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2020.09.28

言語処理でビジネスと医療の分野にアプローチ – 新型コロナウイルス感染症の研究にも着手

こんにちは、AINOW編集部のゆーどーです。

2020年6月から、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、各地でAI(人工知能)を搭載した検温システムが導入されています。しかし、コロナウイルス感染拡大下において、AI(人工知能)は検温システム以外にも創薬研究などの分野で活躍を見せています。

今回は、創薬の研究やその他にも幅広い分野でAIソリューションを開発するFRONTEOの山本氏にインタビューしました。

山本 麻理:広告代理店に入社後、リスクマネジメント会社に在籍。メンタルヘルスケア事業を立上げ、事業計画、商品開発、マーケティング、営業戦略を実行し業界トップシェアへと導く。2014年に同社取締役に就任し、2017年に東証一部上場を実現。2018年12月よりFRONTEOに参画、2019年6月より執行役員として社長室およびライフサイエンスAI事業を牽引。2020年6月に取締役に就任し、AIソリューション事業全域を管掌・指揮。人工知能エンジン「Concept Encoder」を活用した診断支援や疾患予測のなどデジタルヘルス領域における開発を進めるとともに、ドラッグディスカバリ領域においても候補化合物発見のスピードアップを支援する創薬支援AIシステムの開発を進め、ライフサイエンスにおける新たな領域に挑む。

自然言語処理に特化した開発を進めるFRONTEO

FRONTEO は“自然言語処理”を中心にプロダクト開発・ソリューション展開を進めています。

ーーなぜ言語解析に注力したソリューションを提供しているのですか?

山本氏:国際訴訟の場において、不慣れであるがゆえに苦戦を強いられる日本企業を救いたいという想いで、「eディスカバリ(電子証拠開示)」や、「デジタルフォレンジック調査」というリーガルテック事業を興しました。

膨大な量の文書の中から証拠として使える書類を見つけ出すという作業には、気の遠くなるような時間とコストがかかります。

この作業をどうにかして効率化できないかと挑戦しているうちに開発されたのが人工知能KIBITです。

こうして生み出されたAIを活用して膨大な数の言語に埋もれた重要な情報を見出すことを事業の柱とし、現在までに創薬支援、認知症診断支援、金融・製造・知財・人事・営業支援などに言語解析の技術を活用しています。

では、実際にどのようなAIプロダクトが開発されているのでしょうか。

FRONTEO独自の言語処理に優れたAIプロダクト

ここからは、FRONTEOが開発したAIプロダクトについてお伺いします。

リーガルテック分野で活躍する人工知能エンジン「KIBIT」

ーーKIBITとはどのようなプロダクトですか?

山本氏:「KIBIT」は、過去の例や経験者の勘・感覚といった「暗黙知」をもとに選んだ文書を“教師データ”として与え、文書の特徴を学習させることで、その判断軸に沿って見つけたい文書を効率よく抽出するAIエンジンです。

「KIBIT」は教師データが少量であっても、大量のデータを軽量な動作で短時間のうちに解析し、仕分けることを特徴としています。

ーー「機微」という人の動きや判断はどのように学習しているのですか?

山本氏:「Landscaping」という独自のアルゴリズムを用いています。

KIBITはテキストデータを解析する際、品詞の特定や単語の抽出を行い、抽出されたそれぞれの単語について目的となる情報に関連する重要度を計算します。

その重要度を計算する際、「伝達情報量」という仕組みを用いて関連性の有・無を判定しています。

次に、テキストデータ内の全ての単語の重要度を集計し、スコアを算出。そのデータのスコアを降順に並び替えます。

この一連の流れがKIBITの学習・推論方法であるFRONTEO独自開発のアルゴリズム「Landscaping」です。

このアルゴリズムにより、KIBITは専門家の暗黙知(人間の経験や判断に基づく知識)を学習することができます。

引用:https://www.fronteo.com/products/kibit/landscaping/

ーーリーガルテックの分野でAIをどのように活用しているのですか?

