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世界最大の技術専門家の組織であるIEEE(アイ・トリプル・イー)が第3回「ジェネレーションAI 2019:ミレニアル世代の親たちとアルファ世代※1の子どもたちに関する調査」(Generation AI 2019:Third Annual Study of Millennial Parents and Generation Alpha Kids)の結果を発表しました。
テクノロジーの恩恵を最も受けている年齢層と考えられているアルファ世代(2010~2025年生まれ)は、AIとともに成長しており、テクノロジーは彼らの生活のあらゆる面に浸透しています。
この調査は、アルファ世代の子ども(9歳以下)を持つ米国、英国、インド、中国、ブラジルのミレニアル世代の親たちが、子どもたちの健康に関し、AIおよび最先端テクノロジーの利用に対する意識について調査したものです。
アルファ世代:2010年以降に生まれた世代のこと。ミレニアル世代の子供にあたる。
ミレニアル世代:2000年代に成人あるいは社会人になる世代。
目次
3Dプリンターで作製された心臓を子どもに移植 賛成するミレニアル世代の親たち
人間のドナーの臓器が得られるかどうかが生死を分ける場合がありますが、現在、研究者は、3Dプリンター技術を用いて人間の細胞、コラーゲン、生体分子から心臓を含む臓器を開発しています。
完全に機能する3Dプリンターで作成された心臓を、将来必要に応じて子どもに移植することについて、過半数の親が「賛成」という結果になりました。
- 米国:52%
- 英国:60%
- ブラジル:75%
- インド:92%
- 中国:94%
子どもへの3Dプリント心臓の移植に対して「大いに賛成」は、
- インド:58%
- 中国:50%
- ブラジル:42%
一方、安心できないは、
- 米国:48%
- 英国:40%
という結果になりました。
痛みに対してはアスピリンではなくVRを支持
VR(仮想現実)機能を搭載したヘッドセットは、人々を3Dの仮想環境に没入させることができますが、VRによって生じるこの感覚を活用し、痛みの治療に利用されています。
調査対象となった世界のミレニアル世代の親たちの圧倒的多数は、子どもの痛みを緩和するために薬剤よりもVRペインセラピーを勧める小児科医を支持することがわかりました。
- 中国:97%
- インド:96%
- ブラジル:90%
- 英国:82%
- 米国:79%。
さらに、一部の親は、鎮痛薬よりもVRペインセラピーを勧める小児科医を「大いに好んでいる」が、
- インド:75%
- 中国:58%
- ブラジル:45%
- 米国:33%
- 英国:33%
となりました。
自分の子どもがAI搭載バーチャル看護師の看護を受けることに抵抗を感じる米国と英国の親
遠隔治療、AI、リモートモニタリングは、人間による直接的な看護を超えて拡大し、実質的なバーチャル看護師を生み出すことに貢献しています。入院中の自分の子どもが、AIのバーチャル看護師の看護を受けることについては、米国と英国のミレニアル世代の親は、過半数があまり賛成していないという結果になりました。
- 米国:67%
- 英国:57%
一方、中国、インド、ブラジルのミレニアル世代の親の過半数は、病院で自分の子どもがAI搭載のバーチャル看護師から看護を受けることについて「大いに賛成」という結果になりました。
- 中国:88%
- インド:83%
- ブラジル:61%
人工知能を搭載した手術ロボットは、新たなイノベーションをもたらす?
