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2019.12.24

目指す姿は「社会に接続する学校」学費無料、経歴不問の42 Tokyoが目指すエンジニア教育

現場で活躍するエンジニアを育てるために質の変化が求められるAI人材育成。

2019年は「AI戦略 2019」が発表され、AI人材の育成に大きく注目が集まった1年でした。

と同時に国内でAI人材の育成にあたる事業社の多くが「課題解決型」学習に注目し、その例としてフランスにあるエンジニア育成機関42に注目が集まっています。

そこで今回は、2019年11月7日に日本に上陸した42 Tokyoを取材しました。

どのような人材育成を目指しているのか、42 の学習スタイルや目指す世界などについて話を伺いました。

東京都港区 六本木グランドタワーに設けられた「42 Tokyo」。無数のMacが並んでいる特徴的な風景。

学費ゼロ、経歴不問、フランス初のエンジニア養成機関42とは

42(フォーティーツー)は、フランス発のエンジニア養成機関です。

「挑戦したいすべての人に質の高い教育を」を理念にシリコンバレーをはじめ、世界各国でエンジニア教育をおこなっています。

24時間利用可能な施設、学生同士で課題を克服するピアラーニング、学費完全無料など新しい仕組みで、社会で活躍するエンジニアを数多く輩出しています。

※ピアラーニング:対話をとおして学習者同士が互いの力を発揮し協力して学ぶ学習方法です。

2019年11月7日、合同会社DMM.comは42の東京校として42 Tokyoを設立したと発表しました。

42の特徴
  • 24時間365日解放
    校舎がいつでも開いているので、好きな時間に好きなだけコードを書くことができます。時間に縛られる教育はここにはありません。
  • 経歴不問
    これまでの学歴や職歴、課外活動、国籍、人種などで入学希望者をフィルタリングすることはありません。
  • 学費完全無料
    42 Tokyoは、理念に賛同する企業によって運営され、入学金、授業料、教材費は一切かかりません。また卒業後のキャリアも自由に選ぶことができます。

なぜ42は東京に来たのか、ディレクターに聞く日本に求められる人材育成のあり方

今回は、42 Tokyoが開設される、東京都港区 六本木グランドタワーを訪れ、42 Toktyoの東京上陸を引っ張ってきた中心人物である長谷川氏に話を伺いました。

長谷川氏自身がフランスに渡り、「42」の良さを感じたといいます。詳しく伺いました。

長谷川 文二郎(一般社団法人42 Tokyo 事務局長)

1995年生まれ。DMMアカデミー1期生としてDMMへ入社。DMMアカデミー運営中に「42」を知ったことをきっかけに、フランスの42パリ校へ入学。現在、DMMにて一般社団法人42 Tokyoの事務局を担当。2020年春に向けて「42 Tokyo」の開校を準備中。
事務局長本人がÉcole 42に入学

事務局長の長谷川氏は実際にÉcole 42(パリの42)に試験を受けて入学して、生徒側の立場から42を体験したそうです。

長谷川氏:もともとDMMがフランスの42に視察に行くタイミングがあったんです。その時に同行させていただきました。、実際に現地で42の事を知って、多くの知り合いができました。。でも、結局は自分が42に入らないとわからないことが多いと思い、実際に試験を受けて合格して生徒として学んでいました。

日本とフランスの文化の違い

現地で実際に42に入学し、その仕組を身をもって体験してきた長谷川氏。しかし、日本とフランスの違いで苦労することもあったそうです。日本とフランスの違いについて、日本上陸を進める上でどんなことに気をつけたのでしょうか。

長谷川氏:今現在、42はヨーロッパを中心に15か国に展開しています。

その中でも、アジア圏、しかも日本という市場はヨーロッパと比べて特殊です。

それは、バカンスという文化がないことやワークライフバランスの考え方、会社と対等に話し合えないことなどにも現れています。

日本の生徒のライフスタイルに合わせるというのが日本に輸入する際のポイントとして気をつけました。

プログラミング教育においても、バカンスやワークライフバランスの考え方の違いは重要なポイントとなるようです。

日本では、数週間に及ぶような長期休暇を取得する商習慣は根付いていません。また、労働時間が長いことも大きなポイントとなっています。

そこで、42 Tokyoでは、日本らしさを取り入れた工夫をしたといいます。

長谷川氏:最近話題になってきましたが、ギャップイヤーという言葉が典型的です。例えば、就活の際にキャリアに空白があると企業などから疑問に思われてしまいます。海外では大学を卒業してから、就職をせずに学校では得られない経験をすることが推奨されているケースがあります。

大学を卒業してからすぐに就職しなければならないなどの心理的な障壁がまだ日本にはあるなと考えています。

私たち42 Tokyoとしてはギャップイヤーを活用するために使ってもらうことや、社会人になる前の経験として42 Tokyoを使ってもらうなど考えています。

しかし、カリキュラムに多くの時間を取られる分、時間の制約がかなり難しいかなとは思っていますので、将来的には社会人が夜間に通えるようなカリキュラムの作成なども検討しています。

既存のサービスと42 Tokyoとの違い

ここまで42 Tokyo東京上陸に至った経緯や、日本とヨーロッパの文化の違いなどについて伺いました。

では、ここから42 Tokyoの学びの特徴について詳しく伺いましょう。

セミナー形式とPBL形式

経済産業省は課題解決力を持ったAI分野の人材育成を目指し「AI Quest」などを推進しています。特に2019年は「PBL」などの仕組みに注目が集まりました。

※PBL(Project Based Learning):別名「課題解決型学習」とも呼ばれ、知識の暗記などのような生徒が受動的になる学習ではなく、自ら問題を発見し解決する能力を養うことを目的とした教育法です。