山本氏:国際訴訟におけるeディスカバリ(電子証拠開示)支援、フォレンジック調査(不正調査)およびフォレンジックツールの提供、平時におけるメール監査などのソリューションを提供しています。

現在の主な情報伝達のツールはeメールです。そのため、企業のコンプライアンス強化の一環としてメール監査の重要性が高まっています。

膨大な量のメールを検証・監査することは困難であるため、FRONTEOはKIBITを搭載した電子メール監査システムを提供しています。

ーー「AIメール監査」サービスでは、AIはどのように学習して、不正を発見するのですか?

山本氏:監査官の調査観点を学習したKIBITが大量の電子メールを解析し、要監査メールを抽出します。

引用:https://kibit.fronteo.com/products/email-auditor/

メディカルデータの利活用を実現させる「Concept Encorder」

次に、もう1つのAIプロダクト「Concept Encoder」についてお伺いしました。

ーー「Concept Encorder」とはどのようなプロダクトですか?

山本氏:自由記述のテキストデータを大量に含むメディカルデータを、エビデンス(根拠)に基づいて有効に解析・活用することを目的に2018年に開発しました。

ヘルスケア従事者の共通認識である「エビデンスに基づいた医療(EBM)」に欠かせない有意差検定などの統計学的手法を自然言語解析に導入、実現しています。

また、言語以外のデータとの共解析も可能です。

ーーConcept Encorderの活用事例を教えてください。

山本氏:ドラッグディスカバリやデジタルヘルスの領域で活用しています。

論文探索AI 「Amanogawa」、創薬支援AI 「Cascade Eye」、認知症診断支援AIシステム、転倒転落予測AIシステム「Coroban®」を発表しています。

メディカルデータを分析して、活用できるConcept Encoderは、デジタルヘルスや創薬の分野での研究にも活躍しています。

ーー認知症診断で使用しているAIは、会話をどのように解析しているのですか?

山本氏:日常会話を記録し、テキスト化したものをConcept Encoderで解析しています。

会話データと教師データを照合することで、認知機能低下の有無を判断しています。

認知症診断AIシステムは、医師と患者の問診中の会話をテキスト化して、客観的に認知症診断を行います。

これにより、早い段階で対策を取ることができます。

ーー患者の転倒リスクを予測するAIシステム「Coroban®」のリスクの可視化について詳しく教えてください。

山本氏:Concept Encoderが電子カルテを読み込み、患者の状態や看護記録から転倒リスクを評価します。

そして、転倒リスクの有無、転倒リスクの内訳、時系列分析などさまざまな形で転倒リスクを「Coroban®」の画面上に可視化しています。

転倒転落予測AIシステム「Coroban®」は、患者の電子カルテなどの情報を解析し、入院患者の転倒・転落リスクを可視化します。

これは患者のケアだけではなく、医療現場の人々の負担減にも貢献しています。

ビジネスと医療の研究を行う2つのラボを設立

このセクションでは、創薬研究について詳しくお聞きします。

FRONTEOは、2020年4月にビジネスや医療で活用するためのAI研究の拠点となるラボを2つ設立しました。

ーーそれぞれのラボでの研究内容について教えてください。

山本氏:「ビジネスインテリジェンスAI Lab.」は、カスタマーサクセス事業本部に属し、AIエンジン「KIBIT」の導入から解析の実施、運用・保守に至るまでのさまざまなケースを想定したナレッジを集約します。

お客様の課題解決やビジネスの成功に繋がる、実用性の高いAIの活用を実現し、言語解析を通じたソリューションの可能性を追求する拠点です。

ライフサイエンスAI Lab.」は、名前の通りライフサイエンスAI事業本部に属し、AIエンジン「Concept Encoder」による解析の高度化や活用シーンの広がりを追求する拠点です。

大型の4面モニタを備えています。例えば創薬支援では、論文情報や研究データをマップで表し、広く映し出すことで、ターゲットの化合物や遺伝子との関連性をより直感的に探索することができます。

