げられています。各目標やターゲットは他の課題とも密接なつながりをもっています。幅広い社会課題に目を向けてその解決例を学ぶことは、幅広い知識を駆使したユニークな発想につながります。あなたのユニークな発想を基に、他のデジタルテクノロジーともかけ合わせながらAIを活用した新たなイノベーション創出につなげてください。
リンク記事では、SDGs17目標に関連する課題に対して、AIによる解決事例を紹介しています。
未来技術推進協会の役割
一般社団法人未来技術推進協会は、テクノロジーによる社会課題の解決に貢献するため、プロジェクト推進、SDGsの定期勉強会、ワークショップ、アイデアソンの企画・運営などの活動を行っています。
2016年より、志の高いメーカー研究者が自主的に集まり、今後発展の見込まれる分野に関する勉強会を開催してきました。その志に惹かれ、研究者、技術者、新しい技術に興味を持つ社会人が集まり、より具体的に社会に貢献するため、2017年8月より一般社団法人として法人化しました。この会が徐々に広まり、現在では男女合わせて300人近くに達する規模となっています。
未来技術推進協会では、テクノロジーによる社会課題への貢献のためのコミュニティ形成を行っています。その実現のために、下記のようなエコシステムの形成を目指しています。
未来技術推進協会では、このエコシステム形成のために、テクノロジーを用いた社会課題解決プロジェクトの立ち上げと推進支援を行なっています。現在は以下のようなプロジェクトが稼働しています。
【ファッションAI】
ファッションアプリは女性向けのものがほとんどであることから、男性にターゲットを当てた、簡単にコーディネートを選べて、ECサイトでの購入までサポートするためのアプリです。スタイリストのノウハウを元に、AIと連携させて、体型や利用シーンからよりパーソナライズされた推薦ができるように進化させていきます。
【ふぁみカル】
診察を受ける患者さんやその家族が、医師や薬剤師とのコミュニケーションを円滑に行えるよう、カルテを自動作成するアプリです。これまでアナログ的に点在していた診察や服薬、健診結果などの定点的なデータに加えて、自宅での経過なども合わせて連続的に管理できるプラットフォームを作っています。
【Colors】
色盲・色弱など色覚多様性をもった方、加齢により色を識別しづらくなった方の為の色覚補正アプリです。色の見分けがつきづらくて起こる困りごとを改善するため、色の見分けを補助する機能を開発しています。
共にゴールを目指すボードゲーム
未来技術推進協会は、SDGsをテーマとしたオリジナルのボードゲームを製作しました。協会が主催するSDGsワークショップではこのボードゲームを活用し、SDGsの理解を深め、参加者とSDGsとのつながりを考えてもらう場を提供しています。
すごろく形式のボードゲームは、以下のように進行していきます。
- 各プレーヤーは、「大企業」「中・小・ベンチャー企業」「大学・研究機関」「慈善団体」の中から役割を選びます。団体によって年間予算等が異なります。
- サイコロを振り、出た目の分だけ駒を進める
止まったマス目に応じてSDGsのターゲットに合わせたミッションカードを入手したり、好景気、自然災害などのイベントが発生したりします。 - ミッションを実施してSDGsスコアを目標値まで上げる
各プレーヤーが入手したミッションカードに書かれている課題を解決することによって、SDGsスコアが変動します。 - 自己投資で所属団体をランクアップさせる
ランクアップすると、支給される年間予算が増額したり、所属団体ならではのスキルを使えるようになったりします。
このボードゲームには、2つのゴールがあります。1つ目は、SDGsの各17目標の達成状況を示す10段階のスコアを最高値まで上げていくこと、2つ目は、自身の所属団体をランクアップさせて自己成長につなげることです。両方のゴールを目指し、各プレーヤーは協力しながら課題解決と自己投資を行っていきます。
このボードゲームの面白さは、他のプレーヤーと協業して課題解決を行っていく点にあります。あるプレーヤーがミッションを実施しようとした際にコインが足りない場合、他のプレーヤーからの支援を受けることが可能です。SDGsの17目標すべてを達成するためには、プレーヤーはお互い協力してミッションを実施していく姿勢が不可欠になります。
個人、組織の行動につなげるSDGs研修
未来技術推進協会では、企業、団体様向けのSDGsに関する研修を実施しています。協会に所属するSDGsファシリテーターが出張に向かい、ボードゲームやワークを通して事業アイデア創出に活用して頂いております。
SDGsと日々の生活のつながりを見つける研修や、業務で行っていることがSDGsにどのように関係し、貢献しているのかを可視化していく研修を行っています。
過去の研修事例、研修の概要につきましては、協会ホームページをご参照ください。
最後に
この記事では、テクノロジーを用いて社会課題の解決を目指す未来技術推進協会より、SDGsの概要とそれをAIビジネスに活かすためのポイントについてお伝えしました。SDGsを理解することによって、少しでも今の生活や仕事を通して社会課題の解決に意識を向けて頂けたらと期待しています。そして、もし課題解決にAIを活用する素晴らしいアイデアが浮かんだら、ぜひビジネスとして行動につなげてください。
未来技術推進協会では、今後もAIを活用した社会課題解決の事例を紹介していきます。今後は一つひとつより掘り下げて紹介していくとともに、SDGsの17目標、169のターゲットに焦点を当て、どのような課題の解決に貢献した事例であるか独自に評価していきます。
未来技術推進協会ではSDGsワークショップのスタッフとしてSDGsの理解と啓蒙に取り組んでいる。大学4年の現在、航空機の空気力学特性の研究に努めている。