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近年、社会ではDXに注目が集まり、さまざまな業界がデジタル技術で急速に変動しています。ファッション業界もDXの影響を大きく受ける代表的な分野です。
例えば、EC化によって、ユーザの購買行動はWebに移行し、気軽にファッションアイテムを購入できるようになってきました。その他、AIを活用した需要予測を活用し、業界課題である廃棄を減らす取り組みなども生まれています。
そんな今、ファッション業界では、AI技術を取り入れ、業界をさらに進化させる人材が求められ始めています。しかし、現状のファッション業界には、「肝心のそのAIを使いこなせる人材が不足している」という課題があります。
今回は、そんな課題を解決するために、AI活用についてのカリキュラムを提供している株式会社ニューロープ代表 酒井氏と、実際にカリキュラムを実施している大阪文化服装学院 経営企画室 室長補佐 豊田氏、また、大阪文化服装学院ブランドマネージメント学科2年の岩﨑さんにお話を伺いました。
(株式会社ニューロープ代表 酒井氏)
(左:大阪文化服装学院 経営企画室 室長補佐 豊田氏、右:大阪文化服装学院ブランドマネージメント学科2年 岩﨑さん)
株式会社 ニューロープについて
株式会社ニューロープが提供している「#CBK scnnr(カブキ スキャナー)」は、服装の画像を自動解析し、それらの服の種類、つまりタグ情報を返す人工知能となっており、Eコマースにおいてユーザーが見ている商品の類似画像をリコメンデーションしたり、商品開発やマーケティングに活用できるトレンド分析の提供を行ったりと様々なサービスで活用されています。
現代におけるファッション業界の課題とは
ーー ファッション専門学校での課題はなんですか?
豊田氏:ファッション専門学校の、特にビジネス系の課題としては、従来型のショップ販売に偏重した教育内容になっていることが挙げられます。これまでは「販売職」での就職で強みが出せていたので、本部スタッフ向けの人材育成に本気で向き合いきれていない、排出が不足している現状が根底としてありました。
ーー ファッション業界全体の課題はどうでしょうか?
酒井氏:業界全体としては、サプライチェーンの効率化などDXが求められており、EC化も進んでいるのですが、コロナなどの影響からショップ店員の新卒採用が減っている反面でデジタル部門も人手が足りておらず、慢性的な人材不足が問題となっています。
ーーでは、そんな課題を背景になぜAIを教育に組み込もうと思ったんですか?
豊田氏:先程述べたとおり、ファッション専門学校ではショップ店員の育成が主となっており、本社機能に関わるスキルの養成が進んでいません。そこで、本学では、ショップ販売以外の分野も進路として具体的にイメージさせる、差別化されたカリキュラムを提供しよう、併せて、フラッグシップである3年制ビジネス学科の存在価値をテコ入れしよう、と考えました。 そんな中で、技術革新が進む現代において、AIはビジネス課題に対して根拠のある定量的な解決につながるツールであり、そのAIを活用できるということは社会において強みになり、本社機能に寄与できるスキルだと考えたので、このカリキュラムを構想しました。
ーー会社としてAI教育に携わろうと思ったきっかけはなんですか?
酒井氏:私自身、エンジニアリングの経験がない状態で受託開発会社にプランナーとしてジョインした経験があるのですが、その際に非エンジニアでも開発に携わるからにはエンジニアリングを学んでいたかどうかで効率が全く違うということに気づき、仕組みそのものを知る重要性を感じていたので、今回AI活用をテーマとしたカリキュラムを引き受けたいと思いました。
プログラミングではなく、AIの活用をテーマにしたカリキュラムづくり
ーーカリキュラムの内容について教えてください
豊田氏:大阪文化服装学院では、「AIビジネス活用」というカリキュラムを今年度から始め、「AIをいかにビジネスに活用するか」といった思考を学べるものとなっています。これは実際にAIを作成するわけではなく、AIはなにが得意でなにができるのかを理解し、課題に対してAIを活用するための発想を得る感性を磨く内容となっています。
ーー例えばどんな授業を行っていますか?
酒井氏:具体的には、「AIとは」から始まり、基礎を固めた上で、チームを組んでAIビジネス活用のプランニングを行うワークショップ形式の授業などを行っており、技術的な実現可能性やサービスとしての有用性などを解像度高く見てもらうことを目的としています。
ーー実際に授業を行ってみていかがですか?
酒井氏:生徒さんの多くがAIに関して予備知識がないというところで、彼氏のSNSの監視をするメンヘラテクノロジーさんの「彼氏束縛AI」など、ユニークな企画を紹介し、興味を持ってもらうところから始めました。 進めていくと概念的な部分は皆さん理解が早く、ワークショップで提案されるサービスプランもAIの特質を踏まえたものとなっていました。AIについて全く情報がない方でも取り組めるようなカリキュラムになったと思います。
実際に受けている生徒の声
今回実際に授業を受けている学生の方にもインタビューを行いました!
岩﨑さん:大阪文化服装学院ブランドマネージメント学科2年の岩﨑です、よろしくお願いします。
ーー実際に授業を受けてみてどうでしたか?
岩﨑さん:最初はAIは自分から遠い存在だと思っていたのですが、AIについて基礎から教えて頂き、使う側の目線に立つと意外と近いもので、親近感がわきました。 また、授業内では様々なAIを紹介して頂き、ファッションとAIの可能性を感じわくわくしました。
ーー授業を受けてみて成長したことはなんですか?
岩﨑さん:これまでもファッションについてアイデアを考えることはあったのですが、AIについて知っているかどうかは考え方においてすごく大事で、どんなAIがある、活用方法がある、という知識を得たことでアイデアの幅が凄く広がりました。
ーー将来授業で得た知識をどんな風に活かしていきたいですか?
岩﨑さん:私は元々、従来の進路どおりファッション系の会社に就職するつもりだったのですが、授業を受けてAIビジネス活用について学び、将来はAIを有効活用したブランドを立ち上げたいと考えるようになりました。 そのためにこれからもAIについて学んでいこうと思います。
今後の展望について
ーーでは、最後に今後の展望についてお聞かせください!
豊田氏:今回実施してみて、社会に出て役に立つ実践的な内容を磨きたいと感じるので、産学連携のカリキュラムや企業コラボなど、学生が現場の視点にたってアイデアを出せる機会を作りたいです。 また、AIは幅広い可能性があると思っていて、今回は3年制のビジネス学科のみで実装しているのですが、AIの中でもジャンルを差別化していって既存の2年制学科や、クリエイター向けの学科にも組み込んで行けたらと思います。
ーー酒井さんはいかがでしょうか?
酒井氏:大阪にはアパレルの本社が多いので、企業との連携を増やして企業が持っている実課題を題材にアイデアソンを行ったりと実践的な内容を増やしていけたらと思います。「うまくいかない」も含めて経験を積める場にしていきたいです。
おわりに
現代ではさまざまな業種がDXに力を入れており、ファッション業界も例外でないのですが、AI活用に通じている人材がおらず伸び悩んでいるという実態があります。
そんな中で、AIを扱える人材を育成するカリキュラムの価値は高く、ファッション業界において大きな発展を生む存在となるのではないでしょうか。
今回は現場で実際に教えている方や、授業を受けている生徒さんの生の声を聞けて、改めてファッションAI業界に興味が湧いたインタビューでした、これからもファッション×AIに注目していきたいと思います!