FRONTEO本社内にある「ビジネスインテリジェンスAI Lab.」のエントランス風景

「Concept Encorder」で創薬研究を支援

次に、ライフサイエンス領域の創薬研究についてお伺いしました。

ーーFRONTEOでの創薬の研究の概要を教えてください。

山本氏:FRONTEOでは創薬研究を支援するAIを提供しています。

「Cascade Eye」で創薬のターゲットを発見し、さらに「Amanogawa」によってターゲットに関する論文を検索するなど、さまざまな活用方法があります。

ーー「Cascade Eye」では、どのようにターゲットを発見するのですか?今までの実績も踏まえて教えてください。

山本氏:「Cascade Eye」は病気に関連する遺伝子の関係性をパスウェイマップに表示することができるシステムです。

パスウェイマップ上に示された遺伝子同士の結びつきや、関係の強さなどから、研究者がどの遺伝子をターゲットとするかを判断します。

COVID-19に対して行った当社の研究でも同様のアプローチから、既に既存薬のターゲットとなっている遺伝子をパスウェイマップ上に発見しています。

ーー論文探索AI「Amanogawa」はどのような基準で下のマップのような座標になっているのですか?また、色の違いは、何を表しているのですか?

山本氏:ベクトル化された論文を表す点が、論文同士の意味、概念が近いものは近くに、遠いものは遠くにプロットされます。色の違いは検索条件の違いです。

引用:https://lifescience.fronteo.com/aidiscovery/

新型コロナウイルスに関する研究に着手

FRONTEOはConcept Encoderを活用して、新型コロナウイルスに関する研究も行われました。

ーー新型コロナウイルス感染症に関する研究内容を教えてください。

山本氏:病気や薬剤のメカニズムを可視化するAIシステム「Cascade Eye」を利用し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するドラッグリポジショニングの研究を実施しました。

AIが最新の論文や医薬研究データから、疾患の発症や重症化に至るメカニズムや関連性の高い遺伝子等をパスウェイ状(関係性や相互作用を表す経路図)に可視化しました。

そうすることで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関わる重要な分子や遺伝子を特定し、ドラッグリパーパシング(既存薬での治療可能性)や新薬候補等を探ることが可能になります。

ーー新型コロナウイルス感染症の研究の結果、他の組織と共同研究を行う予定ですか?

山本氏:今のところ、共同研究を行う予定はありません。

ですが、国の機関や、製薬企業には情報提供をしています。私たちは新型コロナウイルスに限らず、突然パンデミックに陥った時に備えて、現在も研究を進めています。

そうすることでパンデミック時でも初動を早めて、対策を練ることができると考えています。

FRONTEO本社内にある「ライフサイエンスAI Lab.」の風景

今後の展望について

最後にFRONTEOの今後の展望についてお伺いしました。

ーー遠隔での手術などの話がある中、これからの医療の分野では、どのようなAI(人工知能)を搭載した医療機器が実現されるのでしょうか。

山本氏:少子高齢化や医師の偏在、更にはコロナウイルス等のパンデミック対策などを背景に、場所や時間を選ばず、更には医療従事者に高度な知識や技術がなくとも簡単に使用することのできるAIを搭載した機器が開発されてくると思います。

また現在は治療を対象とした機器が市場の中核を占めていますが、AIの技術が進化するとともに、診断や予防などの分野での開発が進むと考えています。

ーー新型コロナウイルスの研究など、ライフサイエンスAIの分野では、今後どのような研究に取り組む予定ですか?

山本氏:医療機器の分野では、認知症診断支援システムや転倒転落予測システムをはじめ、主に精神神経疾患や高齢者層を中核とした研究・製品開発を進めていきます。

またドラッグディスカバリーの分野では、現行の創薬支援システムの改良をはじめ、ライフサイエンス領域での知見を活かしAIによるヒット化合物やリード化合物の特定等、より臨床開発に活かすことのできる開発を検討しています。

引用:https://www.fronteo.com/wp-content/uploads/2020/07/shareholdersmeeting17_slide.pdf

さいごに

ビジネス領域をはじめ、医療領域でもAIソリューションを提供するFRONTEOの動向を理解していただけたでしょうか。

“言語処理”という切り口で、国際訴訟や、金融、営業支援などと多様なプロダクト・ソリューションを開発しています。

AI(人工知能)を活用することで、作業を効率化できることばかりに注目してしまいそうですが、私たちの身の安全も守ってくれているのですね。

医療分野の創薬研究は、特に興味深い内容でした。

新型コロナウイルスは既知のウイルスと一致しないため、予防薬を開発するまでに時間を要しています。

ですが、AI(人工知能)を活用して創薬研究を効率化することで、開発までの時間を何十時間もカットできることが期待できます。

今後も創薬研究を進めるFRONTEOの動向から目が離せません。

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