最終更新日:
Repro株式会社のAI・機械学習を活用した機能の研究開発チーム「Repro AI Labs」は、GMOインターネットグループのGMOペパボ株式会社が運営する国内最大*¹のハンドメイドマーケット「minne by GMOペパボ(以下、minne)」と共同で、AIがユーザーの将来的な購買確率を予測できるか、またマーケティング施策で購買確率を向上させられるかどうかを検証する実証実験を行いました。
(※1)2019年11月発行 一般社団法人ホビー協会「ホビー白書2019年版」ハンドメイドマーケット比較表(2019年9月末日時点)
結果、AIはユーザーの将来的な購買確率を予測することができ、マーケティング施策で購買確率を上げることができました。本文で実験内容と検証結果を発表します。
AI・機械学習を活用した購買予測を用いて実験
EC事業者の多くは、さらなる売上利益拡大のため、本来であればユーザーの購買確率別に販促施策を講じたいと考えているものの、実態はサービスの全ユーザーの中から購買行動を起こしやすいユーザーを見つけ出すことができていないという課題を抱えています。
「minne」においても、多くの方に「minne」の作品を購入いただきハンドメイドの魅力を知ってもらうためクーポン施策などを行っていますが、より多くの方に利用してもらうための手法を模索していました。
そこで、Repro AI Labsは「minne」とともに“「好き」が増え、「自分の世界」が広がり、お気に入りに囲まれ、より豊かな日々を過ごせるようにハンドメイド・ものづくりの魅力を知るキッカケをお届けする”という目的を掲げ、AI・機械学習を活用した購買予測を用いた実証実験を行いました。
実験テーマ
- AIはユーザーの将来的な購買確率を予測し、確率別に分類できるか
- 購買を喚起するマーケティング施策により購買確率を上げることができるか
実験内容
- AI(人工知能)によりユーザーを購買確率別に高・中・低の3つのグループに分類させ、各グループの購買予測と購買実績との比較、検証を実施
- 1で分類したグループに同様のクーポン施策を実施し、それぞれの施策効果を比較、検証
-クーポン施策について- クーポン適用期間:2020年2月10日~2月14日 クーポン内容 :決済金額2,000円以上で300円を割引 |
実験結果
1. AIはユーザーの将来的な購買確率を予測し、確率別に分類できるか
AIが購買確率が高いと予測した順に高、中、低と、ユーザーを3つのグループに分類しました。
購買確率が高いと予測した順に実際、購買に至ったユーザーの割合が多いという結果が得られたため、AIはユーザーの購買確率を予測し分類できたと言えます。
2. 購買を喚起するマーケティング施策により購買確率を上げることができるか
クーポン施策を実施することでAIが購買確率が高いと予測したグループの購買確率を大きく向上させることができました。
施策対象のグループにはクーポンを配布した旨のプッシュ通知を配信し、クーポン適用期間における購買行動の変化を観察したところ、購買確率のグループごとで異なる特徴を捉えました。
【購買確率のグループ別購買行動】
- 高:購買行動が大幅に増加した
- 中:購買行動は微増した
- 低:購買行動は増加しなかった
クーポンを配布することで購買確率が大きく向上したのはAIが購買確率が高いと予測していたグループで、検証4日目には購買率がクーポンを配布していないグループに比べるとおよそ2倍程度増加しました。
※購買確率が低いとAIが予測したユーザーにはクーポン施策で購買行動に変化が見られなかったため図は割愛しています
また、購買金額の変化を見ると、購買確率が中程度であると予測したグループの購買金額が上昇したことがわかりました。以下の図では、クーポン適用期間中に購買に至ったユーザー数と購買金額を表したものです。
購買確率が中程度と予測していたグループには、クーポン配布による購買確率は微増に留まったものの、購買者一人当たりの平均購買単価が4.5%上昇したことがわかりました。
実験まとめ
実験の結果、次の3つにまとめることができます。
- AIによりユーザーの将来の購買確率を予測し、購買確率別にユーザーを分類することに成功しました。
- クーポン施策により購買率を大きく上昇させることができたのは、AIが購買確率が高いと予測していたグループだと判明しました。
- クーポン施策により購買単価を上昇させることができたのは、AIが購買確率が中程度と予測していたグループだと判明しました。
考察
今回の実験より、購買確率のグループごとで異なる購買行動がみられたことから、それぞれのグループに最適化されたマーケティング施策を行うことでより売上拡大に繋がる可能性が高くなることが推察されます。
AI(人工知能)が購買確率が高いと予測したグループにおいては、従来より平均購買単価が他のグループと比較し高額であるため、この実験で設定したクーポン適応額を意識していなかったユーザーも含まれている可能があります。
そのため、クーポン適応額を引き上げることにより、購買確率が高いユーザーにも購買単価を上昇させられることができるものと考えられます。
Repro AI Labsとminneは今回の実証実験結果で得た、minneユーザーの購買確率のグループごとの特性を活用し、さらなるコミュニケーション最適化を目指して共同研究を続けていきます。
また、Repro AI LabsはEC事業者のさらなる売上利益最大化に貢献すべく、購買予測の商用化に向け研究開発を推進します。
駒澤大学仏教学部に所属。YouTubeとK-POPにハマっています。
AIがこれから宗教とどのように関わり、仏教徒の生活に影響するのかについて興味があります。