42 Tokyoで行われる教育スタイルもPBLを取り入れ、学校などのセミナー形式と明確な違いがあるそうです。そこの違いも伺いました。

長谷川氏:例えば公的な教育機関で小中高大はセミナー形式で授業と確認テストのセットになっているパターンが多いと思います。

このパターンにもメリットはあるのですが、今の日本社会はあらゆる学びをこの形式に求めすぎだと思います。

42はそれとは逆で、問題解決力の向上を目指すPBLの形をとっていますので、学校のセミナー形式で学べなかったことを学びやすいと思います。

では、セミナー形式とPBL形式では、どのような棲み分けがあると長谷川氏は考えているのでしょうか。

長谷川氏:アカデミックで専門的に学ぶ時は授業の方がいいと思います。しかし、授業で実践的なものを学ぶのは無理があります。

PBLは使い古された言葉ではあると思いますが、それがテクノロジー需要が高まる今のタイミングで花開けるかなと思っています。

システム化された課題解決型の学習

P2Pを用いた教え合う仕組み

先生がいない42では独特なピアツーピアの学習システムを取り入れています。

※ピアツーピアとはpeer-to-peerの略で、サーバーとクライアントをいう関係ではなく、クライアント同士が繋がる構造のこと

長谷川氏:42 Tokyoの特色はシステムによって生徒同士のピアツーピア学習を行っています。

課題を提出するとランダムに生徒がマッチングされてコードレビューを行うんです。

マッチングした生徒に自分の課題とコードを1行ずつ説明して、それを相手が理解し、コードが動いたら、課題が終了という流れです。マッチングした生徒が理解できるように説明しなければ課題はクリアできません。

逆に言えば相手が理解できるまで、そのレビューをし続けなければいけないです。

この仕組みによって、自分よりもレベルの高い人がマッチすると、

「ここは効率的じゃないよ」「この言語使った方がいいよ」とかいろいろなアドバイスをもらえます。

自分よりも習熟度が低い人とマッチした場合は、知らない言語で書いていた記法をレクチャーをするなど応変に説明していく必要があります。

そうすると教える側の自分の頭も整理され、知識を得るきっかけになります。頭の良い人達だけがズバッとレベルをあげていくのではなくて、教え合いの仕組みを取り入れることで全体のレベルが底上げするんです。

また、少しレベル上がった人が、さらに別の人をに教えてレベルを引き上げるみたいな形の仕組みがシステムによって実現しています。

エンジニアとして必要な能力

また、こうしたピアツーピアの学習システムではエンジニアに必要な素質が培われるとのこと。具体的にどういった能力が身につくのでしょうか。

長谷川氏:最初に扱う言語はCなのですが、Cはマニュアルが豊富な言語の学習の仕方を身に着けるイメージで設定しています。

「与えられたCの関数で既にあるライブラリをもう一回自作して下さい」という課題であったり、「マニュアルを見て自分で自作してちゃんとコンパイルできるか」など、どんどん言語の学習方法の再現性を上げていくのが42 Tokyoの一番の強みかなと思っています。

これは、エンジニアのライフスタイルというより、学習していく人すべてに求められるライフスタイルだと思っています。

エンジニアリングというのは手段に近くて、42 Tokyoでは需要があるエンジニアリングを中心に学びますが、卒業していく人達はエンジニアリングだけでなく、いろいろなところに適応できる人間になって欲しいです。

例えばエンジニアで入ったつもりが「明日からライターになって下さい」とか、「編集して下さい」とか言われた時に「わかりました」と自走できる能力が身につくのが42 Tokyoだと思います。

スポンサーからの支援

以上のような特徴を有する新たな仕組みを取り入れた「42 Tokyo」には多くのスポンサーが賛同の意を評しています。

このような多様なスポンサー企業を集めるのは大変だったのではないでしょうか。

長谷川氏さん:みなさまにご支援いただいてすごく嬉しかったです。

まだ、42 Tokyoとして成果が出ていない状況で、どんな人が入学するかが全く見えない状況でした。

そんな中、多くの企業の方がスポンサーに入って下さっているのが現状です。

これは本当に素晴らしい事だと思っています。

企業の方とお話すると、まだ夢物語に聞こえてしまう所もありますが、それよりも、このシステムの考え方に一種の期待を頂いていると思っています。

スポンサー企業:2019年12月18日時点

さいごに

42 Tokyoが目指すもの

ここまで42 Tokyoの中身を伺ってきましたが、最後に42 Tokyoが目指すものをお伺いしました。

長谷川氏:滑らかに社会に接続する学校を作りたいと思います。

例えば、学問を学びたいという方は大学に行くほうがいいと思うし、逆に大学にいて社会に行きたいという思う人達は42 Tokyoをダブルスクールみたいな形で行けばいいという、そんな形を考えています。

42 Tokyoという場所を、学びながら気づいたら社会にいたというグラデーションのような場所にしたいです。

42を日本に輸入したとしても社会が学歴などのフィルターを抜きにしてスキルのみを見て受容できないと、本来の42 Tokyoが目指す世界は達成できないと思います。

42 Tokyoを「滑らかに社会に接続する学校」にするためにはもっと多くの方に42 Tokyoを体験したもらうのが一番の近道だと感じました。

興味のある方はぜひ42 Tokyoの受験をしてみてはいかがでしょうか。

 

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