アジアのミレニアル世代の親たちは、自分のアルファ世代の子どもたちがAI搭載ロボットによる手術を受けることについて「大いに賛成」であり、その傾向は2018年と比較して2019年にはさらに増加しています。
中国は2018年の82%に対して2019年には94%、インドは2018年の78%に対して2019年は86%。これに対し、英国と米国のミレニアル世代の親は、あまり賛成ではなく、英国は2018年から6%増加の2019年は51%、米国は2018年から1%増加して2019年は46%という結果になりました。
2019年のブラジルのミレニアル世代の親の69%(2018年は60%)は、AIロボットが手術を行うことについて「大いに賛成」という結果になりました。
2019年では、米国のミレニアル世代の親の25%、英国のミレニアル世代の親の21%は、子どもがこの手術を受けることを「大いに反対」という結果になりました。
自動運転のスクールバス
仕事をしている親にとって子供の学校への送り迎えは、親子両方にとってストレスとなる場合があります。自動運転バスのテスト走行が、世界各地で行われていますが、安全性が確立され、ロボットが同乗しているとしても、子どもが自動運転のバスに乗り通学することについて、ミレニアル世代の親たちの意見は分かれています。
米国と英国のミレニアル世代の親たちの過半数は、子供が通学に自動運転バスを利用することについて「あまり賛成できない」という結果になりました。
- 米国:58%
- 英国:52%。
一方、中国、インド、ブラジルのミレニアル世代の親たちの過半数は、子供が自動運転バスで通学することについて「大いに賛成」という結果になりました。
- 中国:91%
- インド:87%
- ブラジル:67%
遺伝性疾患について
自分の子供の病気について解明する医療技術を利用することについて、世界中のミレニアル世代の親は「賛成」でしたが、なかでもアジアの親が最も高い数字になりました。
アジアのミレニアル世代の親は、子どもの診断への医療技術の利用について、
- インド:90%
- 中国:89%
と「大いに賛成」であるという結果になりました。
また、ブラジルのミレニアル世代の親の78%が、子どもの診断への医療技術の利用について「大いに賛成」、一方で、米国と英国のミレニアル世代の親では、「大いに賛成」は57%にとどまりました。
リクライニングチェアにもセンサーを搭載
音声対応のスピーカーから、カメラを内蔵した冷蔵庫まで、AIとセンサーテクノロジーは多数のスマートデバイスで利用されています。
将来のスマート家具には、体重、血圧、心拍数などのバイオメトリクスを測定するセンサーが埋め込まれます。検診を自動的に行うスマートチェアを自宅に置くことについて、世界中のミレニアル世代の親たちが高い関心を寄せているという結果になりました。
- 米国:63%
- 英国:66%
- ブラジル:86%
- 中国:92%
- インド:94%
老後の世話を子供ではなくAIに
ミレニアル世代の親たちは、アルファ世代の子どもを頼る代わりに、AIを使って老後を送る傾向が高まっており、世界中の国々で前年を大幅に上回りました。
AIを使って老後の生活を送ることに「賛成」が大きく上回ったのはブラジルの親です。2018年の61%が2019年は82%に増加しました。同様にインドでも2018年の79%から2019年は90%に増加しました。老後の世話にAIを好む傾向が最も高かったのは今回も中国のミレニアル世代の親で、2018年の94%に対して2019年は93%という結果になりました。
2019年、老後の生活にAIを活用する親は、英国のミレニアル世代の親たちが74%、これは、2018年の61%から13%増加しました。また、米国では、2019年は過半数以上にあたる61%、2018年の56%から5%増加しました。それに対して、老後の世話を子どもに頼りたい親の割合は、2018年の44%から2019年には39%に低下しました。
小児ガンの診断にAIを利用する医師が求められる?
現在、ガン検診にAIが利用されています。
世界中のミレニアル世代の親は、自分の子供、または、家族にガンの診断が必要になった場合、診断にAIを活用する医師を希望するという意見が半数を超えました。
- 中国:94%
- インド:88%
- ブラジル:78%
- 英国:59%
- 米国:53%
という結果でした。
小児科診断へのチャットボットの利用に賛成する親が増加
人がAIチャットボットと会話すると、AIチャットボットは、疾病、患者履歴、状況のデータベースを比較してリコメンドをしてくれます。IEEEは2年連続して、病気になったアルファ世代の子どもの診断にAIと音声認識機能を搭載したチャットボットを利用することについて世界のミレニアル世代の親たちを調査しました。
病気の子どもの診断に将来AIチャットボットを利用することについて、中国では10人中9人以上(95%)が「賛成」でした。
これは、2018年の85%から増加しており、その半数以上(53%)は「大いに賛成」という結果になりました。インドでも同様に、2019年は87%の親がAIチャットボットの利用に「賛成」で、「大いに賛成」は60%、2018年の38%から大幅に増加しました。英国では、「賛成」が2019年は53%、2018年の50%から微増。米国では、2018の52%に対し、2019年は51%の微減となりました。
第3回「ジェネレーションAI 2019:ミレニアル世代の親たちとアルファ世代の子どもたちに関する調査」(Generation AI 2019:Third Annual Study of Millennial Parents and Generation Alpha Kids)は、9歳以上の子どもを1人以上持つ、23~38歳の親2,000人を対象に2019年10月2日~9日に実施。2,000人の内訳は、米国、英国、インド、中国、ブラジルで各400人。また、第2回「ジェネレーションAI 2018に関する調査」についてはこちらをご参照ください。
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